宿毛泊地提督の航海日誌 夏イベ編   作:謎のks

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お察しの皆さん、正解です。

今回「超」長いです。


― 遂に本当の「ラストダンス」に挑む提督たち。

果たして世界の命運は、そして…?


…少し駆け足気味かもしれません。(読み辛かったらスマソ)



それでは




…どうぞ!


宿毛泊地提督の航海日誌 EGO -6

『…はぁ』

 

坊の岬沖周辺にて、深海群と一大決戦を繰り広げている宿毛泊地艦隊。

 

その戦地より遠目の場所から行く末を見つめるくうさんたち。

 

溜息をつくくうさんを、なっちゃんは心配そうにしていた。

 

『大丈夫ヨ! 彼女タチナラキット何トカデキルヨ!』

『そゆこと言ってんじゃねーすよ?』

『…ジャア何ダ?』

 

しゅうちゃんが問うと、彼女は真面目な顔になる。

 

『…ウチらはここで見守るしかないのが、歯痒いんすよ』

 

くうさんたちは彼らとは、言わば特別な関係と腐れ縁の間ぐらいの仲だと思っている。

だがそれが災いして、自分たちから彼らを助けることが出来ず足踏みしていた。

裏切るわけにはいかない。それは、育ての親を敬愛している感覚に似ていた。

 

『ソレハドウダロウカ? 僕タチハヤレルコトハヤッタ。…ダロウ?』

 

しゅうちゃんが言うやれること…それは欧州に在った蒼龍たちをこの場まで送り出したこと。

 

姫の「ワープ法」は、姫の体に触れる、手を繋ぐ、抱きつく等することで周囲の人物も一緒にワープすることが可能。

 

但し、よほど軽量でない限りは「一人」が限界…三人をこの場まで連れて、補給をしたのも彼女たちだった。

 

『でも、なんか心配で…』

『ソウダナ…奴ラガ負ケタラアノ総督ニナニサレルカワカラナイカラ、ソウイウ意味デハ勝ッテホシイナ!』

『…アンタ、「リアリスト」って言われね?』

『夢見ルBBAヨリマシダロ?』

『ほお”~ぉ? 遺言はそれだけっすかぁ~~!?』

『二人トモ…仲良クシテヨ?』

 

そんなやり取りをしながら、姫たちは戦いの行く末を見守るのであった…

 

『…みんな、負けたら承知しねーっすよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

坊の岬沖周辺では、本当の最終決戦が行われていた。

 

もはや陣形もなく、ただ「やる」か「やられる」かの狩場になっていた。

 

「てえぇーーーー!」

 

ズドォン!

 

神通の放った砲撃は、敵深海駆逐艦を破壊する。

 

『■■■■■■■■■■■…………』

 

速やかに撃沈していく敵。

 

数の問題で圧倒されるならまだしも、敵とこちらの兵力はどちらかと言えば拮抗していた。

 

だがそれでも末恐ろしいのは、乱戦ならではの「流れ弾」だろう…果たして最後まで無事でいられるか

 

…と、頭の片隅で思っているが、それでも「寄らば斬る、斬られば(しずめば)道連れ」の精神でいる神通。敵にすれば手ごわいが、味方だと「頼もしい」の一言である。

 

「! 神通さん、危ない!!」

 

そんな神通を凶弾から庇う影が…阿武隈である。

彼女はこの状況(乱戦)に不向きだと自覚しているので、遠目から観察し、急所を突くか味方を窮地から救うことに徹底することにしていた。

 

「! …あ、ありがとうございます」

「ふ~~! 何とかなってよかったぁ」

「阿武隈さん…」

 

神通は阿武隈に対しては「敬意」の気持ちでいた。

それは、同じく水雷戦隊の旗艦を務めていた、というものもあるが、自分には思いつかない方法で戦況を切り拓く姿を純粋に「凄い」と感じていることにもあった。

 

「流石ですね? この混沌とした戦況でいち早く味方の危機を判別できるなんて」

「も、もおぅ! おだてても何もでませんよぉ? …えへへっ、でも実は嬉しかったり♪」

 

