~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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別サイドから謎を解いていこうではないか。ワトソン君。


第十三話 主人公死す

「今日転校生が来るらしいよー」

 

「どんな子かな?」

 

「女の子かな?」 「いや、噂だと男の子らしいよ。」

 

クラス内では朝から今日来る転校生の話題で持ちきりだ。

かくいう私も楽しみにしている。なんたって転校生の席は私の隣なのだ。

 

(男の子か。かっこいい子だといいな~)

 

隣の昨日までなかった机をみつめながら転校生を想像する。

なるべくならかっこよくて大人っぽい子がいい。

クラスの男子は皆騒がしい連中ばかりだからなぁ…

 

(ん~何をはなそっかな~)

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

「はいみんな席につけ~HR始めるぞ。」

 

転校生と何を話すか考えているとチャイムがなり、先生が教室に入ってくる。

 

「まずはみんな、おはよう!」

 

《おはようございます。》

 

「うん、いい挨拶だ。」

 

先生が毎朝恒例のあいさつ褒めをしながら続ける。

 

「皆もう知っているかもしれないが今日、転校生が来ています。」

 

「知ってる知ってる!それで先生、女の子?男の子?」

 

「男の子だ。」

 

噂通り男の子らしい。そしてクラスの女子はそこへ食いつく。

 

「先生ー。そのこかっこいいですか~?」

 

「おう、先生が見た限り結構かっこいいと思うぞ。」

 

《キャーッ‼》

 

クラスで女子の喜びの声があがる。私ももちろんその一人だ。

 

「とまぁ、待たせすぎるのはよくないから質問はそれぐらいにして・・・」

 

先生が少しためる。皆の期待が高まるのがわかる。

 

「じゃあ、入ってきてくれ。」

 

扉を開き入ってくる転校生。見た目は先生のいっていた通りかっこよかった。

髪は黒く目に届きそうなぐらい長いがその合間から見える優しく強い瞳によって暗い印象は全くもって感じない。それにまとっている落ち着いた雰囲気。

 

(か、かんぺき・・・想像以上だわ…)

 

まさに私の求めていた王子様がそこにいた。

それも私の隣に来るのだ。興奮しないわけがない。

 

「暮見 雄二です。趣味は料理でよく家で手伝っています。得意なことはスポーツ全般です。遊ぶときに誘ってくれるとうれしいです。よろしくお願いします。」

 

自己紹介のあとに彼は笑った。最高の笑顔をした王子の誕生だった。

 

(くれみ…ゆうじくん。)

 

「自己紹介ありがとう暮見。皆も新しい仲間を大切にするよーに。じゃあ、暮見の席はあそこだな。」

 

先生が指さす席はもちろん私のとなりである。

あぁ~もう最高だわ‼絶対一番最初に仲良くなってやるわ!

 

よろしく、と言いゆうじくんが隣に座る。あぁ、気遣いまでできるなんて…素敵。

私は話しかけようと思ったがゆうじくんの横顔に思わず見とれてしまう。

 

「じゃあ、朝のHRはこれで終わりだ。自由にしてよし。」

 

しまった…いつの間にかHRが終わってしまった。これでは質問したい人たちの雪崩がおきる。早く話しかけなければと思うのだが、

 

(わ、私ちゃんとしてるかしら!?髪は大丈夫よね!?あぁ、もう少し可愛い服着てくればよかった…)

 

自分のチェックと緊張で話しかけづらい。皆が少しづつ近づいてくる。

 

(は、早く話かけなきゃ‼)

 

そう思い話しかけようとした次の瞬間、

 

「雄く~ん。来ちゃった。」

 

扉を開けて誰かが入ってきたようだ。間が悪いわね…

 

「おっ、束。来るのが早いな。」

 

ゆうじくんがそう返すとその誰かはあろうことかゆうじくんに抱き着いたのだ。

うそっ!?もうだれかと友達になっていたの!?それも抱き着かれるほど…

私はすでに出遅れていたことと目の前の光景に戦慄していたが、

 

「ッ!?」

 

ゆうじくんに誰が抱き着いたのか気づき、さらに戦慄する。

 

(篠ノ之・・・束・・!?なんであいつがここに!?それになんでゆうじくんに抱き着いてるの!?)

