fate/stay night 夢よ永遠に   作:fate信者

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えーと、まずは謝罪から
すいませんでした。
今回の文字数は5000字と少し多くなりました。
だから、時間がある時見て頂いたら幸いです
では、どうぞ!


運命の夜(後編)

side sirou

 

「あ……つ」

 

目が覚めた。

喉元には吐き気が、体からはところどころがズキズキと痛む。

心臓が鼓動する度に刺すような痛みがする。

 

「何が起きたんだ?」

 

頭が痛すぎて思い出せない。

いや、思い出すのを俺自身が拒否しているのか?

いや、そんなの今ではどうでもいい。

下を見たら、血の海が合った。

この血は全部俺のなのか?

「っ」

 

朦朧とする意識の中で俺は立ち上がり。

教室に入る。

 

「はぁ、はぁ…ぐっ」

 

酷い吐き気を堪えて教室からバケツと雑巾を持ってくる。

 

「はは、なにしてんだろ、俺…」

 

まだ頭が混乱しているみたいだ。

ヤバいモノに出会い。

いきなり心臓に槍を刺されたのに何で掃除なんかしてるんだよ、馬鹿。

 

「はぁ、はぁ…くそ、落ちない」

 

雑巾で自分の血を拭く。

血を大量に出しすぎたのか、手足の力が入らない。

それに体が寒い。

雑巾で自分の血を吹き終えると、床に落ちているモノを拾う。

証拠隠滅。

 