阿武隈としても、かの第二水雷戦隊の旗艦である神通に褒められることはまんざらでもない。

 

「…あ、もうそろそろかな?」

「?」

 

阿武隈が呟くと、深海の黒の群れから爆発が

 

『■■■■■■■■■ーーー!?!?!?!!?』

 

「あ、阿武隈さん…?」

「ふふーん! 「甲標的」を敵の懐に仕込んでおいたんですよぉ? バレないように行動するのアタシの十八番なんですよ!!」

 

火山が噴火する如く、やられた敵が空から海に叩きつけられた。

 

「…ふふっ、やはり「流石」です」

「アタシとしては、敵をものともせず突っ込んでいく神通さんの方が凄いと思いますけど…?」

「…私には、それしか「能が」ありませんからね」

「いやいやいや!? そういう意味じゃないですって!!?」

「冗談です♪ ふふ?」

「神通さん!? もーう北上さんじゃないんですから!」

 

二人がその場に似つかわしくない和やかな会話をしていると、深海群が二人を囲み始めた。

 

『■■■■■■■■■■■----!!!!!』

「おや?」

「あばばばば!? やっちゃった!!?」

「落ち着きましょう? …「私たちなら」やれますよ?」

「! …そうですね、たまにはいいかもですね?」

「ええ。…では、行きましょう?」

「はい! …「第一水雷戦隊、旗艦」阿武隈!」

「同じく、「第二水雷戦隊、旗艦」神通!!」

 

「「推して参ります!」」

 

背中合わせに名乗りを上げ、一騎当千の兵のようにその闘志を敵にぶつけるのだった。

 

 

 

 

・・・・・

 

「…やれやれ、「出会い」ってやつは面白いねぇ?」

「あン? なンのこっちゃ??」

 

隣り合わせに会話する「江風」と「天霧」。

 

彼女たちは、潜水艦群の掃討の真っ最中…天霧を江風が手伝う形となっていた。

 

「江風、アンタはあの輸送部隊にいただろ?」

「あ~アレ? いや今はよしてくれヨ? トラウマみたいなもンだから」

「アンタは覚えてないかもだけど…あれアタシが入るはずだったんだぜ?」

「ほぉン? ンじゃあそりゃ「運命」ってやつかい?」

「そうだねぇ…いや済まなかったね? アンタが沈む原因作ったのはアタシ、何なら殴ってくれ」

「いやいやそれこそ願い下げだぜ? ありゃアタシの運が悪かったってだけサ?」

「…へへっ、いいやつだな!」

「そりゃドーモ。…さて」

 

回り込みながら潜水艦群を見やる二人。だが、その群れのちょうど横側に戦艦ル級を旗艦とした水上部隊が向かってきていた。

 

「アレどーすっかねぇ」

「なあ江風! アンタ突撃得意なんだろ! 一緒にやろうぜ!!」

「お前さン「神通さン」みたいなこと言うねぇ…ン?」

 

江風たちの前から近づく影…敵ではない。

 

透き通る白い肌をした、眼光鋭い麗人と追随する少女だった。

 

「おうカワ」

「よぉガンちゃん」

「だから! ガンちゃんと言うなっ!?」

「ガンちゃん」

「ケンカ売ってんのか! ちっこいの!?」

「おおぅ外人だぁ。大統領だけじゃなくロシア艦とも出会ってしまった…」

「…なんの話だ?」

「まあそれは置いといて、アレどうにかしてくンない?」

 

江風が指差す先に、片や潜水艦群、片や戦艦部隊が迫っていた。

 

「…ふむ、良いだろう。だがこれでは駄目だ」

「あン?」

「良いか、戦場において数は重要ではない。などと戯言を言う輩がいるかもしれないが戦の理は「人員」にある」

「所謂「人海戦術」だね?」

「そうだちっこいの…おい、誰だ…「あまぎゅる」だったか?」

「「あまぎり」だよ!? どうした?」

「お前のとこの駆逐隊。あれを集めろ、ついでに近くにいるヤツも全員だ」

 

