『キーンコーンカーンコーン』
チャイムとともに俺は妹のクラスへ合流するためダッシュする。
妹がこちらに来るのが見える。どうやら同じ考えらしい。
俺は走りながら妹を回収(お姫様抱っこ)し下駄箱へ走る。
1つしか変わらない妹を抱えて走れるのは特典の丈夫な体のおかげだろう。
この特典の影響で運動神経がよくなっていたり、力が増していたり、病気にかからなかったりする。さすがに今回はかなりきついが。
そして俺が颯爽と下駄箱まで走っていると、
「はーい、廊下は走らなーい。」
先生に捕まった。逃げようとしたが頭に手を置かれてはナデポの前に屈するしかない。
くっ……殺せ!ってそんなことしてる場合じゃない。
俺は!今日こそ!ナデポに!勝つんだー‼
シュンッ
「なっ!?速ッ!」
「悪いね先生。急いでるんだ。」
「ま、待ちなさーい!」
「今日の俺をとめられるやつはいねぇ!」
フハハハハハハハハハハ‼
★
「で、なんで妹ちゃん抱っこして走ってたの?」
俺の前には先生。そして頭には手がのせられている。
さっき逃走したんじゃないのかって?結論からいうと理想(さっきの)と現実(今)ってこと。
俺はナデポを振り払えず、状況を聞かれている。
フンッ!悔しいが認めてやる。先生お前がナンバーワンだ。
「キャンプに行くの!」
俺が屈している間に妹が元気よく答えた。可愛い。
「あら、そうだったのね。でも廊下は走っちゃダメよ。」
「はーい」
「じゃあ、行ってよし。楽しんでおいで。」
ええぇ!いつもだったらコンボで手伝わせる先生がこんなあっさりと・・・
妹・・・恐ろしい子ッ!
「あっ!暮見くんには今度また何か手伝ってもらうわね。」
さいですか、はい。
★
「ついたー」
車で約2時間半。キャンプ場についた。そこは緑であふれ、きれいな川が近くに流れているTHEキャンプ場だった。
「いいところねぇ~」
「私川行きたい!」
「じゃあ、父さんはテントはっとくから遊んでおいで」
俺も川に行くことにした。バラバラに動くと母さんが心配するからという理由もあるが。
俺もこんなきれいな川を見たのははじめてで気になっているからだ。
都会から2,3時間とは思えない。
「きゃははは!」バシャバシャ
「おーい、あんまりバシャバシャするな~。風邪ひくぞ~。」
妹を見ながら俺と母さんは足だけ川に入れる。
「雄く~ん。こっち向いて。」
「ん?なに、かあs『バシャンッ』」
向いた瞬間顔に水をかけられた。母さんはすでに水しぶきをあげながら笑って逃げている。
「やったなぁ~!」
「いや~ん、雄くんが怒ったぁ~」
それから妹も含めて3人で水をかけあった。
ずぶ濡れの俺たちから事情をきいて『どうして呼んでくれなかったの』と父さんが落ち込んでいた。
夕飯はもちろんBBQだ。焼きの担当は父さんだ。実は父さんもそこそこ料理がうまい。
しかし、『妻の料理に勝るものなし!』とか言って普段は食べる専門なのだ。
母さんも母さんで喜んで作るもんだからダメなのだ(呆れ)。
そんな父さんがなぜ調理するかといえば、
「輝け!俺のパパ力!」
「キャー!あなたかっこいいー!」
「お父さんかっこいい!」
そう、パパ力を上げるためとかなんとか。
まぁ、楽しそうだしいっか。
「父さーん!輝いてるよー!」
その日の食事はいつもよりにぎやかでおいしく感じた。
時刻は22時を過ぎ、もう寝ようかというとき、
「そういえば、なんで急に水かけたの?」
ふと気になって母さんに聞いてみた。
いくらテンションが高くても急に水をかけたりしてくるような人ではない。
こちらから仕掛けたりすれば別だが。今回は違う。
「ん~とねぇ、ほら雄くんって落ち着いてるじゃない?」
「そうかな?」
自分では結構自由にしているつもりなのだが、同年代の子と比べるとそうかもしれない。
「そうなの。それが悪いってわけじゃないのよ。ただね、時々我慢しているように見えたの。我慢できる子はえらいと思うわ。でもね、せっかくの家族でのお出かけだからその時ぐらいこどもらしく楽しんでほしいなぁーって。嫌だった?」
