インフィニット・エクシリア   作:金宮 来人

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連投行きます。


第08話

手術は成功。僕の左腕は一度切り取られた。そこで初めの手術は終わり、続いて義手の接続手術が始まる。肘の少し上、上腕の真ん中位から接続し義手は左腕として付け変わった。

「どうだい?」

「コレ、・・義手?」

触ってもあったかいし柔らかい。頭で思った通りに動くから義手かどうかも自分でもわからないくらいだ。

「そうだろ。そうだろ。これぞ私が作った中でも最高傑作。IS適性が高くないとうまく作動しないのが難点なんだが。」

ソレめちゃくちゃ人選ぶじゃん。

「ま、術後の経過をモニターしても問題は無いし、何かあればここに連絡してくれ。」

そう言って連絡先を書いたメモを渡してくれた。

「いやぁ、こんな時のために私は研究してきたのだ!無駄ではなかった!・・さて。じゃ、私も帰るから。」

さっきまでテンション高く叫んだりしていたのに、いきなり素に戻って帰り始める。何なんだこの人。

「あ、そうそう・・一応、後でギブスかなんかしといた方がいいよ。さっきセンセに聞いたらさ、君。この事隠したいみたいだし。」

「・・良いの?」

「いいよ。別に私は有名になりたくてこんなことしてるんじゃないし。やりたいからやるし、やりたくないなら断る。」

かっこいいな、あんた。すげぇよ。

「ん?尊敬したかい?ま、それでけだからさ。じゃあね。」

「・・・ありがとう。」

「あぁ。」

それだけ言って手を振って去って行った。世の中には凄い人もいたもんだなぁ。

じゃあ、さっきの先生の所に行くか。

 

と言う事で処置(したような工作)をされて帰ってきたのが次の日になってました。手術の麻酔切れるまで意外に時間がかかっていたみたいだし、昨日も夕方だったから仕方ないか。

「・・どうだった?」

「完全に骨折。後遺症が残るかもしれないと言われた。」

「・・そうか。どうする?篠ノ之に何か言う事はあるか?」

首を振って、

「・・・織斑先生、相談。」

「相談??」

昨日から考えていた事を話すことにした。

私は何も変わっていなかった・・・。結局は暴力しかないのだ。何故私は力を振りかざすしかできないのだ?あの時に私は変わると考えたはずだ。なのに・・・金宮を傷付けた…。怪我をさせてしまった。

「わたしは・・・。」

急に部屋に光が入ってきた。ドアが開いたそこには織斑先生が立っていた。

「篠ノ之、出てこい。話がある。」

私はどうなるのだろう?学園から退学とかかもしれない。一夏と離れるのは・・もう、嫌なのに・・。それも、私の所為か・・。

 

「篠ノ之箒、お前には反省文30枚書いてもらう。」

「・・は?」

部屋で待っていると織斑先生は篠ノ之を連れて来て僕の前に座らせた。

ここは指導室。他の誰からも見られない所だ。

「部屋の中での危険行為、流石に目を瞑る事は出来ない。・・・が」

呆れた顔でこっちを見る。いや、僕にも責任あるんですって。

「《被害者が『居ない』》から振りまわしたことに対しての反省文と言う事になる。」

「はぁ・・。」とため息をつきながら僕の隣に座る織斑先生。僕、そんなに呆れることしましたかねぇ?

「ど、どういうことです!?何故!?私は・・私がしでかした事は・・!」

「・・何もなかった・・とは言わない。でも、折れた事は僕達しか知らない。だから・・。」

制服の下で隠していた腕を見せる。そこから出て来たのは普通の人より白い、僕の肌。そして、怪我の痕が見えない腕。

「・・・はぁ!?え?!ど、どういう事だ!?確かにあの時折れていたはず!?」

「・・ここに・・。」

(ホントは無いが)傷を隠す大きなガーゼと包帯を巻いてある。そして確認するように言う。

「『僕は、怪我をして大きく切ってしまった。だから病院に行った。』・・それで良い?」

「良いも何も、私はお前を・・」

僕は首を振る。

「アレは半分、僕の責任。」

「・・・どういう事だ?」

そこで聞いて来たのは織斑先生だった。

「鈴なら、あれは避けれたかも。それなのに間に入ったから。」

「しかし、それは可能性の話で・・」

「鈴さんは軍関係者。ISの扱いにも慣れている。部分展開もできるだろう。」

「それはそうだが・・。」

「僕はISの展開に躊躇した。だから自分の責任。」

そろそろ鬱陶しくなったのでこの話は終わり。とばかりに席を立つ。

「お、おい!まだ話は・・」

「言いたい事は言った。後二人にも話に行くから。」

最後に後ろに振り向きながら、

「僕は、面倒が嫌いなんだ。」

と部屋を出る。面倒なことは好きじゃないんだけどね、でも、僕の責任もあるからケアしてか無いとね。

 

