マキ「こっちの台詞なんだけど」
筆者「いやめちゃくちゃなことが起こって疲労困憊な身体が風邪を引いた」
マキ「あんた最近よく風邪引いてない?」
筆者「免疫力落ちた気がする」
ヒロト「みんなはどうかな? 最近免疫落ちたなとか感じてるのだろうか?」
同点のまま迎えた後半戦。両陣営シュートを打たせて複数人で止めるという展開が続いていた。しかし攻撃と守備でおおよその役割が固まっているゼウスメンバーに対して攻守共に活躍を期待される花瑞の消耗は激しい。特にカオスブレイクは化身を使ってもなお自力でのセーブは困難なシュートであり、ダメージも大きかった。
「大会屈指のストライカー三人が放つカオスブレイク。厄介なことこの上ないですねぇ~」
ベータは水筒を配りながら花瑞に話しかける。
「そうだね…でも皆で戦えば勝てないはずはないから大丈夫」
「はっきり言ってしまいますとやはりあなたとマキ、クララ、杏以外のメンバーが非力すぎます」
「そ、そんなことないよ!」
「今までは相手も数名のトップ層が牽引するチームだったから良かったですがやはり平均も中央値も上回られてしまっていると……」
「蓮君達だって充分スゴいよ。だから安心して見てて」
「まあ、私は見守るだけですし。余計なことお伝えしてごめんなさいね?」
ベータは内心自分も試合に出て暴れたい気持ちを抑えつつマネージャーの仕事に戻った。
後半開始と同時にマキが前半最初のお返しとばかりにメテオシャワーを放つ。この為だけに蓮にキックオフ時のキックを思い切り真上にあげろと無茶振りをした。
しかしこの攻撃も南雲が得意のジャンプで回避しており、着地と同時に両者が激しいぶつかり合いをした。
「ぐぅ……なんてパワーなのよ!」
「そんな力業が俺に通じるかよ!」
南雲が力のゴリ押しでボールを奪い間髪いれずに攻めに転じる。
「いかせるか!」
「雑魚は引っ込んでな!」
令戸をあっさり抜き去るとアフロディと涼野が合流する。
「さぁ、いくよ花瑞!」
「勝利の女神ニケ! ゴッドフラワーG5!」
「カオスブレイクG5!」
この対決もやはりアフロディ達の威力が上回る。
しかしキーパーの黒岩が止める前にクララが割って入る。
「パンチングではダメだ。 ウォーターフォール!」
クララがシュートを止めてそのままドリブルをする。それもアフロディ達の方にだ。
「何を考えているんだクララ! こっちに渡せ!」
杏がフリーなのにも関わらずあえて強敵に突っ込むように進むクララ。当然三人がボールを奪おうと襲い掛かる。
「冷静さを欠いたかクララ! もらった!」
クララから涼野がボールを奪ったコンマ一秒後にボールの持ち主はさらに入れ替わって花瑞になった。
「なに!?」
「ばかめ、私は囮だ」
これでアフロディ達を一気に躱して花瑞が攻撃に加わる構図ができた。花瑞は加速し続けて一気に勝負を着けようとする。
だがザ·ギャラクシーを決めようにもマキだけが執拗にマークされており花瑞がシュートブロックされてもなおポセイドンからゴールを奪えるシュートを撃つしか道がないような状況になっていた。
「ゴッドノウズインパクト!」
「裁きの鉄槌!」
シュートブロックされたが威力はまだ充分。これなら勝てる。
「裁きの鉄槌!!」
しかしマキをマークしていた選手がその場からブロックしてシュートの威力を激減させた。このままではシュートは決まらない。
「残念だったな!」
相手のディフェンダーが勝ちを確信してそう言ったがまだこのボールに食らい付く男がいた。
「まだだ! まだボールは死んじゃいねぇ! 真ブリザードキャノン!」
マキだけをまーくして軽視されていた荒城が全速力で駆け込んでシュートチェインを決めた。
「ギガントウォール! ぐ……こんな!」
「よっっっしゃぁぁぁぁ!」
「やるじゃない荒城、見直したわ!」
マキが珍しく素直に誉める。
荒城の執念の一点で勝ち越しに成功。次の攻撃を凌げれば勝利がグッと近付く。
「追う側の一点か、面白い。必ず取ってみせる」
アフロディがヘブンズタイムで楽々と突破して花瑞が今度は確実に止めるために化身をアームドさせて構える。
「カオスブレイクG5!」
一瞬、アフロディがボールを蹴る一瞬だけ背後からオーラのようなものが見えた。花瑞がゴッドフラワーで対抗するも先程より威力があるそのシュートは花瑞を破った。
「ダブルロケット!」
だが花瑞が全力で止めにいったことでシュートの威力事態は消されており問題なく対処できた。
「い、今のって……」
花瑞は尻餅をついたまま目を丸くして兄を見つめる。
「あら、兄妹揃ってというわけですか」
ベータはベンチからアフロディを見て微笑んだ。
だが驚いてばかりではいられない。ボールは杏が拾って令戸にパスを出す。だがこの中盤付近でのボールの奪い合いが発生、試合は一度動きが止まって残り時間が少なくなった頃総合力で勝るゼウスがボールを奪った。
「ここで決める! カオスブレイクG5!」
今度のアフロディの背中からはさっきより明確な形をしたシルエットが浮かんでいた。
「ゴッドフラワーG5! きゃあ!?」
「ウォーターフォール! っ!?」
花瑞とクララが立て続けに破られる。
「ダブルロケット! なん…だと?」
さらに黒岩さえも止めることができなかった。
「よし!」
「何勝った気になってるんだ! まだ入ってないぞぉ!」
ゴールを確信したゼウスメンバーに杏がマジの顔でゴールに迫る。
「ラ·フラム!」
「わあ、なんと…」
杏が放った技にベータは驚きの表情を見せる。
「ふふ、やはりこの時代は面白いですねぇ♡」
杏のシュートブロックで失点を防ぎ試合終了かと思われたがまだホイッスルがならない。最後の一秒まであきらめないアフロディがボールを奪いに走り出す。ついに形だけでなく色まで見えはじめた化身と共に。
杏はパスコースもなくまして今のアフロディ相手ではパスしたボールを取られかねないからとまるで蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまう。
「杏ちゃん下がって! はぁぁぁ!」
アフロディを追いかけて花瑞が回り込み、二人が同時にボールを蹴る。
「ぐっ……!」
「くぅ…」
かろうじて花瑞が勝ち、試合も終了して勝利した。
「はぁはぁ……危なかったぁ……」
「負けたよ花瑞」
「お兄ちゃん凄かった…はぁふぅ、いきなり化身出てきそうになるし、私も化身なしだったらお兄ちゃんに勝てなかったよ」
「あれが化身の感覚か……覚えておこう」
足が震えて立てない花瑞に手を差し出し、起き上がらせるとアフロディはクララに花瑞を預けて自チームに戻っていった。
「やれやれ、大した兄だな」
「へへ、ほんと」
杏「……」
ベータ「あれ、クララさん。杏さんはどうして不機嫌なんです?」
クララ「せっかくの新技がイマイチ決まりが悪かったから気にしてる」
ベータ「あー、でもあれすごいですよ。未来でかなり特殊な方の技ですし」
クララ「本人に言ってやりたいがなに言っても今は燃えるだけだから鎮火するのを待ってから誉めてやろう」