雑巾とバケツをしまい。

教室を出る。

そして、ゾンビの様な足取りで家を目指す。

 

~~~

 

家に着いた時にはもう日付が変わっていた。

居間には誰もいない。

もうアルトねぇやイリヤは寝ているのだろう。

 

「はぁ、あ…はぁ」

 

床に腰を下ろす。

そのまま床に寝転び、呼吸を整える。

 

「アイツらは一体何だったんだ?」

 

人じゃない何か

幽霊では無い。

肉を持ち、意思を持ち、俺に直接的に接触が出来るのは幽霊ではない。

ならば、妖精か?

ーーーはは、何をバカな事を考えてるんだか。

でも、アイツらの正体は何一つ分からない。

 

「…こんな時、親父が生きていれば」

 

久しぶりに吐いた弱音は誰の耳にも入らず空間に響く。

 

「馬鹿か。判らなくても、自分に出来ることをやるって決めたじゃないか」

 

弱音はその後に好きなだけ吐けば良い。

今はアイツらの事を考えるしかない。

アイツらは一体校庭で何をしていた?

殺し会いをしていた。

何故だ?

何故ーー

カラン、カラン、カラン。

 

「!?」

 

屋敷の天井につけられた鐘がなる。

ここは魔術師の家だ。

敷地に知らない人間が入ってくれば警鐘がなる、ぐらいの結界はある。

 

「こんな時に泥棒ーー」

 

呟いて、自らの発言に舌を打つ。

そんな筈はない。

このタイミング、あの出来事の後で、そんな筈はない。

侵入者は確かにいる。

それは、物を取りに来た泥棒ではなく、命を奪いにきた暗殺者だ。

 

「」

 

屋敷は静まり帰っている。

物音一つない闇の中、だが、確かに居る。

少しずつ、少しずつだが、近づいてきている。

「っ!」

 

漏れ出しそうな悲鳴を懸命に抑える。

悲鳴を出した瞬間に寝ているであろう、イリヤとアルトねぇが居間に来る。

そうしたら、この暗殺者は顔を見られたからと言ってアルトねぇとイリヤを殺すだろう。

さっきの警鐘の時も来るのでは無いかとヒヤヒヤしたが、来なかった。

って事は寝ていると言う事だ。

俺はあの二人だけには生きていて欲しい。

だから、この恐怖に負けちゃいけない。

 

「すぅ、はぁ、すぅ」

 

深呼吸をする。

今は全神経を研ぎ澄ませろ。

一瞬の油断が命取りになるだろう。

アイツに襲われたら俺の命は無い。

なら、そうならない様に武器を用意しなくては

奴の武器は槍。

なら、リーチの短い武器はアウト。

出来る事ならリーチが長く、硬いモノが好ましい。

木刀の様なモノが有れば、文句無しだが。

残念そんなモノは居間にはない。

土蔵になら武器になりそうなのは山程有るのだが、土蔵からは距離が離れ過ぎている。

その間に殺されるのが関の山だ。

 

「武器になりそうなモノは……うっ! マジか、藤ねえが置いていったポスターしかない」

 

がくり、と肩の力が抜ける。

だが、この絶望的な状況にむしろ腹が据わった。

ここまで最悪なら、これより下はない。

なら、後はもう、死に物狂いで頑張るしかない。

 

同調、開始(トレース、オン)

 

俺の唯一使える魔術『強化』は物体に文字通り強化をする。

長さ60センチのポスターに魔力を流す。

 

「構成材質、解明」

 

魔力と言う水分をポスターの隅々に染み込ませていく。

 

「構成材質、補強」

 

ポスターの隅々に魔力が行き渡り、溢れる寸前で止める。

 

全工程、完了(トレース、オフ)

 

ポスターと自分の接続を断ち、ポスターを数度振り、成功の感触に身震いをする。

ポスターの強度は鉄筋並みになっている

それでいて軽さはポスターのままだ。

急造の武器としては文句無しだろう。

 

「よし! 上手くいった」

 

強化の魔術が成功したのは何年ぶりだろうか。

だが、今はそんな事を考えている暇はない。

両手でポスターを握り、居間の真ん中にただ立っている。

 

「ふぅ」

 

来るなら来い!

さっきのようにはいかない、と身構えた瞬間。

 

「!!」

 

ぞくん、と背筋が震えた。

何時の間にやってきたか。

天井から現れたソレは、一直線に俺へと落下した。

 

「なっ!?」

 

天井から透けて来たとしか思えないソイツは、脳天を刺そうと降下してくる。

 

「こ、のぉ…!!!」

 

ただ必死に横に転がる。

たん、という軽い着地音と、ごろごろと転がる自分。

それもすぐさま止めて、ポスターを持ったまま立ち上がる。

 

「」

 

ソイツは退屈そうに俺へと振り返る。

 