わ、分かった…と天霧は向こう側で対潜行動を取る仲間の元へ向かった。

 

「…結局「突っ込む」のな?」

「江風、彼女は生粋のそb…ロシア艦なんだ。彼女に頼んだ君が悪い」

「そりゃねぇ? …ま、いいけど! アタシとしてもこの展開はありがたい!」

「面白そうなことをしているな?」

 

近づいてきたのは、磯風、浜風、雪風、初霜の四人だった。

 

「我々も行こう…ちょうど手持ち無沙汰だったのだ」

「ふっ! いい心がけだ!」

「私もいいかしら?」

 

次にリシュリュー。彼女は少し楽しそうな顔をしていた。

 

「こういう体験はやったことがないから、是非ともやらせて頂戴? Je peux?」

「構わん。よぉし! 大分集まってきたか?」

「おぉ~い! 連れてきたよぉ!」

 

天霧につられてきたのは、山風以下新参の艦娘。ついでにとばかりに時雨もいた。

 

「ガングートさん!」

「…何? アタシたち忙しい……」

「そう言うな、手を貸せ! …さて、こんな所か?」

 

ガングートを前に、駆逐艦、戦艦の即席混合突撃部隊が出来上がった。

 

「よし、行くか!」

「おお! 待ってましたー!!」

「漲ってきたよぉー!!」

「この磯風、いつでも行けるぞ!」

 

戦力、戦意充分のこの部隊。敵は遠目からだが戦々恐々しているように見えた。

 

「では、駆逐艦共は対潜掃討しながら追随、私とリシュリューが敵戦艦共に風穴を開ける!」

「Oui! 了解したわ!」

 

ガングートがにやりと不敵に笑う。そこには美麗な顔が、まるで別人というぐらいの「獲物を狙う狼のよう」な獣の顔をしている戦士がいた。

 

「行くぞ! 我に続けッ!! Ураааааааа!!」

 

「Ураааааааа!!!!!」

 

ガングートが雄たけびを上げ、それに続くように戦隊は大声を張り上げ、突撃する。

 

…その直後、敵は跡形もなく海に消えていったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

提督たちと吹雪は、総督と巨大な深海怪獣の周りを大きく円を描きながらその様子を観察する。

 

怪獣は余裕なのか、全く動く気配がない。しかし集中砲火を受けてもビクともしなかった。

 

「手詰まりかや?」

「アレが何とかならない限り、どうにもなりません」

「! 司令官! 蒼龍さんたちが!?」

 

見ると、怪獣の懐に入って艦載機を飛ばすのは、蒼龍たち航空戦力だった。

 

「Sword fish! shoot!!」

「江草隊! 発艦!!」

「よし! 友永隊! 頼んだわよ!!」

 

各々の主戦力機で爆撃を試みたが、やはり呻き声も聞こえない。

 

「hm……やはり無駄か?」

「うーん? こういう場合、口とかが弱点なんだけどね〜?」

「ん、よし! くすぐろう!」

「…Whats?」

「私もそれは無いと思う」

 

飛龍に対し雲龍が突っ込む。彼女がツッコミを入れるのは余程のことである。

 

「ダメぇ〜? 天城さんはどう思う?」

「えっと…そもそも、どこが弱点か分からない以上、そういうのは…?」

「そっかぁ。まあとりあえず撃ち続けてみようか? 何とかなるよ!」

「hiryu.私はお前たちの戦い方についてどうも言うつもりもないが、それはどうなのだ?」

 

アークは流石に窘める。もしこのまま何かアクションが無ければ、弾の無駄になるだけだ。

 

「そうだよ? アーちゃんの言う通りだよ?」

「アーちゃん!? 蒼龍ダメだよ提督じゃないんだから!!?」

「私は気に入っている(キリッ)」

「マジで!?!?」

「マジだ。soryu? 一度admiralと作戦を立てるというのは?」

「うーん、それもどうだろう?」

「あの人、役に立たない時は全く立たないからねぇ?」

「こりゃあ! 誰が役立たずやぁ!?」

 

蒼龍たちが話していると、提督たちが近づいて来た。

 

