宿毛泊地提督の航海日誌 夏イベ編   作:謎のks

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今日は、艦これの観艦式だそうで?

観艦式へ赴いた皆様、お疲れさまでした!(もちろん作者は行ってません。)

そして、私事ではありますが…今日で初投稿の稚作「宿毛泊地提督の航海日誌」を投稿して一年となりました。…早いですねぇ? 一年。

これからも亀のように鈍足ではありますが、それでも投稿していきたいと考えています。

よろしければお付き合いのほど、よろしくお願い致します。それではどうぞ!


…一周年記念で何かやった方が良いのかな? リクエストとか?



宿毛泊地提督の航海日誌 夏イベ編 E-5

――――――――

 

 

「…貴方の考えはよく分かりました、ですが…これはもう国の決定事項。誰も逆らえません…誰もね?」

 

………

 

「貴方のその技術を我々に「貸して」頂くだけで良いのです。それだけで、世界の脅威からの自衛力を我々は高めることが出来る。」

 

………………

 

「新たなる兵器…新時代を駆ける抑止力は「秘密裏」でなければ…そういう意味では、貴方のそれはうってつけだ。誰も思わないでしょう、「人型の水上兵器」など」

 

………………………………

 

「要人の暗殺、他国へのスパイ、更には自国領域不法侵入者の排除、など…くく、何が「不戦の誓い」だ。そんなもので国が賄えてたまるか…アメリカの「援助」も、もう期待できそうにないですしねぇ?」

 

………………………………………………………………

 

「…何やら不服そうですが、なにか?」

 

 

 

 ― なぜそこまでして、力を求める? ―

 

 

 

「…ふっ、何ですかそれは、今更偽善者ぶるつもりですか? 良いですか? 貴方は研究者で、その研究や施設の設備の面倒は我々が見ている…古株だか知りませんが、あまり偉そうな口は聞かないでもらいたい?」

 

「…まぁいいでしょう、貴方も老い先短いのでしょう? 我々にお力添えしてもらえるなら? これから設立する新たなる「機関」の設立者として、その名を遺す栄誉が与えられるでしょう。…如何ですか?」

 

 

 

「! 貴方、何を……ッ!? ぐあああああああ!!?!?」

 

 

 

「…っが!? く、くくく……こんなことをし、ても…無駄だぁ……貴様の研究資料はこちらのモノ…いくらでも複製して、「機関」の者たちに託すことができ、る…!」

 

 

「クフフフ…既に資料は貴様の届かない場所に移動させた……どうする? 研究者風情がぁ、国を敵に回すかぁあああ~? ンフフ! クフ、ハアハハハハハハハハハハハハハハ!!! ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ああ、これが人間か。なんと醜い。

 

「兵器」…確かに、彼女たちはこんな糞共とは違う。

 

それならば、彼女たちの方が世界に相応しい……そう、「世界」は……

 

 

…奴らは資料を持ち去った。しかし、肝心の部分は私の「頭」にある……だが、それを気づくのも時間の問題か。

 

 

 

……ならば、私の取るべき行動は、唯一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「西方再打通! 欧州救援作戦」

 

NEXT E5 「地中海への誘い/地中海・キプロス島沖」

 

欧州派遣特務艦隊を編成し、進出した基地航空隊と協同で地中海東部エリアへ展開!

同海域の制海権確保に努めよ!

 

 

 

 

スエズ運河の激闘を終え、やっとの思いで地中海へと赴いた宿毛泊地艦隊。

 

早速くうさんを探そうとするも、事態は思っていたよりも深刻であった。

 

「な、なんじゃこりゃあああ!!?」

「嘘…」

「………」

 

提督が仰天し、吹雪が絶句し、蒼龍が難しい顔で言葉も出ない理由…それは。

 

 

―赤く染まり「きった」海

 

漂流物と見られる船の残骸

 

上空には、深海艦載機と思われる飛行物体が、大量に散見された。

 

 

正に「地獄絵図」…この世の煉獄極まれりといった具合か?

