宿毛泊地提督の航海日誌 夏イベ編   作:謎のks

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ちょっと強引過ぎた…?

※作中の彼女たちのことは、あくまで作者のオリジナル(妄想)です。



宿毛泊地提督の航海日誌 EGO -3

…この国の、物には付喪神(つくもがみ)が宿る、と言う逸話は聞いたことはあるだろう?

 

万物のモノには霊が宿る、と…実にこの国らしい考えだが、しかしそれは事実だ。

 

時間はかかるが、それでもモノにも魂は宿る。

 

それを踏まえて言うと、君たちや彼女たちも、そうした悠久の時の中で精神を育み、その理性ある考えもまた、時間の積み重ねによる賜物だろう。

 

だかニンゲンとの違いは、そこにある。

長い時間をかけ、精神を構築したからこそ、君たちはある意味「純粋無垢」なのだ。

 

戦えと言われても悩むことはない。

「生きる」という生存本能はあるが、そこに道徳も、美徳もない。

ましてや欲望など、あるはずもない。

 

君たちには「死」の概念はない。

 

つまり、ニンゲンの弱さの根源が君たちには存在しないのだ。

 

…そもそも闘争の原因は、ニンゲンが自身の弱さを認めないから起こる。

君たち「兵器」は、そんな在り方をニンゲンに利用されているに過ぎない。

「力」とは神の所有物だ。それを持たざる者が本来もつべきではない…

 

だが彼女たちの考えは違う。

 

彼女たちは、人の手によって作られた。ニンゲンに「使われる」ことが、彼女たちの至福なのだ。

 

…先ほど、力は神のものだと言ったが、勿論彼女たちは神ではない。

 

彼女たちは…力そのもの。

 

それも、意思ある力だ。ニンゲンとは全てが正反対な彼女たちたが、それでも彼女たち自身はニンゲンに成り代わろうなどとは思わないのだろう。

 

「…だが、私はそうは思わない」

 

ひとしきり言い終えると、総督は怒りを越え、全てに向けた殺意を漲らせた。

 

「この世界は間違っている…私がやろうとしていることは、全人類の「機能停止」だ」

「それが「復讐」…という事なのですね?」

 

総督が問いかけに答えようとした時、神通たちの後ろから波を掻き分ける音が聞こえる。

 

「おーい! 神通ぅ〜!!」

「神通さん! 皆!!」

「! 提督!」

 

提督と吹雪率いる戦隊。

メンバーは時雨、ヴェールヌイ、ガングート、阿武隈、雲龍。

残っているメンバーでは比較的練度の高いモノたちだった。

 

「吹雪!」

「磯風ちゃん!」

 

二つの艦隊は合流し、ようやく役者が揃った。

 

「…」

「お?」

 

総督は、提督を見つめていた…先ほどとは打って変わり、穏やかな表情で。

 

「…………大きくなったな……」

「? なんちぃ??」

「…君が提督かね? お初お目にかかる。私が深海群の指揮官、皆からは「総督」と呼ばれている」

「お? あぁこりゃどーも、宿毛の提督で、す…?」

「…ふむ、さて? では続きを」

「お待ちなさい」

 

総督の話に待ったをかける徳田。

 

「…君は?」

「ただの医者です。それより聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」

「ふむ…? 聞こうか?」

「どうも…貴方が指揮官、ということはこの作戦も?」

「ああ、わたしが直接指揮した…尤も、陽動はその限りではないがね?」

 

欧州への作戦へと導いたのは総督だが、その足がかり「欧州棲姫に協力を申し出た」のはあの黒玉だという。

 

「まさか、彼女が素直に要請に応じ、そして君たちをここまで追い詰めることに成功するとは…あの小物も、腐っても「提督」だということか…」

「ええ、彼女を説得するのも骨が折れたことでしょう。何せ「女王」の一角なのですから」

「…何を言いたい?」

「私が解せないのは貴方です。…沖縄は世界的に見ても最重要拠点の一つ。その彼の地の防衛は完璧に近かったはず…貴方はどうやってそれを掻い潜ったと?」

 

総督は落ち着き払った様子で、懐からある装置を一行に見せる。

 

「何よそれ?」

「これは特殊な電磁波を発生させる装置…これを今ここで鳴らせば、艦娘も、我が深海群も完全に機能を停止する」

「えっ!?」

「…それは貴方が?」

「ああ、沖縄を守っていた艦娘たちは、今頃はスクラップだろう…本当は使いたくはない手段だったが、私の提案に賛同してくれず、致し方なく」

 

それを聞いて、徳田の顔はますます険しくなった。

 

「そんなことを出来る人間など、この世には居ないはず…貴方は一体?」

「先生…?」

 

訳が分からない現状だが、総督という人物が容易に話を聞いてくれはしないとは、いくら提督でも理解していた。

 

