fate/stay night 夢よ永遠に   作:fate信者

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頑張りました
疲れたので寝ます
それでは、どうぞ!


協力関係

……そもそも選択の余地はない。

俺は知らないコトが多すぎるし、魔術師としても未熟だ。

一時的にせよ遠坂が手を貸してくれるのなら、こんなにいい話はないと思う。

 

「分かった。その話に乗るよ、遠坂。正直、そうして貰えばすごく助かる」

 

「決まりね。それじゃ握手しましょ。とりあえず、バーサーカーを倒すまでは味方同士ってことで」

 

「あ…そっか。やっぱりそういう事だよな。仕方ないけど、その方が判りやすいか」

 

差し出された手を握る。

…少し戸惑う。

遠坂の手は柔らかくて、握った瞬間に女の子なんだ、なんて実感してしまった。

そんな手に比べると、ガラクタいじりで傷だらけの自分の手はなんとも不釣り合いだ。

 

「」

 

そう思った途端、気恥ずかしくなって手を慌てて引いた。

 

「なに、どうしたの? やっぱり私と協力するのはイヤ?」

 

「イヤ、そんなんじゃない。遠坂と協力しあえるのは助かる。今のはそんなんじゃないから、気にするな」

 

「じゃ、まずは手付け金。これあげるから、協力の証と思って」

 

どこに隠し持っていたのか、遠坂はテーブルに一冊の本を持ち出す。

見た目は日記帳そのものだ。

タイトルはなく、表紙はワインレッド。

…どことなく遠坂っぽいカラーリングである。

 

「私のお父さんの持ち物だけど、もう要らないからあげる。一人前のマスターには必要無いものだけど、貴方には必要だと思って」

 

遠坂はめくってみて、と視線で促してくる。

 

「…じゃ、ちょっと失礼して」

 

ぱらり、と適当にページをめくる。

 

「遠坂、なんだよこれ」

 

「各サーヴァントの能力表よ。聖杯戦争には決められたルールがあるのはもう判ってるでしょ? それはサーヴァントにも当てはまるの

まず、呼び出される英霊は七人だけ。

その七人も聖杯が予め作っておいたクラスになる事で召喚が可能となる。英霊そのものをひっぱってくるより、その英霊に近い役割を作っておいて、そこに本体を呼び出すっていうやり方ね

口寄せとか降霊術は、呼び出した霊を術者の中に入れて、何らかの助言をさせるでしょ? それと同じ。

時代の違う霊を呼び出すには、予めハコを用意しておいた方がいいのよ」

 

「クラス。ああ、それでセイバーはセイバーなのか!」

 

「そういう事。英霊たちは正体を隠すものだって言ったでしょ?だから本名は絶対、口にしない。自然、彼らを表す名称は呼び出されたクラス名になる

で、その用意されたクラスは

セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、の七つ

聖杯戦争のたびに一つや二つはクラスの変更はあるみたいだけど、今回は基本的なラインナップね。通説によると、最も優れたサーヴァントはセイバーだとか。

これらのクラスはそれぞれ特徴があるんだけど、サーヴァント自体の能力は呼び出された英霊の格によって変わるから注意して」

 

「英霊の格…つまり生前、どれくらい強かったかってコトか?」

 

「それもあるけど、彼らの能力を支えるのは知名度よ。

生前何をしたか、どんな武器をもっていたか、ってのは不変のものだけど、彼らの基本能力はその時代でどのくらい有名なのかでかわってくるわ。

英霊は神様みたいなモノだから、人間に崇められるほど強さが増すの

存在が濃くなる、とでも言うのかしらね。信仰を失った神霊が精霊に落ちるのと一緒で、人々に忘れ去られた英雄にはそう大きな力はない。

もっとも、忘れられていようが知られていなかろうが、元が強力な英雄だったらある程度の能力は維持できると思うけど」

 

「…じゃあ多くの人が知っている英雄で、かつその武勇伝も並はずれていたら」

 

「間違いなく最強ランクのサーヴァントでしょうね。

そういった意味でもバーサーカーは最強かもしれない。

何しろギリシャ神話における最も有名な英雄だもの。

神代の英雄たちはそれだけで特殊な宝具を持っているっていうのに、英雄自体が強いんじゃ手の打ちようがない」

 

「…遠坂。その、宝具ってなんだ」

 

「そのサーヴァントが生前使っていたシンボル。英雄と魔剣、聖剣の類いはセットでしょ?ようするに彼らの武装の事よ」

 

「? 武器って、セイバーの見えない剣とか?」

 

「まあね。あれがどんな曰くを持っているか知らないけど、セイバーのアレは間違いなく宝具でしょう。

言うまでもないと思うけど、英雄ってのは人名だけじゃ伝説には残れない。

彼らにはそれぞれトレードマークとなった武器がある。

それが奇跡を願う人々の想いの結晶、貴い幻想(ノウブル・ファンタズム)とされる最上級の武装なワケ」

 

「むっ、ようするに強力なマジックアイテムって事か」

 

「そうそう。ぶっちゃけた話、英霊だけでは強力な魔術、神秘には太刀打ちできないわ。

けれどそこに宝具が絡んでくると話は別よ。

宝具を操る英霊は数段格上の精霊さえ討ち滅ぼす。

なにしろ伝説上に現れる聖剣、魔剣は、ほとんど魔法の域に近いんだもの

最強の幻想種である竜を殺す剣だの、万里を駆ける靴だの、はては神殺しの魔剣まで。

…ともかくこれで無敵じゃない筈がないっていうぐらい、英霊たちが持つ武装は桁が違う。

サーヴァントの戦いは、この宝具のぶつかり合いにあるといっても過言じゃないわ」

 

「…つまり、英霊であるサーヴァントは必ず一つ、その宝具を持ってるってコトだな」

 

「ええ。原則として、一人の英霊が持てるのは一つの宝具だけとされるわ。

もっとも、宝具はその真名を呪文にして発動する奇跡だから、そうおいそれと使えるモノじゃないんだけど」

 

「? 武器の名前を口にするだけで発動するんだろ?

