~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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第五十五話 夏休み開始

八月。

ようやっと暑さにも慣れてきた頃、IS学園の生徒にも遅めの

夏休みが訪れていた。

そのため世界中から集まってくる生徒の大半が帰省中であり、

学園はがらんとしている。

 

「はぁー…書類多すぎ…」

 

「休んでいる暇はありませんよ」

 

しかし、そんな中でも残っている者達は当然いる。

 

「わかってる…」

 

冷房が効いた部屋で資料とにらめっこしているのは更識楯無。

その横で同じく資料と向き合っている布仏虚。

相も変わらず彼女達は仕事に追われている。

・・・いや、いつも以上に追われていた。

 

「それにしても最近多いですね…」

 

「えぇ、かなり多いわね…」

 

楯無が手に持っている資料にはある工場のことが書かれている。

その工場は正規ではない兵器が作られている場所であり、所謂―――闇工場というものだ。

更識家が以前からマークしていた工場の内の一つなのだが・・・

 

「工場は大破。死人は0人で作業員は全員捕縛されている状態で発見、か・・・・

この手のやつ今月入ってから何件目だっけ?」

 

「これで23件目です」

 

今は八月中旬、明らかに異常な件数だ。

 

「悪党同士で勝手に潰し合ってくれるのは助かるけど・・・」

 

「まぁ、そのせいでこの状況ですがね」

 

そのマークしていた工場などの施設が次々と破滅に追いやられているのだ。

もちろん、更識家以外によってだ。

でなければ資料の前でこのように悩まない。

 

「でもこれはチャンスよ。これまでは痕跡を追うので手一杯で

後手に回っていたけど、ようやっと追いつけそうね」

 

「はい、絶好の機会です」

 

楯無が資料をめくるとそこに載っていたのは工場を破壊した人物。

黄色い複眼にアルファベットのEを模した角、

白を基調とした姿にアクセントを加える

両足のアンクルガードと腕の青い炎の意匠。

そして身に纏う闇のようなマント。

すなわち、その人物はエターナルである。

 

「しかし、いったい何が目的なのでしょうか?私にはさっぱりです…」

 

虚がそういうのも無理はなかった。

なぜなら調べの限りその施設から物品やデータが持ち出された痕跡がないのだ。

これは捕らえた施設のもの達から(色々して)得た情報と

照合しているので間違いないだろう。

 

「他勢力の戦力を削る、とかでしょうか?」

 

「・・・それはないわね。それだったらいつもみたいに

もっと重要な所を狙うはずよ」

 

重要な施設はそれだけ警備が厳しいため効率的とは言えないが、

ことエターナルに限ってはそれだけのことを成す力と技術力を持っている。

小さいことを積み重ねるより多少リスクの伴う大きいことをした方が

エターナルにとっては効率的と楯無は考える。

 

「恐らく、探しているんじゃないかしら」

 

エターナルは探し物をしている。

数多くの資料の情報が楯無にそう思わせていた。

 

「探している、と言いますと?」

 

「・・・・・さぁ?それはさっぱりわからないわ」

 

でもね、と付け加え楯無は続ける。

 

「―――焦っているのは間違いないわ」

 

そう言い放った楯無の自信に満ちた表情は虚の心から不安を消していく。

それと同時に「どこまでも付いて行こう」と改めて想わせた。

 

「―――では、そのチャンスをしっかりものにするためにも

この資料の山をどうにかしないといけないですね」

 

「・・・・ちょっと休憩しない?」

 

「駄目です」

 

「もぉ~!こんな大変な時に本音ちゃんは何してるのよ~!」

 

「本音は整備室です。それにその・・・・」

 

珍しく虚が歯切れが悪そうに言葉を詰まらせる。

その表情は申し訳なさで一杯だった。

 

「あの子がいると作業が逆に増えますから…」

 

「・・・・そうね」

 

「申し訳ございません…」

 

「いやいやいや!気にしなくていいわ、二人で頑張りましょ?」

 

虚の姿を見て、自分の発言に少々後悔した楯無は空元気を出して資料と戦うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックチっ!」

 

「風邪?気をつけなよ?」

 

「いやいや、きっと誰かが噂してるんだよ~」

 

(悪い意味でかな…?)

