~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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今後も楽しんでもらえればと思います。


第十四話 だから俺は友達が少ない

転校してからはや1ヶ月がたち、新しい学校生活にも慣れてきた。そう・・・ボッチ生活にね…

 

(何故こうなった…)

 

現在俺の周りのクラスメイトは机を離せるだけ離しており、休み時間になると速攻でどこかに行ってしまう。なんとか話しかけてもすぐに逃げられる。

俺が何かしたならまだいい、しかし2日目からずっとこれだ。いい加減嫌になってくる…

 

(なにかしたっけ?)

 

・・・・・全く身に覚えがない。

嫌われるなら分かるんだが、恐れられているって感じだ。ますます意味が分からん。

 

この学校に来てから喋ったのは先生達と束だけだ。

 

「雄く~ん。」

 

噂をすればなんとやら。束が来た。

束は休み時間2回に1回は来てくれる。

ありがたい。しかし、束も束で問題があるのだ。

 

「もぉ〜、まだ悩んでるの?こんな奴らと話したっていいことないよ?」

 

これだ…。前に友達出来ないのを相談したのだがその時の答えが

 

『えっ?あんな奴らに雄くんは理解できないんだから気にする必要ないよ。』

 

だった。どうやら束は人によって全然態度が違うようなのだ。

人に対する態度にとやかく言うつもりはあまりないのだが束の場合極端だ。

知り合い→激甘

その他→ゴミ

こんな感じだ。

 

そんなんで学校生活大丈夫かよ…と思っていたが束にはちーちゃんという親友がいるらしい。

つまり俺より学校での友達が多い…

 

(俺の方こそ大丈夫かよ…原因すら分かってないんだぞ…)

 

まったく、頭が痛くなってくる。

 

「どうしたの頭抑えて?束さん特製頭痛薬いる?」

 

「大丈夫…別に問題ない。心配してくれてありがとな。」

 

「雄くんと私の仲じゃない。気にしない気にしな〜い。」

 

まったく、本当にいい子だな。だからこそあまり俺のとこに来させるのは申し訳ない…

俺は何故だか恐れられていて、そんな俺と一緒にいたら束も何を言われるか分かったもんじゃない。この態度で既に何か言われてそうだけど…

 

「ほら、授業始まるぞ。自分のクラスに戻らないとちーちゃんに怒られるぞ。」

 

ちーちゃんには未だに会ったことないがちーちゃんに怒られた話を束からよく聞く。

 

「げっ!?それは勘弁だよ〜」

 

脱兎の如くクラスに戻って行った。

ウサミミか…なんか似合いそうだな束に。

 

 

 

 

 

 

その日の授業も終わり、放課後だ。

今日は修行を朝の内に半分終わらせてきたため帰るまでに猶予がある。そしてやることが、

 

「諜報活動だ。」

 

「えぇ〜めんどくさいよ。はやく帰ってアイス食べたーい。」

 

束隊員がいきなりごねりはじめる。

 

「束隊員。帰ったら坂上の店のプリンを贈呈しよう。」

 

「ホントにッ!?」

 

坂上のプリンは1時間はならばないと手に入らない高級プリンだ。ランニング中そこを通るのだが

 

『雄二くん。いつも頑張ってるねぇ〜。これ今日売れ残ったやつなんだ、持ってきな。』

 

と気前よく売れ残りを2つほど頂いたのだ。

毎日通った時に挨拶していた効果が出た。

 

「嘘は言わん。」

 

「良し!すぐ終わらせて帰ろう。で、具体的になにするの?」

 

束隊員もやる気が出たようだ。

 

「学校内の会話を聴きたい。」

 

「じゃあ、これだね。」

 

束隊員がレシーバー的なサムシングをだす。

 

「束隊員それは?」

 

「まぁまぁ、聴いててよ。」

 

束隊員がそれをいじると

 

カチッ『今日、国語の時間でさ〜』

 

カチッ『でねでね、それでどうなったと』

 

カチッ『じゃあね〜』

 

なんという事だろうか。見知らぬ誰かの声が聞こえて来る。それもつまみを回す事に違う場所の音を拾っているらしい。

 

「おい、束!?これ盗聴器じゃねぇか!」

 

「そうだけど?」

 

さも当然みたいな顔するな!

