テスト期間とは、中々に心苦しいものです。
こちらは、模試と期末が被り、ほぼ休みなしでテスト勉強に続くテスト勉強をしていました(´・ω・`)
そんなわけで、一ヶ月経ってしまった一ピクセル。
今度からは、これを略称にして呼んでいこうかな。個人的には。変えるかもしれんけど。
皆様、どうかお好きな略称でお呼びください。何かいい感じの略称が皆さんから飛び込んできたら、私自身も使うかもね。
では、本編どうぞ!
「あら、来ていたのね。移動に時間を割く必要がない貴方が、どうして遅れたのかしら?」
「その点に関しては、ちょっと気になったことがあってね。それに、この子についても……」
八雲が現れてすぐに、博麗が何かに引かれるようにやってきた。
露骨に気だるげに聞こえていた博麗の声も、今はどこかはきはきとしているようにも聞こえる。
中心地と比べて静かなところなので、声が通りやすいのもあるのだろう。
「で、博麗。八雲。話ってのは、俺をここに呼び出さないといけないほどなのか?」
「えぇ、勿論。あと、私は霊夢でいいわ。そっちの方が慣れているもの」
「私も、紫でいいわよ。呼び出さないなら、私が行っていたくらいね」
それほど大切なことなのだろうか。
俺がたまたま幻想入りしたことが、それほどまでに。
本当にたまたまな『だけ』ならば、俺を問答無用で外の世界に戻せばいい。
そこで、何故俺をこの幻想郷に留めるのか。
俺は勿論、幻想入りする前に、幻想郷のことについての一切を知らない。
それが俺だけでなく、外の世界の人間全員に共通して言えるのなら、秘匿の存在ということになる。
秘匿状態の維持が目的か。それとも、何かそれらしい他の理由があるのか。
何にせよ、今の俺に予想できるのは、そこまでが限界だった。
「……じゃあ、霊夢に紫。改めて、どうしてだ?」
「簡潔に言うわ。霊夢も気付いているでしょうけど、貴方、
「は? のう、りょく……?」
能力。ある物事をこなす力。
人間の誰しもが必ず持っているものだ。
腕が立つ奴のことを能力が高いだのと称する。
……取り敢えず、そんな一般論ではないことだけはわかる。
一般論ならば、ここで引き止める理由がない。
「そう、能力。紫で言うところの、『境界を操る程度の能力』。私で言うところの、『空を飛ぶ程度の能力』ってところよ」
「霊夢は、読んで字の如く飛行。私は、あらゆる境界の操作よ。私がこうやって空間――『スキマ』から不自然に出ているのも能力の御蔭ってわけ」
飛行能力は、まあさほど驚くものでもない。
射命丸や姫海棠のように、鴉天狗のような種類ともなれば飛べるのだから。
ただ、この紫の能力。聞いただけでも無敵級だ。
意識の境界をいじれば、自分の体が思うようにコントロールできない、などもできそうだ。
単なる移動手段としても、便利極まりない。
「ちなみに、朝に空で会ったはたては、『念写をする程度の能力』です。新聞作りに役立てているそうです」
「……で、どれも聞く限りではあり得ない事象ばかりなんだが?」
「あら、否定するの? 別にいいのだけれど、貴方に能力が備わっていることは事実だし、目の前の現実を否定できるの?」
紫の言葉に、俺は特に反論の意を示さない。
別に口論がやりたいわけでもなく、結局のところ、どうなのかが知りたいだけだ。
「じゃあ、その俺の能力ってのは?」
「多分、『
「……おい。随分とちっぽけじゃねぇかよ」
いや、特別それほど期待していたわけではない。
なんかこう、超能力が使えるだとか、思考を読み取れるだとか、一瞬で鶏料理を出せるだとか。
少し便利だったりとか、かっこいい感じだったらな~とは思った。
しかし……これ、どうよ。騙して何になるというのだろうか。
「じゃ、実験しましょ。文に向かって、笑ってみて」
紫の指示に大人しく従って、笑いかける。
「うわぁ、これはまた嫌味な笑いですね」
「当たり前だろ。素直に笑うと思うか?」
「貴方も中々黒い性格ねぇ……じゃあ、同じ笑いを、無表情を意識して笑ってみなさい」
同じく、笑いかける。
先ほどと同じく意地悪な笑みを、射命丸へと向けた。
そして、数秒後。
「え、えっと……どうして、
「あぁ~、なるほど。そういう
つまり、『騙す』と。
自分の実体を、自らが意識した姿に書き換える、と。
俺の体を確認するが、体自体が変わっているわけではない。
ともなると、相手に錯覚を引き起こす、という種類らしい。