 

場所は整備室。

ここにも夏休みだというのに残っている生徒がいる。

といっても簪と本音の二人だけだが。

いつも手伝っている生徒も帰省中だ。

 

「それにしても最近全然なるみん来ないねぇ…帰省はしてないんだよね?」

 

本音の言葉にピクリと肩を震わせる簪。

 

「そ、そうね…でも、忙しいらしいから仕方ないわよ…」

 

仕方ない、そういうわりには簪の表情は暗い。

それに伴って作業のスピードも落ちている。

 

「寂しいの?」

 

「べ、別に寂しい訳では…」

 

「・・・・かんちゃん、呼んでみたら?きっと来てくれるよ?」

 

「だ、だから寂しくないってば!?・・・・・それに優には迷惑かけたくないし、いつも手伝ってもらってばかりで私は何も借りを返せてないから…その・・・」

 

「その?」

 

「ず、図々しい子だって思われない…?」

 

ついには作業する手がピタリと止まり、本音の方を向く。

その顔は心配で仕方ないといった顔。

 

「・・・・ぷっ、ぷははははは!」

 

「急になに!?」

 

「ははは、だって、かんちゃんってばそんなことで

悩んでるもんだからおかしくなっちゃって」

 

「そんなこと、ってどういうこと…?」

 

笑う本音に対し、ムスッと脹れる簪。

 

「まぁまぁ~怒らないでよ~」

 

「怒ってない」

 

「えぇ~ほんとに?ムスッとしてる気がするけどなぁ。

・・・まぁいっか。それで何が言いたいかというとね、

自分から手伝いたいって言ってきたなるみんを

こっちから誘うのは駄目なの?ってこと」

 

「それは…」

 

珍しく筋の通ったことを言っている本音に簪は言葉を詰まらせる。

 

「それにそのぐらいで邪険に扱うほどなるみんは

器小さくないでしょ?

それともかんちゃんはなるみんのこと信用できない?」

 

「そ、そんなことないっ!」

 

「でしょ?だったら掛けてみればいいじゃん。少しのわがままぐらい大丈夫だよ~」

 

「うっ・・でも忙しいのにこっちで作業させるってのは・・・」

 

置いてある携帯をちらちらと見ながらも、まだ踏ん切りがつかない様子の簪。

 

「あっ!じゃあ、普通に遊ぼう。息抜きってことで」

 

「息抜き…」

 

「そう、息抜き。なるみんも息抜きは重要って言ってたじゃん」

 

頑張りすぎる簪は常日頃から優に息抜きするように言われていた。

それは他愛のない会話だったり、食事だったりと様々だがその重要性は理解している。

 

「息抜き・・・息抜きならいいよね…?うん、優が大事って言ってたもん!」

 

自分に言い聞かせながら携帯に手を伸ばす。

 

「そうそう、息抜き息抜き。ちょうど明日お祭りがあったな~」

 

「お祭り・・・息抜きにはいいかも。メ、メールしてみよ」

 

(わ~い、屋台で美味しいものいっぱい食べれる~)

 

いつの間にか本音の計画通りに動いていると簪が気づくのはもう少し後の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここも違った…」

 

壁に貼り付けた地図にバツ印をつける。

すでに23個目だが一向に手がかりすら掴めていない。

 

「どこだ…どこにある…?」

 

焦りばかリが募っていく。

焦りは失敗を生む、そんなことは分かっているが焦らない方がどうかしている。

 

「いったいどこで作られた…?」

 

俺は机の上に視線を向ける。

砕けたファングメモリが置かれている。

それは福音のコアを回収したときに一緒に持ち帰った物だ。

しかし、これは俺のファングメモリではない。

俺のファングメモリはT1、T2の二本ともしっかりと手元にある。

 

