いやぁ・・読んでるだけの時はそうは思わなかったけど、投稿するという行為は大変ですね。
そして事件は起きる。
「お、織斑先生!!」
そう叫びながら走って来るのは山田先生。二人で何か話している。
「‥緊急事態‥軍事‥IS‥暴走・・?」
「え?聞こえるの?あの会話。」
僕の呟きにシャルが聞いてきたので、それにこたえようとしたがその前にラウラが、
「いや、読唇術だな。一応それらしいものはわかったが、…厄介だな。」
「なにが?」
今度は鈴が聞いてくる。自分の頭で考えられないかな?一応軍関係だろ?
「軍用ISが暴走したとしてその武器は私たちの専用機なものだと思うか?もっと大量に攻撃できるもの、つまり『広範囲や多数の敵を《せん滅あるいは無力化》させる武器を持つ』可能性がある。それが暴走している。」
「簡単に言えば危険だと言う事。」
まだ悩んでいるような表情をしている鈴に分かりやすく端的に言って聞かせる。
「そりゃたしかに・・。でも、私たちに何か関係があるの?」
だから、それも考えろって。この子、相当めんどくさがりか?
「はぁ・・、ここに連絡が来ると言う事は‥」
「退避、または無力化のどちらかだ。」
「なに?アタシ達に行けって言う事?アタシ達まだ学生よ?」
そういう鈴にラウラが自分の足についているベルト、待機状態の《シュバルツェア・レーゲン》を見ながら言う。
「だが、《IS学園の生徒で国家代表候補、および専用機持ちである。》下手な第二世代より確率が高いと思われるのも仕方ないと思うが?」
「なるほどねぇ‥ま、それは先生の話を聞いてからね。話終わったみたいだし‥。」
そう言った鈴の視線の先にはこちらに来る織斑先生と他の生徒の方に走っていく山田先生の姿があった。
「…山田先生には他の生徒の対応を任せたから気にするな。緊急事態によりISの実習およびテスト稼働は中止だ。専用機持ちは全員集まれ。特命任務により今からの情報はすべて機密だ。他言は一切禁止する。いいな?」
『は、はい。』「…はーい。」
じろりとこっちを睨む織斑先生。良いじゃん、一応返事したしさぁ‥。
「アメリカ・イスラエル共同開発の無人機、AIによる操作のIS『シルバリオ・ゴスペル』、通称『福音』が暴走。完全にコントロールを失い今も危険な状態だ。今のところ被害は無いがこのままではどこに行くかもわからない。都市に行く前に止めなければならばい。それで諸君ら専用機持ちには、この作戦の決め手である『福音』の暴走を止める任務だ。」
「教k・・織斑先生‥そのISの情報は開示できますか?」
「あぁ、しかし一切この情報を漏らしてはならない。‥情報漏洩があった場合、諸君らには査問委員会による取り調べ、さらに監視がつけられることになる。」
そう言いながら各メンバーの目の前にディスプレイが投影される。
「‥やはりか‥。広域殲滅型兵器、格闘兵器は情報では見えないがエネルギー転用による攻撃ならどうにでもなる。‥これは厄介な。」
「この作戦はおそらく接敵するチャンスは一回が限度だ。つまり高機動で移動し接敵、高火力で一気に攻撃しなければならない。」
「つまるとこ、一夏が要って事?」
「そうだ。」
「‥え?俺!?」
今さら気がついたらしく一夏君は自分を指さし驚いている。
「しかし、高機動の相手に追いつくには白式ではエネルギーが足りない。」
「そこは紅椿の出番なんだよー。」
そう声が室内に響く。部屋の一番後ろ、壁際の天井に『クナイ』を投げる。
「わ、わわわ・・にゃわ~!?‥んにゃ!」《ドシーン》
その衝撃で天井一枚が抜け落ちて一人の女性が落ちてくる‥。
「いたたた・・もう、酷いなぁ‥ん?君は確か?」
「…。(あっち)」「ん?げっ!」
指差した方には本気で怒りが顔に浮かんでいる織斑先生がいた。
「ち、ちーちゃん待って…」「ふん!!」「‥うべぇ!」
(バシン!)と凄い良い音がしたが、ま、気にしない。さっきも頭から落ちてたし‥。
「うぅ‥。と、とりあえず先に言うけど、それは紅椿が断然有利なんだよう・・。」
「どういうことか聞かせてもらおうか、束。」
腕を組み直し「聞いてやる。」という態度で聞きに入る。いや、教えてもらう立場なのにその態度はどうかと思う。しかし、博士も長年の付き合いなのでそんなことは一切気にしないようだ。