そして俺は、一つの疑問点を持った。
先程のように、自分が『欺く』姿をイメージする。
「……どうだ、射命丸」
「どうだ、と言われましても、また意地の悪い笑顔が浮かぶようになったくらいですかね」
「焼き鳥にしてやろうか」
ふむ、どうやら失敗のようだ。
どうやら限度や制限もあるらしい。
こんなにも地味な能力に制限付きとは、何とも不遇だ。
「それで? あんたは何をしようとしたのよ」
「いや、射命丸の姿になれるかなって。意識したけど、結果はご覧の通り失敗なわけだ」
「へぇ……なるほど、そういう、だから……」
霊夢の質問に答えていると、紫が隣で密かに呟いた。
意味深な、重要そうな呟きを発したのだ。
なるほど、と言ったあたり、何か腑に落ちた部分があったのだろう。
「で、何かわかったのか?」
「いいえ、何も? わからなさすぎて、私も困ってしまうほどよ」
――何故、嘘など吐く必要があるのだろうか。
あんなにもバレバレなのに、どうして隠すのだろう。
「じゃあ、霊力の説明を霊夢からお願いするわね~」
そしてこの、露骨な話題のすり替え。
まるで話すことを避けているような、そんな意図が見える。
実際、何かしら考えていることは確かだろう。
「あ~、はいはい。いい? 生き物には、魂を器としてエネルギーになる霊力や魔力、妖力があるの。漏れなく、ね。で、貴方の持つ霊力は常人の二倍近くあるわ」
「お、おぉ……! それってやっぱてんさ――」
「ま、常人が極小くらいだから、あんたは小に届くか届かないかくらいね」
「辛辣すぎだろ!」
俺には徹底的に優遇させてくれないこの幻想郷。
霊力自体が何かわからないが、多い方がいいことだけはわかる。わかってしまう。
「幻想郷には弾幕ごっこっていう、まぁ遊びのような決闘のようなってものがあるの。主に霊力はそれで使うわ」
「……物騒すぎじゃ、ないか?」
決闘がその弾幕ごっこと決められている辺り、争いが想定されているということだ。
そんな危険事を『遊び』と称するのだから、どこかの戦闘民族くらいに野蛮である。
大袈裟に言えば、生き死にも関係するかもしれない。
弾幕ごっこに使う霊力量は、多ければ多い程有利なことも察せる。
もっと明確な例で例えると、銃の弾を十発分持った相手と、たった一発分のみを持った自分。
銃の撃ち合いが始まると、果たしてどちらが殺しやすいかということだ。
互いの銃の腕はそれなりだと考えると、そりゃあ当然相手。
つまりは、そういうことだ。
「最悪死ななきゃいいでしょ。そもそも死ぬような弾幕ごっこは珍し……くない奴もいるけど――」
「おい、それは聞き捨てならない。俺に死ねってか?」
「違うわよ。そんな奴はほんの一部。最低でも大怪我で止まるし、未然に防ぐことも難しいわけじゃない」
理不尽な死や怪我はなし、と。
信じたいものだが、本当にそうなのかは、結局のところわからない。
ただ、そうであることを祈るばかりだ。
「それに、うちにはさいっこうのヤブ医者がいるわ。死なないことと、大怪我の治療と引き換えに、試薬の実験台になることね」
「インフォームド・コンセントって言葉知ってるか?」
「助かるだけマシってもんでしょ?」
この幻想郷は、外の世界とは逸脱したものだと理解した。その自覚もできている。
そう思っていたのだが、まだまだ俺の中で外の世界の常識が、染み付いてしまっているらしい。
――と、錯覚できるほど俺は寛容でも察しが良くも、お人好しでもできた人間でもない。
「先に説明を済ませてしまいましょ。その霊力は、圧縮して玉や針の形にするの。それを沢山集めたものは、弾幕と呼ばれるわ。弾幕を張って、相手に当てる。または相手の持つスペルカード――必殺技みたいな弾幕を全部避けきったら、弾幕ごっこは勝ち」
避けきっても勝ち、というのはミソになりそうだな。
俺みたいに微量しか霊力を持たない種族には、避けることが最もと言っていい程確実な勝利手段だ。
「まぁ、飛べないと避けられないと言っても、過言ではないのだけれどね?」
「じゃあ、俺に唯一残された勝利の方程式である回避に必要な飛行は、どうやって覚えればいいんだ?」
「霊力で飛ぶのよ。結局、貴方は霊力量が少ないから……そうね。飛べて一メートルを十秒くらいってところかしら」
「…………」
どうしようか。早速勝利の方程式が崩されたんだが。
