fate/stay night 夢よ永遠に   作:fate信者

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久しぶりの投稿です。
内容はなんか無駄に長いです。



運命の夜(前編)

side sirou

 

部活がある桜と別れてイリヤと一緒に校舎に向かう

校庭には走り込みをしている運動部の部員たちがいて朝から活気づいている。

だが、酷い違和感があった。

学校や生徒はいつも通り。

朝練に励む生徒がいれば、真新しい校舎にはよごれはない。

なのに、目を閉じると世界が一変する。

校舎には粘膜の様な汚れが張り付き、校庭を走る生徒たちはどこか人形みたいに感じられた。

 

「疲れてるのかな、俺」

 

軽く頭を振って、校舎に向かう。

その時にイリヤが心配そうにこちらを見ていた。

 

~~~

 

土曜日の学校は早く終わる。

午前中で授業は終わり、学校の備品の手入れが終わった頃には、日は地平線に没しかけていた。

 

「ふぅー、さて、そろそろ帰るか」

 

荷物をまとめて教室を出る。

 

「なんだ? まだ、学校にいたんだ、衛宮」

 

ばったりと慎二と出くわした。

慎二の後ろには数人の女生徒がいて、なにやら騒々しい。

 

「やることも無いクセにまだ残ってたの? ああそうか、また生徒会にごますってたワケね。いいねぇ衛宮は、部活なんてやんなくても内申稼げるんだからさ」

 

慎二は皮肉交じりに言ってくる。

「生徒会の手伝いじゃないぞ。学校の備品備品を直すのは生徒として当たり前だろ?」

 

「は、よく言うよ。衛宮に言わせれば何だって当たり前だからね。そういう良い子ぶりがかんに障るって前にいわなかったっけ?」

 

前に何か言ってた様な?

ああ、ダメだ。

思い出せない。

多分、慎二の口癖だと思って聞き流していたんだな。

 

「……すまん、覚えてない。それ、慎二の口癖だと思ってたから、どうも聞き流していたみたいだ」

 

俺は慎二の頭を下げる。

 

「そうかい、それじゃ学校にあるモノなら何でも直してくれるんだ、衛宮は」

 

「何でもはムリだ。せいぜいが面倒を見るぐらいだ」

 

この学校のモノを何でも直せるって一般生徒には無理がある?

必要な知識も無い。

特殊な機材も無い。

敷いては、材料も無い。

これでは、何でもは無理だ。

今は、家に有るものを持ってきて直しているが、それ以上となると厳しい。

 

「ならさ、頼まれてくれよ。うちの弓道場さ、今わりと散らかってるんだよね。弦も巻いてないのが溜まってるし、安土の掃除も出来ていない。暇なら、そっちの方もやっといてくんない?

元弓道部員だろ? 生徒会になんか尻尾振ってないで、たまには僕たちの役にたってくれよ?」

 

その言葉に後ろに居た女生徒が声をだす。

 

「えー、せんぱーい、それって先輩が藤村先生に言われてたコトじゃなかったー?」

 

「そうですよう、ちゃんとやっておかないと明日怒られますよー?」

 

その言葉にギャルっぽい生徒が。

 

「でもさー、今から片付けしてたら店しまるじゃん。そこの人がやってくれるんならそれで良いんじゃないの?」

 

更に優等生っぽい人が。

 

「悪いよー。それに部外者に片付けなんか出来るワケないし……」

 

そうでも無いんじゃない? あの人、元弓道部員だって慎二が言ってるしさぁ、任せちゃえば良いのよ」

 

慎二の後ろが姦ましい。

女が3人寄れば姦ましいと言うがそれ以上だ。

弓道部員のようだが、見知った顔が無いと言う事は慎二が勧誘しているという部員たちだろうか。

 

「じゃ、あとはよろしく。鍵の場所は変わってないから、勝手にやっといてよ。文句無いよね、衛宮?」

 

「ああ、構わない。どうせ暇だったから、たまにはこういうのも悪くない」

 

「ッ!」

 

慎二が一瞬、ほんの一瞬辛そうな顔をしていた。

それは、痛みを耐えている苦悶の表情ではなく。

何かに気づいて貰えなかった。

孤独な表情だった。

 

「それじゃ行こうぜ皆、つまんない雑用は衛宮がやっとくってさ」

 

その時、慎二は俺の方を向き、本当に悲しそうな顔をしていた。

 

「あ、待ってよせんぱーい!あ、じゃ後はよろしくお願いしますねぇ、先輩」

 

