ボク頑張った!
そして、次の日、事件は起きる。
ラウラ・ボーデヴィッヒと鈴、オルコットでアリーナにて私闘。その際に僕もそこに居たのだが。まぁ、事件と呼んでいいのか分からんが。
「まぁ、とりあえず、あの噂を阻止するためにも、強くなんなくちゃね。」
「同感ですわ。でも、・・邪魔ものが居るようですわ‥ね!」
会話の途中に撃ちこまれる弾丸。二人はそれそれ避けて飛んできた方向を見る。
「はっ!中国とイギリスの第三世代か。‥データだけの方がまだ強そうに見えたな。」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「ドイツの第三世代・・シュヴァルツェア・レーゲン・・。」
飛んできた方向にはISを装備したボーデヴィッヒがいた。
「下らん雄を取り合いか?そんな雌に負ける私ではないがな。」
にやりと挑発するように笑うボーデヴィッヒ。が、
「…いや、別にこいつとおんなじ男を取りあっては居ないけど?」
「‥私たちは恋敵とかではありません事よ?」
鈴は手を振りながら違う違うとアピール。オルコットは、その勘違いに居たたまれなくなったのか視線を反らす。
「…そうか。まぁいい。とりあえず、・・貴様らのようなやつらが私と同じ代表候補だと思うと情けなくなってくる。」
「まぁ、正直まだまだなとこあるしね。アタシ達。」
「‥そうですが、鈴さんが言う事ではないと思いますわ。」
「あ、やっぱり?」
「まぁ、素人であるはずの一夏さんや金宮さんに負けたのも事実ですし、国家代表候補として少し悔しいと言うか、もう少し強くならないと‥」
「…貴様ら!私を無視するな!私をそこまでコケにしたいか!!」
ボーデヴィッヒが切れた。一気に飛び込んで中距離でワイヤーブレードを射出。二人に向かって飛んでいく。
「これならどうする!?」
『そこ!何をしているの!?』
ワイヤーブレードが届く前にスピーカーから教師と思われる声が響く。
「…チッ、タイミングの悪い‥。今日は引いておく。」
「なに?帰るのだったら止めないわよ?」
ふん。と、踵を返して、その場で悩み始める。
「アイツと戦うにはどうすればいいのだ‥。」
「…独逸《ドイツ》?」
「うわぁぁぁ!?き、貴様!?」
「…ツッコミ無しか。‥つまらない。」
僕は現在ボーデヴィッヒの後ろに逆さづりでぶら下がっている。ISの展開なしで。
片足からワイヤーが伸びていてアリーナの突きだした天井からつながっている。
「で?」
「「「?」」」
いや、ボーデヴィッヒに言ったんだから。後ろの鈴とかオルコットは関係ない。
「アイツって、ドイツ?」
「貴様だ。カナミヤタツキ。やたらと邪魔をしてくるから目障りだ。」
「はーん。」
体を揺らし、だんだんと振り子の要領で動きを大きくしていく。
「…なんだ貴様、挑発しているのか?」
「アルカナカード、No,12The Hanged Man。」
「…自己犠牲か?」
「いや、忍耐。」
タロットカードの知識もあるからね。こうやってから全体を使ってアピール。
「…もうすぐタッグマッチがある。…そこで、勝ち残れば当たるんじゃ?」
「貴様が負ければ?」
「後日ちゃんと申請を取る。」
「…わかった。それで良いとしよう。逃げるなよ?」
そう言ってISを解除して出口へ向かっていく。嫌に聞きわけいいな。もっとぐずったり無理やり戦ったりしてくるかと思ってたのに。後ろから鈴が近付いてくるのが分かる、振り向くと呆れた顔をしている。
「で?アンタなんでそんなとこから降ってきてるの?」
「…さっきの放送聞いた?」
「放送・・ですか?」
「…『そこ、何をしているの?!』」
「…は?」
「今の声。先ほどの先生の・・。」
「あれ、僕。」
そろそろ頭に血が昇り始めたからワイヤーを外す。遠隔のリモコンで先に付いている機械を操作すると、片方についていたワイヤーが抜けてそのまままきとれる仕組みになっている。
「‥っよ。」
一番振りが大きい部分のときに外したのでそのままの勢いで体をひねり回転、そのまま 2回転して着地。
「器用ね。」
「‥身体能力もそれなりに高い。」
ワイヤーを巻きとった機械を納める。
二人に向き直ると、なんか諦めたような表情をしていた。
「じゃ、帰る。」
「ちょっと待ちなさい。なんであんな所に居たかは聞いてないわよ?」
いつもの僕らしくない行動に見えたらしい。肩を思いっきり掴まれて動けない。いや、振り払う事は出来るが‥、正直面倒なんだけど説明するしかなさそうだ。
「さっき言った、タッグマッチ‥。」
「あぁ、タッグで組ん・・で・・ってまさか?」
鈴は気がついたようで、掴んで居る手に力が入る。
「部屋に、押し掛けてくる女子が、後を絶得ない。」
「あぁ・・。確かに・・。」
其処で納得が言ったらしくオルコットが頷いている。いや、はっきり言って超うざい。オルコットじゃないよ?部屋に来る女子が。
やれ、『私と組みなさい。』とか若干上から目線だの、『ミステリアスな感じが良い。』だのと訳が分からないよ。しゃべり方はコミュ障なだけだっての。シャルの方にも結構来ているようだし、うーん、一夏君と組ませるか?