「あっ提督」

「お前ら好き勝手に言いよって…」

「しかし事実でしょうからね?」

「ぐぬぬ…」

 

徳田と提督が話していると、ルイが不貞腐れるように言葉を投げた。

 

「ねぇアメラーリオぉ? いつまでここにいるのぉ? 私泳ぎ疲れたぁ!!」

「そう言わんと、もうちょい頑張ってや、ルイ?」

「ヤダヤダァ! 私もう疲れたのぉー!!」

 

ルイが我儘を言っていると、怪獣側から何か動いたように見えた。

 

- キラッ

 

「…ん?」

「どうしました、しれ」

『!? アブナイッ!!!』

 

潜水棲姫がルイを庇うと、突如「光線」が一行の前に過ぎった。

 

キュイイイィィィィ……………ズドドドド!!!

 

「うぅおおお!!!?」

「うわあーーー!?」

「な、何!? 熱線!? これSFっぽいけど、そういうのオーバーすぎない!?」

「落ち着けsoryu! …どうやらあちらが攻撃を仕掛けてきたようだ?」

 

アークが見上げると、巨大怪獣の背中にこれまた巨大な目玉が飛び出していた。

 

「…ぷはっ! あー危なかったぁ?」

『モウ! チャント周リヲ見ナイカラ!! 気ヲツケテネ?』

「ふぁーい。ありがとお姉さん? グラッツェ!」

 

ルイの無邪気さに、思わず頭を撫でる潜水棲姫。

こうして見る分には、仲の良い姉妹のようだ。

 

「すまん、ありがとうせんちゃん?」

「司令官、こんな時ですけど、せんちゃんは戦艦棲姫さんでは?」

「お? ほれやったらせんさんでえい?」

「何処のガンダ○パイロットですか…」

『…アハート』

「ん?」

『私ハ「アハート」…今ハソウ呼ンデ?』

「アハートさん?」

「えいやん! よろしゅうなアハート?」

『…ウン』

 

潜水棲姫、改め「アハート」の自己紹介も終わり、提督たちはもう一度空を見上げた。

 

目玉は一点を凝視して動かず、気のせいか「光っている」ようにも見えた…正にSFやファンタジーのそれ。

 

「うえぇ~気持ちワルッ!?」

「ですがアレが「弱点」なのは明白ですね?」

「そうなが? たしかにそう言われりゃぁ…」

「何にしてもあそこ攻撃すりゃ分かるよ!」

「Soryu…」

「分かってくれる? ありがと。色々苦労あんのよ……」

 

一行は背中の巨大目玉を攻撃することにした。…その時

 

「……お?」

 

目の前を離島棲姫とせんちゃんが阻んだ…それは逆に、なにがしかのギミックである証明となった。

 

「…ふむ、不味いですね?」

 

徳田が冷静に呟く。艦隊の編成も作戦も、対策装備も整っていない状態で、姫クラスを二体も相手取るのは困難…いや、不可能に近い。

 

「離島が相手なら「デコイ作戦」が可能ですが…?」

「ルイちゃんにかや? まだ早いがやない?」

「私は別にいいよぉ〜?」

「司令官みたいに軽く言っちゃダメだって!?」

「吹雪、一言多いぞ…?」

「しかし戦艦もいますし、方法が…」

『…私ガ』

「お?」

「アハートさん?」

『私ガ、彼女ヲ引キツケル…私ナラ、彼女モ気ヲトラレルト思ウ』

「…言っておきますが、私は貴女を信用していない。提督? 彼女に重要な役目を任せるなど無茶です」

 

徳田が辛辣にアハートを非難する。だが提督の考えは違った。

 

「ええんやない? 任せても?」

「!? しかし…」

「先生。アンタがどういうこと言いたいかわからんけんど、コイツが憎いんやったら同士討ちのチャンスっちゅうことやん?」

「司令官!」

「誰がそんなこと!! 私はッ!!!」

 

徳田が珍しく声を荒げた。

ハッとする彼は、すぐに提督に発破をかけられたことを理解した。

 

