fate/stay night 夢よ永遠に   作:fate信者

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今回はちょっと短くなりました。
それでもながいですけどね
それでは、どうぞ!


マスター講座

電気をつける。

時計は午前一時を回っている。

 

「うわっ寒! なによ、窓ガラス全壊してるじゃない!」

 

「仕方ないだろ、ランサーってヤツに襲われたんだ。なりふり構ってる余裕なかったんだ」

 

「あ、そういう事。じゃあ、セイバーを呼び出すまで、一人でアイツとやりあってたの?」

 

「やりあってなんかない。只、一方的にやられただけだ。おまけに殺されそうな時はアルトねぇに助けられて、本当に情けない」

 

俺は自分を責める言葉ばかりを言う。

今さっきの事で見栄をはれた様な状態じゃないしな。

 

「いいえ、士郎はとても凄かったですよ。私が来るまで一人でランサーの攻撃を避けていたではありませんか?」

 

アルトねぇが俺の事をフォローしてくれる。

でも、それは、過大評価だ。

俺はそんなに凄い奴じゃない。

 

「アルトねぇに危険な思いをさせてしまったんだ、そんな俺が凄い訳がない」

 

「ふうん、変な見栄ははらないんだ。…そっかそっか、ホント見た目通りなんだ、衛宮くんって」

 

何が嬉しいのか?

遠坂の声は弾んでいる。

そして、遠坂は割れた窓ガラスまで歩いていく。

 

「?」

 

遠坂はガラスの破片を手に取ると、ほんの少しだけ観察し

 

「mi nuten vor SchweiBen」

 

ぷつり、と指を切って、窓ガラスに血を垂らした。

 

「!?」

 

それはどんな魔術か。

粉々に砕けていた窓ガラスはひとりでに組み合わさり、数秒とかからず元通りになってしまった。

 

「遠坂、今の」

 

「ちよっとしたデモンストレーションよ。助けて貰ったお礼にはならないけど、一応筋は通しておかないとね」

 

「…ま、私がやらなくてもそっちで直したんだろうけど、こんなの魔力の無駄遣いでしょ?ホントなら窓ガラスなんて取り替えれば済むけど、こんな寒イボ中で話すのもなんだし」

 

当たり前のように言う。

が、言うまでもなく、彼女のうでまえは俺の理解の外だった。

 

「いや、凄いぞ遠坂。俺やアルトねぇはそんな事出来ないからな。直してくれて感謝してる」

 

俺やアルトねぇは出来ないが、イリヤなら遠坂と同じスピードで出来るだろう。

イリヤがこの家で魔術に関しては一日の長があるからな。

 

「? 出来ないって、そんな事ないでしょ? ガラスの扱いなんて初歩の初歩だもの。たった数分前に割れたガラスの修復なんて、どこぞの学派でも入門試験みたいなものでしょ?」

 

「そうなのか。俺は親父にしか教わった事がないから、そういう基本とか初歩とか知らないんだ」

 

「はあ?」

 

ピタリ、と動きを止める遠坂。

…しまった。なんか、言ってはいけない事を口にしたようだ。

 

「ちょっと待って。じゃあなに、衛宮くんは自分の工房の管理もできない半人前ってこと?」

 

「? いや、工房なんて持ってないぞ俺」

 

あー、まあ、鍛練場所として土蔵があるが、アレを工房なんて言ったら遠坂のヤツ本気で怒りそうだしな。

 

「…まさかとは思うけど、確認しとく。もしかして貴方、五大元素の扱いとか、パスの作り方も知らない?」

 

おう、と素直に頷いた。

 

「じゃあ、貴女も?」

 

と、遠坂は今度はアルトねぇに訊いている。

アルトねぇも俺と同じく、はい、と頷いた。

 

うわっ、こわっ。

なまじ美人なだけ、黙り込むと迫力あるぞ、こいつ。

 