 

「ダメだろう!」

 

「でも雄くんも誰かの会話盗み聞きしようとしてたんでしょ?」

 

「ぐっ!そ、それは…」

 

「結果はそれとなにも変わらないよ。いや、それ以上にこっちの方が楽だし、確実だよ。」

 

「ぐぐっ!」

 

た、確かにそうだ。それに今回はうってつけの方法だ…

 

「いつもそれで盗聴してるのか?」

 

「聴くわけないじゃん。つまんないし。ちーちゃんを撒くために設置したんだけどあんま効果なくてそのままなだけ。」

 

そっかーいつも使ってないのかー。ならいいかなー(棒)

というかちーちゃん何者だよ…そっちの方が気になってきたよ。

 

「束隊員。その案でいこう。」

 

「アイアイサ〜」

 

 

『暮見雄二っているじゃん?』

 

『あぁ、悪魔ってうわさの?』

 

これだ。悲しいけどこの会話を聴かなければ。

 

『そうそう。』

 

『それでそいつがどうしたの?なんかやらかしたの?』

 

『実はね、そいつがこの学校の支配を企んでるって噂があるの。先生たちはすでに半分ほど洗脳されてるとかいないとか。』

 

『それまじ?』

 

『うん、かなり信憑性高いらしいよ。』

 

なぁにこれぇ…もちろん俺はこんなことしようとなんて微塵も思っちゃいないし、できない。

 

『えぇ!でもそんなことできんの?』

 

『あんたはあいつの噂よく知らないからそんなこと言えんのよ。』

 

『じゃあ、教えてよ。』

 

じゃあ、俺にも教えてくれよ・・・(涙)

 

彼女たちの会話を聞くといわく、

 

転校初日ですでに担任を洗脳した。

女子に恐怖を植え付けて楽しんでいた。

悪魔とやりあえるほどの実力がある。

普段はおとなしく見せといて近づいてきたやつを殺す。

実は大人だけど薬で縮んで学校にきている。

今までに二桁は人を殺している。

前の学校はすでに洗脳済み。 etc…

 

「な、なんじゃこりゃー‼」

 

なんでこんな変な噂が流れているんだよ!しかもなんか近いのがあったし!

 

「ほらね。あんな奴らは雄くんのことな~にも理解できてないでしょ?もう帰ろ?」

 

「いや待て、どうしてそんなうわさが流れているのかが聞けてない。」

 

そうなのだ。俺が怖がられているのは噂のせいだとわかったがなぜそんなうわさがたっているのかわかっていないのだ。

 

『う~ん、なんか信じられないような噂じゃない?なんでそれで皆怖がるわけ?』

 

『それはね、あの篠ノ之束と一緒に行動してるからよ。』

 

ん?今変なこと言ってなかったか?束を見てもなにも反応していない。聞き間違いか?

 

『えっ!?あの篠ノ之束と!?』

 

うん、聞き間違えじゃなかった。確実に束のこと言っている。

 

『そう、あの上級生を無傷でボロボロにしたり、学校の設備を勝手に改造してるとされてたり、その他諸々しでかしている篠ノ之束。』

 

酷いいいがかりだ…ちょっとこれは許せそうにない。

 

『噂ではこの前の旧校舎倒壊も老朽化じゃなくてあいつが変な実験してたとかなんとか。』

 

またあることないこと言いやがって!これは一回ガツンと言ってやらないとダメそうだな。

束にこれはどこから音が来ているのか聞く。

 

「束、これはどこかr「失礼しちゃうな‼この前のは実験じゃなくて研究なんだから一緒にしないで欲しいね!これだからゴミは・・・」・・・」

 

うん、確かにわかっていることをするのが実験で新しい何かを求めるのが研究だから一緒にしてほしくないよね~。

しかし、そんなことより

 

「束、この前の旧校舎の件お前がやったのか?」

 

俺は優し~い笑顔で束に聞く。

 

「うん!そうだよ。」

 

褒めてくれんの~と言わんばかりにこちらを見てくる。

そんな束の両のほほに手を添えて顔を動かせないようにする。

そして少し顔を近づける。

 

「えっ!?ちょっ、雄くん!?」

 

束は顔を少し赤くして焦っているが俺から目線が外れないように手で顔を固定する。

 

「噂も本当か?」

 

「へっ?そ、そうだけど・・?」

 

「そうか・・・」

 

俺は手にさらに力を加えて逃げられないようにする。

 

「俺に友達ができないのは・・・・・」

 

息を吸い込み、

 

「お前のせいじゃねぇか‼束ー‼」

 

叫びながら束の頭をシェイクする。もうそれはグワッグワンにシェイクする。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp;」

 

束が何かいっているが無視してシェイク。というよりなんて言っているかわからない。

そうしてしばらくシェイクした後に解放した。

 

「ひ、ひどいよ!?なにすんのさ‼」

 

束はぼさぼさになった髪を抑えながら抗議してきた。

 

「何するんだもなにもないだろ。俺に友達ができなかったのお前のせいじゃん。」

 

「そうだけど、雄くんにはあんな奴ら必要ないじゃん!?」

 

またそれか・・・・

 

「勝手に決めるなよ!俺のこと全部知っているみたいに言うなッ‼」

 

「ッ!?」

 

俺がそういうと束は悲痛な表情を浮かべて走りさってしまった。

俺は追おうとしたが束の初めて見た悲痛な顔を見て、しばらく動けなかった。

 

 

しばらくしてようやく頭が回り始めた。

 

