マキ「リアルな暗い話マキ嫌いなんだけど?」
ヒロト「露骨な同情狙いはマキには逆効果なんじゃないか?」
マキ「その通り。疲れた身体にすぐに効く、メテオシャワーを喰らいなさい!」
筆者「仕事全うしただけなのにぃぃ!」
マキ「こっちもこれが仕事みたいなもんよぉ!」
マキ達の加入後お互い切磋琢磨しあい少しずつ成長しながらあっという間に時は過ぎ、新一年を迎えるも実力差的に即戦力となる選手もいなかったのだ。なぜかフットボールフロンティア準決勝まで進み、尚且つ世界大会に出る選手まで居るこのサッカー部への入部希望者はそう多くもなく、花瑞達二年メンバー+新一年生でフットボールフロンティアに挑むこととなった。
入部したのはいずれも女子で、足の速さなら男子にも負けないと自負する岸川速香。男子と話すのが苦手だというてっきり女子サッカー部だと勘違いして入部した星原月海。裏表のない元気少女の浜夏天衣の三人のみ。少子化の進む地域の影響がヒシヒシと伝わる。
しかし予選では向かうところ敵無しの圧倒的な成績で勝ち進んだ。
予選ではマキが13点、花瑞が14点、荒城が6点、明が1点を奪い、失点は驚異の0点である。
「練習の成果が出てますね、去年の成績とは雲泥の差です」
と、予選の決勝を終えた後に部室でミーティングを開いてベータはタブレットをいじり過去の成績と見比べて全員を褒めた。
「でもここからが本番だよみんな。雷門もそうだし他にも強いチームがたくさんいるから。ベータちゃん、決勝トーナメントの情報ってもうある?」
花瑞はベータに尋ねた。
「はい、とりあえず一回戦の相手が確定したので丁寧にご紹介いたします」
ベータは仕入れたばかりの情報をモニターに写す。
「相手は白恋中、エースの吹雪さんは予選では10得点、さらに、転校してきたゴールキーパーの砂木沼治が6得点、同じく転校生として緑川さんが5点を挙げてます。あと、目だった活躍は無いですけど転校生としてもう一人、凍地愛さんがディフェンスにいますね」
「バランスのいいエイリア組の配分だな」
クララは割りとフォーメーションとしてどこのポジションにも一人は強力な選手が控えているこのチームのメンバーをみて感心する。
「総合力ではこちらが上かと思われますがキーパーの実力は相手の方が上です。現在こちらはストライカーの手数が少なめなので一対一で点を奪える力が欲しいですね」
「これ多分俺も明も点を取れないって割りきられてるな…」
荒城は何となく察して一人で落胆する。
「マキが治から点を奪えばいいのよ! 絶対に負けない!」
「まあケアとして花瑞も前に出た方が確実だろう。後ろは私と杏でどうにかする」
「任せてくれ、抜かせないから」
意気込みは十分、残りわずかな練習期間を存分に使い各々最後の調整に入っていた。
「グングニルV3!」
「アイクブロックっと…」
止められないと判断してすぐにクララは手を引く。
「まあこんなものだろう」
「治から点を奪えるかどうかが大事なんだけどそれはどっちなわけ?」
「やってみないとわかるものか、予選の映像では参考にならない。相手が雑魚過ぎて。だが少なくともマキのレベルは上がってる」
「治のことだから、とんでもないパワーアップをしてるはず。マキたちの想像よりもっと強くなってるかも」
「そのときは花瑞が決めるさ」
「このチームのエースになるのはマキよ! 絶対マキが決める!」
「お前実力を認めたり反抗したりいつも忙しいそうだよな」
「花瑞は私のライバルなの! いつか絶対マキの方が強くなるんだから!」
「まあ頑張れ、頭に血が上って目を真っ赤にして暴走とかするなよ」
「そんなことしない!」
「はぁはぁ……俺だって、俺だって頑張ってきたんだ…こんなところで諦められるか! ブリザードキャノン改!」
