忍者候補生達が集められた場所は、城塞都市ザクダだった。
そこは、“クシ
そして同時に、トルメキア王国から最も遠く離れた都市であるため、“クシ
「フハハハハッ、よくぞ集まってくれた、忍者候補生達よ! お前達にはこれより忍者育成訓練を受けてもらう。その訓練を乗り越えた者は晴れて正式な忍者となり、我が目となり耳となり、クシ
「「「はいっ!!!」」」
巨神兵の訓示に元気よく応える忍者候補生に応募した奇特な子供達。
そう、子供達だ。
今回の忍者候補生募集に応募したのは子供達だけだった。
まあ、それは仕方がないことだろう。流石にクシャナ殿下が頭目を務めるといっても幾ら何でも胡散臭すぎた。
忍者とやらの任務内容は各国の諜報活動らしいが、それなら軍の諜報部がある。敢えて新たな部署を新設する意味が分からなかった。しかも、軍の所属ではなくクシャナ殿下が経営する企業に雇われる形だ。
つまり、民間企業の諜報部隊。
これは、誰が考えても怪しかった。こんなものに応募する大人などいないのも当然であろう。
だが、どんなに怪しいといってもクシャナ殿下が経営者なのだ。運営はしっかりしている。
そこで、大人達は気付いた。
忍者
募集されているのは、一人前の忍者ではなく、あくまでも候補生だ。
例えば、スラムに住む子供(孤児院に入れない子供はまだまだ多い)、虐待を受けている子供、経済的に苦しい家庭の子供、社会的に差別を受けている子供(他国からの移民等)それらの子供達を候補生として集め、身分を保障をし、賃金を払いながら教育を施す。そして、当然ながら子供達の庇護者はクシャナ殿下となる。
この募集は、そんな様々な理由を持つ
──と、なぜかそう人々に思われた。
そんな情報が出回り、忍者候補生の募集には様々な事情を抱える子供達が集まった。(もちろん、そんな特殊な事情を持たない普通の子供も混じっている)
当然ながら、そんなことは知らない巨神兵はこの状況を不思議に思う。
「ところで、なぜ子供しかいないんだ?」
首を傾げる巨神兵だったが、目の前に並ぶ子供達の中から幾人かの見知った顔を見つけると、その口元に笑みを浮かぶ。
「まあ、別にいいか!」
子供なら気長に育てればいい。子供は無限の可能性とも言うからな。急がば回れというヤツだ。と考えた巨神兵は、細いことは気にしない事にした。
そして、次に巨神兵が何となく発した言葉は、子供達の胸に強く刻まれることになる。
──さあっ!! この俺にお前らの無限の可能性とやらを見せてみろ!!
*
その娘は、都市長の孫娘だった。
ある日、孫娘は看板を見つけた。
「えーと、忍者候補生の募集なんだ。忍者ってなんだろ? あっ、やっぱりクシャナ殿下の会社なんだ。ということは、巨神兵さんも関わっているのかな? うん、今度来たときに聞いてみようっと!」
妙にご機嫌になった孫娘は、軽い足取りでその場を去っていった。
*
少女は、蟲使いの娘だった。
虫使いに拾われる前は、戦災孤児だった。
その前は、覚えていない。
ある日、少女は甘いお菓子に誘われて忍者になろうと思った。
うん、意味が分からない。
募集の受付場所に行った少女は嫌がられた。
少女は思い出す。
嫌われ者の自分を思い出す。
甘いお菓子に浮かれていた頭は冷静になった。
くんくん。と、自分の匂いを嗅いでみる。
やっぱり、自分じゃ分からない。
でも、自分は臭いらしい。
少女は受付の人を見つめてみる。
顔をしかめて嫌そうだった。
受付はしてくれない。
シッシと手を振っていた。
少女は諦めてうな垂れる。
「……もう、帰ろう」
少女は家に帰ろうと思った。
家とは名ばかりの穴ぐらへ。
急に少女の周りが暗くなる。
──受付拒否をするな!!
頭の上から大声がする。
少女は頭の上を見上げてみる。
「おっきな、おじちゃん?」
──ククク、この世界じゃ初めてだな。そんな呼ばれ方されたのは。
少女は首を傾げてみる。
少し考えてポンと手を打つ。
「ごめんね。おっきな、お兄ちゃん」
雷鳴のような笑い声が聞こえた。
少女はビックリした。
そして、蟲使いだった娘は、忍者候補生の少女となった。
忍術といえば何を思い浮かべますか?
私は神風の術です。