が、【最後まで】ごゆっくりご覧ください。
▼時間は少しさかのぼりここはとある国にある篠ノ之束のラボ。
「ふふ、彼の使っていたコアがなんか変な進化の仕方してたみたいだから気になってたんだよねぇ‥ん?なんだろこれ・・」
そこで何かおかしなデータを発見した。コアの制作者でないと気がつかないほどデータの奥底に知らないデータがあった。
「ん~?どう言う事だろう?」
こんなデータは作った覚えも無いけど他の凡人にはここまで深くにデータを創る事は出来ないはずだし、・・そうか。
「そうか!よくわからなければいったん端末から外して隔離して開いてみればおっけーか。流石は私、あったまいいね!」
そうと決まれば一度端末から外して、外部や近くの機器と繋いでない隔離した部屋で接続し直してツールを走らせる。解析途中におかしなエラーが出るのをちょちょいって感じで直してさらにデータを解析していく。
「よーし、これで。そりゃそりゃそりゃ!・・そりゃ?」
最終的に出たデータを並べ替えるとそのデータは一つの形をとった。コアが光りその光がデータによって形を作り始め私の目の前で一つの形をしてその光は収まった。その形を満た瞬間に私は驚いてしまう。
「な、ななな、なんじゃそりゃ~!!」
叫ぶのも仕方ない。そこにはそのコアを使用して作ったISの持ち主であった、《金宮立木》が浮いていたのだから。
立木はゆっくりと目を開き私に向かって手を伸ばしてきた。どうしよう、アレはなんだろう?私をどうするつもりだろう?そんな疑問が頭の中を跳ねまわりまともに思考できないでいると彼は口を開き、こう言った。
『‥コアに、エネルギーをください・・』
「・・はい?」
~
『いやぁ、流石は博士だ。ただのデータ体になった僕を形作るのなんて大変だったでしょうに・・』
「そりゃ、私は天才だからねぇ。そこらの凡人と一緒にしてほしくないなぁ。」
からかう様な事を言ったもんだから拗ねる様な顔をして束博士は言葉を返してきた。あの後、コアが完全に隔離してあったからエネルギーが足りなくて大変だったよ。
『そりゃ失礼。ま、こんな状態でもまた出逢えたし、感謝しますよ。ははは・・』
「そうかいそうかい。‥で、なんで君はこんな状態なのか分かるかい?」
やっぱりここに居る事に疑問を持ったか。僕もだが。
『さっぱりですねぇ。なんか、こう、気がつくと暗いとこに居たって感じだったからなぁ。あ、そうそう、なんか、こう、《目が覚める》ような感じがして気が付いたら博士の声が聞こえて来た。って感じでしたね。』
「ふ~ん、最後に君がコアを心臓がわりにしていたって聞いたからそれのせいかな?」
『実際、僕にも詳しい事は分んないしねぇ。あ、後、もうひとつ気がついた事が・・』
「何?今はなんでも聞くよ?君のその状態気になるからねぇ。」
普通じゃない状態の僕に興味津津の束博士は目を輝かせて聞いてくる。
『とりあえず、こうすることができる。』
そう言ってコアの中に入るようにして博士の目の前から消える。
「ん?そこに入ったりできるってこと?」
『違う違う。博士、後ろ後ろ~。』
そう言った後振り返った博士は顔が引きつっていた。博士の背後にあったのは大きなモニター。そこに映る大きな僕。そう、モニターや機械の中を移動したのだ。コアからコアネットワークを伝いラボの中の通信機、そのまま色々な機械の中を通過してモニターに入った。
『あ、コレ実体化するより楽です。又一つ分かりましたよー。』
画面の中で手を振るようにしてはしゃいだり、逆さになったりする僕。あぁ、これ以外に楽だ。
「でも、データ体じゃ少し危ないかな。コンピュータウイルスやファイアウォールは?」