「…私のことなど、君には眼中に無いと思っていたが?」

「! 貴方は…ッ!!」

「提督殿? 私も貴殿に質問がある」

「お? オレに?」

 

なぜ自分が? と理解出来ない顔で総督を見る。

総督は彼に、深海群のこれまでの行動に関わる核心に触れる質問をする。

 

「これまで、貴方は深海群の戦いを見てきた。その中で何か違和感があるとは?」

「お、おお…なんか作戦っちゅうか、おんなし事ばぁしよるち思うたけんど…?」

「それはかつての「戦争」の、作戦や戦いを繰り返している様に感じた…と?」

「ほうやにゃぁ? 深海のモンが恨みつらみで行動しよるって思いよったら、納得いったけんども?」

「! まさか…」

「そう、我々が「あえて」過去の作戦をなぞったのは、ニンゲンたちの罪を露見させるため…私としては気に入らんが、この作戦もまた然りだ」

 

彼女たちが作戦を繰り返したのは、人間がもう二度と過ちを犯さないため。

そして平和を願う彼女たちの祈りも込められているという。

 

…それが彼女たちなりの「復讐」であるという。

 

「なるへそ? んで、アンタはそれで、結局何を言いたいがよ?」

 

そんなことは分かりきっていると言いたげに、提督は結論を催促する。

総督は「成る程」と呟くと、話を続けた。

 

「…それを望んでいるのは彼女たちだけ。ということだよ?」

「…ん?」

「君たちが…そうだな? 去年の春ぐらいか? 深海群の拠点を見つけ、意気揚々とそこに向かい「彼女」を倒したのだろう」

「!?」

 

驚きを隠せない宿毛泊地一行。

総督が言っているのは、去年の春。ちょうどアイが配属される直前。

深海の姫たちと一大決戦を繰り広げた…そこには当時「女王」の一角として君臨していたモノがいた。

 

その名は「中枢棲姫」

 

彼女との激闘の末、遂に打倒した提督たちは、日本近海並びに周囲の海域の制海権を「ほぼ完全に」その手中に収めることに成功した。

 

「…彼女が打倒された後、私は今の地位に就いた。というのも、このまま君たちの思うままになっていくのは「面白くない」と思ったからね?」

「…ほうか。アンタが指揮しよったんは、あの子の代わりっちゅうことやにゃ?」

「これは異な事を、誰が「代わり」などと言った?」

「何やと?」

 

総督は静かに笑い、狂気をその貌に浮かべる。

 

「沖縄への侵略は前任への敬意もあるが…一番は君たちをここへ誘き寄せるため。だよ?」

「お、オレらぁを!?」

「そうだ。我が悲願、その成就には君たちは「邪魔」でしかない…此処で敵を殲滅させるため、今回の作戦を提案した次第だ」

「つまり…沖縄侵攻も罠だったのか!?」

「また嵌められた…というわけですか?」

 

磯風が驚愕し、徳田が悔し紛れに皮肉を言う。

今回の作戦の用意周到ぶりは徹底していた…常に影から暗躍し、引き金を引くだけで、設置された爆弾が互いに誘爆しあい、状況を一変させた。

激変する現状に対応しようと、敵によって敷かれたレールの上を歩く…正に二重三重に張り巡らせた罠。

 

 

…何れにしろ、目の前にいるはずの男の腹の内は、未だ垣間見ることが不可能だった。

 

 

「私が指揮官となった今、君たちの未来はないと思ってくれていい。…先ほども言ったが、私が望むのは「全人類の完全な機能停止」だ」

「はぁ!? そんなことして、何かあるっちゅうが!!?」

「ハッキリと言おう…私が目指すものは」

 

 

 

-兵器の理想郷、力あるものが統べる世界だ

 

 

 

 

・・・・・

 

その頃、欧州では一応の決着が着けようとしていた。

 

『…グッ、ハアァ………ッ!』

 

力なく蒼龍とくうさんたちの前に跪いた欧州棲姫。

形勢は完全に逆転し、もはや彼女が大人しく倒れるのを待つのみだった…のだが

 

『………ヌ”…グゥ……ガアァ』

 

声も絶え絶えになりながら、彼女は尚も立ち上がった。

 

『…もう終わりっすよ? アンタは負けたんすよ。その事実を受け入れた方が楽っすよ?』

『五月蝿イ! 私ハ……私ハッ、モウ二度ト負ケルワケニハ…!!』

「…どういうこと?」

 

まるで光を探すように、闇を湛えた目で彼女は泣きすがった。

 

『誰モ…イナイ……私ハ………モウ…ッ』

『…コレハモウ、何ヲ言ッテモ無駄ダナ?』

 

シュウちゃんは両手でお手上げを表した。

彼女の嘆きは、それ自体が深く、精神は既に抉られていた。

つまり「最初から」話が通じるはずはなかった。

 

『彼女の話、したっすよね? ウチが言った「勘違い」ってのがアレなんす』

「そうか…じゃあ私が選ばれた訳は」

『そゆことっす。んじゃ張り切ってやってください!』

 