「ううん、そんなことない。ありがと母さん。」
「それならよかった。あら、もうこんな時間。そろそろ寝なさい。」
いつの間にか時計は23時になろうとしていた。
「うん、おやすみ母さん。」
「おやすみ雄くん。」
俺はとてもあたたかい気持ちで眠りについた。
★
二日目。
今はキャンプ場でロケットペンダントづくりをしている。
これはこのキャンプ場を管理している会社の体験コーナーで利用客は無料でできるのだそうだ。
自然の中でこういったものをつくるのも悪くない。
「次は写真撮るのでこちらに移動してください。」
俺たちはカメラマンさんの指示に従い位置につく。
「1+1はぁ~?」
「「「「ニィー‼」」」」 カシャ
もちろん全員最高の笑顔だ。撮った写真は印刷してペンダントに入れてくれるとのこと。
もらえるのは夕方だそうだ。時間まで俺は父さんと釣りで勝負した。
結果?俺の勝ちだったよ。これも特典の効果なのか途中からコツがわかった。
まったく特典さまさまですなぁ。
そのあとはペンダントを受け取って、釣った魚をみんなで食べて寝た。
自分で釣った魚はやけにうまく感じた。
★
三日目。
今日でキャンプはおしまいだ。今は片付けをしている。
「ええぇ!もうおうち帰るの?」
「そうだよ。父さんも明日から仕事だからね」
俺がそう言うと、
「やだよー、もっといたいよ~。」
「わがまま言うなって。」
「やだやだやだ~。」
駄々こねて泣き始めた。どどど、どうしよう。
と、とりあえず、もちつけ‼じゃなくて落ち着け俺!
「ほ~ら泣かないの。帰ったらハンバーグい~っぱい作ってあげるから。ね?おかあさんといっしょに帰りましょ?」
「グスッほん…と?」
「うん、ほんと。食べきれないぐらい作ってあげる。それに、帰るまでがキャンプよ。」
「グスッじゃあ…グスッかえ…る。」
あたふたしてたら解決した。やっぱり母は強しだな。それにしてもチョロすぎだろ。
ちなみに母さんはハンバーグだけは絶対失敗しない。家族全員の大好物だからだろうか?
「準備できたぞー」
いつの間にか父さんは車に乗っていて片付けも全部終わっていた。
父さんがエリートと呼ばれる一端を俺は知った。
出発してから30分ほどたち、今は山道を走っている。父さんと母さんは鼻歌でデュエットしていて、妹はペンダントを開けてはニヤついて閉じてを繰り返している。
「なんでそんなニヤニヤしてるんだ」
気になって聞いてみた。
「だってこれがあればいつでもお兄ちゃんやお母さんやお父さんと一緒でしょ。」
ニコリとわらいながらペンダントの写真を見せてきた。て、天使がおる。
「そうだな!離れていてもずっと一緒にいれるな!一緒にいれば写真もあわせて2倍一緒だな!」グスン
「えぇ、そうね…」グスン
「そうだね」グスン
やばい妹に泣かされる時がくるとは思わなかった。父さんも母さんも泣いてるし。
車内には今、超幸せオーラが満ちている。
しかし何事にもおわりがあるということなのかそこに突然大きな揺れが来た。
「地震ッ!?」
「それもかなりでかいぞ。」
父さんは車を止める。地震のときに走行するのは危険だからだ。
「こわいよ、お兄ちゃん…」
「大丈夫すぐにおさまるから。」
俺は妹を抱き寄せ安心させるため声をかける。
しばらくすると揺れはおさまった。
「大きかったわね、今の揺れ。」
「すごかったね。」
「じゃあ、動くからちゃんと座れよ。」
「これ何の音?」
妹が聞いてくる
「音?」
耳を澄ますとバキッとかそういった音が聞こえ、どんどん大きくなっている。
その音はまるで…『木を折るかのような音』だった。
「父さん‼早くだs『 』
俺の言葉は最後まで続かず、何か大きな音とともに俺の意識は落ちた。
上げて落とす‼
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