『あぁ・・、へぇ‥、今調べるとこの《体》結構変で一応複製ができるらしいです。今ネット上のとあるサーバーに僕のバックアップ置いときました。《この僕》が消えたり死んだりすると《もう一人の僕》が《目を覚ます》らしいですね。つまり、記憶と感情を持った状態でコンティニューするみたいな感じです。』
「便利すぎじゃない?」
『でも、この体、物触れないですよ?所謂ホログラフィックみたいな?あと、一応このコアが止まると僕自身も消えるみたいですね。何と言うか、このコアが壊れ無ければずっとこのまんま的な?』
「あぁ、それじゃ面白くないね。」
『ま、僕も余生を過ごす感じでって‥死んでるくせになぁ。あ、アレか、自縛霊?みたいな感覚で過ごすって言うとぴったりときますね。あ、何かほかにありますか?』
「うーん、ま、何かあれば君が出て来たコアを応用して通信するからその信号を拾ってくれる?」
『ま、気がつけばまた来ますよ。では、僕は学園の自室に戻ってみますね。ではまた。』
「うん、それじゃあね。ばいびー。」
そうして博士との会話を終了した後、IS学園の部屋に戻った。パソコンの回線から侵入しそれを利用し端末の外部出力を応用してホログラフィを作り出す。
『ふぅ、こんな状態で部屋に戻って来るなんてなぁ。‥もうベッドで寝ることもご飯も食べることもできないのか‥あぁ、趣味が・・ネットサーフィンとかするかな?』
そんな事を呟いていると背後のドアが急に開いたそこに立っていたのは、
『あ・・』
間抜け面をした一夏だった。
『ヤバ‥、え~と』
どうしようか悩んでいる間にも一夏は目をこすったりかなり早い速度で目をぱちぱちとしている。あぁ、信じれないだろうなぁ。
『お、お帰り?』
そうしか僕に言う事は出来なかった。その後。寮中に響くほど叫んだ一夏の声が記憶に残っている。
◆
『と、言う事で、あー、僕は幽霊?みたいな存在ですよ。』
「あんたって、ほんっっとに普通じゃないわねぇ。」
『僕もそんなこと言われてもねぇ・・ま、普通だとは自分でも思ってないけどね。』
今まで色々としてきたし、もともとこの世界の住人じゃないし。そう思いつつおでこが赤い鈴に言葉を返す。
「で?お前はどうするんだ?」
『はい?どうとは?』
聞いてきた箒についオウム返しになってしまう。
「いや、このまま生徒として復学するとか・・。」
「いやいや、箒。立木はもう戸籍上?死んでるから生徒としては無理だよ。」
「悲しい事だがそうだろうな。だが、私はお前が戻ってきてくれてうれしいと言う事は確かだ。」
「ラウラ、なにげに高感度上げようとしてない?」
顔を赤くしてニコッと笑うラウラはなかなか可愛かった。が
『ラウラ、悪いが、もうなでてあげる事は出来ないからな。』
もう何も触れなくなった僕はラウラの頭の上で手を振るだけだ。
「がーん。」
口ではそんな事を軽そうに言いながらも顔は相当にショックなのが伝わってきた。
「さっきの鈴さんを見たら分かりますでしょう?」
「うううう、五月蝿い!」
さっきの鈴とは、僕を見た瞬間に感極まり抱きつこうと走ってきたが、僕に触れる事は出来ないのでそのまま通過し後ろの壁に激突したのだ。
『言うのが遅れてごめんねー鈴。』
「うぅ、まぁ、仕方ないわよ。アンタが悪いんじゃないし・・。」
鈴は拗ねたような顔をしながらも許してくれた。
「じゃ、どうするの?」
『うーん、多分ここに帰ってきたりする事はもうないと思う。世界中、いろんなところを回ってこようかな?』
この時代、機械類がない所の方が珍しいからな。
『世界の果てでも君たちがちゃんとやってるかチェックしてやるけどな。』
「お前‥行っちまうのか?」
「ここに一緒に居てくれないのか?!」
一夏とラウラが止めに来るが、僕は首を振る。
『僕がいると君たちは僕を頼ろうとするかもしれないからねぇ。』
わざとらしい黒い笑みを見せて、からかってみる。
「「「「・・・。」」」」
と誰も言い返してこない。