(わかっていることは俺以外の転生者がいるってことだ)

 

俺はファングメモリを実戦で使用したことがない。

つまりファングメモリの力を解析して作るのは不可能。

作ることが出来るのは以前から知っている者だけ。

 

「クソッ…俺自身がそうなのだから他にいたって不思議じゃないってことか…」

 

ガイアメモリをつくることができるものが他にもいるという事実。

それは危険度がグッとあがったことを意味する。

奴に近づこうとすればするほどそれは高くなっていくだろう。

 

「絶対に見つけ出してやる…!」

 

しかしそんなことは些細なことだ。

奴はISを弄んだ敵だ。

危険だろうが何だろうが絶対に見つけ出さなきゃいけない。

 

(見つけ出して絶対に殺―――)

 

机の僅かな振動によって思考は遮られた。

当然目線は自然とその揺れの原因にいく。

 

「メールか」

 

画面に映るのは『簪ちゃん』の文字。

俺は内容を確認するためそのまま携帯に手を伸ばす。

 

『明日のお祭りに一緒にいきませんか?』

 

そこには何故か敬語で明日の祭りに誘う文章が書かれていた。

そういえば今日は何時だったか…?

携帯を操作しカレンダーを呼び出す。

 

(・・・・そうか、もうそんな時期か)

 

 

 

 

 

 

 

 

私はいまとある神社、というか・・・・篠ノ之神社に来ていた。

境内に入れば綺麗な女性が掃き掃除をしている。

ゆっくりと近づき、声をかける。

 

「お久しぶりです、雪子叔母さん」

 

「・・・箒ちゃん…?」

 

その女性―――雪子叔母さんはこちらを向いて、目を真ん丸にしている。

事前に来ることは連絡しておいたが、何しろ最後にあったのは

何年も前のことなのでしょうがない。

 

「はい、叔母「箒ちゃーん!」―――!?」

 

突然抱き着かれてしまった。

数メートルはあった距離が一瞬…

こういう時にやはり父の兄妹であると実感する。

 

「それにしても大きくなったわね~って、もう16歳なんだから当たり前よね。

年をとるとどうもこういうことが言いたくなるのよね」

 

「いえいえ、雪子叔母さんは相変わらずお綺麗ですよ。

とても四十代後半とは思えません」

 

「もう~箒ちゃんたら、お世辞なんていいのよ?」

 

そう言って雪子叔母さんは笑う。

どうやら謙遜するところも変わってないらしい。

 

「箒ちゃん」

 

ギュッと私は抱きしめられる。

 

「叔母さん…?」

 

「おかえりなさい」

 

雪子叔母さんは優しく、穏やかに私を包み込む。

あぁ、あたたかいな。

 

「・・・・ただいま」

 

 

どれほど時間が経っただろうか。

ゆっくりと雪子叔母さんが離れる。

少し…名残惜しい。

 

「突然ごめんなさいね。学校から少し遠いから疲れてるわよね?

中に入って少し休みましょうか」

 

確かに立ち話というのもあれだ。

雪子叔母さんの後に続いて神社の裏にまわっていく。

そこには昔のまんまの家がある。

 

「変わらないでしょう?」

 

嬉しそうに笑いながら雪子叔母さんはこちらに振り向く。

 

「えぇ、本当に」

 

嬉しいなつかしさを胸に家に上がる。

当然、玄関の靴の数は少ない。

少し寂しいな…

 

「はい、麦茶」

 

居間について腰を降ろせば雪子叔母さんが麦茶を持ってきてくれた。

私と雪子叔母さんの分で・・・・三つ?

玄関に靴は雪子叔母さんの物しかなかったはず?

