一ピクセルの恋   作:狼々

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どうも、狼々です!

どうしてだろう、冬休みがきたのにペースが上がらない(´・ω・`)
補習とか課題とか、休みなのに休めないってどこかおかしい。

特に課題は、量が半端じゃない。
今配られている段階のやつは三分の二終わったけども。
もう少ししたら、本当に楽になれる……のかなぁ?(´;ω;`)

では、本編どうぞ!


普通の魔法使い

 黒い炭は霊夢へ、無慈悲に集まっていく。

 一斉に、確実に、高速で。

 

「あんた……!? ――あぁ、なるほど」

 

 何を血迷ったのか、暗がりの中でさらに、目を閉ざした。

 ただでさえ視界が制限されているというのに、その上で目を瞑ったというのか。

 そうしてすぐに、俺は奇襲失敗を悟った。

 

 霊夢の体が、突然に動きだした。

 大量の弾幕を気にせず、幾つかの弾を蹴り、腕で弾き出す。

 そして、一つの弾が霊夢の胴体に直撃――と、思いきや。

 

 まるで幽霊の如く、光弾は細い体躯をすり抜けた。

 飲み込まれるように、しかし、貫通。

 それだというのに、霊夢は顔色一つ変えずにいる。

 やがて弾幕は自然と霧散し、辺りは無に帰す。

 

「どうだ、中々面白いだろ?」

「……最初は驚いたわよ。でも、あんたがあの量の弾幕を出せるなんて、絶対にあり得ないもの」

「いやぁまさか、『欺く』をああやって使うなんてねぇ。正直、私も一瞬騙されたわよ」

「言ったろ? 嘘を吐くのは得意中の得意だって」

 

 ――『対象を欺く程度の能力』。

 詳細はまだまだ不明だが、対象とする相手に、幻覚にも似たものを本来の姿と差し替えて見せる。

 先の表情の実験で、それがわかった。

 そして今の弾の嵐。これも、一種の俺の中での実験だった。

 

 自分の体の一部でなくとも、能力は使えるのか。

 結果、使えたのだ。

 それが、あの()()()漆黒弾幕。

 

 たった数個の弾を、あたかも数十や百にも渡っているかのように見せた。

 霊力に長けているらしい霊夢ですら、一瞬ではあるが気付くことはなかったのだ。

 相手が初見であると仮定するならば、必ずと言っていいほど有効な手段と成り得るだろう。

 

「あ~はいはい。実際の弾幕は数発だけど、出せたようで何よりだわ」

「そんなに適当にあしらわなくたっていいじゃねぇか、博麗」

「あのねぇ、私は暇じゃないの。あんたのあんな遊びに付き合っている時間もなければ、こうやって無駄な労力を割くことも――」

「お~い霊夢、紫。さっきの霊力、感じたことなかったけど何だったんだ――って、おぉ、こんなところに主役さんが」

「あぁ?」

 

 俺達四人以外の、聞いたことがない声。

 夜空の黒に紛れた凛と飛ぶ声は、俺達を振り向かせるには十分だった。

 

 夜に違和感なく溶け込む黒服に、それと対をなす白のエプロンを着ている、(ほうき)を持っている少女。

 膝までのばされたスカートから覗く細く、色白な足。

 何よりも目を引きつけるのは、同じく黒白のとんがり帽子から下がる、きめ細やかな長い金髪だ。

 夜中に悠然と輝く金色は、否応なしに視線を吸い込ませる。

 

「よっ、今夜の主人公さんよ! 私は霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)だ。魔理沙でいいよ、よろしく」

「おう、先の自己紹介の通り、片桐 氷裏だ。俺としてはよろしくしなくてもいいが、まぁ一応よろしく」

「……なぁ霊夢。こいつ、本当はこんな性格だったのか?」

「えぇ。あの挨拶の仕方が狂っているくらいおかしいだけよ。本性はこっち」

 

 俺から言わせてみれば、勝手に印象を付けられて、意外だったと思われるのはいい加減にしてほしい。

 俺にはどうしようもないことで失望や意外性を感じられたとして、勘違いもいいところだ。

 言う奴には、言わせておけばいいか。

 

「好きなだけ言ってろ、魔法使い」

「あ、わかる? わかっちゃうか? いやぁ、わかっちゃうかぁ、そうかそうか!」

 

 皮肉に対して満足そうに笑顔を浮かべる姿は、さながら活発な少女そのもの。

 何故魔法使いとわかったかと言われると、この服装の揃え方に、手に持っている箒。

 この二つの要素だけで、想像は容易だろう。

 

「本人曰く、『普通の魔法使い』です。ちなみに、意外と彼女、努力家だったりするんですよ?」

「へぇ、本当に意外だな」

「そうそう! 私、普通の魔法使いなんだよなぁ」

 