「なに。じゃあ貴方、素人?」

 

「そんな事ないぞ。一応、強化の魔術ぐらいは使える」

 

「強化って…また、なんとも半端なのを使うのね。で、それ以外はからっきしってワケ?」

 

「俺は強化だけだが、アルトねぇは治癒の魔術ならある程度出来る」

 

「治癒の魔術ね。まあ、強化よりは使えるし、需要もあるから良い方ではあるわね。で」

 

じろり、と睨んでくる遠坂。

 

「はあ。なんだってこんなヤツにセイバーがより出されるのよ。まったく」

 

がっかり、とため息をつく。

 

「…む」

 

なんか、腹がたつ。

俺だって遊んでたワケじゃない。

こっちが未熟なのは事実だけど、それとこれとは話が別だ。

 

「ま、いいわ。もう決まった事に不平をこぼしても始まらない。そんな事より、今は借りを返さないと」

 

ふう、と一息つく遠坂。

 

「それじゃ話を始めるけど。

衛宮くん、自分がどんな立場にあるのか判ってないでしょ」

 

「」

 

遠坂の言葉に頷く。

 

「やっぱり。ま、知ってる相手に説明するなんて心の贅肉だし」

 

「?」

 

なんか、今ヘンな言い回しを聞いた気がするけど、ここで茶々をいれたら殴られそうなので黙った。

 

「率直に言うと、衛宮くんはマスターに選ばれたの。どちらかの手に聖疵があるでしょ?手の甲とか腕とか、個人差はあれど3つの令呪が刻まれている筈。それがマスターとしての証よ」

 

「手の甲って…ああ、これか」

 

「そ。それはサーヴァントを律する呪文でもあるから大切にね。令呪っていうんだけど、それがある限りはサーヴァントを従えていられるわ」

 

「…? ある限りって、どういう事だよ」

 

「令呪は絶対命令権なの。サーヴァントには自由意思があるんだけど、それをねじ曲げて絶対に言いつけを守らせる呪文がその刻印」

 

「発動に呪文は必要なくて、貴方が令呪を使用するって思えば発動するから。

ただし一回使う毎に一つずつ減っていくから、使うのなら二回だけに留めなさい。

で、その令呪がなくなったら衛宮くんは殺されるだろうから、せいぜい注意して」

 

「え、俺が殺される?」

 

「そうよ。マスターが他のマスターを倒すのが聖杯戦争の基本だから。そうして他の六人を倒したマスターには、望みを叶える聖杯が与えられるの」

 

「なっ、に?」

 

ちょっ、ちょっと待て。

遠坂が何を言っているのか全く理解できない。

マスターはマスターを倒す、とか。

そうして最後には聖杯が手に入るとか。

 

「まだ解らない? 要するに、貴方はあるゲームに巻き込まれたのよ。

自分の欲望の為に他人を殺し、最後の一人になるまで終わらない最低のデスゲームに」

 

それが何でもない事のように、遠坂凛は言い切った。

 

「」

 

頭の中で、聞いたばかりの単語が回る。

マスターに選ばれた自分。

マスターだと言う遠坂。

サーヴァントという使い魔。

ーーそれと。

聖杯戦争という、デスゲーム。

 

「待て。なんだそれ、いきなりなに言ってんだお前」

 

「気持ちは解るけど、私は事実を口にするだけよ。

…それに貴方だって、心の底では理解してるんじゃない?