部屋の前でドアをノックする。

「・・誰だ?」

「僕。」

その一言を聞いた途端に一夏君はすごい勢いで部屋を開けた。

「た、立木!?お前、腕は?!」

「その話をするから中に入れて?」

「あ、あぁ。」

中に入ると、勝手知ったる人の部屋。お茶を二人分入れて座る。軽く説明して最後に分かりやすく要件をまとめる。

「とりあえずは、腕については大丈夫。篠ノ之も反省文だけで済むはずだよ?」

「そ、そうか。だが、あの時確かに折れて・・」

「一夏君、被害者は『居ない』。それでいいんだよ。後は君にお願いがあってきたんだ。」

「・・俺に?」

頷いて真剣な表情をする。(つもりなのだが結局はいつもの無表情)空気を感じ取ったのか一夏君も話を聞く体制になる。

「この一件で篠ノ之は大きく心に傷をつけた。いや、自分の戒めみたいに扱うかも。それで、一夏君には彼女の心のケアを頼みたい。」

真剣な顔をしていた一夏君は『はぁ。』とため息をついて座り直す。

「・・・言われなくてもそのつもりだ。箒は大事な幼馴染だ。俺の力が必要なんだったら何時でも貸すつもりだよ。」

コレは言わなくても良いことだったか。まだまだ僕はこの男の事を知らな過ぎるようだ。「そうだ、逆に言う事がある、つーか頼みごとかな?」

「何?」

「鈴も落ち込んでるからさ、助けてやってくれよ。」

「今から行くところ。」

「これも言われなくてもってことか。はは。」

お茶お飲み干し流しに置きながら廊下に出ようとする。

「・・立木、俺、さっきまで考えてたんだ。人を守りたいってさ、甘く思ってたんだと思う。」

振り向くと俯いて肩を震わせながら一夏君は話す。

「やっぱさ、お前みたいにさ、自分が傷つく覚悟がなかったと思うんだ。‥だからさ、ソレを持つには強くならなくちゃいけないんだと思った。体も、心も。」

「それで?諦めるの?」

「いや、諦めない。絶対強くなって守って見せる。いずれは、お前も、千冬姉も。」

「・・・期待してる。」

それだけ言って廊下へ出る。ふふ、青春だねぇ。僕の人生面白くなってきたね。神様感謝感謝。

 

鈴の部屋に行くとちょうどルームメイトらしき人が出て来た。

「凰 鈴音の部屋はここ?」

「え、そうですが・・金宮君?」

「用事があるんだ。鈴居る?」

「居ることには居ますが・・」

とドアの方に目を向けて気まずそうな顔をする。落ち込んでいるのか。ああ言っちゃったから自分の責任だと思っただろうしなぁ。

「大丈夫。ちょっと話させて?」

「…分かりました。少し外回って来ますね。」

気がつく子でよかった。ドアをノックして声をかける。

「鈴。」

中から《えっ!?》と言う声と《うわわ》と焦る声、そして『どしゃ』とこけたような音と《うべぇ》と言う声が聞こえた。何しているんだ?

「た、立木!?あ、あんた・・・」

「鈴、中に入らせて。」

「あ、うん。」

部屋の中に入ると布団がしわくちゃだったり床に落ちていたりする。こいつ、布団にくるまって誰にも会いたくない。とか言ってたのかも。椅子に座りつつ話をした。今回の一件の結果と対応。で、僕も他の二人も今まで通りに過ごすと言う事も。

「それで、ほんとに大丈夫だったの?」

「…ん。」

詳しく答えずに腕を見せる。

「・・ホントに怪我してるだけみたいね。あの時、折れてるように見えたんだけど。」

いろんな意味ですごい医者だったよ。ま、不便さは感じないからいいけどね。

「だから、大丈夫。鈴は心配しなくていい。責任も今回は僕の所為もあるから。」

席を立ちながら頭をぽむぽむ叩く。

「で、でも・・。」

「…麻婆豆腐。」

「え?」

「今度、麻婆豆腐を作って。それで許す。」

前好物だったもので、少し辛めの方が好きだ。

「わ、わかった。今度作ってあげるわ。とびっきり美味しいのをね。覚悟しときなさいよ。」

「期待しとく。」

手を振って部屋から出て行く。一応途中で織斑先生に連絡してどうなったかだけ報告しておいた。何故かため息をつかれたが。

・・・お腹すいた。ご飯食べに行こう。食堂に向かって歩き出した。

 

 




実際、麻婆豆腐って辛いのも美味しいですよね。
四川風が山椒効いてて好みです。

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