言われて蒼龍は、彼女の前に出る。

 

「…ねぇ、どうして「裏切られた」って思ったの?」

『……ナニ…?』

「貴女が見捨てられるはずないじゃない。ここは、私たちが「生きた」時代とは違うんだよ?」

 

蒼龍が優しく、諭すように問いかけた。

だが深い闇は消えず、彼女はなおも救いを求めて叫ぶ。

 

『キコエナイ…キコ、エ………ナイ』

「…」

『キコエナイ…キコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエナイキコエナイ!』

『…!』

 

ナッちゃんが絶句する。これ程までの絶望に駆られたモノは彼女は知り得なかったからだ。

 

『駄目ナンダ…モウ聞コエナインダ! アノ懐カシカッタハズノ声モ! 彼ラガ言ッテクレタ、嬉シカッタハズノ言葉モッ!!』

「…」

『私ガ負ケタカラ、沈ンダカラ! 役立タズダカラッ!! 私ハ見捨テラレタンダ! キットソウナンダ!!』

「…」

『私ハ彼ラ以外ハ「イラナイ」! 彼ラノ居ナイ世界ナンテ…無クナッチャエバ!! 沈ンジャエバイインダアアアアア!!!』

 

「いい加減にしなさいっ!!」

 

泣きじゃくるように悲痛な叫びを上げる欧州棲姫に、叱りつけるごとく声を張り上げた蒼龍。

 

『そ、蒼龍さん!?』

「ごめん、くうさん…でももう無理、もーう堪忍袋に穴が開いたよ!」

『オ、落チ着キマショ!? マズハ穏便ニ…』

『ハッ! イイゾモットヤレ! www』

『シュウチャン!?』

 

蒼龍は怒気を帯びた表情で、再び矢を構えた。

 

「構えなさい! 先ずはその腐った根性に折檻よ!!」

『!?』

「あーあ、蒼龍って頑固だから、ああなっちゃったらもう止まんないよ?」

『んもー、自分も燃料少ないって分かってるんすかねぇ?』

「…ふふっ、これがセーシュン。ですよね?」

「…さあ、ね?」

 

蒼龍の全力で振り上げた愛の鞭は、果たして彼女に届くのか。

 

to be continued




〇おまけ「秋刀魚祭り2017 その3」


―北方AL海域(3-5)


『■■■■■■■■■■------!!!!!』

「うわあーーー!?」

『シャアアアアアア!!!!!』

「いやあああーーー!?」

『ブルアアアカモノガアアア!!!!!』

「ひいいいいい!?」

『サンマナイ、カエレ』

「えええええええ!?」


・・・・・

えー色々あって最奥地まで来ました。

吹雪「よぉーし! みんな、早速作業に入るよ!」

磯風「任せろ! この磯風、秋刀魚焼きは得意中の得意だ!」

秋刀魚漁ね?

加古「ふわぁ~、アタシ寝てていい?」

ヴェル「ダメ」

加古「(´・ω・`)………( ˘ω˘)スヤァ」

結局寝るんかい!!?

吹雪「もう、加古さんはそのまま寝かせといて? 絶対起きないから」

磯風「それがいいだろうな?」

吹雪「よし! じゃあヴェルちゃんお願い!」

ヴェル「ハラショー(ピッ)」

持ってきた釣り竿でF作業をし始めるヴェルちゃん

このF作業の「F」はFish、要するに「釣り」のことですねぇ? あ、知ってました?

ヴェル「!」

ぐいっ ザパァ

磯風「おお! 活きがいいぞ!!」

吹雪「やったね! ヴェルちゃん!」

ヴェル「スパスィーバ(ビチビチ)」

見事秋刀魚を釣りあげました…こんな簡単でいいんでしょうか?

ツ級『シャーーーーー!!!』

吹雪「げぇ!? ツ級!!?」

軽巡ツ級。この海域のボスで、防空特化仕様です。

ツ級許すまじ『シャーーー(チョンチョン)』

ん? 秋刀魚を指差してますね?

吹雪「欲しいの? ご、ごめん…これ秋刀魚祭り用で…」

Tアナフィラキシー『シャー!? シャーーーーー!!###』

あからさまに怒ってますねえ?

磯風「ふははは! 欲しければ力づくで来い!」ドヤァ

吹雪「磯風ちゃん!?」

つっきゅん『シャーー!!!』

ヴェル「「秋刀魚を譲らなかったことを後悔させてやる!」…って言ってる気がする」

ヴェルちゃんが正しかったのか、ツ級は艦隊を呼び寄せ、戦闘態勢に

加古「ん"〜うるしゃいなぁ…なんなのぉ?」

吹雪「加古さん、戦闘です! 起きてください!」

加工「ふぁーい…」

こうして両者激突と相成りました。果たしてどうなるか? 次回に続く!

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