インフィニット・エクシリア   作:金宮 来人

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はい、作者の来人でございます。
残す所、少なくなりました話ですが、この先は読む方に取って意見が分かれる終わりとなっています。
いかなる終わり方も受け入れていただけると幸いです。
では、続きをご覧くださいませ。


第24話

一夏が旅館に帰ると全員が待っていた。その横には鬼の形相の千冬が待っている。

「一夏、どういう事だ?説明しろ。」

「えーと、その、何故怒ってらっしゃるのでしょうか?」

「そりゃ、通信もせずに勝手に行動して一人になったからよ。」

鈴が答えると「その通りだ。」と千冬も肯定する。

「…ごめんなさい。」

「誤るより説明しろと言っている。それと、軽くは聞いたしモニターもしていたが、あの黒いのはなんだったんだ?」

「そう、アタシもそれが聞きたかったのよ!」

「あの、立木の格好した奴ってなんだったの?!」

そう鈴と、シャルが前に出て来て言った。二人とも立木に対して淡い恋心を抱えていたから偽物だと許せないのだ。

「あれは‥その・・」

「い、一夏!?」

箒が急に叫ぶし、他のメンバーも驚いた顔をしている事に気がついた一夏は首をかしげる。

「どうした?」

「こっちのセリフだよ!なんで、《泣いてるの》?」

その言葉にどうしてか考えそのまま眼元に手を持っていくと指先が濡れた感触。頬を流れるくらいに涙があふれている事に自分自身が気が付いていなかった。

「あぁ、何か大事なものを無くすってのはこんなにも虚しいのか・・。」

そう呟き、手に持っているコアを見る。そしてその手を目の高さまで上げて、

「これが、アイツのコアだ。ナンバーは確認してほしい。そして‥」

一夏は一瞬どう言うか悩んだがそのまま真実を伝える事にした。

「あいつは本物だった。束さんが言ってた通りに変身した姿の。でも、すでにしゃべれないし姿も変わり果てていた、それが見られたくなかったって・・。」

アイツの最後の姿、黒くなっても初めて見たあの笑顔が一瞬頭の中をかすめる。

「でも、‥アイツは、最後に笑ってたよ。」

そう伝えると、皆が下を向いたり顔を背けていた。鈴とシャルはすでに肩がふるえていた。

「そうか。ならば、一夏、最後にそのコアをこっちに渡してくれ。それで今回のミッションは完了とする。」

千冬が手を前に出しコアを受け取ろうとする。一夏も手を伸ばし千冬の手の上にそのコアを渡そうとしたところで、一瞬その間を黒い影が素早く通り過ぎた。

「‥どういう事だ?束。」

「いや、ちょっと待って?‥むむ?やっぱり‥でも、あぁ、そうか!」

そう言ってそのコアに計器類を《どこから出したのか分からないが》つなげそのまま目の前に展開したコンソールで色々と見る。そして、それをメモリらしきものに入れて一緒に新しくコアを出して千冬に渡す。

「ごめん、ちーちゃん。このコアは私が調べるからこのコアとメモリを渡しとく。じゃぁねぇーーーー。」

そう言うだけ言って凄い速度で走って行った。

全員があまりの速い展開についていけず、代わりのコアとデータがある事で相手に怒られる事も無いと思い千冬は諦めた。

「…デュノア社にはこのコアとデータを渡してくれ。」

「え、あ、はい。」

山田先生にそれを渡しつつ、片手はこめかみを押さえていた。

 

気がつくと僕は黒い空間に浮かんでいた。あれ?死んだら元の世界、神様の居た所に戻るんじゃなかったのかな?

