インフィニット・エクシリア   作:金宮 来人

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この物語も佳境に入って来ました。
では続きをどうぞ。


第22話

作戦は先ほどとあまり変わりない。しかし、今回は私とシャル、鈴はあまり速度が速くない。誰か一人はセシリアに運んで貰い、残りは合流後支援で行こうと思う。今の所私が行こうと考えているが、どうだ?」

ラウラが指揮をとり全体への説明をして、意見を聞くため見渡すとセシリアが手を上げる。

「なら、そこにはシャルロットさんが良いと思いますわ。中距離支援としては武器も申し分ないですし、周りに的確な指示ができると思いますから。」

「ふむ・・確かにな。私より攻撃のしやすさはあるし、小回りはきくか。どうだ?シャル、行けるか?」

「そうだね。‥うん、ボクが行くよ。それに一応ボクのパッケージは防御パッケージ『ガーデン・カーテン』だから支援はしやすいしね。」

「そうか。では、先行は一夏・箒チームとセシリア・シャルチームで行くぞ。」

「「「分かった。」」」「良いよ。」「分かりましたわ。」

「…作戦は五分後、『14:00』からだ。…織斑先生。」

『ちゃんと聞こえて居たさ。作戦内容に異論はない。‥ただ一つだけ言っておくことがある。…全員無事に戻って来い。』

「「「「「「はい!」」」」」」

『ならいい。…篠ノ之、大丈夫か?』

「今度は決めます、絶対に‥絶対に!」

自分のせいだと思っている箒は今度は力に溺れてなんかない。

(一夏は私が護る。何かあれば一夏を守るのは私の役目だ。)とさえ心に決めて。

 

『14:00‥作戦開始。』

「箒行くぞ。」「あぁ。」

エネルギーも回復させ、機体の制御もできるよう心掛けた箒は実に心強かった。

「では、私達も行きますわよ。」「うん、行こう。」

セシリア・シャル組も遅れず出発する。その後ろ、鈴とラウラは一つ思っていた。

「…なんか、アイツが居なくなっただけで皆の結びつきが強くなったようね。」

「‥お前もそう思ったか。アイツが居なくなった事で寂しさを紛らわすために皆が近付いたのだろう。そう思うと『呪縛』という言葉がしっくりくるな。」

苦笑いをするラウラを見て鈴は同じように苦笑をする。

「呪いか‥あいつタロットも好きだったし、呪(のろい)じゃなくて呪い(まじない)かもよ?」

「ふふ、なら私との相性占いをしてほしかったな。いや、私たちはばっちりだろうけどな。」

「アンタ、ちょっと性格変わったわね。」

「あぁ、人の思いとやらに触れたからな。すべて‥あいつのおかげだ。」

「ふぅん。」

そうして会話をしながらも全速で飛んでいると通信が入る。

『一夏さんと箒さん接敵‥やりました!攻撃をしっかりと当てましたわ。』

『パイロットデータにアクセス。怪我は無し。‥海に落ちて行ったから今から回収‥待って!?』

シャルからの通信中に音声が一時乱れる。

「どうした!?シャル!何があった!?」

前方が光り海が荒れる。

『‥最悪だ‥こんな、タイミングで…』

苦虫をかみつぶしたような声で絞り出したシャルの声を聞いて一つだけラウラも思い浮かんだ。

「ま、まさか・・」

「『セカンドシフト・・。』」

ラウラとシャルの声が重なり思っていた最悪の事態になったことを感じた。

「シャル、一時後退、私達と合流できる所まで、せめて支援が届く所まで戻れ!」

『了解‥と言いたいけど、くっ‥こいつ速度が上がって‥うぁ!』

声が切れると同時に前方から光の弾ではなくビームみたいなものが飛んでくる。

「シャル!?‥!‥なんだこれは‥光弾ではなくエネルギー砲だと‥?」

広域殲滅兵器としてこれ以上ないくらい危険な兵器だった。それをよけて戦闘空域に侵入すると福音にデータで見た時には無かった光の翼が生えていた。

「全員無事か!?」

『セシリア、一発被弾しましたがまだ行けますわ。』

『箒、ダメージ自体は軽微だがエネルギーがあまり多いとは言えないな。』

『シャルロット、シールドが一つヤバいかも。少しダメージもくらっちゃった。』

『一夏、ダメージ自体は軽微だがもうエネルギーがヤバい。』

「チッ、損傷自体は軽微だが全員エネルギーが持ちそうにないな。」

そう言って福音を囲むように陣形を組む。

『コイツを止めなくちゃ・・立木が‥報われねぇだろうが!!』

一夏がスラスターを吹かし一気に接近した。それに合わせて箒と鈴が援護に回り、ラウラとセシリアが逃げ道を塞ぐように援護射撃をする。シャルは反撃が来た時のために軽い射撃と、ラウラ・セシリアの防御のために中距離を維持する。