 射命丸からの耳打ちによる情報。伊達に文屋はやっていないらしい。

 「魔法使い」という種類の時点で、それが果たして「普通」にジャンル分けされるかどうか怪しいところだが。

 

 努力する魔法使い、というのも連想し難い。

 魔法という存在自体に靄がかかっているからか、それとも魔法には才能との結びつきが強いからなのか。

 そう考えると、魔法の研究者としても分類できるのかもしれない。

 

「さっきの霊力は、片桐さんの物ですよ。何でも、『対象を欺く程度の能力』も持っているんだとか」

「少数の弾幕を能力で増やしたように見せる、っていう意外とセンスのあることをしたばかりよ」

「へぇ、紫の話を聞く限りでは筋がいいじゃない。今度私と弾幕ごっこ、やってみない?」

「機会があって、俺の機嫌もそれに向いて、尚かつ俺が霧雨より弱くても構わないならな」

 

 恐らく、というかほぼ確実にこの魔法使いは魔法を使う。

 いや、魔法を使わない魔法使いなど、いてたまるか。

 魔法使用の弾幕、それか魔法そのものを用いて戦うスタイルだと予想される。

 

 ホーミング系統の魔法や弾幕なんて使われた日には、俺は格好の的と化すだろう。

 俺を倒す手段は、それこそ選り取りみどり。まるでレストランでメニュー表を眺めるように。

 

「いいさ、私にやられながら覚えることだな。それと、魔理沙で頼むよ」

「……何だ? ここの皆は下の名前で呼ばれるのが好きな人種なのか?」

「さぁ? 私にはわかりかねます。ですので私も文と呼んでも――」

「おかしいな。夜中なのに烏が変な鳴き声で鳴いているぞ」

「ひどい!」

 

 今のところ、面と向かって話した人物は全て女、かつ下の名前で呼ばれたがる。

 射命丸のそれは冗談だとして、霊夢達は何かと本気そうだ。

 

「あら、私は一応妖怪よ? 人種と言うと少し語弊があるわ。通称スキマ妖怪、ってね」

「……へぇ~」

「べ、別にそこまで身構えなくてもいいじゃない。何も取って食べようなんて思っていないわ」

 

 容姿を見る限りでは、完全に金髪の人間。それもかなりの美形。美しい。

 射命丸のように、羽が生えていたりとあからさまに人外な格好をしていなかっただけに、思わず身を引いてしまった。

 とはいえ、本当に取って食うつもりなら、既に俺は胃の中へ放り込まれていることだろう。

 

「私と魔理沙は人間よ。ただ、幻想郷にはいくらか妖怪だったり魔女だったり、はたまた吸血鬼だったりもいるわね」

「一体何だよ、その詰めに詰め込んだ世界は。西洋なのか東洋なのか、はっきりさせればいいだろうに」

「さぁ? 私にも、未だに謎で仕方がないわ」

 

 日本の風情を感じさせる自然の風景や神社。

 それに、魔女や吸血鬼が堂々参戦。最早意味がわからない。

 昔、幻想郷で東洋側と西洋側との戦争があって、その和解の意を込めたのだろうか。

 

 ……さすがに勘ぐりすぎか。

 第一、仮に戦争があったとするならば、その爪痕がどこかに残っているはずだ。

 痕跡というものは、隠すことはできても、逃げることはできないのだから。

 まだ幻想郷をよく知らない俺だが、武器が十分に揃うほどの文明とも思えない。

 

 そうなると、勝利国は自然と西洋側となり、幻想郷は被害を受ける。

 ここが戦争の惨禍となったことがある雰囲気とは、とても思えない。 

 

「あ~、あの吸血鬼幼女なら、姉と従者のメイドの方がここに来ているんじゃないかしら?」

 

 吸血鬼、という単語を聞くと、立派な洋館まで想像が膨らんだ。

 どう考えても、霊夢の言葉を聞いた上では、吸血鬼は幼女で、さらに妹がいて、加えて従者持ち。

 つまりは、ヴァンパイア幼女が、主ということになる。

 

 ……存外、想起し難い光景だ。

 メイドが幼女吸血鬼に紅茶を注ぐ。案外あり、というわけでもない。

 

「一度お目にかかりたいものだが、吸血されて死なないか?」

「わからないけど、大丈夫じゃないのか? 今日の主役が突然死んだら、色々と大変だし」

「その大変な事態になったらどうしてくれるんだよ」

 

 人目につきながら、幼女のヴァンプに吸血。

 否定しない魔理沙の反応を見ると、吸血された暁には天に召される模様。

 観衆の眼前で繰り広げる吸血行為よろしく、公開処刑や晒し首だ。

 

 無知への恐怖とは、思いの外馬鹿にならない。

 人間の怖いという感情は、痛み等の死へ対するもの。

 そしてもう一つ、予測外などの無知へ対するものと相場が決まっている。

 それでも人によっては、好奇心と恐怖が混在するのだから、不思議なものである。

 