「そうだ、俺達だって意地がある。 ダブルロケット!」
荒城達もまた必死の努力で食らい付こうとしていたのだった。
──試合当日
「久しぶりだね、花瑞ちゃん」
「吹雪さんお久しぶりです。今日はよろしくお願いします」
「お互いが本来のチームで戦うのはこれが最初で最後になるんだね。後悔のない試合にしよう」
吹雪と花瑞が試合前の挨拶を交わしている頃、マキと治、クララと愛もまた挨拶をしていた。
「マキ、久しいな」
「治! 今日はマキがあんたからゴールを奪うから!」
「ふふ、面白い。そうでなくてはな! 私を楽しませてくれ、マキ!」
「よぉ愛。お兄ちゃん離れはできたか?」
「誰がブラコンだ」
「まだ言ってない」
「まだってことは言うつもりだったんじゃないか! まあいい、今日は試合に勝ってお前よりわたしの方が強いってことを証明してやる」
「勝利に貢献してから言えよな」
鬼怒川中 スターティングメンバー
FW 荒城 マキ
MF 岸川 明 令戸 笑太
DF クララ 花瑞 杏 浜夏
GK 黒岩
ベンチ 星原
試合開始と同時にマキが仕掛けようとするも、吹雪が颯爽とスノーエンジェルでボールを奪う。
「くっ、吹雪さん速ぇ!」
一時的には同じチームメイトとしてエイリア学園と対決していた荒城は吹雪の進化したスピードに驚愕する。
「驚いてる場合か! 追いかけるのよ!」
「わ、わかってる!」
吹雪は令戸と明を簡単に抜き去ると花瑞との対決になった。
「ゴッドルーツV3!」
「エアライド!」
吹雪の後ろから颯爽とあらわれた緑川との連携技で花瑞を飛び越えようとする。
「スティールルート!」
クララと杏が飛び越える吹雪を追いかけるように花瑞が用意したルートを滑っていく。
「くっ……緑川君!」
「任せろ! アストロゲート!」
ボールを奪われる前に即座に緑川へ託し、緑川は間髪入れずにシュートにいれる。
「間に合え!」
杏がジャンプして追いかけようとするが黒岩がそれを止める。
「シュートは止める。そのあとの動きを始めてくれ。ダブルロケットV2!」
緑川のシュートを見事に防ぎ、ボールは杏の元に転がる。
「やるじゃん、黒岩」
杏から明、そしてマキへとボールが繋がる。マキは必殺技もなしに軽々と相手を抜き去っていき残すは愛のみとなる。
「真メテオシャワー!」
「ぁぁ!」
愛、即突破を許される。
「来いマキ! この私が止めてやる」
「やってあげるわ治! グングニルV3!」
「ドリルスマッシャーV3!」
マキ渾身の一撃も治は防ぎ、ボールは弾いたあと丁度治の足元に落下した。
「随分腕を上げたものだマキよ! しかし、その技は結局のところ私の技だ! グングニルV3!」
「な!?」
「そこからシュートか!?」
「だ、ダメ!間に合わない!」
花瑞含め全体が反撃のためにラインを上げていた為に誰もシュートブロックできる位置にいない。まさかこんな距離からロングシュートを放つとは想定していなかった。
「ダブルロケットV2…ぐっ!」
先制点はゴールキーパー砂木沼の超ロングシュートにより決まった。
「どうだ、これが本当のグングニルというものだ!」
「ぐぬぬ……マキ、負けない!」
愛「どうだ! 我々の先制だ」
クララ「いや、お前なにもしてないだろ」
愛「マキのディフェンスに入った」
クララ「瞬殺だったけどな」
愛「それを言ったら今回クララだって役にたってないじゃないか!」
クララ「私は吹雪がシュートを諦めてパスをせざるを得ない状況に持ち込んだが」
愛「その理屈なら私が中途半端にボールカットしたりしなかったことでそのあと治が得点したのに貢献したことになるだろ!」
クララ「いや、そうはならんだろ。お前やっぱまだ兄離れしない方がいいぞ。危ないから」