これも皆様のおかげです。
では続きをどうぞお楽しみください。
時間は過ぎ、放課後になる。授業中?別に何もなかったよ?
あの子が睨んでくる以外は。
「‥‥。」
ごめん現在進行形だったようだ。と言うか、君の狙いは一夏君じゃなかったのか?
・・・憧れの教官殿から色々言われたらこっちに恨みも持つか・・。
もう視線がめんどくさくなってきたので逃げることにした。
いつも通り(・・・・・)のルートを通ってね。
席を立ち、荷物を持って廊下に向かって歩き出す。後ろでも同じ動きをしているらしく、席を動かす音がする。廊下に出ると、玄関の方に向かって三歩。後ろから四歩動く音がする。足音で確認して、片足が浮いた瞬間に窓から飛び出す。このタイミングなら瞬時の行動にどうしても遅れが出る。その隙を狙った。相手は僕を一般人だと思っている、それが隙だ。
いつも通り壁を蹴り地面に着地し、そのまま走り、寮の方向へ向かう。ま、コレだけで終わるとは思ってないけどね。
◆
侮っていた。ただの男風情だと思っていたからこんな奇抜な行動に出るとは思っていなかった。しかし、甘い。奴の部屋はどこかもう把握してあるし、そのための最短ルートも知っている。こうなれば、奴の部屋に乗り込んでいくか、途中で待ち伏せしといてやる。
「・・覚悟しろよ、金宮立木!」
◆
なんか、呼ばれた気がしたが・・。気のせいだな。
僕は今アリーナの観客席でまったりコーヒータイム。いや、魔法瓶に入れておいてよかった。なかなかに美味しいね、このマンデリンは。落としたてには負けるがそれでもなかなかな香りだ。酸味が苦手な僕にはぴったりだね。
「そこの、コーヒータイムでゆっくりしてる奴―。暇なんだったら手伝え―。」
「・・なんで僕がする必要がある。」
「…一応、私たちのクラス代表なんですから、手伝う気とかはありませんこと?」
「・・めんどくさい。」
一夏君の強化のために数人、いや、いつものメンバーがアリーナの中で練習している。なんで、わざわざ僕がしなければいけないんだ。
「おい!今の本音だろ!」「呼んだ~?」
「あ、いや、布仏さんの事じゃないよ。アイツの言葉の事。」
「あぁ、そっか~。・・ねぇ、りっきー。お願いだからオリムーの事見てあげてよー。」
「了承。」
「おい!なんでのほほんさんのいう事なら一発で聞くんだよ!」
「・・・誰か僕に一言でもお願いした?」
「「「「・・・・・・。」」」」
全員左を向いて目を反らす。こら、こっち向けこの野郎ども。
「はぁ‥。『頼む』の一言でもあればやる‥。」
「あ、そ、その、すまない。頼んでいいか?」
言われて言うようじゃまったく感心しないな。君が強くなると自分で言い出したんだろ。ならその努力のために人に頭を下げることも必要だと言う事を覚えておきなさいな。
「一夏君、厳しくやる。いいか?」
「あ、あぁ!むしろ望むところだ!」
どM発言?ま、叩かれて強くなるのならそれでよしとしておこう。
まず、アリーナの設定でシューティングターゲットを出す。で、拡張領域からライフルを出して渡す。
「ん。」
「え?これ、俺が使えるのか?」
「あぁ、所有者が許可すれば登録者は使えるんだよ。ただし、バススロットとかに収めることはできないけどね。」
「なるほど。じゃあ、撃たせてもらうか。」
そう言って構えるが、いかんせん構えが下手すぎる。肩辺りに負荷がかかり過ぎるな。
「こう。」
もう一丁出して横で構えて見る。
「こう‥か?」
見た目は少しましになったが変に力が入っているためやっぱりぎこちない。まぁ、始めの方ではこんなもんか。一応、後ろから支えて見る。
「こう、・・其処に力は入れなくていい。」
「え、あ、あぁ。こんな感じか?」
「そう。」
ハイパーセンサーがアリーナのあちこちから漂う気配を察知した。
「「「「(^q^)」」」」
変態どもが!よくよく好きと見える!・・まぁ、どうでもいいか。横で、なんかシャルも顔が赤い気がするが気にしないでおこう。
「じゃあ、撃って。」
五個出ている的を撃っていく。
全部、良い所には当たっているが少し中心からずれがあるしムラがある。でもまぁ、初めてはこんなものだろう。
「まぁまぁ。」
「これでか。そうだ、お前の腕はどんなんだ?」
「・・・・。」
分かりやすくするために《あえて》紙のターゲットを用意する。そこから、一夏君時の倍の距離に位置をして、ライフルを構える。
《ダン、ダン、ダン、ダン、ダン》「・・・はい。」
とリズミカルに撃ち、その的を見せる。一夏君は「ん?」と顔をしかめているがシャルとオルコット、鈴は気がついたらしい。
「?なんだ、1発しか当たって無いじゃないか・・。」
「い、いや、一夏・・これ、よく見て。」
シャルが指さすのはその当たっている穴の一部。
「‥これがどうかしたのか?」
「これってさ、真丸じゃないよね?」
「‥あぁ!確かに・・。で?それがどうかしたのか?」
「アンタばっかじゃないの?」
鈴がいらついたらしく声を上げる。
「な、鈴それは無いだろ!?」
「いえ、一夏さん、よくご覧になってください。」
「ん~?あぁ、なんか楕円っぽくちょっとずれてるな。」
其処まで気がついたなら分からないかなぁ?まぁ、期待するだけ無駄か。
「あぁ、もう!コレはね、ワンホールショットっていうの。」
「ワンホール?あぁ、確かに穴は一つだな。」
「弾の当たった位置を確認すればわかるけど、数ミリ単位しかずれてないから穴がつながって一つしかないように見えるんだよ。」
分かりやすくシャルが説明するがそれでもわからない様子。ホントに君は中学を卒業したのかね?
