ヒロト「そんな基準あったっけ?」
マキ「それならむしろ土日もそうするべきよ!」
ヒロト「なんなら昨日は遅刻してたからね」
筆者「許せ! 予定もあるんだ!」
マキ「許してほしければメテオシャワーよ?」
筆者「じゃあ許さなくていーわ」
マキ「許さないから制裁のメテオシャワーね」
筆者「どっちも一緒じゃねぇかよ!」
マキの新必殺技スターゲイザーはエリカのワームホールは破れたが次なる技ジ・エンドの前には敗れた。前半残り一分、ボールはエリカに渡ってしまった。敵のいない草原を歩くようにゆっくりとゴールに向かって進む。
「前半もあと少し、いいものを見せてあげるわよ」
エリカは再び化身を出し、そしてアームドしてみせた。
「ふふ、これだけでもさっきまでとは比べ物にならない力になる…けどね? 私にはアームド時にしか使えない技がある」
真っ黒な三対の翼を生やして大空に羽ばたき、ボールに対してオーバーヘッドキックの形でゴールに向かって叩き落とす。
「破壊天使の逆鱗!」
その場に立つことしかできない花瑞達はその圧倒的エネルギーを持った暗黒のボールが自分達に向かって来るのをただ見届けるしかなかった。
「あ、あれ…女神の逆鱗に‥似て………きゃぁぁぁ!」
「タマシイザ…うわぁぁ!!」
エリカのシュートでコートの半分が無くなりゴールは消失し、ロココは深刻なダメージを追い意識を失った。
───前半終了1-3
「う、う~ん……」
花瑞達も気を失っていた。ハーフタイム中に目が覚めたがそれはSARU達のお陰だった。何人かのセカンドステージチルドレンが傷付いた花瑞達に何か超能力を浴びせている。
「まだ動かないでくれ、ダメージは深刻なんだ。後半までには皆治すから」
「SARUさん…? これは…何をしているんですか?」
「俺達の力で傷を治している。お前らに勝って貰わないと未来がないようだからな。それに……助けてもらった借りがある」
「ありがとう。ねぇSARUさん、エリカについて知ってることとかってあります?」
「エリカについてか……」
SARUは表情を曇らせる。語りたくない過去があるのだ。
「申し訳ないが私達に話してくれないか? この試合…いや、未来のためにも知らないといけない」
表情を曇らせたSARUをみて無理にでも聞こうとしないで躊躇っていた花瑞を見て、同じく治療中だったアフロディが変わりに聞いた。
「わかった……どのみち未来が無くなってしまったら意味もないことだ。話そう」
───SARUがエリカと出会ったのは、エリカが五歳の頃だった。
そのときもエリカは一人だった。山奥にひとりで住んでおり必要なものがあるときは町に出て盗みを働いていた。セカンドステージチルドレンを集めていたSARUに超能力を使って盗みを働いている姿を目撃され声をかけられたのだった。そのとき、SARUはエリカの生い立ちについて直接エリカから聞いていた。
エリカには家族がいなかった。生まれながらに持っていた破壊の能力が彼女の産声とともに両親を殺してしまったのだ。そのまま自分の生まれた病院もろともコントロールできない力で全壊させてしまい、彼女は唯一の生き残りの赤ちゃんとして研究所に回収された。
生まれて一ヶ月と経たないうちに彼女は自我を持ち、歩き、喋れるようになった。そして自分の力を理解した。今自分の置かれている状況も理解した。その力を戦争の道具にするために研究されていることも。
彼女は研究所を破壊し人里離れた山の中に隠れた。大人に失望し、暫くは誰とも関わりたくなかった。だがいくら超人的な彼女もお腹は空く。彼女は仕方無く町に出たが当然使えるお金などない。そして自分くらいの年の子、生後一ヶ月程度の子が一人で町を歩くなんてことが常識的に考えてあり得ないことだとそこで知り、路地裏に隠れ町の様子を伺っていた。
幸か不幸かその路地裏で彼女はカツアゲの光景を見てしまった、自分より弱い人間が更に弱い人間を力で制圧する光景を見た。彼女は即座にそれを学習してカツアゲしていた男を気絶させてから金品を奪った。
丁度いいので気絶させたその男の身体を操って粉ミルクを買わせた。こうして離乳期に入るまで上を凌いでいた。
離乳期に入ると彼女は更に知性を得た。わざわざ路地裏で人を襲うのも効率が悪い。彼女はバレないように物を盗むことを覚えた。監視カメラから自分を消し、瞬間移動で一瞬だけ店の中に入り姿を消す。これをSARUに出会うその日まで続けていた。SARUはその犯行を、超能力の使用を認識できたからだ。
「君のような力を持った仲間を俺は集めている。俺と一緒にこないか? きっとそこに君の居場所もある」