『あれ?どうしたの?』
「い、いや、お前の表情なんて初めて見たから。」
「そうやって眼元が見えて笑ってるの初めて見るし、それに《赤い目》がその表情と一緒だとあまりにマッチしてたから‥。」
『・・見惚れた?』
「ち、違う!///ちょっとびっくりしただけだ!」
そう言って否定したのは箒。ま、どうでもいっか。
『あ、そうそう。一夏、僕の制服ってあまりサイズ違わなかっただろう?代えの服として使っていいよ。』
「あ、・・そうだな。着させてもらうよ。」
『おう。あとは、ほしいもんがあったら持って行ってくれ。後は捨てていいからさ。』
「あぁ、わかった。だが、良いのか?」
『良いよ。好きにしてくれ。僕は死んだんだよ。ここに居るのは亡霊とか未練とかそんなのだよ。‥だから、見てるからな、お前らの事。』
「・・ふっ。そこに居ない事、後悔させてやるくらいしっかりとやり遂げてやる。」
『そうだ、その心意気や良し。じゃ、そろそろ教師が来るようだし、去るか。あ、織斑先生と山田先生にはよろしく言っといてくれ。ま、伝えるかは一夏次第だがな。じゃ、またいつか。』
そう言って僕はホログラフィックの装置を切り、ネットの中に潜った。涙みたいなものが見えた気がするが、僕はデータ体だ。そんなものは気のせいだ。と思いそのまま色々と流れてくるデータの間を通りさらに深くへと潜って行った。
~
「ははは・・、やっぱ敵わねぇな。アイツには。」
立木が居なくなった後皆の顔は帰って来た時よりも明るくなっていた。だが、やっぱり別れって言うのは寂しいものだ。
「生きては無いが、‥また‥っく、会えたの‥だ。・きっと‥また、会えるさ。」
そう言っているのはラウラ。だが、言葉もとぎれとぎれなのは笑いながらも泣いているからだ。そうやって気丈に振る舞えるコイツを俺は尊敬する。
「うん、っうん。また会えるよ。だからさ‥、」
やっぱり涙を流しながら笑顔のシャルロット。コイツも凄い。周りを見てソレに合わせる事も、行動することもできる。その器用さそして優しさ、俺には出来ない事だ。
さらに続くは
「そうよ!っぐ、私たちがアイツの夢を継いで叶えた時あいつは、ひっく‥絶対来るわ。まぁ、逢わないなんていってないし、ぐずっ、途中で顔見せにくるかもしれないしね。」
「そうですわ。あの人は、結構、意地悪ですものね。」
ボロボロ泣いているのに笑顔を浮かべたままの鈴。それを受けて答えたのは泣いてはいないがどう見ても眼元がうるんでいるセシリアだ。こいつらの前向きさを俺は学んでいこうと思う。
「あぁ、私もアイツの強さを近くで見た。多分私ではあの域に行くのは一生かかってもできるか分からない。体としても、心としても、アイツの強さは遥か高みだった。だが、諦めると言う気も無い!そこまで一緒に行こう!一夏!」
「‥箒。…あぁ!俺はアイツ以上に行ってやる。アイツが成層圏に居るんだとしたら俺はもっとその上に、宇宙まで。いや、銀河の外までも行ってやる。そして、アイツの見たかった物、見たかった事、全部、俺が受け取ってやる!」
俺は、やるぞ!たとえ、今すぐは無理でも、どんなにつらい目にあっても、諦めない。アイツの為に、皆のために、そして、
「俺の為にも!!その時には、」
拳を上げた空はどこまでも青く澄みきっていた。声は空気と混ざり風に乗って世界のいたるところまで流れて行く。そして、荒れ果てた荒野の真ん中にポツンとある壊れかけた戦車の上に座る立木の元へと一陣の風が吹いた。
『…正解だよ。一夏。僕の為じゃない、君の答えを探して、見つけ出せ。もし成層圏が遠くてどこまでも広がっているように見えても無限じゃない。その先はあるのだから。だから・・』
だから、
「見つけて見せる。答えを!」『見つけて見せろ、その答えを。』
《For Answer》