『――――。』

音声らしき音は聞こえるがそれが何を言っているかは分からない。しかし、それが仲良くしたいと言っているわけでない事だけはわかった。

『―――!!』

音を響かせてその場で回転し、全方位に向けて光弾を放つ。

「マズイ!全員防御、回避をしろ‥箒!!」

一夏と箒は攻撃の為に近づき過ぎている。そして箒の真っ正面から光弾は飛んでくる。

「しまった!!」

速度を緩め回避に移るが、皮肉にも第四世代であるための速度によって減速が間に合わない。

「くっ・・・!!」

とっさに剣を重ねその衝撃に対して防御を試みる。

≪ドガァァン≫

爆発により衝撃と熱が箒を襲うが思っていた衝撃が来ない事に疑問を持ち目を開ける。そこには、

「ぐぅ・・だい、丈夫‥か、箒・・?」

背中に攻撃を受け装甲が見るも無残に吹き飛んだにも拘らず、箒の安否を心配する一夏の姿だった。

「一夏!?どうして・・」

「前、立木に言われたからな‥はぁ、ぐっ。『女は死んでも、護れ。』ってな・・。」

そう言って笑った一夏は気絶し、白式のエネルギーも切れ落ちて行く。

「一夏!!一夏ー!!」

落ちて行く一夏を空中で抱え低空を飛行。上から降って来る光弾を避け一時離脱する。

『箒!一夏の様子は!?』

「完全に意識を失っている。怪我も酷い‥これでは‥」

(まただ、また私のせいで被害者が‥もう、私は誰も失いたくはないのに・・。)

一夏を小さな島に横にして寝かせ顔の血を拭く。その顔を見ていると涙が出て来た。

『《力が欲しいですか?》』

聞こえて来た声は戦闘を続けている誰の声でもない初めて聞いた声。驚き、周りを見るが誰も居ない。

『《力が欲しいですか?》』

再度同じ質問が聞こえてくる。ならばと箒は覚悟を決めて問いに答える。

「…欲しい。でも、私は‥」

『《なんのために?》』

「一夏を、皆を護るために・・。」

『《‥分かりました。ならば、彼を助けてあげてください。》』

「彼?」

疑問に思い聞き返すがすでにその声はしなくなっていた。が次の瞬間、

『ワン・オフ・アビリティ《絢爛舞踏》発動。』

紅椿からそう音声が流れ機体が金色に染まる。

「ワンオフアビリティ!?私が‥!さっきの力とはこれの事か!」

そして目の前のモニターには瞬く間に回復していくエネルギー、すぐに完全に回復し、それでも《絢爛舞踏》は収まらない。

『システム、セカンドフォーム・シフト、スタート。…エネルギー、エンプティ。』

その音声は、紅椿からではなく、横たわる一夏の腕。待機状態に戻っている白式から流れて来た。

「白式‥エネルギー?…!彼とは一夏の事か!ならば。」

彼の腕の白式に触れエネルギーを送る。

『thank you.』

そうこちらのモニターに文字が流れ、白式が光り出す。目の前のモニターにカウントが現れそこには増えゆく数字と%の文字、そして残り時間が現れていた。現在20%。時間にして残り二分。120秒でセカンドシフトが終わる。しかし、その持ち主である一夏は傷だらけ。重症と言っても良いほどの怪我も負っている。そんな一夏が居てどうにかなるのかとも思ったが、彼女は先ほどの声を信じ、一夏の手を握り続けた。

「一夏…頼む・・。」

目をつむり、手を握り祈る彼女の姿はまるでマリア像のように美しかった。

 

 

『力を欲しますか?』

青い空の空間に一人の女性が立っていた。その姿は《白騎士》。そしてその女性に一つの問いをかけられていた。

「当然だ。俺にはやらなくちゃいけない事があるからな。」

『なんのために・・?』

「友との約束を守る。そして、仲間を、いや皆を護るためだ!」

『…分かりました。ならば、貴方に力を貸しましょう。』

「ありがとう。」

優しく微笑み差し出された手を握り握手をする。

『では、私の役目はここまでです。後は、彼女が‥』

「彼女?」

そう疑問に思ったが急に周りの色が変わり始めた事に気が付き空を見上げる。先ほどまで青く澄みきっていた空は一転、黄金色に輝く夕暮れと化していた。

『行きなさい。待っている者たちが居るのでしょう?』

「…あぁ。じゃあ、‥ありがとう。」

最後に礼をもう一度言ってその夕焼けの方向に走る。そして黄金の光に包まれていった。

 


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