「えっと、つまり?」
「とんでもない技術と精度、精密性を持ってないとできないことですのよ。しかも、あの速度で撃ってこのズレしかないってことは下手すると国家代表レベルかそれ以上‥。」
「はぁぁぁぁああ!?なんだそれ?!凄すぎるだろ!」
「だから驚いてんのよ!早く気が付きなさいよ馬鹿!」
国家代表レベルは言いすぎじゃない?射撃のみならそんくらい以外と居るだろうけど。
「そ、それなら頼む、俺に教えてくれないか?」
「それより近接格闘と、高速移動。それが出来てから銃の特性を覚える。」
「え?いや、射撃は?」
「装備に銃も無いのに何言ってる?」
「じゃ、じゃあなんで撃たせたんだ?」
「適性があれば専用機の変更もやむなしと考えた。が、一切才能なし。近接の方がまだまし。」
「・・・orz。」
落ち込む一夏君。いや、ほんとに近接の方が良いからこっち鍛えるとかなり強くなれると思うよ?でも、それは本人に言うと頭に乗るだろうから言わないけど。
「ねぇ、ちょっと、あれ・・。」
「ん?」「・・・。」
実は視界の端にさっきから黒いモノがちらちらしていたがあえて気にしないようにしていた。皆が見る方向には僕が見たくないものがあるだろうし、・・面倒だし帰るか。
「何を帰ろうとしている、金宮立木。」
「‥指名か。」
正直面倒事にならないようにここに逃げて来たのになぁ。
「その程度で自慢とは、天狗にでもなったつもりか?」
「何故天狗を知っている。」
「日本の事は色々調べたからな。」
「‥日本三景を答えよ」
「ふふん、松島、天橋立、厳島だ。」
「・・厳島で無く、安芸の宮島だ。」
「…くっ、私とした事が・・。」
心底悔しそうに表情をゆがめるボーデヴィッヒ。いや、まぁ、それがどうしたって話なんだけどね。
「・・・あれ?さっきまで一食触発な空気だったわよね?」
「え、えぇ。」
鈴たちが話すその言葉を聞いてやっと「はっ」となるボーデヴィッヒ。コイツ馬鹿か?
「えぇい、そんなことを言いに来たのではない!」
「知ってる。言い出したの、君。」
「話をややこしくしたのは貴様だろうが!!」
ちっ、誤魔化されなかったか。顔を反らした瞬間肩の横にある部分が稼働し、こっちに向いた。ライフルを即座に収納し、双剣を出す。
「死ねぇ!」
「立木、危ない!?」
シャルが前に出ようとするがそれより早くさらに前に移動。そしてフロントステップの後高速でボーデヴィッヒの後ろに行く。
「なに!?」
「立木が消えた!?」
「ど、どこへ?!」
《かーごめ、かごめ・・》
「な、なんだこの歌は!?」
「立木の声・・でも、なんか怖い・・。」
《かーごのなーかのとーりーは・・》
「アリーナに響いてる・・?」
「まさか・・。」
《いーつー、い-つ、出ーあーう?》
「く、どこだ、出てこい!」
《よーあけーのばーんー人、つーるとかーめがすーべった》
「あれ、俺が知ってるのとちょっと違う?」
《後ろの少年・・》
「・・だ~あれ??」
「う、うわあぁぁぁぁ!?」
「「うわああぁぁぁぁ!?」」「「「きゃああぁぁぁぁ!?」」」
恐怖が伝染したようで皆が一斉に驚いた。当然僕はボーデヴィッヒの後ろに居る。
ただし、『逆さまになって』だが。
《そこ!?一体何やってるの!?》
「…日本式ドッキリは世界に通じるか、検証?」
「きょ、今日の所は、引くが、私はき、貴様の事をみと、認めたわけじゃないからな!」
そう捨て台詞を残し涙目で去って行くボーデヴィッヒ。泣きそうな顔はなかなか良かったな。べつに、Sな訳でも、変態な訳でもないぞ。面白ければ何でもいい。
「さすがに、俺もびっくりした。あれ、絶対ボーデヴィッヒ怖かったと思うぞ。」
「あ、あはは、ボクもあれは耐えきれないと思うな。」
「あ、アタシは、ダイジョブよ!?」「わ、私もだな。」
「じゃあ、鈴さんと箒さんは一緒にホラー映画を見ていただきましょうか。」
「嫌よ!」「断る!」
「わたくしは、全然平気でしてよ・・。」
さっき、一番大きな悲鳴上げてたのアンタだったじゃろうに。
「そうそう、カゴメ歌には諸説あって・・」
「あぁ、それで俺が聞いたことあるのと違うのか?」
「囚人の生死に関係する話の場合もある。」
「・・は?」
「囲われた敷地、籠。中で飼われる人、鳥。何時出れるか、生きて出れるのか?出やる?。夜明けの番人、監視又は執行人。長生きの象徴がこける、すでに長くは無い命。後ろの正面、背後に立つのは執行人か、脱獄させてくれる人物か。つまり死か生か。」
「こ、こえぇぇぇぇ!?」
「ひぃぃぃ!?」《ちょ、ちょっと、先生まで怖がらせないでよ!?》
「…さて、帰る。」
皆が怖がってるので、満足。ちなみに、先生の言い分は知らん。勝手に聞いてたあんたが悪いから自己責任。
「ちょ、ちょっと、立木、待って。お願い少し待って。」
シャルも怖いらしく、部屋に帰るのに付いてきた。日本式の恐怖ってなかなかぬぐえないから気をつけてね。
本当に・・諸説あるらしいですよ?