トルメキアの黒い巨神兵   作:銀の鈴

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新年あけましておめでとうございます!!
今年もお付き合いよろしくお願いします!!


トルメキアの白い魔女〜統治〜

クシャナが、巨神兵()と出会ってから二年が過ぎていた。

 

それはまさに激動の二年間だったと言えよう。

 

クシャナが兄皇子達との王位継承争いに勝ち抜き、トルメキアの皇太子となったのは、巨神兵()と出会ってから僅か一月後の事だった。

 

そして、統治者としての実務を放棄したヴ王に成り代わり、トルメキアの実質的な統治者となったクシャナは、下級貴族の文官達の嫌がらせに耐えながら膨大な量の執務に忙殺される日々を送る。

 

そんな日々が一年ほど過ぎた頃だった。トルメキアの税収が急激に増大したのだ。

 

一年が過ぎて政務に慣れ始めたクシャナだったが、増大した税収のお陰で元々膨大だった執務の量が倍増した。

 

もちろん、国家予算に余裕が生まれたので、クシャナが以前から施行したかった国内インフラ整備、戦傷者や未亡人,孤児への支援、国防の要であるトルメキア軍の老朽化した装備の刷新など数々の政策を実施できたことは良かったのだろう。

 

ただ、その代わりにクシャナの休日が完全に無くなっただけの話だ。

 

働けど、働けど、一向に終わりのない仕事に疲弊していくクシャナ。

 

相変わらずセコい嫌がらせをしてくる下級貴族共にはそろそろ殺意が湧いてくる。

 

税収が増えたのは良かったけれど、最近は稼いでいる奴らが憎くなってきた。

 

そんなクシャナの唯一の安らぎは、最近、三時のおやつタイムに出されるようになった安価な甘いお菓子だけだった。

 

モグモグと、満面の笑みを浮かべながらお菓子を頬張るクシャナ。

 

それを見て悶える赤毛の部下。

 

何も変わらぬ日常の風景がそこにはあった。

 

「それにしてもこのお菓子は安いわりには美味しいな。どこの店の物なんだ?」

 

ふと、クシャナは以前から気になっていた事を赤毛の部下に尋ねてみた。

 

「やだなあ、殿下。これはクシャナ殿下のお菓子屋さんで売ってるお菓子じゃないですかあ」

 

クシャナ殿下の下手な冗談ですね、と思いながらも赤毛の部下は忠臣として当然のように愛想良く答えた。

 

「そっか。私のお菓子屋さんか。うんうん、流石は私のお菓子屋さんだな……って、ちょっと待て!? 私のお菓子屋さんとは一体何の話だ!?」

 

二年近くかけて漸く実を結んだ巨神兵の努力の結晶(内政チート)。それが日の目を浴びた(姫様にバレた)瞬間であった。

 

ちなみに、諸々の事情を知ったクシャナの怒りが冷めるまでの間、巨神兵は無事に逃げ続けることに成功した。

 

 

 

 

それは、クシャナが巨神兵とお茶をしていた時のことだった。

 

巨神兵が思い出したかのように言った。

 

「そろそろ、ドルクとかいう奴らを極太ビームで焼いてこようか?」

 

土鬼(ドルク)とは、皇帝領、7つの大侯国、20余の小侯国と23の小部族国家での計51か国から成り立つ諸侯国連合である。

 

そして、トルメキアと長年敵対する宿敵であった。

 

「……いや、敵対関係にあるとはいえ、問答無用で焼き払うのはどうかと思うぞ」

 

クシャナは、巨神兵のドルクを焼き払おうという提案に言葉を選びながら慎重に答える。

 

敵対しているといってもそれは政治的な問題だ。一般の国民まで戦火に巻き込むというのは最悪の手段だ。

 

可能な限り被害は小さく収めたいとクシャナは考えていた。

 

特に現在は、過剰戦力の巨神兵が味方なのだから武力行使は可能な限り控えたい。

 

開戦すれば七日も持たずにドルクという国が、この地上から物理的に消滅することが分かっていたからだ。

 

そして、現在のドルクはトルメキアに対して軍事行動を控えている。以前は日常的に行われていた国境付近での挑発行為ですら無くなった。

 

この変化は間違いなく巨神兵を警戒しての事だろう。巨神兵の圧倒的な戦力をドルク側が正しく認識しているのならば、今は拙速な行動をする必要はない。時間をかけてドルク側の勢力を削いでいくべきだと、クシャナは判断している。

 

「俺の姫様は優しいな。でも、敵まで優しいわけじゃないんだぞ。俺と出会ったときに腐海に墜落していたのは、ドルクに襲われた所為なんだろう?」

 

「それはっ……確かにその通りだ」

 

巨神兵の言葉にクシャナは、ドルクとの戦闘で命を落とした部下達の顔を思い出す。

 

一瞬だけ、クシャナは憎悪に心を染めそうになる。だが、クシャナの心は王としての信念にとっくに染まりきっていた。

 

復讐心などというものが、クシャナの心に入り込む隙間などなかったのだ。

 

クシャナは、己の心の内を巨神兵()に露わにする。

 

「我が巨神兵()よ。私は別に善人を気取るつもりはない。既に我が両手は、血に染まっているのだからな。己の歩く道が、死と破壊に彩られたものだということも十分に理解しているよ。だが、だからといって私は安易に死と破壊を周囲に撒き散らす愚物に堕ちるつもりはないぞ。私には、私の為に命を賭した者達が冥府にて誇れる者であり続ける義務と責任がある。故に私が歩む道は──王道のみだ」

 

クシャナの信念を聞かされた巨神兵は、己の居住まいを正すと、彼もまた心の内を露わにする。

 

「いやあ、姫様はまだ王様じゃないからノーカンじゃね?」

 

「うるさーい!! つべこべ抜かすなー!!」

 

ポカポカと、有無を言わさず殴りかかってきた姫様の姿に巨神兵は思った。

 

──俺の姫様が将来、Sの女王様にならないように気をつけんといかんな。

 

 

 

 

 




神社で祈ろう!クシャナ殿下が、Sの女王様になりませんよーに!!
――もしかして、Sの女王様の需要ある?

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