 

 

「日本以外がちょっとピンチっちゅうのは聞いちょったけんど…」

「これは…ピンチじゃなくて「敗北」…?」

「二人とも落ち着いて? 欧州には世界を支える大国があるもの、この程度じゃ崩れないよ。…きっと、どこかで上手くやり過ごしてるはずだよ。」

「そ、そうか…くうさんを探しとる場合やないっちゅうことか」

「そうだね? とりあえず指令書通りに、敵艦隊をやっつけて、先ずはこの状況を打破しよう? ね、吹雪ちゃん?」

「…そうですね? 司令官! やりましょう!!」

「おう! 待っちょれよぉ欧州のみんなぁ!!」

 

 

こうして、欧州の危機に馳せ参じた提督たちは、地中海の制海権確保に尽力するのだった…。

 

 

 

 

・・・・・

 

〇地中海・制海権確保部隊(第一特務部隊)

 

ビスマルク(旗艦)

ローマ

リベッチオ

秋月

瑞鶴

翔鶴

 

 

…地中海を舞台に繰り広げられた「あの時代の戦い」は、様々な犠牲がありながらも連合国側の勝利に終わった。

 

今、眼前に広がるのは「それ以上」の甚大な被害を受けた地中海。

 

ビスマルクたちはそれぞれの胸中の思いで、変わり果てた故郷の海を眺めていた。

 

「…懐かしいわね?」

「そうね」

「私は、貴方たちの戦いは知らないけど…それでも、故郷の海はいつまでも変わらないものだと思っていたわ」

「…そう」

「ねえローマ、オイゲンから聞いたけど…その」

「ほら、旗艦がくっちゃべってばかりでいいわけないでしょ? さっさと前いきなさい。」

「…わかった」

 

そう寂しく言うと、ビスマルクは先頭に戻った。

 

「…」

 

ローマは如何にもな不機嫌な顔をしていた。そんなローマに語り掛けるのは…?

 

「あ”あもう! ローマさん! アタシこのおっもーい空気耐えられないんですけど!?」

「…瑞鶴、提督がどう思ってこの編成にしたかはとにかく、あいつと私を組ませたらこうなるってこと位、わかるでしょ?」

「ぐぬぬ…」

「瑞鶴さん、落ち着いてください」

 

瑞鶴をそう諫めるのは、秋月型一番艦「秋月」

瑞鶴とは史実でも護衛対象として接していた、本音で言い合える仲である。

 

「ローマさんたちにも色々あるでしょうし、私たちがどうこう言っても意味がないと思います。」

「秋月はそう言うけどさぁ、なーんかダメなのよアタシこういうの?」

「…はっきり言って、瑞鶴さんと加賀さんも同じかと? 少なくとも世の中ではそういう認知が」

「え”え!? いやいやいや確かにぃ、アニメとかではそうだけど、私たちは仲いい方だし? そういうケンカイも出てるし?」

「どこ情報ですか?」

「もちwikiよ!」

「…はぁ」

「何その「こいつ頼りねーなぁ」みたいな!? しょうがないじゃんそういう記憶は都合よく霞がかってんだから!!」

「もう、瑞鶴。いい加減にしなさい、メッ」

「翔鶴姉までヒドイよ!? もーう! 帰ったら加賀さんに甘えまくってやるぅ!!」

「…どうしてこうなったのでしょう?」

 

全く緊張感がないわね…と、ローマは内心そう思ったが、瑞鶴たちなりの気遣いは感じ取っていた。

ふと、隣でしょんぼりと足元の水面を眺めていた駆逐艦に目がいった。

 

「…リベ? 大丈夫?」

「えっ? …あ! うん! リベは元気~! ……げんきぃ」

「無理しなくていいわよ? でも、これが現実よ?」

「ローマさん…」

「厳しいこと言うかもしれないけど、それでも今のこの状況、どうにかできるのはあたしたちしかいないの。それは、分かって頂戴ね?」

「…うん! リベ、頑張るね!」

 

健気に笑う同郷のモノに、ローマは口を緩ませるのだった…。

 

 

 

 

 

…………………………………………………

 

―敵艦隊・接敵―

 

クラス「姫」出現…

 

 

   戦艦

戦 艦 棲 姫

 

『ナンドデモ……沈メテ…アゲル』

 

 

敵中枢部隊…その一角を担うのは「戦艦棲姫」

彼女が陣取っていた場所はイタリア半島領「サルデーニャ島」

 

そこからイタリア本国とは、正に「目と鼻の先」であった。

 

「彼女たちが、ここまで欧州に近づいていたなんて…!」

 

驚きを隠せないビスマルクをよそに、ローマはそこのけと前に出てくる。

 

