ヒロト「謎の力で中身がわからない!」
マキ「マキ達はこれを知れないっていうの!?」
───ラグナロク開催数日前
人里離れた山奥、こんな未来なのにまるで未開の地のように生い茂る木々は人を寄せ付けぬように刺々しくて不規則に立ち並んでいる。そんな辺境の地のさらに奥地にセカンドステージチルドレンの集うフェーダのリーダーSARUがどうしても会わなければならない人物が居る。
「……なんのようかしら、SARU」
「君の力が必要になった」
まるで玉座のように植物の茎を複雑に絡め合わせて作られた椅子に腰かける赤いロングヘアーの少女。
「へぇ、そうやって助けって求めるものなのね」
随分と嫌味な言い方をするものだと苛立ちを覚えるが、彼女の力を得るためにここはSARUが一歩引く。
「不服だったか、ならこの通りだ」
SARUは頭を下げる。
「……随分と都合がいいのだな」
彼女の中では別の考えがあったのか、彼の行動に少し驚いたあとに冷酷な声でそう言う。
「それはお互い様だろう」
しかしこれ以上食い下がるのは自分の影響力が落ちることを懸念してSARUもここは張り合う。
「……まあいいか、これが"最後"だからね」
「最後だと?」
「お前の顔を見るのがという意味だ」
SARUはこれをこの一件が済めば自分達は解放されお互い顔を見る必要も無くなるということを言っているのだと解釈した。
「あの時のことを根に持つのはわかる。だが俺達がやるのはサッカーだ。協力してくれ」
「サッカーねぇ…フフ、アハハハハ」
少女は突如笑いだした。山の木々も笑い出す。不気味だ。
SARUは彼女のことが嫌いだ、彼女もSARUが嫌いだ。だが、SARUは彼女の力を必要としている。彼女もSARUを利用したがっている。
「フェーダは最強なのではなかったのかしら? こともあろうにエルドラド相手に私にまで頭を下げにくるなんてねぇ」
彼女はSARUを憎んでいる。それはかつて彼女がまだフェーダに居場所があった頃、彼女の思いを踏みにじったから。自分を捨てた人類への怒りや失望を更に色濃くしたから。
「結論だけ聞かせてくれ、来てくれるのか」
「行くわよ、でもそのタイミングは私が決める。お前のタイミングなんかには絶対従わない」
「わかった。それじゃあ……」
SARUは山を後にした。彼女によって作られた人を拒む山の要塞、彼女のオーラが作り上げた人工的な山を。
「ちっ、セカンドステージごときが……」
SARUの背中が見えなくなった頃に彼女は不服そうに呟く。
「行くタイミングは私が決めるだと? ふざけやがって」
SARUは彼女のテリトリーを抜けた後の帰り道で独り言で愚痴を溢す。
「さぁて、今回はどうなるのかしら。期待してるわよ?」
独りになった部屋で彼女は笑う。まるで世界を支配する独裁者のように。
クララ「シリアスな話の臭いがしたからここで中和しよう」
八神「なんだそのフワフワした情報を根拠にした提案は」
クララ「というわけで今回はここで」
杏「待て、待て。お前なに言おうとしてるか先にわたしに教えろ」
クララ「ゴニョゴニョ」
杏「お前それよくも私に耳打ちできたな!? いいか! そんなの絶対言うなよ!?」
クララ「まあその恥じらいの顔に免じて今回はよしとするか」
八神「いったい何を話したんだ……」
杏「考えなくていい! てきとうなこと言おうとしてただけだから!」