筆者「もうそこに閉まっといてくれ、できればマキには見つからないように段ボールにでも隠してさ」
マキ「呼んだ?」
筆者「うわびっくりした!? どっから出てきた」
マキ「移動用のエイリアボールそろそろ取り替えようかと思って」
筆者「いやもうバレてる!? なんなら私的利用されてる?!」
マキ「大丈夫大丈夫、あんたに当てるようのは別に保管してるから」
筆者「輸入禁止ぃぃ!」
フットボールフロンティア本戦に勝ち進んだ選手、エイリア学園との死闘をくぐり抜けた選手、そして世界大会で切磋琢磨した選手の間には大きな開きがあった。
「ブリザードキャノン!」
「アイスブロック」
「くっそぉぉ! また止められたぁぁ!」
「本職ディフェンダーの私に負けるなよ本職フォワードの荒城」
「ち、ちっくしょぉ! もう一回だぁ!」
クララは少しばかり荒城を気に入っていた。クラスが同じこともあるのだが、からかうと面白い反応を示すからだ。そして偶然にも同じ氷系の技を使う選手であり、直接合間見えることはなかったがエイリア学園と戦った選手でもある。
「グングニルV2!」
「ダブルロケット! …ぐ」
「うわぁ、すごいなぁ~! 俺のとっておきのシュートなんてもっと軽くいなされちゃうのに!」
ロングシュートでこのチームの正ゴールキーパー黒岩の渾身の技を容易く撃ち破るマキ、そして久々の登場となる明太陽がそのシュートをみて感心している。
「これくらい当然よ! 目指すは来年のフットボールフロンティア優勝でしょ? 円堂に立向居、治もいるんだからもっと強くならなきゃ」
「……これが世界クラスのシュートか」
ゼウス中の前に手も足も出ず破れ、ジェミニストームとの試合で重症を負い、ダークエンペラーズに堕ちてゴールを守った黒岩ですらマキの単体シュートに手も足も出ない。
「イグナイトスティール!」
「ぬわ!」
「令戸、指揮はそこそこだがキープ力も無ければ強いシュートもディフェンスもない。このままではクララ辺りに司令塔の役割もろとも取られるぞ」
「くっ、なんてキレなんだ」
「試合全体の流れを見て二手三手先をみて指示を出せとは言わないが、クララの観察力の方が優れてるように見える」
「な、なあ。天才ゲームメーカー鬼道さんと一緒に試合したんだろ? 正直どうなんだ?」
「さっきの要求しなかった二手三手先に加えてボールをキープする力もあって強力なシュート技の構成員にもなる」
「さすが天才……」
「っ! 悔しいとかは無いのか!」
「──っある!」
「ならいい、練習を続けよう」
休憩をするためにベータからドリンクを受け取る花瑞、ベータはにこやかに話しかける。
「最初はどうなるかと思いましたけど案外みんなまとまるものなんですねぇ」
「サッカーが好きなのはみんな同じだからね」
「……花瑞さん、練習終了後付き合ってください」
「え? うん、いいよ」
──日が沈み、部の練習が終わったあと花瑞とベータは一足早く離脱して人気の少ない体育館裏に場所を移した。
「化身は、まあ出せますよね」
「うん、それは大丈夫」
「アームドは、まだ安定してませんか?」
「そうだね、まだリトルギガントの時みたいに時間がかかっちゃう」
「そう、それですととても使い物にならないので私が直々に指導しちゃいます♡」
「ほんとに! ありがとう」
「未来の世界では化身の習得方やアームドもマニュアル化されてますから、それを一からやっていけば今より化身を出すのだけでも少ない負担になるでしょうしアームドも会得できるはずですよ」
「よろしくね、ベータちゃん! 私は感覚でしかまだ化身のことわかってないからしっかりと教わらないと」
「天然物の化身使い、未来でも結構貴重なんですよねぇ。それをこの時代に……ほんとうにあなたは規格外です」
最初の一日は化身というもののおさらいを行い、終了となった。その間、化身を出したままという条件付きの座学であった。それが終わると二人は下校した。
──その頃、グラウンドではまだ練習を行っている者がいた。
「ブリザードキャノン改!」
「ダブルロケット」
「ニコニコサンシャイン!」
「ショットアボウキャッチ」
黒岩、荒城、明、そして令戸と笑太であった。
「そろそろ切り上げるか、最終下校時刻も過ぎてるし」
令戸が時計を見てそう告げる。
「はぁはぁ……頼む、あと一回だけやらせてくれ」
「頑張りすぎるなよ、荒城」
「ブリザードキャノン改!」
「あっ!?」
「まずい!!」
自分を追い込みすぎたのか、荒城のシュートはゴールから外れ、不幸にもボールの軌道上にはベータの後ろ姿があった。
「あぶなーーーーい!」
笑太は暗くて誰だかはわからないが人がいたので叫んだ。
声に気づいたベータが振り向くと目の前にボールが迫っていた。咄嗟にボールを恐ろしく早く蹴りあげて空の彼方へと消し去った。
「……へ?」
荒城だけがその恐ろしく早い蹴り技を見逃していなかった。
「お、おい今のみたか?」
「わ~びっくりしたぁ♡ 目の前でボールがそれてくれたから良かったけど当たるかと思っちゃいました♡」
ベータは自分がお前らより強いサッカープレイヤーだと悟られぬよう咄嗟に取り繕う。
「ベータちゃんだったのか、よかった。怪我はない?」
「はい♡ 先程も言った通り目の前でボールが逸れたので」
「え、いや…いま蹴った…」
「荒城さん、何か言いましたか?」
「いえ、なにも……」
荒城だけは理解した。転校生四人全員が危険人物であり、このベータこそ一番の地雷だということを。
ベータ「あぶねぇ、危うく俺の力がばれるところだったぜ」
杏「なぜ隠す必要がある」
ベータ「考えてもみろ、俺様の力を知ったら試合に出さないわけがない! マネージャー程度ならいいけどフットボールフロンティアで結果でも残したら歴史がおかしくなるだろ!」
クララ「なら大人しく花瑞の家にでも二年間引きこもってれば良かったのに。引きニー生活も案外たのしいぞ」
ベータ「一応言っておくけどお前らの成長度を見るためでもあるんだからな! エリカと戦えるかの!」