「…貴方ねぇ?」

「ぬふふ。オレはコイツなら信用できるち思うちゅう。先生もそうやろ?」

「……はぁ、どうなっても知りませんよ?」

 

こうして、アハートをデコイに、空母組でせんちゃんを相手取る手筈となった。

 

「(ごにょごにょ)…えいかよ?」

「ん。分かった!」

「蒼龍、なんの話?」

「んふふ、ナイショ♪」

「…よし! 作戦開始!! 皆ぁ気ぃつけや?」

 

提督の号令の下、恐らく最後の作戦が開始された。

 

先ず、アハートが雷撃を仕掛けた。…魚雷は真っ直ぐせんちゃんに

 

『い"や"あ"あああ!?』

「アハート! せんちゃんには…!」

 

提督が彼女には手心を加えるように呼びかける…が

 

ボガァアアアン!!!

 

「!? せんちゃん!」

 

せんちゃんを非情の槍が貫いた…かに思われたが?

 

『……? コレハ?』

『た、助かったぁ…?』

 

せんちゃんを前に魚雷が「勝手に」爆発していた。…つまりこれが彼女なりの「手心」。

 

「お、おうぅ…」

『…フフッ』

『貴女…ソコニイルノネ?』

 

離島がアハートに向かって対潜行動をとる。

水中に泡の柱が次々と「建てられていくが」、彼女はそれを華麗にかわしながら囮を務める。

 

『モウ何モ咎メナイ…ダカラ、私タチノ邪魔ヲシナイデ!!』

『……ソウ、デモソレハ「コチラ」モ同ジ…!』

 

デコイ作戦は見事に成功した。提督は蒼龍たちにゴーサインを出すと、彼女たちの艦載機が宙を舞った。

 

「さあ! 行きなさい!!」

 

先陣を切るアークの「ソードフィッシュ」。爆撃が水のヴェールを作り、せんちゃんの視界を奪う。

 

『…グッ(ココマデカ…!)』

『ひいぃぃぃぃ!? …ん"?』

 

深海提督がふと前を見やると、蒼龍たちの艦載機が近づいてくる…そこには

 

「ミヤアァァァァァ!!!!!」

『どぅおわああああああああ!?』

 

艦載機から宙ぶらりんになり、手を伸ばした妖精さんが。そのまま深海提督をキャッチした。

 

『うぅおわぁぁぁぁぁ!? た、助けてぇー! 戦艦んんーーー!?』

 

そのまま彼を連れ去ってしまった…訳が分からないまま固まっていると?

 

「おーぅ! よう聞きやぁ!! オマエらぁの提督は預かった! 返して欲しかったらオレらぁに「手ェ貸せ」や!!」

『!?』

 

提督がニンマリしながらウィンクする。それに含まれた「意味」を読み取ったせんちゃんは

 

『…フッ、ソウダナァ? ソウイウコトナラ、仕方ナイナァ?』

『!? ナニッ!!?』

 

せんちゃんが魔獣と共に離島の方に向き直った…意地悪く笑いながら。

 

『悪ク思ウナ? 何セ私タチノ提督ノ「命運」ガカカッテイルノダ?』

『grrrrru…♪』

『貴女…正気ナノ!?』

 

せんちゃんが振り返り「ここは任せろ」と言わんばかりに愛らしくウィンクを返すと提督は小さく手を振った。

 

「…よしっ! 蒼龍!」

「分かった! 皆行こう!!」

 

蒼龍を先頭に艦隊は怪獣の更に懐…巨大目玉に届く位置まで移動する。

 

奇しくも、姫同士の戦いの様相となった。せんちゃん、アハート。それに対する離島。

 

離島も実力はあるが、こうなってはどうなるかは分からない…

 

『ソレデモ…私ハッ!!』

 

彼女は自分の中で敗北を認めながらも、愛するモノのために死闘を演じる。

 

 

 

 

・・・・・

 

蒼龍たちが艦載機を巨大目玉に届く位置に差し掛かったころ、上から深海艦載機が、そして彼女たちの目の前にヌ級の大群が現れた。

 