 

「箒ちゃんが来てくれましたよ」

 

机に二つ置き、最後の一つを棚に置いた。

その棚にあるのは一つの写真立て。

 

「驚いたでしょ?雄二くん」

 

雪子叔母さんは写真に一言だけ笑いかけ、こちらに戻ってくる。

 

「葬式もお墓も建ててあげられないけどこのぐらいはしてあげなきゃね。

気休めだってのは分かっているのだけれどね…」

 

「叔母さん…」

 

やっぱり…

兄さんは本当に私以外に会っていない。

 

(こんな辛そうな表情は初めて見た…)

 

今の雪子叔母さんは笑っているのがとても辛そうだ。

兄さん…どこにいるのですか…?

こうまでしてなにをしているのですか…?

 

「あの…雪子叔母さん…」

 

「ん?どうしたの箒ちゃん」

 

兄さんが生きてると知れば雪子叔母さんは喜んでくれる。

辛い表情もしないで済む。

 

「に、兄さんは―――」

 

『これは俺と箒だけの秘密だ』

 

「ッ…!」

 

私は今何を口に出そうとしていた?

兄さんは私を信頼してくれているというのにその信頼を裏切るのか?

私は兄さんを信頼しているのではないのか?

 

「箒ちゃん?」

 

「―――兄さんはきっと見守ってくれていますよ。

だから雪子叔母さんは胸を張っていいと思います」

 

きっと見守ってくれている。

どんなところにいようとも私たちは家族なのだから。

 

(そうですよね?兄さん)

 

「ふふふ、そうね。クヨクヨしてたら雄二くんに怒られちゃうわね、

『前を見ろー!顔を上げろー!』って」

 

良かった、笑ってくれた。

やっぱり雪子叔母さんは笑っていないと。

 

「ってもうこんな時間!?急いで準備しなきゃ!」

 

雪子叔母さんはバッと立ち上がる。

時計を見れば確かに時間が迫っていた。

私も準備し始めなければ。

 

「では私は身を清めてきます」

 

といっても風呂に入るだけなのだが。

 

 

「よし、と。準備完了ね」

 

風呂から上がり、今の私は純白の衣と袴の舞装束に身を包んでいる。

 

「やっぱり親子ね~。千春さんと瓜二つだわ」

 

「ど、どうも///」

 

憧れである母と瓜二つと言われると誇らしく思える。

私も少しは成長できていると言う事だろうか。

 

「そうだ!少し扇を振って見せてよ。久しぶりに見て見たいわ。」

 

雪子叔母さんは奥の祭壇から宝刀と扇を持ってくる。

これは神楽舞で舞う巫女が持つものだ。

そう、実は私は神楽舞の巫女としてこの神社に戻って来たのだ。

 

「はい、練習がてら舞ってみましょうか」

 

 

「・・・以上です」

 

舞を踊り終え、ホッと一息つく。

練習とはいえ本番のような気持ちでやったがどうだっただろうか?

 

「まあ!まあまあまあ!素晴らしかったわ箒ちゃん!離れてもちゃんと舞の練習してくれていたのね」

 

「私も一応・・・巫女ですから」

 

上々のようで何より。

練習を怠らなくて本当に良かった。

しかしこうも褒められると照れる。

 

「これなら『剣の巫女』を安心して任せられるわ」

 

「はい、任せて下さい!」

 

 

「よっ!お疲れ」

 

「い、一夏!?」

 

本番の神楽舞を舞い終わり、お守り販売の手伝いを

しているところに一夏が現れた。

 

(な、なんで一夏がここに!?家でゴロゴロしているものとばかり…

いや、そんなことよりも・・・)

 

変だと思われなかっただろうか…?

昔から男女などと言われているような私がこんな女性らしい

恰好をしているところを見られた…

 

『女らしいことは似合ってない』

 

などと一夏に言われれば立ち直る自信はない…

 

「凄い様になってて驚いた。それになんていうか・・・綺麗だった」

 

「っ―――!?」

 

顔が急激に熱くなっていくのが感じられる。

夢か?これは夢なのか!?