~~~

 

勝手知ったるはなんとやら、弓道場の整理は苦もなく終わった。

これだけ広いと時間がかかったが、一年半前まで使っていた道場を綺麗にするのは楽しかった。

時計を見れば、とうにもんげんは過ぎている。

時刻は7時過ぎあたり、この分じゃ校門はしまっているだろう。なら、無理して早く帰る必要はない。

……それにしても。

ここはこんなに汚れていたっけ。弓置きの裏とか部室とか、細かい所の汚れが目立つ。

 

「……ま、ここまで来たら二時間も三時間も変わらないか」

 

乗り掛かった船だ。どうせなら最後まで掃除してしまおう。

 

~~~

 

掃除を終えて弓道場から出る。

外はもうすでに暗く。

風が吹いていた。

あまりの冷たさにほおがかじかむ。

 

「ーーー」

 

はあー、とこぼした吐息が白く残留している。

 

「……なんだ。暗いと思ったら月が隠れているのか」

 

見上げた空に白い光はない。

強い風のせいか、空には雲が流れている。

もう帰ろうと校門を目指して歩くと、

 

「?」

 

何か、今音が聞こえたような。

そして、音の出所であろう校庭に歩いていく。

 

ーー校庭にまわる。

 

「……人?」

 

初め、遠くから見たときはそうとしか見えなかった。

暗い夜、明かりの無い闇の中。

それ以上のコトを知りたければ、とにかく校庭に近づくしかない。

音は大きく、勢いをまして聞こえてきた。

これは鉄と鉄がぶつかり合う音だ。

となれば、あそこで何者かが刃物で斬り合っているのか?

 

「馬鹿馬鹿しい。何を考えてるんだ、俺は……」

 

頭の中のイメージを苦笑で否定して、更に足を進める。

本能が危険を察知していたのか、隠れながら進んでいた。

身を隠せる程度の木によりそって、より近くから音の発信源を見ーーー

 

そこで、意識が凍りついた。

 

「ーーーーな!」

 

何か、よく分からないモノがいた。

赤い男と青い男。

冗談とすら思えない程物々しい武装をした両者は、不吉なイメージ通り、本当に斬りあっていた。

理解出来ない。

アレの存在が。

視覚で追えない。

アレの動きが。

 

「」

 

ただ、見た瞬間に判った事がある。

アレは人間ではない。おそらくは人間に似た何かだ。

魔術を習ってるから判ったんじゃない。

魔術を習って無い人でも判る。

アレは其ほどのモノだ。

だから、アレには関わってはいけないモノだ。

 

「」

 

離れていても伝わってくる殺気。

……死ぬ。

ここにいては間違いなく死ぬ。

 

「っーー!」

 

これ以上直視していてはダメだ。

だと言うのに体はピクリとも動かない。

 

「」

 

音が止んだ。

二つのソレは、距離をとって向かい合ったまま立ちどまる。

それで殺し会いが終わったのかと安堵した瞬間、青い方の男からいっそう強い殺気が伝わってきた。

 

「っーーーーー!!」

 

心臓が萎縮する。

吐き気がする。

手足の痺れは痙攣にかわり、歯を食いしばり、ふるえだしたくなる体を押さえつけた。

青い男にとてつもない魔力が流れていく。

その魔力量は一撃でこの町を破壊出来ると思ってしまうレベルのモノだ。

このままなら赤い男は死ぬだろう。

死ぬ。

人の形をした何かが死ぬ。

それは、見過ごして、良いのか?

この迷いのおかげで意識がソレから外れたので金縛りが解け、はあ、と大きく呼吸をした瞬間。

 

「誰だーーー!!」

 

青い男が隠れている俺の方を凝視した。

 

「…………っっっ!!!」

 

青い男の体が沈む。

それだけで、ソレの標的は自分に切り替わったと理解できた。

 

足が勝手に走り出した。

それが死を回避できる為とようやく気づいて、体の全てを、逃走する事に注ぎ込んだ。

何処をどう走ったのか、気が付けば校舎の中に逃げ込んでいた。

 

「何を、バカか」

 

はあはあと喘ぎながら、自分の行動に毒をはく。

逃げるなら町中だ。

こんな、自分から人気の無い場所に逃げるなんてどうかしてる。

それも学校。同じ隠れるでも、もっと隠れやすい場所があるんじゃないのか。

 

「ハァーーハァ、ハァ、ハァ」

 

限界以上に走った事で心臓が軋む。

振り向けば奴はいない。

響く足音は自分だけのモノだ。

 