(クソッ‼何やってんだよ俺は‼)

 

あの束の悲しそうな顔をみてようやく気が付いた。

俺の方こそ束の気持ちなんて考えずにあたってただけだった…

全部束のせいにして強く当たってしまった。結局俺は何も変わっちゃいなかった…

 

(謝らないと・・・見つけて謝らないと)

 

それから俺は日が落ちるまで束を探したが見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

「勝手に決めるなよ!俺のこと全部知っているみたいに言うなッ‼」

 

「ッ!?」

 

私は雄くんのその言葉を聞き、その場から逃げてしまった。逃げるのなんて初めてだった。

走っている途中後ろを見るが後ろには誰も来ていなかった…

 

(そう・・・だよね・・・)

 

私は雄くんがあんなに怒っているのをはじめてみた。

いつもみたいな諭すような怒り方じゃなく、本気で怒っていた…

きっと私は嫌われてしまった…。そんなやつを追いかけて来るわけない…。

そんなことは分かっているのに後ろを見て誰もいないことに寂しくなる私はさぞ滑稽なことだろう。

頬に何かがつたるような感覚がする。雨かと思い、上を見るが雨は降っていない。

本当に滑稽だ…

 

 

家に帰って私はすぐに部屋にこもった。いつもならパソコンを開いてプログラミングするが今日はそんな気になれなかった…

 

 

気が付くと日はすでに落ちており、外は土砂降りだった。

 

(結局・・来なかったな・・・)

 

まだそんなことを考えるあたり、本当に惨めに思えた。

私の研究を理解できたからと私と同じだと思い込んでいた。

周りのことなんかに興味なんてなく、自分が良ければいい。

彼もそうだと思っていた…

 

『勝手に決めるなよ!俺のこと全部知っているみたいに言うなッ‼』

 

しかし、彼はそうではなかった。

私は彼と仲良くなりたいと思っていたが、私は彼の邪魔ばかりしていたのだ…

それは嫌われて当然である。

 

でも・・・

 

(嫌われるのがこんなに痛いものだなんて知らなかったなぁ~…)

 

そんなことを思いながら横になって寝ようとしたとき、扉の前に誰かが立つような気配がした。

 

まさか・・・

 

「束、言いたいことがあるんだ…」

 

彼だった。どうしようもなく私の胸は昂る。しかし期待なんてするべきではないのだ。

 

「なに…」

 

きっと彼は逃げた私を罰しに来たのだ。素っ気ない返事をし、私は彼の言葉を待つ。

しかし次の瞬間思いもよらない言葉が聞こえてきた。

 

「ごめんなさい。」

 

えっ?今彼は謝ったのか?しかし彼がなぜ?

私は困惑するが彼の言葉は続く。

 

「俺は君に知っているようなことを言うなといったが俺の方こそ束の気持ちを考えずに当たり散らしていた。束のせいでもないのにな…。本当に悪かったのは俺の方だったってことに気づくのが遅かった…。本当にごめん。」

 

彼は何を言っているのだろうか?明らかに非は私にあるというのに…

自分にわからないことはないと思っていたが今日は分からないことだらけだ。

 

「雄くんは私のことが嫌いになったんじゃないの?」

 

困惑してしまったからなのかそんな資格ないのに私は名前を呼んでしまった。

それと同時に思わずきいてしまった。

自分のことが嫌いではないのかと。そんな分かりきっている答えを・・・

 

「そんなわけない‼」

 

彼・・いや、雄くんは否定してくれた。

 

「俺は束のことを嫌いになんか絶対にならない‼」

 

「じゃあ・・・・仲良くしていいの?」

 

「もちろんだ。むしろこっちからお願いしたいぐらいさ。」

 

あぁ、なんでそんなことを言ってくれるのだろう。

どうしようもなく・・・どうしようもなく・・・・

 

(うれしいっ‼)

 

「でも、私がいると友達できないよ?」

 

「そんなことない。俺の頑張りが足りないだけだったんだ。それに・・・」

 

「それに?」

 

「そんなことで束と喧嘩してしまうぐらいなら俺は今のままでもいいさ。」

 

雄くん・・・・・

 

「さ、出てきて一緒にプリン食べよ?」

 

「・・・・うん!」

 

扉を開けて出るとそこにはずぶ濡れになっている雄くんがいた。

きっと私を必死に探してくれていたんだろう。

雄くんはそういう人だ。()()()()()()()()ことだ。

 

「ありがとう、ごめんね。」

 

私は雄くんに抱き着いて謝る。

濡れることなんて今はどうでもいい。抱きしめたかったのだ。

 

「俺の方こそごめん。」

 

雄くんも抱きしめ返してくれた。

 

その日食べたプリンは少ししょっぱい味だったが、とてもあたたかい味だった。

私は生涯この日のことを忘れないだろう。




年相応の束を書いてみたかった。後悔はしていない。

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