 

そう抱き着いていたのは篠ノ之 束だったのである。

この学校で知らないものはいない()()()()がそこにいた。

 

先生の話は聞かないはもちろんのこと誰が話しかけても無視する。

突っかかってきた上級生複数人を無傷でボロボロにした。

学校のものを勝手に改造しているなんて噂もある。

 

これでもごく一部である。そんな誰もが知っていて、誰もが恐怖する篠ノ之 束が今目の前にいる。

 

「束、うれしいけどいきなり抱き着くな。」

 

「束さんにとってはこれは挨拶も同義なんだよ。」

 

彼女の言っていることには外国人かっ‼と突っ込みたいが、それよりもそれと平然と話し、あまつさえ抱き着かれてうれしいなどと彼は口にしたのだ。

もしかして彼もかなりやばい人なんじゃないだろうか…

教室には不穏な空気が渦巻いていた。

 

「そこの君。ちょっといいかな?」

 

「は、はいぃ!?わ、私ですか?」

 

委員長が彼に話しかけられる。

ただでさえ委員長は気が弱い子なのにこの状況で声をかけられ涙目になっている。

 

「そうそう眼鏡が似合っている君だよ。ちょっとお話しない?俺来たばっかりで話す人全然いなくてさ。」

 

彼の横には篠ノ之 束がまだいる。それなのに彼は委員長を近くによぼうとする。

彼は笑ってはいるがそれは先ほど見た笑顔とは違うものだった。

いわれている委員長からすればそれは恐怖しか感じないだろう。

私だってこの状況では近づきたくないため、二歩ほど下がっている。

 

「ご、ごめんなさぁーい‼」

 

委員長は泣きながら逃げてしまった。

これはしょうがない…誰だって逃げるだろう。

 

「ありゃりゃ、渾身の告白を振られちゃったってね!ハハハハハッ!」

 

しかし、逃げていくのも想定内だったとでもいうのか、彼は笑う。

その隣ではごみを見るかのような目線で私たちを見る悪魔がいる。

私は怖くなり、さらに一歩足を引いてしまう。

 

(も、もしかしたらあの悪魔に操られているのかもしれない・・・)

 

さっきまで自己紹介していた彼とあまりにも違うためそんなことを考える。

しかし次の瞬間にはその期待を裏切られる。

 

「雄くん‼束さんとお話しようよ。こいつらなんかと話すより絶対そうした方いいよ!」

 

「こいつらなんかとか言うな。」

 

彼があの悪魔の頭にチョップ・・・つまり攻撃したのだ…

信じられない・・・・あの篠ノ之 束に攻撃するなんて…

私を含め皆が唖然としていると問題の二人はにらみつけあっていた。

 

「フンッ!いいもん束さんはちーちゃんのとこにいくもんね‼」

 

そして驚くことに篠ノ之 束を帰らせたのだ。

その光景を見て彼、くれみ ゆうじは篠ノ之 束以上の者であり、操られてなんかいなかったことが分かった。

 

それから彼は何もしてこなかったがそれが不気味で皆彼に近づこうとはしなかった。

 

 

「あのさぁ。」

 

「な、なに?」

 

授業が始まり彼が話しかけてきた。私は何を言われるの不安で体が震える。

 

「教科書一緒に見せてくれない?」

 

「えっ!?」

 

てっきりひどいことをされると思っていた私は間抜けな声を出していた。

それに今の彼からは怖いとかそういった雰囲気を感じられない。

 

(もしかして・・・勘違いだった・・・?)

 

さっきまでのは何かの勘違いで本当は普通なんじゃないか?

そう思うほど彼は普通だった。

それならばと思い、教科書を見せるぐらいかまわないと見せようとした瞬間、

 

「ダメ・・・かな?」

 

まるでタイミングを計ったかのように聞いてくる。いや、脅迫してくる…

あの笑顔だ…委員長に向けたあの笑顔で私を見てくる。私は背筋に悪寒が走った。

こいつは渡せといっているのだ。渡さなければ・・・・

 

「ひっ!?い、いいわよ使って‼」

 

私は怖くなり教科書を押し付けて隣の友達の席に机を急いでくっつけた。

隣の子も状況を分かってくれたようで何も言ってこない。

 

「ありがとう。」

 

やつは白々しくお礼を言ってきた。自分がそうさせたクセに!

やつは前を向くと何を考えているのか笑っていた。

私はやつが何を考えているのか怖くて怖くて授業なんて頭に入ってこなかった。

 

 

その日やつは皆に話しかけてきたがもちろん皆逃げる。

それを何が目的なのか逃がしていた。

不気味だと皆口をそろえて言っていた。

 

「どうだ、仲良くできそうか?」

 

「ぼちぼちですね。皆結構シャイみたいで。」

 

帰ろうと思い、廊下を歩いていると先生とやつが話している声が聞こえてきた。

ぼちぼち・・・計画は進んでいるということだろうか?シャイというのも皮肉だろう。

 

「そうか?まぁ、お前ならすぐに人気者だろう。話した先生にはわかるぞ。心配するな!」

 

「はい、頑張って人気者目指します。」

 

(先生ッ‼気づいて‼そいつは悪魔なの‼)

 

先生はやつの正体には気が付いていなかった…

やつは狡猾だった。すでに先生は掌握されていたのだ…

 

私は先生という最後の希望がなくなったことを知り、絶望しながら家に帰った。

 

 

次の日学校に行くと篠ノ之以上のやばい転校生が来たという噂がもう学校中に広まっていた。




ゆうじくん→彼→やつ
おめでとう!主人公は進化した。(白目)

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