頬を思いっきり引っ張ってみれば・・・

 

「いたい…」

 

「お、おい。急に頬をつねってどうしたんだ?」

 

「___ない」

 

「えっ?」

 

「夢じゃない!」

 

なんということだ。

こんなにうれしいサプライズがあるなんて!

夢じゃなくていいのだろうか?

 

「箒ちゃん、急に大きな声を出してどうしたの?・・・あら?一夏君」

 

「あっ!雪子さん、お久しぶりです」

 

「おととし以来かしら?また背が伸びたわね~」

 

「へへっ、成長期なんで」

 

あぁ、なんてすばらしい一日なんだ今日は。

一夏にき、綺麗だと言われた。

 

「えへへ~」

 

「そうだ一夏君ちょっと待っててくれる?」

 

「別にいいですけど・・・箒の奴大丈夫ですか?」

 

「大丈夫大丈夫。じゃあ、ちょっと支度しに連れてくわね」

 

「えへへ~」

 

「はーい、こっちに来てね箒ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、これで良しと」

 

箒を浴衣に着替えさせ、無事一夏に預けた雪子は一息ついていた。

お守り販売を一人でというのは少し大変だがかわいい姪の為なら苦でもないようだ。

 

「しかし、大丈夫かしら箒ちゃん。着付けの時も上の空だったし」

 

結局送り出すときまで上の空だった箒が少し心配になる雪子。

 

「まぁ、そういうところも千春さん似なのでしょうね」

 

―――なら大丈夫か

そう思い雪子が売店に戻ろうとした時。

 

「―――!?」

 

あるものを見てしまった。

それは一瞬で人ごみの中に紛れてしまう。

 

「雄二くん…!?」

 

気がつけば走り出していた。

 

(ありえない・・・そんなことありえないわ!?)

 

亡くなった人物が祭りに来ている。

そんなことあるわけないと分かっているのに雪子の足は止まらない。

人ごみを掻き分けその人物を探す。

 

(どこ?どこに行ってしまったの?)

 

周りを見渡す。

祭りということで当然多くの人がいる。

 

「―――いた!」

 

だというのに雪子は目当ての人物を見つけた。

人ごみの奥に先ほど見た浴衣が僅かに見える。

見失う前に急いで人ごみを抜け、その裾を掴む。

 

「雄二くん!」

 

裾を掴まれた人物は振り返る。

息を整えながら雪子は顔を上げる。

 

「あのー、人違いでは?」

 

「え…?」

 

雪子が見上げた顔は彼女の知っている人物とは

似ても似つかないものだった。

 

「す、すみません!知り合いと間違えてしまいました」

 

どうして見間違えたのだろうか…?

体格も顔も似ていないのに…

雪子の頭は疑問と申し訳なさでいっぱいになる。

 

「この人ごみですから気にしないでください」

 

見たところ学生だろう男性は特に怒っているといった様子はない。

 

「では、人を待たせてるので行きますね」

 

「あっ、引き留めてしまってすみませんでした」

 

「いえいえ、雪子さんもお仕事頑張ってください」

 

―――それじゃあ

そう言うと男性は人ごみの中に消えていった。

それを見届けた雪子も売店へと戻っていく。

 

(はぁ~、疲れてるのかしら私・・・・・あら?)

 

ふと立ち止まり、男性の消えていった人ごみへと振り返る。

 

「私あの子に名前言ったかしら…?」

 

 

「雪子さんはやっぱすっごいな~。どうしてわかるんだ?」

 

人ごみを抜けながら鳴海優はつぶやく。

その口角は少し上がっている。

 

(来て正解だったな)

 

箒の神楽舞を見れて、懐かしい顔も近くで見れた。

すでに優は満足していた。

 

「お~い、なるみ~ん!」

 

前方から陽気な声が優にかけられる。

その声の元を見れば二人の女の子がいる。

 

「やぁ、二人とも誘ってくれてありがとう。おかげで―――」

 

―――冷静になれたよ


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