『ブルアアカモノガアアアアア!!!』

『貴様ラノ棺桶ヨオオオオ!!!』

『紫外線照射装置ヲ作動サセルゾオオオ!!!』

『飲ンドル場合カアアアアア!!!!』

『ブアーーーッハァーーッハァーーー!!!』

 

「…何故だかコイツらを見ていると、胸糞悪い気分になるのだが?」

「過去に囚われちゃダメ。今を生きないと」

「二人とも、とりあえず真面目にお願いします?」

 

蒼龍とアークのやり取りに、思わず突っ込む吹雪。

だがこのまま彼らを相手取ってもいけない。それは、空を見上げた徳田の表情が物語っていた。

 

「……!? 皆さん! 早くアレを何とかしなければ!?」

「ど、どうしたぁ? 先生?」

「あ、アレを!」

 

彼が指差すのは、怪獣の口。何故か光が収束していくような…

 

「これは予測ですが…アレはあの目玉から、大気中のエネルギーを吸い取っているのでは?」

「はぁ!? いよいよSFやけんど、ホンマなが?」

「分かりません…ですがそうでなければ、あんな禍々しいモノを彼女たちが守るものでしょうか!?」

 

徳田が言うと、辺りに総督の声が響き渡る。

 

ー そうとも、これは周りの魂のエネルギーを集める深海兵器!

 

コレは未だ配備には実験が不十分だが、ここからなら! 確実に貴様らの国を滅ぼすことが出来る!!

 

貴様らが守ろうとしているものを! 我が深海群の「霊子波動収束射出装置」が焼き尽くすのだ!!

 

「なぁ!?」

「くっ…最後まで油断出来ない…!」

 

いよいよ時間が足りなくなって来た。

目の前のヌ級群を抜いて、総督が日本を滅ぼす前にあの巨大目玉を破壊しなければならない。

 

「…Soryu?」

「だね? …提督! 私たちが日本救っちゃっていいかな?」

「え!? …ん! 分かったぁ! 行ってきぃや!」

 

まるで出かける娘を見送る父親の言葉のように、提督は蒼龍たちに全てを託す。

 

徳田がいつもと同じく小言を漏らした。

 

「…全く」

「ホント、全くだよねぇ? …んじゃ蒼龍、あとよろ〜?」

「うん、まか…て飛龍!?」

「Hiryu…?」

「もう終わりみたいだし? 今回頑張ったの二人だし? 私も空気読まなきゃって?」

 

飛龍は二人を送り出すため、ヌ級群の掃討を自ら志願した。

 

「…分かったよ? じゃ終わったら間宮ね?」

「「マミーヤ」?」

「あ! アーちゃん知らないんだ! すっごくおいしいレストランだよ! 後で紹介したげるよ!」

 

三人は和やかな会話を交わし、改めて前に向き直った。

 

「…じゃね?」

「うん! じゃね!」

「行ってくる…」

 

蒼龍とアーク。二人揃って駆け出し、そのままヌ級群に突撃する。

 

「よし! 飛龍攻撃隊! 二人の道を拓いて!!」

 

飛龍の放った矢は艦載機となり、そのまま爆撃投下。

発艦の遅れたヌ級群は、爆炎の餌食になり、二人はその脇を通っていく…

 

『ヌ"オオオオオオ!?』

 

「…行ってきな! 気をつけてね……?」

 

飛龍たちは彼女たちを見送りながら、ヌ級たちの掃討に尽力するのだった。

 

 

 

 

・・・・・

 

やっとのことで怪獣の懐、艦載機が発艦出来る位置に移動した二人は、早速艦載機で敵に打撃を与えようとするが…

 

 

ー 何故だ

 

「!? あのおじさんの声!」

 

何故君たちは抗う…特に「アークロイヤル」。君は何故「戻ってきた」?

 

「…」

 

君が戦う理由はもうない…大切な友人も、かつての守るべきモノも、此処にはない…更には君自身は、もう役目が終わったと自ら運命を受け入れたのではないのか? …何故だ。

 

「…そうだな? 私はもう一度「星を見たい」と願った」

 

………何だと?