「余計な事を。見えていれば痛かろうと、オレなりの配慮だったんだかな」

 

ソイツは気だるそうに槍を持つ。

 

「」

 

今のアイツには校庭にいた時程の覇気がない。

それなら、なんとか、このまま、出し抜く事が出来る!

 

「まったく、一日に同じ人間を二度殺すハメになるとは思わなかったぜ」

 

男はこちらの事など眼中にない、という素振りで悪態をつく。

じり、と少しずつ後ろに下がる。

窓まであと三メートルほど。

窓を割り、庭に出てしまえば土蔵まで20メートルあるかないかだ。

 

「じゃあな、今度こそまようなよ、坊主」

 

静かに。

ぼんやりと。

ため息をつくように、男は言った。

そして、男の槍が俺の心臓に向かってくる。

 

「っ!?」

 

右腕に痛みが走る。

 

「?」

 

それは一瞬の出来事。

男の槍が、俺のポスターを貫通しないで俺の右腕を掠めるだけに留まったのだ。

 

「…ほう、変わった芸風だな」

 

先程までの油断は消え、獣みたいな眼光で、こちらの動きを観察している。

 

「っ!」

 

しくじった。なんとかなる、なんて酷い慢心だ。

今目の前に居るのは、常識から外れたモノ。

そいつを目の前にして少しでも気を緩ませた自分の愚かさに怒りが沸く。

……そうだ。

本当になんとかしたかったのなら、頭上からの一撃を奇跡的にやり過ごした後、必死に土蔵に向かって走るべきだったのだ!

「ただの坊主かと思ったが、成る程、微弱だが魔力を感じる。心臓を穿たれて生きている、ってのはそういう事か」

 

槍の穂先がこちらに向けられる。

 

「」

 

防げない

あんな速い一撃は防げない。

この男の獲物が剣なら、どんなに速くても身構える事はできただろう。

だが、アレは槍だ。

軌跡が線の剣と、点である槍。

初動さえ見切れない一撃を、どう防げと言うのか。

 

「いいぜ、少しは楽しめそうじゃないか」

 

男の体が沈む。

瞬間に

正面からではなく、横殴りに槍が振るわれた。

 

ギャリン

 

顔の側面の攻撃を、条件反射だけで受け止める。

 

「ぐっ!?」

 

腕に凄い衝撃が来る。

一瞬、腕が無くなったかの様な感覚に陥った。

 

「いい子だ、次行くぞ!」

 

ブン、という旋風。

この狭い室内でどんな扱いをしているのか、槍は壁につかえる事なく美しい弧を描き俺に襲ってくる。

 

「くっ!!!!!」

 

今度は逆から、こちらの胴を払いに来る……!

 

「がっ!!!??」

 

止めに入ったポスターが折れ曲がる。

化け物が! アイツが持ってんのはハンマーか!!

 

「ぐ、この、野郎!」

 

「あん?」

反射的に剣を振るう。

こちらを舐めているのだろう、未だ戻しに入ってない槍の柄を剣で弾きあげる!

 

「ぐっ!!!」

 

叩きにいった両腕が痺れる。

ポスターが更に折れ曲がり、男の槍は僅かだけ軌道を逸らした。

 

「拍子抜けだ。やはり直ぐに死ね、坊主」

 

男は槍を構え直す。

 

「勝手に」

 

男の余分なスキに。

 

「言ってろ間抜け!」

 

後ろを見ずに、背中から窓へと飛び退いた。

 

「はっ、はぁ、は」

 

背中で窓を割って庭へと転がり出る。

そのまま、数回転がった後、、立ち上がりざまに

 

「は、あ」

 

何の確証もなく、背後に全身全霊の一撃をする

 

ギャリン

 

「ぬ!」

 

突き出した槍を弾かれ、わずかに躊躇する男。

予想通りだ。

窓から飛び出せば、アイツは必ず追撃してくる。

こっちが起き上がる前に確実に殺しにかかる。

だから、必殺の一撃がくると信じて、満身の力でポスターを横に払った。

結果は見事的中。

 

「は、っ……」

 

即座に体勢を立て直し、男が怯んでいる隙に、土蔵まで走り抜ける。

 

「飛べ」

 

槍を弾かれた筈の男は、槍など持たず、空手のまま俺へと肉薄し、くるりと背中をむけて、回し蹴りを放ってきた。

 

「」

 

景色が流れる。

ただの回し蹴りで、自分の体がボールみたいに蹴り飛ばされるなんて、夢にも思わなかった。

 

「ぐっ!」

 

壁にぶつかり、背中が折れたかの様な錯覚を受け、ずるりと地面に落ちたのだ。

 

「ごぼっ、あ!」

 

息ができない

視界が霞む。

目的地だった土蔵の壁に手をついて、なんとか体を立たせる。

後ろからは男がやってくる。

そして、俺の心臓目掛けて槍をつく。

 

ガン!

 

「チィ、男だったらシャンと立ってろ…!」

 

なんて悪運

