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ありがとうございます。
「今11時でーす。夕方まで自由行動ですが、夕食に遅れない事、いいですねー?」
『はーい。』
そう言って皆海に向かって走っていく。僕は砂浜の一角にパラソルを置いて座りこむ。
「あれ?金宮君、それ水着‥じゃないよね?」「おや、ホントだ。」
「あれれ~、りっきー泳がないの?」
仲良し三人組に気がつかれた。分かんないようになるべく端っこに居たのに。
「海水苦手、肌がピリピリする。」
「あぁ、なるほどね。確かに立木って肌白いし弱そうだもんね。」
「ほんと、ボクとかも負けそうなほどきれいだし‥。」
僕の一言に同意するように二人が近付いてくる。
「ほら、立木、どう?」「ボ、ボクもどう‥かな?」
言っていた通りに鈴はオレンジ色の動きやすそうなタイプ、シャルは濃い黄色(というかオレンジというか)な色に黒いラインが入ったスカートみたいなのが付いたタイプだ。
「二人とも似合ってる。」
「そ、そう!?」「あ、ありがとうね、立木。」
褒めたら二人とも真っ赤になっちゃった。まだ、海来て間もないのに。
「そういえば‥」
一緒にいたはずのラウラが居ない。どこ行った?
周りをきょろきょろすると、鈴たちの後ろにバスタオルを巻いた何かがいる。そこから見える髪、眼帯、身長。これ、ラウラか?
「‥どうした?」
鈴たちの後ろにいるラウラに声をかけるが、「う、うむぅぅ・・。」みたいなうめき声しか聞こえない。さて、どうしたものか・・。
「ラウラ、ほら、立木に見せるんでしょ?」「じゃないと、ボク達だけで立木と遊んじゃうよ?いいのかな~?」
なんかシャルがいじめっ子みたいな言い方で脅してる。‥いや、どちらかと言えば母親っぽいしぐさか?
「…立木?いま、なにか、かんがえた?」
「別に。」
やっべー、エスパーですか?!顔に出ないから怪しまれてはいないが、これは怖い。二歩位皆下がったし。
「う、うぅ・・え、えぇぇぇええい!!」
そう叫んでバスタオルを取り、ラウラが姿を現す。
「うぅ・・はずかしい・・。」
「うん、ラウラ。似合ってる。可愛い。」
白い肌に濃い色の水着がしっかりと映えて凄い似合っている。
「あ、あぅぅぅぅううう・・。」
ラウラは真っ赤になり鈴やシャルの後ろに隠れた。
「ま、目的は果たしたし、遊びましょ。って立木は泳がないの?」
「海水苦手。強い直射日光も駄目。」
「アンタって精密機械か何かなのかしら?と時々思うわ。」
「表情もあまりないしね。というか無表情だし。」
「しかし、それでも心はあるのだからロボットというわけじゃないだろう。」
上から鈴、シャル、ラウラの順です。
「ラウラ。ありがとう。」
そう言って頭をなでておく。「あぅあぅ、ふわぁ。」と真っ赤になりながら声を上げるラウラはすごくかわいかった事をここに記しておく。
「く、アタシ達をかませ犬にするなんて・・。」
「ラウラ、恐ろしい子・・。」
「いやいや、自爆でしょ‥。」
仲良し三人組の一人にツッコマれていたとか。
◆
「あーあ、立木が泳がないなんてなぁ‥。」
アタシは(・・・・)シャルと一緒に泳いで少し沖まで来た。
「仕方ないよ、海苦手らしいし。」
そこでアタシは気がつく、海が苦手なんだったら。
「じゃあ、プールなら一緒に行ってくれるかな?」
「いいかも、それなら一緒に遊べるし、立木の水着姿も見れるかも。」
「そうね、じゃあ、今度夏休みには、一緒にプールへ…!?」
準備体操をあまりしていなかったからか、アタシは足がつってしまい上手く泳げなくなる。
「ぐぁ、・・ぷはっ・あ、足が‥もごぉ・・。」
「鈴!?」
そこで足がほとんど動かなくなりアタシはもがきながらも溺れてしまう。
少しずつ、意識が遠くなる中、目の前が暗くなりそこに見えたのは、
【立木・・・?】
立木の顔だった。そこでアタシは意識を失った。
目が覚めると浜辺に上げられて、ビニールシートの上に寝ていた。周りには一緒の学年のみんな。さらに、織斑先生と山田先生が。
「…あ、あれ?あたし・・。」
「準備運動をしっかりしないからだ、馬鹿者。」
あまり記憶がなく、どうしてここに居るのかもよく覚えていない。
「状況が分からないと見える。お前は準備運動をしっかりせず泳いだせいでおぼれたのだ。しかし、すぐに助けられて意識は無いものの多少水を飲んだだけで助かった。」
「そうだったのですか、すいません。ありがとうございます。」
「礼は私ではなく、助けた奴に行ってやれ。」
「シャル、ありがとうね。」
そう言ってシャルの方を見るとシャルは首を振る。
「いや、助けたのはボクじゃないよ。」
そう言いながら指をさす。その方向はアタシの方…から少しだけずれていた。その方向を見ると、
「・・・。」
水着じゃないにもかかわらずびしょびしょで水浸しの立木がいた。というか、アタシは立木に膝枕されていたらしい。
「‥‥!?」
「まだ、少し安静に。」
そういって起き上がろうとしたアタシの頭を押さえて、無理やり膝枕に戻す。確かに少しまだ気分が悪いが、このままじゃ、別な意味でおかしくなりそうよ!