 

「かつて彼らと見た星…それはそれは見事に満天に散らばり、白く光輝き、美しかった…私は彼らと、あの星をもう一度見ようと約束した」

「アーちゃん…」

「だが、それはもういい。私は大罪を犯した…そんな私を救ってくれたモノたちがいる。今の私はその「恩義」に報いようと思う」

 

その程度で私に逆らうのか? 恩義? 大罪? 理解できん。それは君にとっては当然の「怒り」だ。ニンゲンたちが受けるべき当然の罰だ。

 

「…確かにさ、人って争ってばかりだよね? …でも、それが…それを全部引っくるめて「生きる」ってことなんじゃない?」

 

…私は、ニンゲンたちの在り方にはもう嫌気が刺している。

 

奪うための理由をつけ、殺し、欺き、畜生以下の蛮行で他者を支配しようとする…生きているだけで「悪性」を振りまく奴らに、世界の覇権を握らせていいはずがない!

 

「…そうだな、付け加えればそれは未来永劫に変わらないだろう」

 

そうだ。そこまで理解しておきながら、君たちはまだ奴らの肩を持つのか? 君たちは奴らに利用されているというのに!?

 

「え? 私たち利用「されている」って思ったことないよ?」

「ああ、私たちは「兵器」、使われて当然だ。感謝こそすれ嫌だと思ったことは一度もない」

 

…ならば、君たち自身がそれを理解していないだけだ! …愛おしい君たちが、あの愚か者共に利用されるのは、私には我慢ならん!

 

「そう。おじさんは優しいんだ? でも」

「私たちは、人間のいない世界など望まない。彼らがいたから私たちは「心」を学ぶことが出来たんだ」

 

もういい! …充分理解した。君たちはどうあっても、私の敵だと!

 

総督が叫ぶと、空の上から雨あられと深海艦載機が舞い降りた。

 

「…Soryu」

「うん」

 

二人は弓を構えた…一つの弓を、二人で引き絞る。

 

 

シズメエェッ!!

 

 

「…」

 

 

 

― いっけえええええ!!!!! ―

 

 

 

放たれた矢は音速を超え、深海艦載機の群れを縫い駆ける。

 

一直線にターゲットを捉えると、爆撃の雨をお見舞いした。

 

「…!」

 

爆撃によりダメージが与えられた目玉から、空間を揺るがす振動。

 

光が辺りを飲み込むと、振動は最高に達する。

 

「! アーちゃん!!」

 

蒼龍がアークを庇うと同時に、大爆発が起こった…当然怪獣も、脆くも崩れ去った。

 

『Gaaaaaaaaaaaaa-----!!!!!!』

 

最後の断末魔の叫びと共に、赤くひび割れた巨塔は海中に没した。

 

 

 

 

 

 

 

 

― なぜだ なぜだ なぜだ

 

私は…間違っていたのか? …いや、そうであったのだ。

 

 

 

そう、最初から。

 

 

 

 

 

…だとしても、私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「…ぷはっ!」

 

蒼龍とアークは、海面に潜り爆発の難を逃れた。

 

そこにいたはずの深海怪獣は、その巨影を見事に消し去っていた…まるで、最初から居なかったように海はいつもの静かな波音を奏でていた。

 

「あまり無茶をしてくれるな…?」

「へへっ、でも何とかなったでしょ?」

「…ふふっ、そうだな?」

 

アークは静かに微笑んだ。

 

すると、そこに提督たちが駆け付ける………全ては終わった。そう直感した二人。

 

「おぉ~い! 二人ともぉ!!」

「無事ですか! お二人とも!!」

 

提督と吹雪の声がする。

 

「ん? どしたの海に入って? あ! 潜水艦のつもり?」

「やれやれ、呑気ですねぇ?」

 

ルイの能天気に突っ込む徳田。蒼龍は何故か「ある意味」な苦笑いを浮かべた。

 

『ヨカッタ…無事デ』

『ソウダナ…』

 

アハートとせんちゃんも駆け付けた…ああ、やっと終わった。そう思った

 

 

 

 

― ザパアッ!!

