「砂糖だけじゃ足りないだと?」
「ええ、そうです。お菓子の原材料として砂糖は重要ですが、それ以外にも小麦に豆類、バニラビーンズなどの香料。そして、洋菓子なら卵も欠かせませんよ。たしか、和菓子なら寒天とかも必要だったと思います」
「うむ、なるほどな。言われてみれば砂糖以外の材料のことをすっかり忘れていたな」
巨神兵は、今後の予定を寡黙で冷静に見える外見をした男と話し合っていた。その話し合いの最中に砂糖以外の材料調達はどうするのか? という寡黙で冷静に見える外見をした男の指摘で問題点が発覚した。
前世の記憶を持つといっても、所詮は凡人だった巨神兵などこの程度である。一つの事に集中したら他の事には気が回らないのだ。
「それで、他の材料はどっかから買えるのか?」
「軍事物資でもある小麦なら製造量に余裕があるので、殿下のお菓子屋さんなら格安で大量に購入できると思います。ですが、それ以外の材料は、砂糖と同じく製造量自体が少ないので商業利用は難しいでしょうね」
「うーん、砂糖と同じく自分達で作るしか手はないか」
「それも少し難しいかも知れませんね。トルメキアの気候では育ちにくい作物もあった筈ですよ」
「トルメキアだけじゃ無理か……うむ、それなら他国で作らせよう」
「えっ!? 他国にですか?」
「ククク、トルメキアは辺境国の盟主なんだろ? それなら必要な材料を育てるのに適した気候を持つ国に命じればいい。適正な代金を払えば文句も言わんだろ」
「確かにトルメキアが命じれば従うでしょうが、辺境国の多くは自国民を食わせるための畑を腐海から守るだけで精一杯ですよ。下手をすれば多くの飢餓者を生み出しかねません」
巨神兵の提案に、寡黙で冷静に見える外見をした男は眉をしかめる。たとえ他国の人間だとしても無用の飢餓者など出したくはなかったからだ。
この時代の多くの土地は、既に腐海に飲み込まれていた。各国は迫り来る腐海の侵食を阻むために多数の犠牲者を出している。
トルメキアが辺境の諸国群の盟主足り得るのも、その強大な軍事力にて腐海の侵食を抑える柱となっているからだ。
ただ、トルメキアの強大な軍事力を持ってしても辺境全てを守りきることは不可能だった。
「ん? 腐海など焼けばいいだけだろ。たしか焼畑農業というやつだったな。自然環境には悪いらしいが、少しぐらいなら大丈夫だと思うぞ」
「巨神兵殿が、他国の腐海を焼かれるのですか!?」
巨神兵の発言に、寡黙で冷静に見える外見をした男は驚愕する。
巨神兵がトルメキア周辺の腐海を焼くのは理解できる。巨神兵はクシャナ殿下と個人的な友誼を結んでいるからだ。彼女のために王位継承争いにまで力を貸したのだから。
だが、たとえトルメキアを盟主と仰いでいるとはいっても、巨神兵にとっては何も関係のない他国のことだ。
巨神兵自身は自覚していないが、巨神兵は非常に冷酷な一面を持っていた。
出会ったばかりのドルク艦艇を問答無用で殲滅し、王位継承争いで敵対した軍も容赦なく撃滅した。巨神兵は基本的に人間に対して冷酷な存在だと言える。
恐らくは、巨神兵の身体が、人間のものだったはずの精神に影響を与えているのだと考えられる。
しかし、そんな冷酷な巨神兵の唯一の例外がクシャナ殿下だ。
巨神兵が目覚めた直後に目にしたのは、小さな身体で懸命に戦う女の子の姿だった。
その健気な姿に、まだ巨神兵の身体の影響を受けていなかった彼の心は激しく動かされた。(念のために言っておくが、巨神兵の前世はロリコンではない)
特にやることも無かった巨神兵は、色々と苦労を抱えている小さな女の子を助けることにした。聞けば、彼女は王女だというし、彼女を育てて女王にするのも楽しそうだと考えた。
そう、あえて言うならば、巨神兵は現在、“クシ
巨神兵にとって理想的なエンディングは “世界の女王様エンド” だろう。
その為なら他国へ出張しての農業活動すら巨神兵にとって許容範囲だった。
「うむ、考えてみれば、トルメキアだけでお菓子屋さん計画を実行するよりも、辺境国全てを巻き込んでの方が、経済も活性化して良さそうだな」
──この決断が、“クシ
巨神兵の内政チートが冴えわたる!!