でも、おでこにある立木の手は冷たくてとても気持ちがよかった。その状況をいいなぁ、と皆に見つめられるのは恥ずかしかったけど。
◆
海で遊ぶ人を眺めていると急に沖の方でシャルが声を上げて慌てているのが見える。
その横、水しぶきが上がり、手が上がって暴れているのが見えた。あれは、
「鈴!?」
見るや否や、走りだし、海に向かって一気に飛び込む。クロールで息継ぎもせず一気に水を掻いて泳ぎ、シャルの元に。
「立木!?鈴が、鈴がおぼれて・・」
それを聞くやすぐに潜水し、沈んでいく鈴を見つけた。手を上にのばしていたからその手を掴み引きよせる。そのまま抱えて浮上。
「ぷはっ。鈴‥鈴?」
見ると鈴は意識がなくぐったりしている状態だ。まずい。
「シャル、先に泳いで行って先生に伝えて。」
「わ、わかった。」
シャルが泳いで陸に向かう。僕もなるべく早く。でも、鈴が沈まないようにして泳いで陸に向かう。
砂浜に着くと先生が救急キットを用意していてくれてすぐに処置に入る。
「呼吸無し、意識なし、脈拍‥薄いです。」
「先生、早く処置を・・。」
そうやってドタバタしている他クラスの先生を見て僕は即座に行動に移す。キット内からマウスピースみたいなものを取り出し、鈴の口にくわえさせる。さらに、気道確保し、
「すぅ・・・ふぅぅー‥。」
人工呼吸、さらに肺の下あたりを押さえ水が入っていればそれを押し出す。二回くらいやると、
「‥ぅ、ごほっ、ごっほ、ぅえぇぇ。」
と鈴が水を吐き出し、呼吸が戻る。ただ、まだ意識がなく、どうかとそこに来たばっかりの織斑先生の方を見ると、
「‥お前と一緒にパラソルの下に入れておけ。すぐに回復するだろう。」
安心のお言葉をもらい、抱えてパラソルの下につれていく。
「…いいなぁ・・。」
そんな言葉が聞こえたが不謹慎なので、じろりとそっちを見ると、露骨に目を反らした。
それで、パラソルについて背中の砂を落とし、男の僕じゃいやだろうけど、タオルを敷いて膝枕をした。
目が覚めた鈴は織斑先生と会話し、その後でシャルに指さされた僕を見た。
「!?」
驚いて起きようとするが、まだおぼれてそう時間が立ってないので安静にするように言って頭を押さえた。始めは抵抗したがすぐにおとなしくなり深呼吸し始めた。
「鈴、どこかおかしいとこは無い?」
「‥ん?‥大丈夫みたいよ?」
「ならよかった。少しでもおかしかったらすぐ病院行って。」
「うん、わかったわ。」
鈴はおでこに当てている手を掴んで
「ありがとう、立木。」
って、笑顔で言ってきた。照れ隠しに顔を上げて遠くを見るような仕草をしながら
「どういたしまして。」
とだけ答えた。