「アンタ…!」

『…言イタイコトハワカル。ソレデモコレガ「我ラ」ナノダ。』

「ふざけんじゃないわよ! ここはアンタたちが汚していい場所じゃないの!!」

『ソウダナ…ココハ多クノ血、多クノ魂ガ流レタ場所…オ前タチニトッテハ「友ノ墓場」ト言ッタ所カ?』

「……!」

 

頭に血が上るローマを、ビスマルクが窘める。

 

「落ち着きなさい、それでも偉大な国を冠した名のある艦娘なの、貴女?」

「うるさいっ! アンタには関係ないでしょ!?」

「関係あるわ! ここは私たちにとっても大切な場所なの!!」

 

ビスマルクは真っ直ぐにローマを見つめる。ローマはその威勢に少したじろいだ。

 

「私たちの所業…許せとは言わないわ。でも、私たちは、「私たちには」関係ないってアトミラールは言っていた!」

「アンタ…?」

「もしこの先私を信じられなくても、私が信じるアトミラールを、貴女なら信じられるでしょう?」

 

そういってビスマルクは手を差し出す。

 

「……あー! ホンットずるいわよ、アンタ?」

 

ローマは…その手に応え、固く握手を交わす。

すぐさま戦艦棲姫に向き直り、ビスマルクは宣戦布告する

 

「これより、欧州救援作戦を本格始動するものとする! 目標は敵旗艦「戦艦棲姫」! 強敵よ、それでも」

「ええ、今の私たちなら、敵じゃないわ!」

 

艦隊の意志が一つになる。そんな光景を戦艦は…

 

『…ソウカ』

 

少し、ほんの少し頬を緩ませて見ていた…

 

 

 

―敵艦発見!攻撃開始!―

 

敵は水上打撃連合艦隊。その内容は「戦艦3 重巡2 軽空母 第二艦隊は駆逐艦多数の水雷戦隊」

 

打撃力を重視した編成…しかしてこちらには、空母翔鶴姉妹がいる。

少なくとも随伴艦は何とかなる、が問題は旗艦…戦艦棲姫であった。

 

スエズで相対した戦艦仏棲姫程ではないが、彼女はその装甲並びに火力は並居る深海姫クラスの中でもトップクラスであった。

 

果たして、ビスマルクたちの主砲は、随伴艦を押しのけ戦艦棲姫を捉えることができるのか…?

 

 

まずは航空戦。

到着した「キプロス島基地航空隊」の爆撃部隊と共に、翔鶴姉妹は制空権を確保する。

 

 

『gua”a”a”aaaaa!!!』

 

 

砲撃フェイズに入った瞬間。鼓膜を突き破らんとする轟音が空間を支配する。

 

戦艦棲姫の艤装…双肩に大砲を携えた魔獣が、艦隊に襲いかかった!

 

「フンッ!」

 

立ちはだかり、魔獣の猛攻を食い止めるローマ。そのまま両腕を合わせ力比べの体勢を取る。

 

「ローマ!」

「アンタは指揮に集中しなさい! 私一人で十分よ!!」

「! 分かった! danke!」

「prego…!」

 

ローマはそのまま魔獣を押さえていた。魔獣は涎を垂らし、唸るように喉を鳴らした。

 

『grrrrrrrrrr!!!』

「はっ! 筋肉ダルマが。無駄に付けてりゃいいわけじゃないの。」

 

そう毒づくと、ローマは魔獣の足元を払った。

その勢いでバランスを崩す魔獣。

 

「お”らぁ!!」

 

そこから顔に見事なアッパーカットをかますローマ。

仰け反る魔獣は、然程ダメージが無かったのか、そのまま距離を置き苛烈な砲撃を開始した。

 

「ぐっ……!」

 

戦艦二隻も加わり、弾幕は更に激しさを増していく…

 

『grrrruraaaaaaaa!!!』

 

最早これまで…と思いかけたローマだったが、小さな砲火がそれを妨げた。

 

「ローマさんをいじめるなあぁーーー!! うにゃー!」

「リベ…!」

 

リベに向けて敵の砲が構えられる…だがそれは、翔鶴姉妹の航空爆撃により防がれた。

 

「翔鶴姉、やるよ!」

「ええ! 翔鶴型空母、全航空隊!」

 

 ―発艦始め!

