お休みのカミサマ   作:ああああ

2 / 6
本編
お休みのカミサマ


――???――

 

ここは大きな大きなキングの駒の上。

眼下には一面の雲。地にはチェスの盤面の様な白と黒の模様、それに小さなチェス盤。

そして……

 

「はい、チェックメイト。これで……えっと、どれくらい勝ったっけ?」

 

「………」

 

今の今までチェスをしていた、二つの人影。

一方は帽子を被り、両目にはスペードとダイヤの模様が浮かぶ少年(?)

 

もう一方は伸び放題の黒髪を束ねるわけでもなく放置した、ジト目の少年(?)

 

双方ともに、少年とも少女とも取れるような容姿だ。

前者は意気揚々と笑っていて、後者はもはや負のオーラが具現化するほど意気消沈しているという違いはあるが。

 

「……こんな雑魚を虐めて楽しいの?それもわざわざチェスで……ねぇ唯一神さん?空白に負けたのがそんなに悔しい?」

 

「あはは!それは勿論!遊戯の神が、ゲームで負けて悔しくない訳ないだろう?あ、あとキミを虐めるのはすごく楽しいよ?」

 

「ふぁ○く」

 

「あっれぇ~?唯一神にそんな態度取っていいのかな~?」

 

 

“唯一神”

先程からこう呼ばれている少年の名前は『テト』。

昔々の大戦にて戦わずして唯一神になった、最弱の神だ。

 

「……ばーかばーか、クソ、鬼、悪魔、テト」

 

「僕の名前は蔑称じゃないよ?それより速く!僕が勝ったんだからさ!『【六つ】゛盟約に誓って゛行われた賭けは、絶対遵守される』だよ?ほらほら!」

 

「はーい……ちっ」

 

「あははは!じゃあなるべく速く買ってきてね!

 

食べ物!」

 

 

 

テトがそう言った頃には、もう既に姿が消えた後だった。

 

彼等が“盟約に誓って”賭けたものとは、互いをパシリに使う権利。唯一神が、必要としない食物を買わせる為だけにギャンブルをしている世界。全くもって平和だ。

 

 

「さーて、戻ってきたらまた何かしら挑もうかな!今度はどんな手を見せてくれるのかなぁ~?」

 

 

 

 

此処はあらゆる物事がゲームの勝敗で決まる“盤上の世界”ディスボード。あらゆる物の中には、パシリの権利から、王位、国境線、領土すらも入る。当然、この世界ではゲームに強い者がすべてを得ることが出来る。

 

そんな中今パシられている彼はというと……

 

 

――エルキア王国、首都エルキア――

 

 

「通算戦績0勝2195261敗……はぁ……辛い。あ、焼き菓子下さい……え、ゲーム?値段?勝ったら値引き?い、いや定価でいいです……」

 

焼き菓子を買おうとした所、菓子の値段をゲームで増減してやる、という賭けを蹴っていた。

テトに負け続け、パシリの権利やらを根こそぎ取られていた彼は、序に自信もプライドも崩壊していた。

 

そんな彼の名前は『レスト』。

十六種族(イクシード)位階序列第一位、神霊種(オールドデウス)が一つ。遥か昔の大戦より存在する神だ。

最も、天翼種(フリューゲル)を創造した戦神アルトシュや、森精種(エルフ)を創造した森神カイナース等とは違い、何の種族も生み出していない神であり、神髄は『休養、安息』。

大戦時においても、【他の神々が星杯(スーニアスター)を求めて争っている中、力を持たない故に誰とも争わず何処かを彷徨っていた】と記されている。

 

言ってしまえば、しょぼい神だ。

 

 

「はぁ……あれ、あっちが騒がしい……何かあったのかな?」

 

 

さて、そんなレストが、何故唯一神であるテトと仲良くゲームをしていたのか。

それは本人達しか知らない過去の事。

 

今は、彼の目前の騒ぎの話だ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。