「はぁ、分かったわよ。で?」
「一応、まだ本人に言っては無いけど、シャルは一夏と組まそうかと思ってる。」
「他の女子と組ませるよりはましって所ね。ま、良い選択じゃない?」
「物分かりがよくて助かる。」
オルコットを置き去りにしている感が半端無いが、まぁ、しょうがないか。
「じゃあ、私と組みなさい。」
「‥オルコットは?」
「誰かと組んで?」
「酷くありません事?」
にこやかにオルコットの方を向いた鈴が放つ言葉。そりゃひどいね。目の前でそんな話をされたら嫌だろうに。
「ま、鈴さんはそうしたいでしょうから私は他の方を探しましょうか。」
「ごめんね。まぁ、私も本気で行きたいし。あと、ジンクスって大事じゃん?」
「‥そうですわね。私も負けた後のパートナーより気分を変えた方がいいのかもしれませんし。」
「じゃあ、アタシは立木と組むって申請してくるわね。」
うんともスンとも言ってないのに凄い速さで走ってアリーナから出て行った。IS装着してないのに早い・・。
「…気が早いですわね。どういたします?一緒に練習していかれますか?」
「申請出してない。今日は良い。」
アリーナの中から歩いて出て行く。ぽつーんと残されたオルコットがかわいそうだが僕からすればどうしようもない。頑張ってくれ。
さてさて、部屋に帰ると一夏君がシャルを押し倒していた。
「え!?あ!‥ち、ちが・・。」
「た、立木!?いや、コレは違っ‥。」
二人はその体制のまま言い訳を口にしようとする。
無言で近づいて・・片手を広げて‥一夏君の頭に合わせて。持ち上げる。
「ぐわあぁぁぁぁ!?」
所謂アイアンクローだ。ギリギリ言っているが知ったことか。
「立木!?ち、違う!こけただけだよ!一夏を離して・・。」
「また問題を起こすのかと思ったらイラついた。」
「立木が怒りを口にした!?相当怒ってるの!?」
別にそこまで怒っているわけではないが、彼はやたらとラッキースケベに会いすぎているからな。何となくここらで一回〆ておいた方がいいと思った。反省も後悔もしない。
片手で持ち上げていた一夏君から抵抗が減ってきたので解放してみる。
「おぉぉぉうぅぅぅ・・、千冬姉より痛かったかも・・。」
その一言にシャルがこっちを青ざめながら見た。なんだその化け物以上の化け物を見たような眼は。
「‥一夏君、君は何?エロしかないの?」
「違げぇよ!?ただこけちまったけだ!」
「手が胸のあたりに行っていたけど?」
「うえぇ!?」「うわぁ!?」
一夏君は自分の手を確認するように見て、シャルは胸を隠す。その反応を見る限り知ってしまってるな?
「嘘。‥一夏君の反応で判断した。‥バレたね?」
「あ、‥う、うん。」
はぁ、また面倒事が増えたか。
「‥どうする?『ポキッ』といく?」
「ポ、ポキッ!?な、何するつもりかな?!」
「‥こう。こんな感じ。」
手を広げ、首の高さに合わせて握る動作をして、手首から斜めに傾ける。
「お、俺、殺される!?」
「だ、駄目だよ!?」
ならどうするっていうんだよ。面倒は嫌いなんだがなぁ。殺すほうが面倒になるか。
「と、とりあえず、俺は黙っているし、しゃべるつもりは無いって言う事は伝えたからな。だから、殺すのはよせ!!」
「なら、許可。あ、あとバレたんならタッグマッチ、シャルは一夏と組んで。僕は鈴と組むことになったから。」
冷蔵庫からコーヒーを出して飲む。面倒ごとにならないならどうでもいいや。
「‥俺、立木とどうやって接すればいいか分かんなくなってきた‥。」
「ボクに言わないでよ‥なんかタッグも決まってるし‥。」
なんか落ち込んでいるが、どうでもいいや。