作業は意外と時間がかかる。覚えていると言ってもISに関係するものは初めてだからだ。ま、なるようになると思い初日は切りの良い所で寝た。
そして、何も無く授業と訓練と物造りで二日過ぎた時、事態は動く。
「金宮、お前にも専用機が与えられることが決まった。訓練機のデータを見た教師や技術者から進言があったそうで、デュノア社から一機回されることとなった。よかったな。」
「何時来ます?」
「最低三日、早くて明日だ。」
「早いですね。」
「現行機をデータをもとに改造してだから割と早いらしい。」
なるほど、デュノア社と言う事はラファールの会社、最近は思うように開発が進まないようで、これを期に最近の低迷から脱却を考えているのか。
「分かりました。」
「それに当たり、何かどうしてもといった機能はあるかと聞いてきているぞ?あっちもやたらと気を利かせて来ているが。」
「展開時にこれを装備したいです。」
昨晩完成したばっかりのバイザーを渡す。
「・・・ふむ、わかった。これは責任を持って預かる。他は無いんだな。」
「完成してから。不備は直接話します。」
「わかった。ではな。」
専用機、デュノア社からか。使いやすい事を祈ろう。
二日後、届いた機体には正直驚いた。
「ラファール・リヴァイブを回収し元からの性能、起動力や推進力に見直しをかけました。もともと考えていたプランだったので時間はかかりませんでしたが、その分まだ色々と補正していかなければいけない点が多い機体です。そのテストパイロットしてですが、この機体を専用機としてお渡しします。問題点の多い機体ですので以後、この機体名は《創世の機体『クルスニク』》と呼びます。では早速、貴方のパーソナルデータを記録しますので作業にかかってください。」
デュノア社から来た作業員兼開発責任者が長々と説明してくれた、早口で。とりあえず、背中を預け装着。初期設定をしてファーストシフトまで行くつもりだ。その間に、機体の確認もしておく。スラスターは後部に大きめの羽が二つ、しかし、形状は鳥の羽を大きく広げた時の様な、歯車の一部を切り取ったような形状だ。足にはそこまで装飾が無くスマートな形状だが、普通より少し大きめだ。腕は肘に黒っぽい棘がありそれも機動力に適した形状らしい。しかしラファール・リヴァイブの特徴でもある背中の大きな多方向加速推進翼が見当たらない。少し調べて見ると、背中の羽が普通より形状が複雑なのだが、それが多方向への推進翼として装備されている。
「・・『クルスニク』。あきらかにこれも。」
正直、あの神様が何かしているとしか思えない。確かに生前から時計は持っていたが、それとゲームをかけ合わせてこうするとは…。ん?じゃあ、いつか時計が関係して覚醒でもするのか?・・・それはちょっと、なぁ。
「データ、セットアップ完了しました。《クルスニク》、承認お願いします。」
『【金宮 立木】マスターとして承認。』
その言葉と一緒に目の前に承認と書かれた画面が広がる。思考操作で良いそうだから押す事を考えると眼元にバイザーが装着され、さっきまで白っぽかった機体色が黒と灰色になる。
『ファーストシフト終了、セットアップ』
「はい、また何かあればこの機体に連絡先でありますデュノア社のアドレスを登録しましたのでそちらに。では。」
まくしたてるように早口で言って、作業していた機械を片づけ始める。えー、試運転くらい見ないのかよ。
一応アリーナの使用許可を取ってあるので機動訓練をして見る。
分かった事はPIC操作でのホバー移動よりも地面を蹴るようにして一時加速し、スラスターを使いさらに加速するという二重の加速方がいいらしい。ま、もう少しやり様はあるがある種イグニッションブーストの劣化版な感じだ。
武器の切り替えは訓練機よりスムーズによりシャープな感じでできるようになっている。高速切替でハンドガン、マシンガン、ショットガン、ライフル、ナイフ、と換えた所で装備のリストを広げると違和感を感じるモノがあった。
「・・ハンマー?槍?双剣?」
おいおい、これはまさしくルドガーな装備じゃないか。絶対あの神様、干渉してるって。
しかも、手に持ってみるとすげぇなじむ。何だこれ。
さらにグレネードランチャー、エネルギーライフル、ミサイルランチャー、ガトリングと色々と揃っている。マジでこれなんで入ってるの?あれ、『拡張領域』広すぎるだろ。
いや、こんなに装備いらない気がする。もっと何かできる事無いかな?とりあえず、ナイフを今は入れておこう。多めに。
そうか、追加パックの代わりを入れればいいのか。そういや部屋にちょうどいい設備もあるし原案でも考えて見るか。待機状態に戻すと首にかける金色っぽい懐中時計になった。
うわぁ、こんな所までエクシリア2か。
・・・まぁ、僕の趣味似合っているしいいか。
そして、今日は決闘の日。第三アリーナを貸し切りクラス代表を決めるために三人でのバトル。いや、じつに面倒だ。
「始めはオルコット対織斑、二戦目はオルコット対金宮、三戦目は金宮対織斑の順で行う。その際に公平にするため織斑、金宮は試合が無い時はモニター観戦できない控室で待機だ。」
「はい。」「・・はい。」
「では、織斑、オルコット準備しろ。金宮は控室へ。」
「「はい。」」
返事もせず歩いて控室に行く。座りこんで今までの事を考えて見る。なんでこんな事になるんだろうな。一夏君はトラブル体質かもしれないしあまりかかわらないほうがいいのかな?
