~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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皆さん、久しぶりに束のターンですよ。

束「束さんのターン!」


第二十二話 天才と天災

「起きろ束。朝だぞ。」

 

「んぅ~?」

 

 

体を揺さぶられる感覚で目が覚めた。ねむい・・・・・

 

 

「やっと起きた・・・ほら、はやくどいてくれ。お前が上に乗ってちゃ動けん。」

 

「ふわぁ~。はいは~い。」

 

 

私はゴロンと寝返りをうち雄くんの上からどく。

 

 

「まったく、いつも言っているだろう?人の布団に入ってくるなって。」

 

 

そう、ここは私の部屋ではない。雄くんの部屋で雄くんの布団で寝ていた。

 

 

「うにゅぅ~、だって雄くんあったかくておちつくんだも~ん。」

 

 

私は再び布団にくるまり二度寝の体勢をとる。

 

 

「だも~ん、じゃねぇ・・・よっ!」

 

「ぶるわぁ!」

 

 

雄くんに勢いよく布団を取られて私はコマの要領で地面を転がされる。

そこで完全に目が覚めた。

 

 

「いったいなぁ~!レディーはもっと丁重に扱ってよ!」

 

「一人前のレディーならな?」

 

「束さんは一人前なのに。ブ~ブ~!」

 

「人の布団に入り込むような年頃の娘は一人前のレディーとして扱わん!」

 

 

それでもさっきのはひどいと思う。

 

 

「でも、さっきのはひどいと思うんだよ。」

 

「それは・・・悪かった。」

 

「うん、よろしい。」

 

 

素直に謝る雄くん。そういうとこが雄くんのいいとこの一つだと思う。

 

 

「でも、元はと言えば束が俺の部屋で寝てるのが原因だろ?」

 

「そうだけど、なんでそんなに嫌なのさ。こんな美少女と一緒に寝られるんだよ。」

 

「いや、それが問題なんだよ。束はすっごく可愛いから嬉しいんだけど、家族とはいえ俺も男だ。いつ無意識のうちに襲ってもおかしくないんだぞ。」

 

 

雄くんは私のことを大切にしてくれていることが改めてわかり、私はうれしくなった。

なのでもうちょいからかってみることにした。

 

 

「束さんは~雄くんにだったら襲われてもい・い・よ。」

 

「ッ!?」

 

 

雄くんの背中に抱き着いて耳元で囁く。

ビクッ!ってなる雄くんはとてもかわいい。

 

(どんな反応みせるのかな?)

 

私は雄くんの反応を楽しみに待つが

 

 

「・・・・」

 

 

雄くんはまるで石像のように何も言わないし、動かない。

 

 

「雄くん?」

 

「・・・・」

 

 

声をかけても反応が返ってこない。

 

(さすがにふざけすぎたのかな?)

 

そう思い、離れようとした瞬間

 

 

「キャッ!?」

 

「・・・・」

 

 

雄くんが急に動き出して私は両腕をつかまれ、そのまま布団の上に押し倒された。

 

 

「ゆ、雄くん?」

 

 

「・・・・」

 

 

いきなりのことで混乱する。

さらに雄くんに声をかけても反応はない。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

 

「・・・・」

 

 

雄くんは何も答えてくれず、前髪がかかっていることで瞳は確認できずどんな表情をしているのかわからない。

 

(え!?なになに!?雄くんどうしちゃったの?何も答えてくれn痛ッ‼)

 

何が起こったのか考えていると両腕に痛みが走る。

雄くんが力を込めたのだろう。この体勢では何も抵抗できない。

 

 

「雄くん・・・・腕、痛いよ…」

 

 

「・・・・」

 

 

腕の痛さを訴えるが腕にかかっている力は依然変わらない。

いつもの雄くんならすぐに心配して謝ってくれるのに・・・

 

 

「ど、どうしちゃったのさ?怒ってるの?」

 

 

「・・・・」

 

 

やはり雄くんは何も答えてくれない。

 

 

「やっぱり怒ってるんでしょう?束さんが悪かったよ。謝るからさ、だから離して?ね?」

 

 