「うん、紅椿はね、全身が展開装甲になっている機体で高速移動、格闘戦に特化しているんだよ。」
「‥ほう、それで‥?」
「つまり、箒ちゃんが高速移動しながらいっくんを運んで、いっくんは零落白夜の一撃必殺で仕留めればいいんだよ!」
「ふむ、理論上で言うとそれが一番だが‥篠ノ之、可能か?」
「‥はい、私と紅椿なら・・。」
そう言う篠ノ之の表情はいつもと違った。なんか、ほしいものをもらって舞い上がっているようにも思える。
「…そうか。なら、本作戦は織斑、篠ノ之、両名に‥「先生。」‥ん?どうした金宮。」
僕は手を上げる。
「人を乗せることはできないけど、高速移動は出来る。‥二人のサポートを。」
「…そうか、なら戦闘および移動時の補助に金宮。」
「‥了解。」
「なら、三名による作戦を決行する。他の者は別室にて待機。以上だ。」
『はい。』
そう返事した後ふと見ると、博士は少し困った表情をしていた。
『‥プライベート回線でならいっか。どういうつもりかな?』
『‥僕は篠ノ之、‥箒さんが怪我しそうだからさ‥それの補佐。』
そう言いながらこっそり手の中からタロットカードの≪No.16 the tower≫を見せる。
『‥意味は何?』
『逆位置は突然のアクシデント、緊迫、誤解。正位置は災害・悲劇、‥崩壊。』
『どっちにしろ嫌なカードなのか~‥。わかった、じゃあ、箒ちゃんは任せるよ?』
『一夏君が居るけどね‥。』
『ふふふ、そうだね‥。』
そう笑って博士は篠ノ之の最終調整に行く。‥因みに、さっき見せたカード。その下にカードが一枚重なっていた。
「…No.13‥ね。」
カード名は[ Drath]『死神』のカード。絶対に‥一夏君は守ってみせる。死なせなどはしない。たとえ、
「‥僕が居なくなるとしても‥。」
『織斑、篠ノ之、準備は良いか?』
「「はい。」」
『金宮、バックアップは頼んだ。』
「了解。」
『‥‥今からはプライベートチャンネルだから声に出すなよ‥。篠ノ之が少し様子がおかしい。何かあったら頼むぞ。』
『了承。』
『…では、これよりミッションを開始する。』
「箒、頼むぞ。」「あぁ、私に任せておけ。」
‥完全に二人の世界じゃないか。まぁ、別にいいけどさ。
「では行くぞ!」「おう。」
そう言って急激な高速移動を始める。ISなければアレ死ぬな。
「金宮。サポート行きます。」
砂浜を蹴り空中に浮いた後、自分後方を蹴るようにしPICの操作で空中を蹴りながら高速移動を始める。蹴る瞬間が早いが、飛行するわけではないので誰かを運ぶことはおろか、下手な武器を展開する事もバランスが崩れるので出来ない。実際、移動しか使えないのだ。
しばらくすると、
『‥篠ノ之が接敵する。』
と織斑先生から前方の情報が入って来る。完全に見えないわけではないが流石にちょっと見えづらい。
『‥攻撃を外した‥。作戦は失敗だ。プラン第二段階に移行する。金宮、あの二人のサポートを頼む。』
「最悪、撤退しますが良い?」
『構わない。むしろ、危険があればすぐ撤退しろ。いいな?』
「了解。」
先生の許可も取り、準備完了。
「さて、やるかな・・。」
前方で一夏君と篠ノ之が福音と戦闘中だ。高速で移動しやっと追い付く。
「金宮、参戦するよ。」
『やっと来たか‥遅いぞ。』
篠ノ之が文句を言いつつ福音に攻撃をかける。
「第四世代と一緒にするな。他の機体よりはかなり早い。」
『まぁまぁ、箒。立木、一気に攻撃をかける。行けるか?』
「‥合わせる。」
双剣を出し逆手に構え踏み込むように加速。切りかかるがギリギリで避けられる。しかし掠る程度の手ごたえはあったので少しシールドが削れる。
『よし、このまま‥!?』
そのまま切り続けようと思った矢先、一夏君は脇をすり抜ける。するとそこにすぐに福音の攻撃が飛んできてそれを弾く。
『船が居る!くそっ!先生達が封鎖してる筈じゃ‥、密漁船か!?』
そう言いながら攻撃をはじくが、それにより一気に一夏君のエネルギーは減っていく。
『馬鹿者!そんな犯罪者ほっておけばいい!』
『…、‥箒…そんな‥そんな寂しい事言うなよ‥。』
『…え?』
『強くなったからって、周りが見れなくなっちゃ駄目だ。弱い人を強い奴が護らなくてどうするんだ…。』
『そ、それは・・。』