なんだってそれでおいそれと使えない、なんてコトになるんだ?」

 

「あのね。武器の名前を言えば、そのサーヴァントがどこの英雄か判っちゃうしゃない。

英雄と魔剣はセットなんだから、武器の名前が判れば、持ち主の名前も自ずと知れてしまう。そうなったら長所も短所も丸判りでしょ?」

 

「なるほど。そりゃあ、確かに」

 

そういえば、宝具とやらを使ったランサーは、セイバーにその正体を看破されていたな。

たしかアイルランドの光の御子だとか、なんとか。

 

「以上でサーヴァントについての講義は終わり。

詳しい事はその本を見れば判るから、一息ついたら目を通しなさい。

慣れてくれば、その本がなくても直感でサーヴァントを判断できるようになるから」

 

そう言って、遠坂は座布団から立ち上がった。

 

「さて。せれじゃ私は戻るけど」

 

「ああ、お疲れ様」

 

帰ろうとする遠坂を見上げる。

 

「協力関係になったからって間違わないでね。わたしと貴方はいずれ戦う関係にある。

だから、わたしを人間と見ないほうが楽よ、衛宮くん」

 

最後にきっちりとお互いの立場を言葉にして、遠坂は自分の家へと帰っていった。

遠坂が去って、緊張の糸が切れた為か。

熱を持っていた体がだるく感じられて、そのまま居間に寝転がってしまった。

 

「うっ!」

 

ぶり返してきた吐き気を、横になってやり過ごす。

こつこつと、静かな居間に時計の秒針が刻まれていく。

 

「マスター同士の戦い、か」

 

また目眩がした。

当然だ。

外見が元通りにになったといっても、数時間前まで体が二つになりかけていたんだ。

この体調不良がすぐに治る訳がない。むしろ一生このままっていう方が納得できる。

なにしろ一日に三回も殺されかけた。

力のない者が戦いに参加すれば、傷つくのは当然だ。

俺は己の力量不足の代償として体を失いかけ、

彼女は、そんな俺を守る為に傷を負った。

 

「っ!」

 

一番に聞かなくてはいけない事、バーサーカーの手で負傷した彼女が、無事なのかと言う事を。

気持ち悪いの我慢して立ち上がる。

 

「くっ!」

 

目眩を堪えながら屋敷をまわる。

人がいそうなところ、客間は見てまわったがセイバーの姿はない。

 

「あの格好なんだ、いればすぐに判るってのに!」

 

屋敷のどこにも、あの勇ましい鎧姿のセイバーの気配はない。

 

「ここにもいない」

 

屋敷は全てまわった。

旅館みたいに広い屋敷だが、子供の頃藤ねぇやイリヤとかくれんぼをしていたのは伊達じゃない。効率のいい屋敷の探索は心得ている。

アルトねぇに道場でぼこぼこにされた事を思い出す。

 

「もしかして」

 

急ぎ足で歩き出す。

向かう先は離れにある剣道場。

 

ーーーー

 

予感は的中していた。

剣道場に彼女は居た。

何故か自分の姉と剣道をしていた。

バシン、バシンと心地良い音を響かせていた。

月の下、俺がランサーに殺される寸前に現れ、ためらう事なく剣を振るった少女。

自信の身の危険を承知の上でランサーの目の前に立ってくれた姉。

 

「」

 

俺は呼吸さえ忘れて、二人の姿を眺め続けた。

それがどれほどの時間だったのか。

二人はぶつけ合う竹刀をとめた。

 

「あ」

 

残念そうな声は、やけに大きく道場に響いた。

それに気が付いたのか、セイバーとアルトねぇは俺の方へ歩いてきた。

 

「…」

 

何を言うべきか考えつかないまま、彼女達へと歩み寄る。

 

「「目が覚めたのですね、シロウ(士郎)」」

 

落ち着いた二人の声。

染み入るように響く彼女達の声は、この道場にあっている。

 

「ああ。ついさっき、目が覚めた」

 

うまく働かない頭で答える。

 

「士郎? 顔色が優れないようですが、体調は悪いのですか?」

 

「ち、違うよ、アルトねぇ。体調はいい、すごくいい!」

 

慌てて身を引いて、アルトねぇから離れる。

 

「?」

 

不思議そうに首を傾げるアルトねぇから目を逸らして、ともかくバクバクいってる心臓を落ち着かせた。

 

「落ち着け、なに緊張してんだ俺は!」

 

深呼吸する。

…けど、すぐには収まりそうにないというか、収まりなんかつかない気がする。

落ち着かない理由はアルトねぇの後ろにいるセイバーにあった。

 

「ああもう、なんだって着替えてるんだよ、アイツ」

 

セイバーの姿は昨日とは一変していた。

あの鎧姿とは正反対の、アルトねぇが着ている様な普通の服装だ。

それが以外というか、あんまりにも現実感がありすぎて、困る。

…とにかく、彼女はとんでもない美人だ。

それは昨日で知っていたつもりだったが、今さらに思い知らされた。




ちょっと投稿頑張ったので疲れました。
最後に高評価、ダメ出し、感想お願いします

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