一度ならず二度までもサーヴァントに殺されかけて、自分はもう逃げられない立場なんだって」

 

「」

 

それは。

たしかに、俺はランサーとか言うヤツに殺されかけた、けど。

 

「あ、違うわね。殺されかけたんじゃなくて殺されたんだっけ。よく生きてたわね、衛宮くん」

 

「」

 

遠坂の追い討ちは、ある意味トドメだった。

確かに俺はアイツに殺された。

いくら、俺が否定したところで、他の連中が手を引いてくれるなんて事はない。

 

「」

 

「納得した? ならもう少しだけ話を続けるわね。

聖杯戦争というのが何であるか私もよく知らない。

ただ何十年に一度、七人のマスターが選ばれ、マスターにはそれぞれサーヴァントが与えられるって事だけは確かよ」

 

「つまり、サーヴァントって言うモノは聖杯戦争を戦い抜くための兵器みたいなモノか?」

 

「うーん、ちょっと違うかな。兵器って自由意思が無いから、主が殺せと言えば何でも殺す。だけど、サーヴァントにはそれぞれの自由意思がある。

つまり、彼らは武器であっても兵器ではない。

沢山の人を殺す兵器ではなく、狙った相手を殺す武器であると言った方が解りやすいんじゃないかしら」

 

「成る程な」

 

「でも、中には例外も居る。無関係な人を沢山殺す兵器みたいなヤツもたまには居るわ」

 

「そんなヤツもいるのか?」

 

「ええ、だから、マスターが指示をするのよ。自分の武器が兵器にならないようにするの。

それでも止めない奴がいた場合は令呪を使う人もいるでしょうけどね」

 

「令呪を使ってどうするんだ?

やっぱり、 無関係な人を殺すのを止めろと命令するのか」

 

「う~ん、それは、人それぞれかな? 令呪で行動を制限させたりするヤツも居れば、もっと殺れというヤツも居る。

最終手段で自害させようとするヤツも居るわ」

 

遠坂の言ってる事が正しければ、もしかしたらセイバーもそんな人かも知れないと言うことか。

 

「さて。話がまとまったところでそろそろ行きましょうか」

 

と。

遠坂はいきなり、ワケの分からない事を言い出した。

 

「行くって何処へ?」

 

「貴方が巻き込まれたこのゲーム…聖杯戦争をよく知ってるヤツに会いに行くの。衛宮くん、サーヴァントについて知りたいんでしょ?」

 

「それは当然だ。けどそれって何処だよ。もうこんな時間なんだし、あんまり遠いのは」

 

「大丈夫、隣町だから急げば夜明けまでには帰ってこれるわ。それに明日は日曜なんだから、別に夜更かししても良いじゃない」

 

「いや、そういう問題じゃなくて」

 

単に今日は色々あって疲れてるから、少し休んでから物事を整理したいだけなのだが。

 

「なに、行かないの? …まあ、衛宮くんがそう言うんならいいけど、セイバーは?」

 

なぜかセイバーに意見を求める遠坂。

 

「ちょっと待て、セイバーは関係ないだろ。あんまり無理強いするな」

 

「シロウ、私は彼女に賛成です。貴方はマスターとして知識がなさすぎる。貴方と契約したサーヴァントとして、シロウには強くなって貰わなければ困ります」

 

セイバーは静かに見据えてくる。

…それはセイバー自身ではなく、俺の身を案じている、穏やかな視線だった。

 

「分かった。行けばいいんだろ、行けば。

で、それって何処なんだ遠坂。ちゃんとかえってこれる場所なんだろうな」

 

「もちろん。行き先は隣町の言蜂教会。そこがこの戦いを監督してる、エセ神父の居所よ」

 

にやり、と意地の悪い笑みをこぼす遠坂。

アレは何も知らない俺を振り回して楽しんでいる顔だ。

 

「」

 

偏見だけど。

あいつの性格、どこか問題ある気がしてきたぞ…。

俺は外に行く服装にして、外に出る。

外に出る時にアルトねぇには家に残って貰った。

もし、イリヤが起きてきた時に誰もいなかったらびっくりするだろうから

よし。

準備万端だ。

行くか。




最近FGOでワルキューレを引こうと頑張ってガチャを引いても出るのは慎二だけです。
……切れそう。
多分、次回の更新は遅くなると思います。
最後に評価、感想、ダメ出し、いつでもwelcomeです。

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