『そんなこと言っちゃ駄目だ‥。強くなったから弱い人が見えなくなるなんて、そんなの、寂しいじゃないか。』
『わ、私は…。』
そう言って篠ノ之は刀を手から落とす。自分の手を見て、そのまま顔を覆うようにしてしまう。そこを暴走しているとはいえ敵が見逃すはずもない。
「‥しまった!!」
『くそっ、間に合えー!!』
一夏君は篠ノ之の横を通り過ぎ背後に迫る砲撃を体で受けようとする。が、
「じゃま。」
一夏君を蹴り、その位置に僕が入る。
「ぐぅぅぅぅう・・・・」
『立木!?何を‥!?』
『金宮!?』
爆発の煙が晴れた後、ボロボロになりながらも辛うじて装甲が残った僕を見て二人は近づいてくる。
『おい、何をしてるんだ!…ぐぅ!?』
一夏君の肩を掴み、そのまま右ひざを腹にぶち込む。気絶し、力の抜けた一夏君を篠ノ之に担がせる。
『金宮!?一体何をしている!?』
「撤退‥しろ。」
ところどころスパークする機体と、体中の痛みに耐えながら答える。
「機体損傷、作戦続行は困難。エネルギーの消耗、‥帰るエネルギーも無いだろう‥。」
そう言って篠ノ之に簡易チャージャーを渡す。
『これは・・?』
「一時的にしかエネルギー補給は出来ないし、一回使いっきりだが、帰るエネルギーの補充にはなる。…一夏を連れて、行け。」
『しかし、お前は‥。』
「エネルギーも機体の損傷も、もうヤバい。‥撤退する援護くらいは出来る。早く行け‥何時攻撃が来るかわからん。」
福音は今こっちを見て観察しているようだが、何時攻勢に出るか分からない。
『しかし‥』
「早く行けと言うのが分からないか!?良いから行け!!振り返るな!」
おそらく初めてだろう、こんなに大きな声で怒りをあらわにしたのは。声を荒げ初めて表情を見た篠ノ之は即座に反転。戦闘空域からの離脱に入る。しかし、一夏君が居るから速度はそこまで出せず、離脱までは時間がかかる。一夏君が居れば全員が撃墜されている可能性もあった。だから気絶させた。
『金宮‥お前…。』
「織斑先生。篠ノ之、織斑両名の離脱の支援します。あと、二人のことと、‥『僕の後の事』は任せます。すみません。」
『…そうか、すまない・・。私は‥』
「先生、‥ありがとうございました。」
『金宮!待て‥』
そこで強制的に通信を終了する。すぐに光弾が飛んできてそれをよける。
「‥こふっ‥。」
絶対防御を抜いてダメージをくらっていたためか肋骨が数本折れているようだ。中でも一、二本は肺に刺さったか、吐血してしまう。
「シナリオは最終段階に移行。‥すでに凱殻を使えるほどの力もなし‥か。」
剣を使う体力も無いから、ライフルを取り出し、牽制しながら使う。ただの時間稼ぎだが、それでもないよりはましだ。
「さ、僕の最後の相手が‥君の様な、暴走機なのは癪に障るが、‥行く‥!?」
そこで気がついた、いや、もっと早く気がつかなくては駄目だったのだ。通りでおかしいと思った。
「チッ、‥織斑先生‥ぐぶっ‥緊急通信‥」
『なんだ!?なにがあった!?』
「コレ、人が乗っている!!無人機では無い!アメリカの奴ら、渡した情報は嘘だ!」
『なんだと!?』
空中で機体の体制を戻した時、体の一部が見え、相手のデータにアクセスし、パーソナルデータを表示すると
「《搭乗者、ナターシャ・ファイルス》‥。アメリカテストパイロット‥。おそらくもし、一夏君がこの人を殺してしまったり、傷つけていたらその身柄を要求するつもりか!」
『くそ!!あいつ等は人をなんだと‥!金宮‥そいつを傷つけるな‥!』
「‥無茶を言う‥。一夏、箒、両名は?」
『今空域を離脱、教師に保護された。だからお前も‥』
またもやそこで回線は切断する。エネルギーはもうほぼ無い。スラスターも電気系統がイカれて動かない。さらに、もう血が足りない。最後の力を振り絞り、福音に向いてつぶやく。
「貴女は‥気にする必要は‥無い。そう、パイロットに伝えてくれ‥。」
目が光った気がするが、どうだろうか‥。福音がちゃんと伝えてくれる奇跡を願う。
「鈴、ラウラ、シャル、すまない。約束は守れそうにない・・。」
そして目を瞑り武器も納め、空中で無防備な体制をとる。その直後体に衝撃が走り僕は何も感じなくなった。
タグを増やしました。この作品は福音戦が、最後の戦いとなります。
まぁ、その後もちょっとだけ続くんじゃよ?