 

改二改装された翔鶴型装甲空母、その磨かれた練度は、戦艦二隻を確実に捉え、それを焼き尽くす。

 

『■■■■■■■■■■■■■■■---!!?』

「ありがとう、しょーかくさんたち!」

「いいよこの位! 秋月、対空警戒しながらリベを守って!」

「無茶苦茶言いますね…でも、言われなくても、守ります!」

 

秋月はリベの前に立ち、そのまま長10cm砲を構える。

 

全ての艦、艦隊全員が欧州を護る為に一致団結する…ビスマルクはその様子を眺めながら、少し誇らしくなった。

戦況を見定めるビスマルク…しかして旗艦としての責務は向こうも変わらないようだ。

 

『………』

 

だが、それだけではない。戦艦棲姫は頭の隅で思い返していた…自身の過去を

 

…尤も、自分にそんなものあるのかと蔑笑しながら。

 

 

 

 

・・・・・

 

―――彼女は気づいたのは、海の上だった。

 

その時に自我らしいものはなく、彼女は何の疑いもなく「頭の中の声」に従っていた。

 

 

 コロセ ウバエ シズメロ

 

 

その悪しき邪念は、とある姫により出されていた…だが、そんな彼女たちにも、自我が生まれるのは時間の問題だった。

それにより、行動を選択する自由意志が生まれ、それが彼女たちが人間に近づく、又は作戦から離反するモノを次々と「生産」していった。

それによる事かはさておき、中核を成していた姫は、ある深海の指揮者を生み出し、それを「提督」とし深海棲艦の指揮に当たらせた。

 

彼女自身は、命令違反も人間に近づくつもりも更々無かった。むしろ自分たちは「兵器」で、人類とは分かり合えるはずがないとさえ思っていた。

 

…それが彼女を、深海提督の「秘書艦」にさせた一種の理由かもしれない。

 

 

彼女たちの提督は言った。「我々は人類を駆逐するために生まれた! それ以外は考えなくていい!!」と。

 

その通りだ、それこそが真理だ。それが彼女の素直な考えだった。

 

…だが、それは、自分と同じ考えだと思っていた「一隻(ひとり)の姫」によって揺らいでいった。

 

『ウチ、やっぱニンゲンは悪い奴らばっかじゃないと思うんす。』

『ナゼダ…?』

『だってさ、悪い奴らが、あんな屈託のない笑顔で声を掛けてくるわけねーと思うんすよ? おかしいっすかね?』

『アア、オカシイ。ニンゲンハ邪悪ダ。ソレ以上ニ醜悪ダ。』

『…それっていけないことっすか?』

『ナンダト…?』

『邪悪だから、醜悪だから、戦わなくちゃいけないんすか? それって、アンタらが憎んでる「奴ら」と同じ考えじゃないんすか?』

『…ソウ、ダガ…シカシ…』

『んー…よし! じゃあこうしよう! ウチと一緒に来るっす!』

『ナッ!? 離反シロト言ウノカ!!?』

『違うっすよw…「百聞はなんちゃら」って向こうのヤツから聞いたっす。だから、来れば分かると思うっすよ?』

『………』

 

…結局、断り切れずに彼女と一緒にとある泊地に赴いた。

 

「おう! よう来たにゃぁ? 何か食べてくかよ?」

「貴女が深海側の秘書艦さんですか? 初めまして!」

 

『………』

 

正直、呆気に取られていた。

我々が戦っているのは年若い「艦娘」と呼ばれる少女たちだとは聞いていた。だがこれは…この垢が抜けない青年と最早子供ではないかと思った少女は、自分を一切警戒せず、むしろ受け入れようとしていた。

 

『ね? アホ面な奴らっしょ?』

「くうさん! 目の前におるのに何よその言い草www」

「私は違いますよね!? 司令官だけですよね!!?」

 

『……フッ…』

 

自分の考え、「人類は邪悪である」という考えは、変えるつもりはない。それは自身の存在否定にも繋がるからだ。

 

だが…

 

『コンナ者タチモ…イルノダナ?』

 

「お? 何か言うた?」

『…イヤ、ナンデモ…ワタシハ「戦艦棲姫」ト呼バレテイル。好キニ呼ブトイイ。』

「んー? ほいたら「せんちゃん」かよ?」

『だwかwwらwwwそのセンス、ネーミングセンスwwwww』

「す、すいません…ウチの司令官が…;」

 

『イヤ、気ニ入ッタ』

 