そのままちょっとボーっとしていると少し目の前が明るくなった。

『ん~?どう言う事だろう?』

声が聞こえて来た。この声は聞きおぼえがある、たしか・・

『そうか!よくわからなければいったん端末を外して隔離して開いてみればオッケーか。流石は私、あったまいいね!』

うん、このハイテンションは聞きおぼえがある。今も答える人は居ないのに一人でうんうん言いながらなんかしているらしい。そして、

『よ~し、これで。そりゃそりゃそりゃ!そりゃ?』

その声と共に僕の目の前が明るくなり次の瞬間に聞いた音は、

「な、ななな、なんじゃそりゃ~!!」

と叫ぶ篠ノ之束の声だった。

 

臨海学校も終わり旅館から帰るためバスに乗り込もうとする。しかし、一夏はそこで後ろから顔も知らない美女に声をかけられる。

「君が《織斑一夏》君?」

「…誰ですか?」

「私はアメリカのテストパイロット、《ナターシャ・ファイルス》よ。君たちの言う福音のパイロット。」

「・・・何か用ですか?」

「いえ、君たちに謝りたく「いりません。」・・え?」

一夏の顔を見るとその顔は怒りとそれを抑えるようにしかめた表情が見えた。

「たしかに、俺には貴女を殴りたいほどの怒りを持っているように見えるだろう。だけど、アイツなら『貴女は悪くない。』とか言っただろう。アイツ曰く、《女性は命をかけてでも守れ》だと。だから俺には【謝られる理由がありません】。…では。」

そう言ってバスに乗り込む。その背中を見てナターシャは胸が締め付けられる思いがした。その直後背後から肩を《ぽん》と叩かれた。

「だから言っただろう。行けば後悔すると。」

「でも、一言でも言いたかった。それに貴女の弟さんも見て見たかったし。うん、私はこのまま悔しさを持って帰るわ。彼の背中を見たら何も言えなくなっちゃったし。」

振り向くと、後ろから声をかけた織斑千冬、さらにその後ろに山田麻耶も居た。

「あいつ等は強い。だが、まだ子供だ。受け入れ辛いんだろうさ。…あと、ナターシャ・・」

千冬はナターシャの肩を握りつぶすような勢いで掴み、目を合わせる。

「‥アメリカ軍にはIS委員会を通して処分が行くだろう。私の弟を陥れようとし、あまつさえ生徒の命を奪った責任、後悔させてやるからな…!!」

低くつぶやくようにのどから出て来た声をした千冬の眼は、今まで見たこと無いほどの怒りに燃えていた。ナターシャは初めて見る千冬の本気の怒りに恐怖した。

 

学園の寮に帰ってきた一夏は自室に荷物を置いた後、何よりも先にやる事があった。

それは、

「…アイツの部屋、片付けておかなくちゃな。」

金宮立木の部屋を掃除する事。そして、その部屋の鍵を返還することだった。そのために自分の事を後回しにしてでさえ彼の部屋の前に来ていた。

「アイツの荷物はどのくらいあるのか・・な・・・・?」

一夏は中に入って二、三歩くらい歩いた所で立ち止まり、眼をぱちぱち。その後でごしごしと擦ってもう一度部屋の中を見る。

『・・?あ、・・ヤバ・・どうしよ?・・えっと、お、お帰り?』

部屋の中に居たのはこの部屋の持ち主であったはずの少年。しかし、その髪の色は黒から青に変わり顔のほほあたりに長方形のパーツらしき部分が付いている。そして、これが一番違っている、その少年の《足がない》と言う事だった。

「な、なな、なんじゃそりゃ!!お、おばけえぇぇぇぇぇ!?」

『やっぱりかーーー!?』

二人の声が響いた。

「な、なんの騒ぎ・・!?」

「どうしたのい・ち・・かああぁぁぁぁああ!?」

「な、何がありましたの?・・・・ふぅ・・。」《ばたん》

「せ、セシリアが気絶してる?!・・なにが・・はぁぁぁぁあああ!?」

「ど、どうした、敵襲か!?」

上から鈴、シャルロット、セシリア、箒、ラウラの順だ。一人だけどこか抜けているラウラだけが浮いているようだが、実際浮いているのは部屋の中に居る少年の方だ。

『あー、こっそりしとこうと思ったのになんでいきなり見つかっちゃうかなぁ?』

頭をポリポリと書くような動作で後頭部に手をまわして照れた表情をしている少年。名前は《金宮立木》と言う、先日ISの暴走事故《銀の福音事件》の一夏を庇いその戦闘中で一度死亡し、その後コアを使用して何とか蘇生したものの自身の力の副作用によって再度死んだばっかりの少年だ。彼が消える所も一夏は見とどけ、涙して別れを告げたばかりというのに二日と空かず再会を果たしてしまったのだった。

 

 


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