集合場所に着くと既に簪ちゃんと本音ちゃんの二人が待っていた。
懐かしさから少し寄り道がすぎたようだ。
「待たせてごめん」
「ううん、私たちも今着いたところだから」
そこまで待たせてないようで一安心、と言いたいところだが・・・
「・・・布仏さん?どうしたのジーっと見て」
先ほどから本音ちゃんがこちらを凝視しているのが気になる。
ゴミでもついているのだろうか?
「浴衣着てくるなんて気合入ってるな~って思って」
「あっ、確かに浴衣は意外だったかも」
なるほど、浴衣が気になってたのか。
神社育ちの俺にとっては当たり前だが普通は珍しいのかもな。
言われてみれば二人は私服だし、気になるのも頷ける。
「何も考えずに着てきたけど不自然だったかな?」
しかし、意外ってことはこの体格だと似合わないのだろうか?
久し振りに着たとはいえ、ちょっと自信無くす…
「全然変じゃないよ~」
「むしろ浴衣着てるのが自然に思えてくるかな」
「ならよかった」
着こなしとかは問題ないようで今度こそ一安心。
「私たちも浴衣着てくれば良かったね~」
本音ちゃんの一言で二人の浴衣姿を想像してみる。
パッと想像するだけでも似合うことが伺える。
きっと可愛らしい雰囲気になるだろう。
「うん、二人ともすごく似合うだろうね」
「そ、そうかな!?」
「えへへ、ありがと」
二人とも顔を少し赤くして照れている。
若さを感じるなぁ~。
「今からでも浴衣着ようかな…?レンタルとかあるだろうし」
「あ~・・・それは厳しいね。ここら辺のレンタル店は今日が稼ぎ時で忙しいから、今からじゃ打ち上げ花火に間に合わないんだ」
「そ、そっか…」
「なるみん妙に詳しいね?」
「えっ?・・・あぁ!ほら、これもレンタルしてきたからその時聞いたんだよ」
「なるほど~」
危ない危ない。
ついペラペラと喋ってしまった。
今日は少し緩みすぎか…?
「さて、揃ったことですしレッツゴー!私もうお腹ペコペコ~」
「来る途中で焼きそば食べてたでしょ…」
「ハハハ、そうだっけ?」
「もう、太っても知らないからね」
「太らないも~ん。それよりもはやくきて一緒に食べよ?」
「はぁ~、優からも何か言ってあげてよ」
でもまぁ・・・
「いいんじゃない?せっかくの祭りなんだから」
今日ぐらいいいよな?
・
・
・
・
見回ること一時間。
「それにしても・・・」
俺の視線は本音ちゃんへと向いていた。
「ん?どうしたのなるみん」
「いや・・・よく食べるな~って」
右手に牛串、左手に唐揚げを持ち交互に食していく。
持ちきれない分は俺が持っている。
次はお好み焼きらしい・・・腹壊さないのか…?
因みにこの前にホルモン焼きとタコ焼きも完食している…
「うっ…見てるだけでお腹いっぱい…
だからとめようって言ったのに…」
「ハハハ…ごめん…まさかこんなに食べるなんて思わなくてさ…」
正直俺も見てるだけで胸焼けしてきた。
「あっ!次はあれ食べたいな~」
「えっ!?ま、まだ食べるのかい…?」
「だいじょ~ぶ!今日はお昼抜いてきたから~」
うん、そういう問題じゃないと思う…
ちらりと隣の簪ちゃんを見る。
『どうにかして!』
目を見るだけで何が言いたいのか伝わって来た。
確かにここらで何とかしないといけないな。
俺達の心の健康と本音ちゃんの胃袋のためにも。
(といってもどうするか・・・)
「そこのあんちゃんたち、どうだい?射的やってかない?」
横から急に声をかけられた。
そちらを向くと女性の店主が俺らを手招きしている。
射的か・・・まぁ、時間稼ぎにはなるか。
「射的だって、やってみる?」
「やりたい!私今すっごく射的がやりたかったの!本音もやるでしょ!?ね?」
「う、うん」
簪ちゃんも必死である。
少し強引だがナイスだ。
すかさず料金を払い、本音ちゃんを射的屋で食い止める
「お姉さん、三人でお願いします」
「おっ、彼女さん達の分まで出すとは気前いいねー!そこの子もすっごいやる気あるみたいだしさ」
「・・・・あっ、私か…すっごく楽しみー(棒)」
「さっきまでのやる気は!?」
簪ちゃん…もう少し頑張ろうよ…
本音ちゃんの進撃がとまって一安心なのはわかるけどさ…
「ま、まぁいいや・・・ほい、三人分。頑張れよ」
「どうも」
といったもののこれと言って欲しいものがない。
取りやすそうなのはお菓子か・・・
他の狙おう、そうしよう。
(・・・あれにするか)
何となく当たり札を狙ってみる。
その上には大当たり札なんてのもあるがまずは肩慣らしだ。
「おっ、あんちゃん当たり札狙うの?落とすの難しいよ~」
パンッ コトンッ
「!おぉ~やるね~」
「まぁ、小さい時にやりこんでたんで」
パンッ コトンッ
懐かしい思い出である。
皆で一緒に周ってたっけ。
パンッ コトンッ
(射的は束とよく勝負したんだよな)
パンッ コトンッ
二人そろって落ちにくそうなものばかり狙っていたのをよく覚えている。
でもどっちもミスしないから終いには必ず・・・
パンッ コトンッ
(大当たり同時撃ちで引き分け)
「す、すごい…」
「当たり札も大当たり札も全部落としちゃった…」
「\(^o^)/」
「あっ」
気がつけば店主は遠い目をしており、射的棚からは当たり札がすべて消えていた。
・・・・つい夢中になってやりすぎてしまった…
「あぁ・・・ええーっと…」
どうしようか…?
このままだとこの射的屋大赤字待ったなしだ。
さすがに罪悪感しかない。
(ん、あれは・・・)
景品棚の一つの商品に目がいく。
それは一メートルはあるであろう巨大なウサギのぬいぐるみだった。
他の物よりは安いかな?
「お姉さん、景品はあのウサギだけでいいですか?」
「・・・・へっ?」
「あのウサギだけで僕は満足なので景品を減らしてもらっていいですか?」
「・・・・いいの?」
大の大人が泣きそうな顔で見ないでほしい。
それも希望をみつけたかのように…
まぁ、悪いの俺だけど。
「もちろん。十分楽しませてもらいましたから」
「あ、ありがとう~!」
店主は両手で俺の手を取ってブンブンと振る。
う~ん、自分で破滅させかけた人から感謝されるとは微妙な気持ちだ。
「あっ!でもそれだけじゃ悪いから・・・」
カウンターの下でゴソゴソし始めた。
おまけでもくれるのだろう。
「あったあった、はいお菓子の袋詰め」
「わーい!」
「「・・・・」」
どうしてこうなった…
※二週間ほど更新できないと思います
申し訳ないです