エリカは試しについていった。そこには確かに自分のように特殊な力を持ったSARUの仲間がいた。だがエリカの仲間になることはなかった。SARUはエリカが仲間に溶け込めないのを見てどうしたものかと考えたがリーダーとはいえ彼もまだ幼く、解決法がわからなかった。
その頃のエリカはワガママで自分のやりたいことをやるだけのまさに子供だった。
この頃には既にSARUは今も続く世界への侵略を始めておりエリカもその力で圧倒的な戦果を築いた。だが集団行動を理解せず、何かあれば力で解決していたエリカはあっという間に彼女は孤立し、SARUは何度もエリカに注意や仲直りするよう促したがなぜ強い自分が自分より弱い奴らに謝らなければならないか理解できない様子だった。
「エリカ、申し訳ないが皆は君と一緒にいたくないようだ」
「ふーん、じゃああいつらを切れば?」
「…‥エリカ、俺から誘っておいて悪いが君は一度俺達から離れてくれないか?」
言葉の意味は理解できるがSARUの気持ちは全く理解できない様子でエリカは聞き返した。
「は? 今、何て言った?」
「エリカ、チームから抜けてくれ」
聞き間違いでないと理解したエリカは尚更疑問に思った。
「わたしの方が強いのに? あいつらを選ぶの?」
「エリカ! 何故わからないんだ! お前のやり方じゃ誰も納得しないんだよ!」
「わからないわよ! 何をしたら納得されるかなんて! もういいわよ、どうせ私は独り者! こんなところにいる方がおかしかったんだから!」
エリカはそれ以来SARUの元に姿を表すことはなかった。SARUも罪悪感があったのか彼女の行方を時間があれば探していた。彼女の居場所を特定したのはわりと最近のことであった。
───SARUは当時のことを伝え深刻な趣で話を終えた。
「なるほど……何となく見えてきたものがある」
アフロディはそれを花瑞も感じ取れたか花瑞の顔をみる。花瑞の顔はキリッとしており、それでいていつもの優しい雰囲気を持った表情を見て大丈夫そうだと確信を持つ。
「花瑞、最終的な結論は君に委ねる。きっと花瑞なら今の話で必要なものを見つけられたと思うからね」
「これが正しいとかはわからない。でも私に出来ることは、やることはわかった気がする」
「それでいい。さあ、後半戦に行こうか」
アフロディと花瑞は再びエリカが作り直したコートに立つ。
ベンチで治療を受けていた他のメンバーも続々完治してコートに復帰する。
「やれやれ、花瑞のサポートをしにいくか」
クララも話を聞いて花瑞が何か試合に勝つ以外の何かもするのだろうと察してこの後に待ち受ける死闘の先にある未来を楽しみに自分のポジションに着く。
「私達は負けない。どんな過去を持っていようと私はやることを全うするだけだ」
杏は花瑞が何をやるか想像こそつかないが彼女のやることを信じて今できることに集中する。
「世話が焼けるぜ。まあ、最後まで支えてやろうぜ。なあ、荒城」
「そうですね黒嶋さん、微力だけど頑張ります!」
黒嶋、荒城もしっかりとサポートするために身体を張るつもりだ。
「一個でも多く止める。俺とダイスケのサッカーを終わらせない」
ロココは先程のシュートが脳裏に鮮明に焼き付いているがそのシュートだって止めてみせるという強い覚悟でゴールを守る。
「やれやれ、世話の焼ける奴が多いものだ」
八神は相変わらずな面々を見て少し安心感を覚える。
「SARUからの話なんて今まで聞いたことありません。やっぱり、この世界は、花瑞さんなら……きっと」
ベータはこれまでにない世界の変化に未来への可能性がぐっと近付いていくのを感じ強い希望を抱いてフィールドに立つ。
「花瑞なら解決できる。マキは兎に角点を取る!」
マキは絶対的な信頼を花瑞に持っている。大事なことは彼女が解決してくれるから自分はひたすら試合で点を取ることに集中しようとエリカ相手に悪戯染みた笑みを浮かべる。
「花瑞、俺はお前のために……そして君の子孫であるエリカのために全てを捧げよう」
ヒロトが思い浮かべる未来は実現するのか、今最後の戦士がフィールドに入った。
「さぁ、最後のショーをはじめましょう?」
クララ「私は察しがいいからな。花瑞のしたいことがもうわかった」
杏「本当なのか? 言ってみてくれ」
クララ「すまないがネタバレはダメだ」
杏「ネタバレってなんだよ!?」
八神「まあ色々クララにもあるんだろう。それより、杏はわからないということか?」
杏「なんかいい感じにしてくれるんだろってのはわかるけど」
八神「それでいいじゃないか。十分だ」