筆者「あぁ、今日は雨も降らずに済みそうだな」
ヒロト「ところで、この話はあとどれくらい続くんだっけ?」
筆者「もうちっとだけ続くんじゃ」
ヒロト「……もしもしマキ、実は今」
筆者「あぁわーったよ! FFとエリカとの決戦がメインだからそんな長いことにはならないと思うよ!」
ヒロト「そっか、それまでに俺は必ず……」
筆者「何かわからんが頑張れよ」
新生! 鬼怒川中学サッカー部
日本に帰国した花瑞達は一週間ほどテレビなどのニュースで引っ張りだこで大忙しな毎日であった。
そんな取材やらが落ち着いた頃に転校生として四人の人物がやって来た。
挨拶の前からざわめく教室。ツンとした彼女は淡々と自己紹介をした。
「蓮池杏、ご存知かも知れないけどよろしく」
転向先のクラスで素っ気ない挨拶を交わすと席に着いた。
「よう、俺は令戸っていうんだ。サッカー部に入るんだろ? 一応司令塔やってるからよろしくな」
鬼怒川中サッカー部の一応司令塔の令戸が挨拶をする。
「あぁ、サッカー部には入るからまあよろしく」
──隣のクラス
「おぃっす、倉掛クララだ。テレビで知ってるかもしれないから詳細は省く。気になるやつは個別に対応する。気が向いたら」
わざと癖の強い挨拶をして席に着く。前の席には荒城がいた。
「覚えてるか? 一応選考試合では一緒だったんだが」
「あぁ、私より弱かった奴の一人か。覚えてるぞ」
「何だか覚えてほしくない覚えられかたしてるう?!」
「で、なんのようだ」
「いや、サッカー部に入るんだろ?挨拶しとこうと思って」
「まあ入るけどさ……フフ、お前好きなやついるだろ?」
「え!?いや、そんな、なんできゅうに?」
年頃の男なんだから大抵はいるだろうに、こんな軽く鎌をかけてからかっただけなのに想像以上にわかりやすい反応にクララは面白がる。
「いいのか? 私と話してるとふたりの女にアプローチする男と思われるかもしれないぞ?」
「だ、断じてそんなことはないからな!? 俺はチームメイトになるから挨拶をしたいだけだからな!?」
「はいはい、ならまた練習のときに」
──さらに隣のクラス
「皇マキ、知ってる人も多いと思うけど世界大会でも点を取ったストライカーよ。ここでエースストライカーになってあげるからマキの活躍を楽しみにしてなさい!」
サッカー部の挨拶で言うならば頼もしい挨拶なのだが、中にはサッカーに興味がなかったり、大会をあんまり見ていない人がいるかもしれない転校初日の挨拶でこのビッグマウスである。
「おい花瑞、代表の仲間はこんなんばっかだったのか?」
小声で右隣の席に座る花瑞にマキのことを確認をするのは笑太である。
「そうだねぇ、マキちゃんらしいかな~少し気合い入れてるっぽいけど」
「こ、これが代表になる人間と俺みたいな凡人の差なのか?」
勝手にひとりで次元の違いを感じる笑太、マキは自分の自信たっぷりに用意した自己紹介を真面目に聞いていないこの男の存在に気付いてしまう。
「こらそこのタラコ唇! ちゃんとマキの挨拶を聞きなさい!」
「わ、悪い悪い! すごい挨拶だったから思わず自分の耳がいかれたかとおもってよぉ」
「てか、あんた話してたの花瑞じゃない。もしかしてチームメイト?」
「あ、あぁ。笑太ってんだ。よろしくな」
「はいはいよろしく、それよりマキ花瑞の隣がいいから席変わりなさい」
「えぇ!? う、運良くくじ引きでこんな良い席当てたのに」
良い席と言うのは別に日当たりが良いとかではなく花瑞の隣ということなのだが、マキに目をつけられたのが運の尽きか、つい先週獲得したばかりの特等席を奪われることになる。
「運で手に入れた待遇なんてのは力で簡単にねじ曲げられるものなのよ! あんたも悔しかったら力で手にすることね!」