「ァーーーハァ、ハァ、ハァ」

 

なら、休もう。

もう走れない足を止めて、壊れそうな心臓に酸素を送る。はあ、と大きく顎をあげて、助かったのだと実感できた。

 

「ーハァ、ぁ、なんだったんだ、今の」

 

乱れた呼吸を整える。

 

「けど、これでともかく」

 

「追いかけっこは終わり、だろ」

 

その声は、目の前から、した。

 

「よぅ。わりと遠くまで走ったな 坊主」

 

「」

 

息ができない。

思考が止まる。

何も考えられないと言うのに。

これで死ぬんだな、と実感はした。

 

「運が悪かったな坊主。ま、見られたからには死んでくれや」

 

男の槍は容赦も情緒もなく、男の槍は衛宮士郎の心臓を一撃で貫いた。

 

「ぁ」

 

世界が歪む。

体が冷めていく。

指先からどんどんと感覚が消えていく。

 

「」

 

よく見えない。

感じられない。

痛みなどとうに感じない。

 

「死人に口なしってな。弱いヤツがくたばるのは当然と言えば当然だが……まったく嫌な仕事をさせてくれる。この様で英雄とはわらいぐさだ」

 

声だけが聞こえてくる。

自分の中で唯一残ってる感覚かもしれない。

 

「解っている、文句はないさ。女のサーヴァントは見たんだ。大人しく戻ってやるよ」

 

苛立ちを含んだ声。

その後に、廊下を駆けてくる足音。

 

「アーチャーとはケリをつけておきたいが、マスターの方針を破る訳にもいくまい。……まったく、いけすかねぇ野郎だこと」

 

そして、声は消えた。

窓から飛び降りたのだろう。

その後にやってきた足音が止まった。

奇妙な間。

……また足音。

もう、よく聞き取れない。

 

「追って、アーチャー。ランサーはマスターの所に戻るはず。せめて相手の顔ぐらい把握しないと割に合わない」

 

……それは誰の声だったか?

途切れそうな意識を総動員して思い出そうとしたが、やはり、何も考えられなかった。

でも、この声を聞くと安心するのは何故だろう?

 

「ランサーの一撃を食らって死んでないのは、凄いな」

 

覗き込まれる気配。

 

「……やめてよね。なんだって、アンタが」

 

ぎり、と。

歯を噛む音が聞こえた途端、そいつは、躊躇う事なく、血に濡れた俺に触れてきた。

 

「破損した臓器を偽造して代用、その間に心臓一つまるまる修復か……こんなの、成功したら時計塔に一発合格ってレベルか……」

 

苦しげな声。

それを境に、薄れていく意識がピタリと止まった。

 

「」

 

体に感覚が戻ってくる。

ゆっくりと、少しずつ。

 

「」

 

何をしているのか。

寄り添ったコイツは額から汗を流して、一心不乱に、俺の胸に手を当てている。

 

「」

 

手のひらを置かれた箇所が酷く熱い。

 

「ふぅ」

 

大きく息を吐いて座り込む気配。

 

「っかれたぁ…」

 

カラン、と何かが落ちる音。

 

「…ま、仕方ないか。ごめんなさい父さん」

 

それを最後に。

誰かの気配はあっさりと遠ざかって行った。

 

「」

 

心臓が活動を再開する。

そうして、今度こそ意識が途切れた。

 

……それは死に行く為の眠りではなく。

再び目覚める為に必要な、休息の眠り。

 

side out

 

side arutorea

 

遅い。

今は夜の9時です。

士郎がこんなに帰ってくるのが遅いのは珍しいです。

バイトもなくてこんなに遅いと心配になります。

 

「イリヤ、士郎と最後に合ったのは何時ですか?」

 

私は隣に座っているイリヤに聞く。

 

「朝に士郎と別れたのが最後よ」

 

「そうですか」

 

どうしましょう。

 

「イリヤ、今日はもう寝ましょう。士郎は直ぐに帰ってくるでしょうから」

 

私たちは起きて待つ事を選ばなかった。

これは、何かが起きそうな気がしたから、

私たちは起きていては危ないと私の直感が言っていた様な気がしたから。




この話でびっくりな事はなんと!
慎二がクソワカメではなく、ちょっとマシなワカメになっていることです。
って! 結局はワカメかーい!!
すんません調子乗りすぎました。

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