「・・・・」

 

 

雄くんはその言葉に反応せずゆっくりと顔を近づけてくる。

 

 

『襲ってもおかしくないんだぞ。』

 

 

思い出すのは先ほど雄くんが言っていた言葉。

ま、まさか・・・

 

 

「まさか束さんを襲うの?・・・・冗談でしょ?・・・・」

 

 

「・・・・」

 

 

返事など帰ってこない。

ただゆっくりと顔を近づけてくる。

 

 

「ゆ、雄くん!今回は束さんもおふざけがすぎたよ。ごめんね?」

 

 

「・・・・」

 

 

しかし雄くんはとまらない。

 

 

「雄くん!・・・・・雄くん!・・・・」

 

 

「・・・・」

 

 

「答えてよッ‼・・・・何とか言ってよッ‼」

 

 

私は大きな声で雄くんに呼びかけるが雄くんは何も言ってくれない。

 

そして顔はもうすぐ目の前まで迫ってきている。

 

 

「いや・・・・だよ・・・雄くん・・・」

 

 

「・・・・・」

 

 

自然と瞳に涙が浮かぶ。

 

 

お互いの唇が触れるまであと数センチ…

 

 

私は後悔していた。慢心していた自分を…

何をしても雄くんなら襲ったりなんかしないと思っていた。

しかし、現実はどうだ?今の雄くんは?

 

 

(私はまた・・・・・)

 

 

思い出されるは過去の記憶。

 

 

(勝手に決めつけてしまったんだね・・・・・)

 

 

自分の勝手な発言で怒り、傷ついた少年。

もうそんなこと繰り返さないと決めていたのに・・・・

 

彼はもう目の前だ。私はギュッと目をつぶってみないようにする。

そして・・・・

 

 

(ごめんね・・・雄くん…)

 

 

心の中で彼に謝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な~んてな。」

 

 

そんな声とともに腕へかかっていた力はきえる。

もちろん唇にはなにも触れてない。

 

 

「ふぇ・・・?」

 

 

目を開けるといつもの雄くんがいた。

 

 

「これでわかっただろ。泣くほど怖いことされるんだって。」

 

 

雄くんにデコピンされる。額が少し痛い。

 

 

「これに懲りたらあんなこと男に二度とするなよ。」

 

 

雄くんが何か言っているが私はよく聞いていなかった。

 

(演技・・・だったの?つまりいつも通りの雄くんってこと?)

 

私は安心していた。自分が襲われなかったことではなく、彼が傷ついていないことに。

もしあれが本当だったなら雄くんはあとで後悔するだろうから。

 

(良かった・・・・よかったよ。)

 

それが分かった途端に涙がどんどん溢れてくる。

 

(あれ?とまらないや・・・)

 

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちていく。

 

 

「ど、どうした!?そんな涙止まらないほど怖かったか!?ス、スマン!わかって欲しいからってやりすぎた。」

 

 

私の様子がおかしいと思ったのか雄くんが焦って近づいてくる。

 

(自分でやっておいてそんな謝るなんて、ほんとバカみたいに優しいんだから。)

 

私は近づいてきた雄くんに抱き着いて、ギュッと抱きしめる。

彼のあたたかさを確かめるように・・・これが夢じゃないかを確かめるために・・・

 

 

「束?」

 

 

抱き着かれていることが不思議なのか心配そうに私の名前を呼ぶ。

 

 

「大丈夫、だけどもう少しこのままでいさせて?」

 

 

雄くんは何も言わずに抱きしめていてくれた。

この無言は心地よかった。

 

 

 

 

 

 

時間は二時間ほど経ち9時頃。

 

私たちは少し遅めの朝食を食べていた。

今日は休日のはずだが他には誰も居間にはいない。

 

 

「みんなは?」

 

 

ごはんを口に運びながら雄くんに聞く。

 

 

「口に物入れて話すな。ていうか昨日聞いてなかったのか?」

 

 

はて?なんか言っていた気もする。

 

 

「はぁ~、聞いてなかったんだな…千春さんと柳韻さんは高校の時の人たちと同窓会。箒は雪子さんと動物園。で、俺達は留守番。ちなみに俺は今日は神社を任されているからISの方は手伝えない。すまんな。」