もしかすると、俺に勝つなという幻想郷からの暗示なのだろうか。
俺にはずっと負け続けろ、と言うのだろうか。
「そんなに残念がらなくてもいいじゃない」
「いやあれだぞ。じゃんけんでチョキしか出せない蟹の気分を味わっている俺の気持ちがわかるか?」
「わかりませんね~。物理で勝てないなら……『ココ』を使えばいいじゃないですか」
ニヤニヤと、意地の悪い笑顔を浮かべる射命丸が、指差した場所。
彼女の、頭だった。
俺に言えないくらい底知れない意地悪な笑顔で、告げられる勝利の手段。
「やってやるよ、わかった。やればいいんだろ、やれば」
半ば諦めつつ、射命丸の煽りを躱す。
とは口で言いつつも、そもそも俺に不利な戦いはしなければいい話だ。
弾幕ごっこに勝てないのなら、弾幕ごっこをしなければいい。
誰がこんなハンデ大ありの勝負を望んで受けてやるものだろうか。
ハンデとは、強者と弱者の間で明確に力量の差があるときに、強者に与えられる制限だ。
弱者である俺に、さらにハンデを課そうというのは大きな間違いであり、そんな勝負を受ける理由もない。
「じゃあ、霊夢に少しだけ教わればいいじゃない、弾幕」
「えぇ? 嫌よ、私こんな奴に時間を割く暇なんてないわ」
「はいはい、こんな奴で悪かったな。俺はお前に教わろうなんてこれっぽっちも考えてねぇから安心しろ、博麗」
「霊夢でいいって言ったじゃない」
「親しくもない相手に下の名前って変だろ? なぁ紫」
「えぇそうね、私も貴方に同意よ、氷裏」
取り敢えず、博麗は俺の中の小さなブラックリストに登録だ。
性格からして、俺が損することが半端じゃなく多そうなのだから。
あまり関わりたくはない。無理に弾幕を習う必要もない。だったら答えは否に決まっている。
「あ~わかったわよ、教えるわ、教えればいいんでしょう?」
「いいや、俺が教わりたくない。どちらかと言うと、紫とか文に教わりたいな。むしろ、俺としては習わなくたって一向に構わない」
「残念ながら、こと弾幕に関してはこの中で彼女が一番ですよ。弾幕で妖怪退治を
「ほら、どうするの? ものの五分も経たずに覚える最低限の護身術『弾幕』。欲しくない?」
要らない、と即答しそうになった口を閉ざす。
一矢報いると言うと変だが、何かあっと驚かせてやりたくなった。
博麗さえも驚くような、何かを見せて。
「じゃあ、ありがたく御厚意に甘えて教えて頂きましょうかね、博麗」
「だから霊夢って言っているでしょう。変な感じがするのよ」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、霊夢は右手を前に突き出した。
開いた状態で前に出された手の平から、赤や白の不明瞭な球体が数個だけ飛び出す。
飛び出すというよりも、手の平から這いずり出て浮遊している、という表現が近しいほどの遅さだ。
「自分の霊力を手の平に集めて、一つずつ形作って前に押し出すの。霊力の感覚が掴みづらくても、イメージだけでもいいからやってみて。数個出せればいい方よ」
まぁ、先の彼女の話を聞けば当然か。
霊力は極小なのだから、そうポンポンと出せるはずもない。
「……おう、了解」
意地の悪い笑みが浮上するのが、自分でもわかる。
ここで、俺の冷笑も頷けるほどの性格の悪さが滲み出ることだろう。
手をゆっくり伸ばし、瞬間。
上空へと高々に手を上げて、弾幕を出す。
黒色の揺らめく陽炎玉が幾つも弾き出されて、霊夢の四方を一瞬で囲む。
夜空と同じ色だが、不自然に揺れているため、すぐに位置はわかる。
「なっ……!?」
――だからこそ、瞬く間に彼女の周辺へと展開された弾幕に、驚きを覚えているのだろう。
「おら、よッ!」
辺り一帯の自然を思い切りざわつかせながら、俺の手を振り下げる動作と連動して、霊夢へ弾幕が襲いかかった。
ありがとうございました!
というわけで、彼の能力はこんな感じでやっていきます。
これから、この能力をどう物語に関与させ、はたまた活用させようか。
早速以降の話を構想し始める私でした。
さて、これで5話目となりましたね。
現在、感想は25件。……25!?
いやあ、改めて自分がある程度愛されているのかなぁ、と希望を持ちました。
実際どうかは知らんよ?(´・ω・`)
気軽に感想送ってくれて、ええんやで?
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