体を支えきれず、膝を折ったのが幸いした。

槍は俺の頭上で土蔵の重い扉を弾き開けた。

 

「ぐっ!」

 

四つん這いになって土蔵へ滑り込む。

 

「そら、これで終いだ!」

 

避けようのない必殺の一撃が放たれた。

 

「こ、のぉぉおおおお!」

 

棒状のポスターを広げ、たった一度きりの盾にする。

 

「なに!?」

 

ゴン、という衝撃。

広げきったポスターは槍は防いだが、貫通され、元のポスターに戻る。

 

「あ、っ!」

 

槍の衝撃に吹き飛ばされ、壁まで弾き飛ばされた。

床に尻餅をついて、止まりそうな心臓に渇を入れる。

そうして、武器になりそうな物を掴もうと顔を上げた時。

 

「締めだ。今のはわりと驚かされたぜ、坊主」

 

もはや、これより先はない

自分の逆転劇もどうやらここまでみたいだ。

 

「…しかし、分からねえな。機転は利くくせに魔術はからっきしときた。筋はいいようだが、若すぎたか」

 

……男の声が聞こえない。

意識は目の前の凶器に収束している。

 

「もしかしたら、お前が七人目だったのかもな。

ま、だとしてもこれで終わりなんだが」

 

男の腕が動く。

もう、これで死ぬのか?

俺は親父と約束したんだ。

『家族を守る正義の味方になる』と。

まだ、途中なんだ。

道すら見えていない。

そんな時に死ねだと?

……ふざけてる。

だが、今の俺には何も出来ない。

いくら、叫ぼうが、何も変えられない。

なら、いっそ。

このまま死んだ方が楽じゃないのか?

そう思っていると男の槍が俺の心臓に当たる直前で止まる。

 

「おい、坊主。この場合は俺は悪くねぇよな?」

 

男が扉の方を向く。

そこには俺の知っている人がいた。

いや、知っているなんて簡単に済ませられない。

何年も一緒に住んでた。

俺の姉

衛宮アルトレアがいた。

 

「士郎から退きなさい」

姉は美しかった。

これは、お世辞でも比喩でもない。

曇り空から少しだけ顔を出した月は姉を照らした。

砂金を散りばめた様な髪は月光を浴び輝き。

宝石の様な瞳には暖かさを感じていた。

だから、美しいと思ったのだ。

 

「へぇ、アンタには悪いが俺の姿を見られたには死んで貰わないといけないんだよ。だから、坊主は死ぬ。俺の姿を見たアンタも死ぬ」

 

男は表情を消して言った。

この言葉に俺は腹がたった。

コイツは今何て言った?

アルトねぇを殺す?

ふざけるな!

アルトねぇは何もやってないだろう。

何で見られただけでアルトねぇが死なないといけない!

ふざけるな!!

ふざけるな!!!

 

「」

 

頭にきた。

そんな簡単に人を殺すなんてふざけてる。

そんな簡単にアルトねぇを殺すなんてふざけてる。

一日に二度も殺されるなんて、そんなバカな話もふざけてる。

 

「ふざけるな、俺は」

 

こんなところで意味もなく、

お前みたいなやつに、

アルトねぇを殺させるものかーー!!!!!!

 

「えっ?」

 

それは、本当に。

 

「なに!?」

 

魔法のように、現れた。

現れたそれが、少女の姿をしている事しか判らない。

ギャリイイン、という音。

それは現れるなり、 俺の胸を貫こうとした槍を打ち弾き、躊躇うことなく男へと踏み込んだ。

 

「本気か、七人目のサーヴァントだと……!?」

 

弾かれた槍を構える男と、手にした『何か』を一閃する少女。

男は不利と悟ったのか土蔵の外へ飛び出した。

 

風の強い日だ。

土蔵に差し込む銀色の月光が、騎士の姿をした少女を照らしあげる。

 

「」

 

声がでない。

突然の出来事に混乱した訳ではない。

ただ、目前の少女の姿があまりにも綺麗過ぎて、言葉を失った。

 

「」

 

少女は俺を見据えた後。

 

「問おう。貴方が、私のマスターか」

 

凛とした声で、そういった。

 

「え……マス……ター?」

 

問われた言葉を口にする。

彼女が何をいっているのか、何者なのかも判らない。

ただ、俺はこの綺麗な少女にアルトねぇを掛け合わせている。

理由は分からない。

だが、何となくそう思っただけなのだ。




何か疲れた。
今回は士郎が完全に主人公だったから今度はアルトねぇ視点で書きたいと思います
次回は気が向いたら
最後に評価、感想、ダメ出しまってまーす!
ダメ出しは少なめでお願いしまーす。
それじゃ、次回

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