・・僕自身が多分巻き込む事もあるんだろうな。あの神様が居るんだし。
諦めた。いろいろと。
呼び出し音が聞こえてきた。終了したのかな?
『金宮、織斑の試合が終わった。準備しろ。』
「はい。」
アリーナのピットに向かう。その途中一夏君とすれ違う。
「・・負けた?」
「せめて、勝った?て聞いてくれよ。」
「ルーキー対経験者。負ける要素が大きい。」
「まぁ、そうだな。はぁ。」
気を落としてと言うか肩まで落ちてるが、いっか。とりあえず、ピットに行こう。
「金宮来たか。準備しろ、オルコットは補給完了している。」
「クルスニク。」
その言葉と共に起動、手足の動きをチェック。さらに、データチェック。オールグリーン。
「行く。」
カタパルトに乗って加速。飛び出しながら空中で一回転。その後着地。
「なんですの?新しい機体のお披露目とでも言いたいのですか?」
「関節部の稼働チェック。対人戦は初めて、どうなるか分からない。」
「でも、そんな地面に立つような機体でこのブルーティアーズを止めれると御思いですか?」
その言葉と共に銃を構える。ライフル、データ・・スターライト‐エネルギーライフル。
首を振りながら一言最もわかりやすい返事。
「落ちろ。」
高速展開でライフルを出しロックをせず撃つ。すぐに高速切替両手にマシンガンで接近する。
「なぁ!?」
ロックもなしに撃たれた弾丸によって構えを解いて緊急回避をするしかない。その回避方向を読んで、ロック、マシンガン掃射。
「くぅっ!?動きが読まれてますの?!ソレならっ!」
シールドエネルギーを大きく削り、焦った所でさらに揺さぶりをかけると、思った通りにビットで攻撃をかけようとビットを展開する。空中を蹴るように移動、高速切替をしながらスラスター制御で体制を直しナイフを投げる。さらに視界から外れるように移動。もう一度ナイフを投げる。
「そっちらに逃げたのはわかって!?えっ?!」
ライフルを向けようとしたところにナイフが刺さり右腕が開く。さらにそこへもう一本のナイフがあたりシールドを削る。
高速展開、ハンドガン。
「レインバレット、・・タイドバレット。」
空中に向け数発発射し、さらに横から数発薙ぐように撃つ。
「そのようなものに当たりは・・きゃぁあ!?」
ビットに向かって打ったタイドバレットに気を取られ空中から落ちてきたレインバレットにオルコット自体がもろに当たる。
高速切替、ハンマーを出して前方に投擲。
「サキオン・アクセ。」
ハンマーに続いて前進。最後に双剣を出しとどめ。
回転して飛んでくるハンマーに気を取られたオルコットは回避した時に完全な無防備になっている。
「ひぃ!?」
そりゃ、回転しながら飛んでくるハンマーは怖いか。しかし、避けたそこには最後の仕掛け。これで終わり。双剣の連続切りでとどめをさす。
「・・・双針乱舞!」
「きゃぁぁぁああ!!」
そこでオルコットのシールドエネルギーが切れてブザーが鳴る。
『勝者、金宮』
ピットに戻ると織斑先生が怖い表情をしている。その横へ行き、補給を始める。
「おい、金宮。どういう事だ?」
どういう?要領を得ない質問に首をかしげる。
「お前はIS操縦が初心者なはずだ。しかし、先ほどの動きは只者ではない。それはどういう事だときいているんだが?」
納得。初心者がありえない動きで経験者をボロボロにしたからか。
「調べた。ブルーティアーズはビット操作と本体での移動が同時にできない。そこを突く作戦。あとは体が自然に動く。」
実際、頭で考えた通りに機体が動くから殆ど機体の動きには集中してない。
「・・・ならいい。何か思い出したら言え。それと、織斑の準備がで来たようだ。」
「完了。いける。」
「なら言って来い。私の弟に火を付けてみせろ。」
「…‥焼死体はグロい。」
「違う!!やる気を出させろと言う意味だ!というか殺すな!!」
ならいいか。一瞬何を言っているんだこの教師とか思っちゃった。
「いきます。」
カタパルトに乗りアリーナに出る。
「お、来たか。立木のは俺の白式と逆な感じの色だな。」
そう言った一夏君の機体は白くて目立っている。
「・・やろう。」
こんな観衆にさらされ続ける気も無いのでさっさと始めよう。と促す。
「そうだな、行くぞ!」
しかけるのにわざわざ言うなんて大した騎士道精神だね。
双銃を構え撃って足を止めさせる。
そして銃を投げ上げる。一夏君はそっちに目が行ったようだ。本体はこっちなのに。甘いと言うしかないな。そこにハンマーを持って突っ込む。一夏君がこっちに気がついたがもう遅い。一夏君の腹を一発殴りながら抜ける。ハンマーから双剣にして折り返しながら切り抜け、さらに反対の手でもう一度折り返しざまに切る。
「・・せい、そら、祓砕・斬・・」
落ちてくる銃をキャッチし、マガジン内の弾を打ちつくす。
「・・零水。」
最後の言葉と共に煙の中から現れた一夏くんのシールドエネルギーは無くなり、僕の勝利が決定した。
主人公なのに一番あっけない(笑)