 

「!?」

 

ヌゥ…と海面から「立ち上がったのは」総督。

 

肩から息をするほどの疲労、そして爆発の影響で体がひび割れ、衣服もボロボロだった。

 

「はぁ…はぁ……」

「アンタ…まだ」

 

総督は息が上がったまま提督を睨みつけると言った。

 

「…お前は、何なのだ」

「何…?」

「提督…お前は一体、何がしたいんだ!?」

 

総督の問いに、困惑する提督。二人の指揮官の問答が始まる。

 

「この娘たちを「使い」、奴らの言いなりのまま「戦い」…それが本当に彼女たちの為だと思うか!?」

「…」

「お前は何のために戦うのだ! 答えろォ!!」

 

暴言に近い総督の感情を込めた言動。提督は

 

 

「…んー? 何でやろにゃぁ?」

 

 

やはりいつもの調子で回答した。周りの者たちも「ああ、やっぱりか」という微笑んだ顔をしていた。

 

「…はぐらかすつもりか!?」

「いやぁ? オレはこれは…まあ最初は「仕事」としてやりよった身分やし? 偉そうな口聞いたらアカン思うてにゃぁ?」

「それが「司令官」ですからね?」

「そうやろ吹雪? …それやっても、強いて言うんやったらオレは」

 

この娘らぁのために戦いゆう…かや?

 

「…言うではないか? 貴様がやっていることは、彼女たちを安易に危険に晒しているのだぞッ!!」

「オレはそうは思わん…やって皆オレらぁと「同じ」やもん」

「同じ…?」

「オレたちと同じ、この娘らぁにも心がある思うてにゃぁ? …オレはこいつらぁを、どうしても「兵器」や思えん」

 

提督の語りに、心穏やかな表情を浮かべる艦娘たち。

 

「こいつらぁにも悩みはある。どうしても頭から離れんことがある…でもそれはもう終わったことや。何ちゃぁ気にせんでえいことながよ?」

「…」

「それでもオレらぁもよ? 心の傷っちゅうんは簡単には消えんものやん? アホみたいに騒いでもそれは変わらんがよ…やきオレは、忘れさせるっちゅうわけやないけど、こいつらぁの好きにさせようって思うたがよ?」

「…それが、お前の望む未来に繋がるのか。お前はその先に何を見ている?」

 

総督が再び問うと、提督は頬を指でポリポリと掻き

 

「いやぁ…深海の娘らぁも、艦娘も、何も関係なくなったら…てにゃ?」

「何?」

 

提督は、少しの恥じらいと共に自身の心情を吐露していく。

 

「この娘らぁが戦う必要のない「笑い合える場所」を、オレらぁの居場所(はくち)で作れたら思うて?」

「…!?」

「子供みたいな、って言うんは分かっちょるんやけど? 何もわからんオレにはこの娘らぁにできることは、これしか思い浮かばんかった」

 

やがては彼女たちと同じように、争う人が手を繋いでいける世界にしたい…いつものように、ごく自然な笑顔で彼はそう言った。

 

「…フ」

 

― スッ

 

「!? 貴方、それは!?」

 

叫ぶ徳田の目に映ったのは、総督の「特殊電磁波発生装置」…ここで発動すれば、人以外のモノはその精神を停止させる。

 

「!!」

「…ッハ」

 

…ガキャン!

 

総督は皮肉めいた笑いを浮かべると、そのまま装置を「握りつぶした」。

 

「な…っ!?」

「…何と幼稚だ。だが……そんな言葉、久しく聞いていなかった」

 

提督と初めて対峙した時と同じ、穏やかな表情を浮かべる。

 

「分かった…ならば、それがお前の望む世界ならば……私は悦んでこの身を沈めよう」

「アンタ…?」

「……その願いは「美しい」。決して…手放すんじゃないぞ?」

「…うん」

 

フッと笑うと、彼の姿は一瞬にして消えた。

 

 

 

「- 忘れるな。お前の「力」は、決して良き縁ばかり呼び込むものではない、と」

 

 

 

去り際、提督にはそんな言葉が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

― Following the epilogue ―




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