トルメキアの黒い巨神兵   作:銀の鈴

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物語は新たな局面を迎えます。


トルメキアの白い魔女〜転機〜

「お菓子を食べたい」

 

あたしは、腐海の森で残骸漁りをしながらつぶやいた。

 

この前、久しぶりに行ったトルメキアの都は凄い活気にあふれていた。

 

前はなかったお店もたくさん出来ていて、その中に甘くて美味しそうな匂いがするお店があった。

 

そのお店はお菓子という食べ物を売っているお店だと一緒にトルメキアの都に行っていた人に聞いた。

 

そのお店には、大人だけじゃなくて、あたしみたいな子供もいた。

 

その人たちは、買ったばかりのお菓子を大事そうに抱えて持って帰る人や、その場で食べちゃう人とか色々だった。

 

食べてる人はとても美味しそうに食べていた。

 

きっと、お菓子というのはとても高いのだろうなあと思ったけど、あたしが持っているお金でも買える値段だと聞いて驚いた。

 

なんでも、トルメキアのお姫様が安く買えるように頑張ってくれたそうだ。

 

お店の名前もそのお姫様の名前だったから間違いないみたい。

 

それにしても、いい匂い。あたしも食べたい。

 

でも、蟲使いのあたしは食べ物屋さんには入れない。

 

こうやって、道を歩くだけでも他の人たちからは顔をしかめられる。

 

なんでもあたしたちは臭いらしい。自分ではよく分かんないけど。

 

あたしたちが食べ物屋さんに近づけば追い払われてしまう。

 

客の迷惑だって怒られる。あたしたちは客にはなれないらしい。

 

「この部品、使えそう」

 

漁っていた残骸からまだ使える部品を見つけた。

 

こうやって見つけた部品はとても大事だ。自分たちでも使えるし、売ることもできる。

 

売るときは買いたたかれるけど、売れないよりマシだった。

 

お金がないと、どうしても自分たちでは作れないものを買えないから。

 

うん、食べ物屋さんはダメだけど、あたしたちにも物を売ってくれるお店はある。とても高いけど。

 

高くていいからお菓子も売ってほしい。

 

うんしょ、この部品は重いなあ。

 

さてと、戦利品も手に入れたから帰ろっと。

 

 

 

 

“クシャナ(姫様)殿下のお菓子屋さん” は巨大企業に育った。グループ企業と傘下の企業を合わせれば、その財力は一国にも匹敵するだろう。

 

通常、ここまで膨れあがった企業ならば、トルメキア王国から危険視されてもおかしくはないだろう。だが、そのトップが姫様ならば何も問題はなかった。

 

ククク、これで姫様のアイドル化計画を進められる。

 

早速、アイドルデビューに向けて歌とダンスのレッスンをしてもらうとしよう。

 

「歌とダンスのレッスンだと? 言っている意味がよく分からんが、私は仕事で忙しいんだ。そんな暇はないぞ」

 

姫様に計画の参加を断られた。

 

ど、どういうことだ!?

 

女の子ならアイドルになりたがるもんだろ!?

 

姫様から「プロデューサーさん♪」と呼ばれて慕われる計画はどうなるんだ!?

 

──こうして、巨神兵P として辣腕を振るう前に物語は終わってしまった。

 

 

 

 

俺は心を入れ替えた。

 

この世界は、呑気にアイドルを育てられる世界などではないのだ。

 

弱肉強食の非情なる世界だったのだ。

 

その事にようやく気付くことが出来た。いや、思い出したと言うべきだろう。俺はこの群雄割拠の世界を制し、姫様を世界の女王様にしてみせる。

 

姫様のアイドル化計画はその後だ!!

 

よし、そうと決まれば早速、天下取りを始めるとしよう。

 

まずは、この世界の情報を集めよう。情報を制する者は世界を制す。というからな。

 

まあ、本当は極太ビームで敵対国家を焼いちまった方が手っ取り早いんだけど、俺の姫様はそういうのは嫌がるからな。

 

ここは地道にやっていこう。武力行使は必要最低限だな。

 

問題はどうやって情報を集めるかだな。

 

いつもの様に、あの男を使うか?

 

うーん。あの男を使うと、最後は姫様に怒られることが多い気がするからなあ。

 

今回は別の手を考えるか。

 

そういえば、アイドル化計画の為に、若い子達の流行を “クシャナ(姫様)殿下のお菓子屋さん” の情報網で集められように体制を整えていたんだが、それを使えないだろうか?

 

流石に無理だろうな。

 

だが、トルメキア軍の諜報部を使うのは面白くない。姫様には内緒で世界統一をして驚かせてやりたいからな。

 

きっと姫様は喜んでくれるぞ。そして義理堅い姫様のことだ。俺の願いにも応えてくれるだろう。

 

『私のために世界統一をしてくれるとは……友よ、礼を言わせてもらうぞ。本当にありがとう。ふふ、この恩は返さねばなるまい。よし、お前の為に世界一のアイドルになろう! スーパー美少女アイドル姫クシャナ爆誕よ♪」

 

うむ、完璧だ!!

 

ククク、やる気が漲ってきたぞ。

 

よし、情報収集といえばやはり忍者だな。

 

まずは忍者の里を作るとするか。急がば回れとも言うからな。

 

 

 

 

「なに、これ?」

 

わたしはトルメキアの都に来ていた。お菓子は買えないけど匂いを嗅ぐためだ。

 

くんくん。ああ、今日もいい匂いがする。

 

匂いを嗅いでいると、お店の近くに看板が立っていることに気付いた。

 

わたしは、お店の人に怒られないように近づきすぎないよう注意しながら看板を読んだ。

 

──忍者候補生募集中!!

 

そんな怪しい看板だった。

 

忍者って、どっかの国のお伽話にでてくるやつだよね。

 

誰がこんなものに応募するのだろう?

 

でも、一応は続きを読んでみよう。

 

募集要項

 

1.年齢、性別、身分他、やる気さえあれば全て問わず。

 

2.クシャナ(姫様)殿下ファンクラブに加入義務あり。

 

3.死して屍拾う者なし。(危険手当あり)

 

4.月給制。ボーナス年2回。週休二日制。休日出勤、夜間勤務あり。

 

5.忍者の頭目「クシャナ(姫様)殿下」

 

6.採用者には、グループ企業 “クシャナ(姫様)殿下のお菓子屋さん” のお菓子無料引換券24枚綴り進呈。

 

──わたしは応募した。

 

 




アイドルへの道は、まだ遠いです。

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