「大丈夫ですよ。いざとなったら、私が守りますから!」

「これ以上に心配を煽る台詞を聞いたことは今までの人生で初めてだ」

「ねぇ、さっきから私に対して明らかに冷たくないですか? 冷たいですよね!?」

「気のせいだろ」

 

 そう、全て気のせいなのだ。

 後ろで他人事のようにケタケタと面白がって笑う紫も。

 見た目は完全にお姉さん系かと思えば、やけに笑顔が子供らしいことに気が付いた。

 無邪気な笑みと言ったら、それはもう少女そのものだ。

 

「行くなら行くで、その時は私が念を押すから、さっさと決めて頂戴」

「どうして俺にそこまでするんだ?」

「貴重な賽銭源よ。収入は簡単に絶やすべきでないわ」

「俺は銀行じゃねぇんだぞ」

 

 ATMと呼ばれる男の気持ちがわかった気がする。

 お金だけむしり取る女とは仲良くなれそうにない。

 そう考えると、対価として金を要求する霊夢は、まだマシな方だろうか。

 

「私はどうだっていいのよ?」

「いやぁ、話がわかりますねぇ霊夢さん。さすがっす」

「貴方、嘘は得意中の得意なんじゃなかったの? 声がのっぺりとしているわよ」

「それこそ気のせいだろ。ほら、早めがいいんだろ? 行こうぜ」

「あぁ、ここに来たときに見たぞ。こっちだ」

 

 魔理沙の先導に、俺と霊夢が続く。

 射命丸と紫も、さらに俺と霊夢の後に並んでいる。

 

 満天の星が、幻想郷の夜に映える。

 輻輳(ふくそう)する数多の煌めきは、宴会で明るいこの場にも届いた。

 

 鬱蒼と茂る雑草や木々の間を掻い潜り、魔理沙の背中を辿る。

 そして止まった場所には――噂の姿はなかった。

 強いて言うならば、泥酔した男達だけ。

 吸血鬼らしき幼女の姿も、メイドの姿さえも、どこにも映らない。

 

「なぁ、この辺りに幼い……えっと、これくらいの女の子とメイドを見なかったか?」

「えぇ? あ~、それなら確かそこに――あ、あぁ?」

 

 魔理沙が比較的理性がある男に問いかけた。

 が、その男は周りを二度三度と見渡すだけで、何も言葉を発しない。

 ようやく口を開いたかと思えば。

 

「い、いないな。おっかしいな、さっきまであっちにいたんだがな」

「そうか。サンキューな。……とのことだが、どうするよ」

「多分帰ったんでしょうね。氷裏、今回は諦めなさい。あと、護衛したんだから賽銭はもらうわよ」

「はいはい、百円や二百円くらいならな」

 

 同じ「円」でも、この世界の一円の価値は外の世界と違うかもしれない。

 昔の日本に準ずるのならば、百円でも十分すぎる程だろう。

 

 溜め息を吐きながら、黒空を一瞥。

 一瞬だけだが、星の光に陰りが見える。

 それはどこか、()()()()のように象られているようだった。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 温かい、注がれたばかりの紅茶をすする。

 

「相変わらず、貴方の淹れる紅茶は最高ね」

「ありがとうございます、お嬢様」

 

 毎日何杯飲んでも、飽きることを知らない。

 香り、味の深み、温度。どれをとっても逸品級だ。

 

 最高の紅茶のカップを傾けて、空を見た。

 

「あら、今夜は月が出ていたのね。それも満月。雲に隠れていてわからなかったわ」

「そのようですね。ところで、つかぬ話をお聞きしますが、あの少年にどこかお嬢様の興味をそそるものがおありでしょうか?」

「えぇ。あの目、あの顔、あの笑い方。色々と最高よ」

「……その、失礼ながら重ねてお聞きしますが、恋、でしょうか?」

「あぁ、違うわよ。面白くてたまらないわ。あんなに()()()()()()()みたいな人は初めてだからね」

 

 いつぞやの赤い霧を思い出して、飲んだ紅茶で体が暖かくなる。

 ……今度は、紅の月、というのも悪くないかもしれないわね。

 そう考えたが、同じく赤い巫女を思い出して、現実になりそうにないと悟る。

 

 ――月が、踊っていた。




ありがとうございました!

さて、いつか彼女たちは出します。
意外と彼女らが書けるときを楽しみにしていたり(*´ω`*)

もうすぐクリスマスですね。
彼氏彼女がいる皆さん、どうぞイチャイチャしてください。迷惑にならない程度にね。
彼氏彼女がいない皆さん、どうぞ私の小説でイチャイチャしたような気分になってください()

私も今は彼女がいないようなものなので、イチャイチャした気分になります。
案外、こういう時は書き手が一番効果あるのかもね。
妄想を文字という形で具現化する、って意味では。

ではでは!

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