「そんなことしたら学校のルールがめちゃくちゃだぁぉ!」
笑太は泣く泣く廊下側の端っこの席に移動した。
───さらにさらに隣のクラス
「ざわ…ざわざわ」
「うわ、めっちゃ可愛い…」
「はぁ~い、みなさん初めまして♡ 転校生のベータでぇす♡ まだ何にもわからないのでみんなから色々教えてほしいな♡」
ベータは全力で可愛い子ぶり男子生徒の心を鷲掴みにしていた。
「「うぉぉぉ!」」
「……騒がしくなりそうだ」
鬼怒川中GKの黒岩は熱狂する男達の中で唯一冷ややかな目でこの状況を観察していた。それに気付かないほどベータはただのぶりっ子てはない。
「あ、私の席どこかなぁ? あ、あの端っこの席ですかね? 失礼しま~す♡」
「……」
「サッカー部のぉ、黒岩さんですよね♡ わたしぃ、サッカー部のマネージャーになりたいんですけどぉ……放課後案内してくれませんか♡」
「……勝手についてこい」
他の人にはわからないようにベータは自分が可愛く見えるような奇跡的アングルからの上目使いで話しかけ、黒岩は他人からは視認できないほど僅かに頬を赤らめていた。彼もまた落ちたのだ。
『このクラスの男子は制圧完了♡』
ベータはなに不自由ない学校生活のために平和な手段で自分の地位を築いていった。
放課後、グラウンドには鬼怒川中ユニフォームを着た転校生三名とジャージ姿のベータがいた。その四人を紹介するように令戸が前に立っていた。
「と、言うわけで選手として皇さん、倉掛さん、蓮池さんの三人。マネージャーとしてベータさんが入部してくれた。我がサッカー部はゼウス中との試合やエイリア学園との騒動で先輩が全員退部してしまったが、改めてここから一歩を踏み出していこう!」
「へぇ、あんたがキャプテンなんだ」
「え?」
杏が意外に思いついグサッとくるようなことを聞いてしまう。
「実力的には花瑞よね?」
「う?」
マキもつい悪気はないのだが追撃となるようなことを言ってしまう。
「二人ともやめたげろよ、実力では負けててもキャプテンにはなれるんだからさ。選考試合にすら呼ばれないほど実力差があっても」
「ぐはっ!!」
フォローすると見せかけて上げて落とすとどめの一撃をクララがわざと喰らわせる。
「もぉ、そんなひどいこと言っちゃダメですよ? これからみんな仲間なんですから♡」
が、この状況を幸いとばかりにマネージャーになるベータが優しい子アピールをして得点を稼ぐ。
「うぅ……まさかこんな言葉の暴力を受けるとは……」
「元気だしてください♡」
「うぅ、転校生でまともなのは君だけか……」
令戸は思わず涙が出てしまう。
「いいなぁ……俺のクラスにもベータちゃんが良かったなぁ」
「なぁにたらこ、マキじゃ不満なわけ?」
「たらこじゃねぇし! そりゃルックスも性格もベータちゃんの方がいいんだもん!」
「こいつただのぶりっ子だから! 男子全員騙されてるから!」
夢も見せぬマキと夢を見せてくれるベータなら、まあ大抵の男子はベータを選ぶだろう。
「みんなそこまで! 練習始めよ?」
花瑞がパンッと手を叩いて周りを静止させ、練習を開始させた。
「……やっぱり花瑞がキャプテンの方が向いてるんじゃない?」
マキは一連の流れを見てアップのランニングをしながらそう思った。
花瑞「ヒロトさんは来なかったんだ…」
マキ「あ~、それなんだけどさ。最大でもひとつの学校に三人までにしよってなってさ」
花瑞「うん…ベータちゃんは例外ってことね」
マキ「そうそう。で、ヒロトは最後の年に花瑞と戦いたいんだって。だから雷門に行ったわ」
花瑞「そうだったんだね! なら、私も頑張らなきゃ!」