お休みのカミサマ 作:ああああ
お休みのカミサマ
――???――
ここは大きな大きなキングの駒の上。
眼下には一面の雲。地にはチェスの盤面の様な白と黒の模様、それに小さなチェス盤。
そして……
「はい、チェックメイト。これで……えっと、どれくらい勝ったっけ?」
「………」
今の今までチェスをしていた、二つの人影。
一方は帽子を被り、両目にはスペードとダイヤの模様が浮かぶ少年(?)
もう一方は伸び放題の黒髪を束ねるわけでもなく放置した、ジト目の少年(?)
双方ともに、少年とも少女とも取れるような容姿だ。
前者は意気揚々と笑っていて、後者はもはや負のオーラが具現化するほど意気消沈しているという違いはあるが。
「……こんな雑魚を虐めて楽しいの?それもわざわざチェスで……ねぇ唯一神さん?空白に負けたのがそんなに悔しい?」
「あはは!それは勿論!遊戯の神が、ゲームで負けて悔しくない訳ないだろう?あ、あとキミを虐めるのはすごく楽しいよ?」
「ふぁ○く」
「あっれぇ~?唯一神にそんな態度取っていいのかな~?」
“唯一神”
先程からこう呼ばれている少年の名前は『テト』。
昔々の大戦にて戦わずして唯一神になった、最弱の神だ。
「……ばーかばーか、クソ、鬼、悪魔、テト」
「僕の名前は蔑称じゃないよ?それより速く!僕が勝ったんだからさ!『【六つ】゛盟約に誓って゛行われた賭けは、絶対遵守される』だよ?ほらほら!」
「はーい……ちっ」
「あははは!じゃあなるべく速く買ってきてね!
食べ物!」
テトがそう言った頃には、もう既に姿が消えた後だった。
彼等が“盟約に誓って”賭けたものとは、互いをパシリに使う権利。唯一神が、必要としない食物を買わせる為だけにギャンブルをしている世界。全くもって平和だ。
「さーて、戻ってきたらまた何かしら挑もうかな!今度はどんな手を見せてくれるのかなぁ~?」
此処はあらゆる物事がゲームの勝敗で決まる“盤上の世界”ディスボード。あらゆる物の中には、パシリの権利から、王位、国境線、領土すらも入る。当然、この世界ではゲームに強い者がすべてを得ることが出来る。
そんな中今パシられている彼はというと……
――エルキア王国、首都エルキア――
「通算戦績0勝2195261敗……はぁ……辛い。あ、焼き菓子下さい……え、ゲーム?値段?勝ったら値引き?い、いや定価でいいです……」
焼き菓子を買おうとした所、菓子の値段をゲームで増減してやる、という賭けを蹴っていた。
テトに負け続け、パシリの権利やらを根こそぎ取られていた彼は、序に自信もプライドも崩壊していた。
そんな彼の名前は『レスト』。
最も、
大戦時においても、【他の神々が
言ってしまえば、しょぼい神だ。
「はぁ……あれ、あっちが騒がしい……何かあったのかな?」
さて、そんなレストが、何故唯一神であるテトと仲良くゲームをしていたのか。
それは本人達しか知らない過去の事。
今は、彼の目前の騒ぎの話だ。