屈託のない笑顔で、彼女もまたそれを受け入れた。

 

 

 

 

・・・・・

 

回想が終わると、辺り一面は闇と静けさに包まれていた。

 

『夜戦…フフッ、スッカリ耽ッテシマッタカ?』

 

彼女が笑うと、魔獣はまるで子犬のような声で鳴いた。

 

『kuun…?』

『大丈夫ヨ…私ダケデモ、ヤッテヤルサ?』

 

魔獣の下顎を優しく撫でる戦艦棲姫。

残るは彼女一隻(ひとり)…すると、静かな空間に鳴り響く波を掻き分ける音が、彼女に向かって砲撃を加えようとしていた。

 

「逃がさないわよ…甘く見ないで?」

『何処ヘモイカンサ? …クルガイイ』

 

欧州にその名を轟かせる、ドイツ海軍戦艦「ビスマルク」

 

彼女の砲塔は、確りと敵旗艦を捕捉し、その撃鉄を食らわせようとしていた。

 

「覚悟なさい! feuer!!」

 

ズドオォン!!!

 

爆砲は確かに彼女を捉えた…しかし苦もなく魔獣に弾かれてしまう…!

 

『grrrruraaaaaaa!!!』

「くっ!」

『終ワリダ…沈ミナサイ!』

 

魔獣が砲撃の構えを取ると、双肩の砲から轟音が響いた。

 

「! ……。」

 

ビスマルクは逃げ出さず、そのまま攻撃を受ける…並の艦娘なら大破は必至の戦艦棲姫の砲撃を、中破に抑えたのは流石ドイツ戦艦といった所か。

 

『? 貴様…何故避ケナカッタ?』

「ふふ、貴女ならもう分かってるんじゃない?」

『何……!?』

 

まさか…と、戦艦棲姫は背後に視線を向けた。

 

「遅いわよ!」

 

猛スピードで突進するローマ。そのまま跳躍し、戦艦棲姫に殴りかかるが、魔獣にそれを阻まれてしまう。

 

『! gggggrrrrrryyyyyy………!』

「フンッ、まだ終わりじゃないわよ?」

 

そういうとローマは艤装の砲塔を向けた。

ビスマルクはしたり顔で言う。

 

「ニホンの格言にこういうのがあるの…「服を斬らせて、骨を断つ」のよ!」

 

ローマはそれに応えるように、ゼロ距離射撃を敢行する!

 

「こんにゃろめぇぇぇえええ!!!」

 

激しく砲火が灯る猛連撃。それは一組の深海棲艦を撃ち抜いた…

 

 

 

・・・・・

 

サア…進ムトイイ……

 

我々ハ「悪」ダ…ソレデモ、我々カラ世界ヲ守ルノハ、オ前タチダ……

 

有難ウ…世界ヲ守ルモノガオ前タチデ……良カッタ…

 

・・・・・

 

 

戦艦棲姫は、自らの敗北を認めるとそのまま夜闇の海に消えていった。

 

「…アイツ、まだ来るわね。」

「やっぱりそう思う?」

「ええ、手応えが無かったもの。…悔しいわね、ここまでして仕留めきれないなんて…」

「ふふ、いいじゃない? これでイタリア付近は大丈夫だから…う”ッ!?」

「全く、やせ我慢してんじゃないの。…ほら」

 

ローマはその手をビスマルクに伸ばす。

ビスマルクは少し驚いていたが、それでも微笑むと伸ばされた手を握る。

 

月が祝福する中、ここに欧州救援作戦「第一段階」が完遂された。

 

 

 




〇宿毛泊地メモver.3

〇ビスマルク
ドイツの誇る戦艦。
当初はプライドが高くツンケンしていたが、次第に性格は素直へと軟化していった。(畳化?)
提督から変な日本の習慣を教え込まれており、時々あらぬ方向に走る。

〇秋月
秋月型一番艦。照月たちのお姉さん。
誰に対しても礼儀正しいが、瑞鶴に対してだけは史実でも一緒に行動した影響か、辛辣になる場面も。

〇リベッチオ
イタリアの駆逐艦。
いつも明るく元気に振る舞う。そのため「そういう人たち」から好意以上の変質じみた視線で見られる。

でも気つけて、あなたの後ろに、いつでもROMA。


―艦娘の一言―(ローマ)

「全く…でも、ありがとう。……な、なんでもないわよっ!」

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