 

 

ごちそうさまでした。と、いつの間にか食べ終わって玄関に向かう雄くん。

 

 

「もう行くの~?」

 

「もう9時だしな。そろそろ始めないとやばいんだ。」

 

 

行ってきます。と、本殿のほうに雄くんは行ってしまった。

 

私も食べ終わり食器を片付ける。

 

 

「ごちそうさまでした。」

 

 

それから自室に戻りIS作成をする。

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカt・・・・

 

 

「ねぇ雄くん。ここなんだけどさぁ~・・・・っていないんだった…」

 

 

忘れてた・・・今日は雄くんいないんだった・・・

いや~束さんったらうっかり~・・・・

 

 

「よし、気を取り直してやるぞ~。」

 

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタk・・・・・カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカt・・・・・・

 

 

「う~ん、ダメだ~‼」

 

 

今朝のことがあったからか、なんかソワソワして集中できない…

雄くんがいないからだろうか…

 

 

「私、雄くんと一緒にやる前はどうやって一人で進めてたんだっけ・・・?」

 

 

雄くんと一緒にやるのが当たり前になりすぎて思い出せない。

しかし、このままやっても進まない・・・・

 

 

「よし!決めた‼」

 

 

引き出しを開けてうさ耳を装着する。

これは雄くんが小学四年生の時にくれたものでお気に入りのアイテムだ。

私は鏡でうさ耳の位置調節をしたら玄関に向かった。

 

 

「雄くーん!」

 

 

私は神社の掃除をしている雄くんに後ろから声をかける。

 

 

「ん?束か。どうしt・・・・!?」

 

 

ふっふっふ、驚いておる驚いておる。

雄くんは振り向いた状態で固まっている。

なぜなら私はいま・・・・

 

 

()()()(うさ耳)なのだー!

 

 

「どう?雄くん?似合っている?」

 

「あぁ、うん・・・・すっごい綺麗だ…」

 

 

はい!雄くんの見惚れ顔頂きました!

この顔が出たときは雄くんが見惚れている証拠です。

それが出たってことは

 

(に、似合ってるってことだよね?ね!)

 

やったぁ~!わざわざ巫女服に着替えただけのことはあったよ。

でもちょっと照れる。

 

 

「あっ!すまんすまん、ボーっとしてた。で、なにか用か?」

 

 

少しすると雄くんが正気を取り戻して聞いてくる。

 

 

「いやね、雄くんを手伝ってあげようと思ってさ。」

 

「いいのか?IS作成の方はどうすんだ?」

 

 

私が手伝うと言うと雄くんが少し驚いて聞いてくる。

 

 

「あ~、いいのいいの。今日はなんか気が乗らなくてさ。それに、巫女服着ちゃったしねぇ~。そ・れ・に~、雄くんも束さんの巫女服姿見ていたいでしょ?」

 

「・・・・・否定はしない。」

 

 

雄くんは恥ずかしいのかそっぽ向いて言う。

 

 

「えっ?今なんて言ったの?よく聞こえなかったなぁ。もう一回言ってよ。」(ゲス顔)

 

「・・・・別に何も言ってない…」

 

 

私がからかったのが気に入らないのか、雄くんは意地をはる。

ならば束さんもそれ相応の返しをしようではないか。

 

 

「そっか、雄くんは巫女服気に入らなかったかぁ~。じゃあ、着替えて来るね。」

 

「待て待て待て待て‼悪かった、俺が悪かった。似合ってるから。見ていたいから。だからそのまま一緒に仕事しようじゃないか。」

 

 

計画通り。雄くんは簡単に引っかかった。

それにしても食いつきが良かった。

 

(巫女服か・・・使えるッ!)

 

そんなことを思いながらその日は神社の仕事を二人でこなした。

 

 

その日の夜、ちーちゃん写真対決で私は敗北を喫するのだった…




待望の束のヒロイン回でした。
お楽しみいただけたでしょうか?
作者は束のヒロイン回かけて満足です。

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