※一部修正しました。ご指摘ありがとうございます。
あれから5年たった。
いよいよ卒業シーズンに入った俺とシロナちゃん。そして、5年前のバトルから仲良くなったアキラ。
3人でいるのは当たり前の事となり、学校、休日は殆ど一緒に行動していた。
5年間で、俺達の手持ちはそれぞれ増えた。特にシロナちゃんが。
アキラのポケモンは、ドラピオン、グライオン、ブーバー、ドダイトスの4体。先に言っておくと、この世界では、通信交換で進化という設定が無い。その場合の進化は全てなつき度で進化する。持ち物を持たせて通信交換させて進化させるポケモンは、持ち物をずっと持たせた状態でなつき度を上げるのだ。
ドラピオンを捕まえた理由は、あの時の試合のリベンジがしたいそうだ。ブーバーは、マグマブースターを持たせてなつき度上げ中。ドダイトスは、5年前に校長から譲り受けたポケモンで、既に最終進化だ。名前だけ見ても、なかなか剛腕なポケモンが勢揃いだ。
またなのだが、この世界はレベルや孵化厳選とかそういった物が存在していない。タウリンなどと言ったものはあるが、殆どのトレーナーは1から育てて技や技術を念入りに極めていくのが普通のようで、俺の持っているミミのステも多分極振りした数値より下回っているかもしれない。
まぁそれでも、ミミは強いのだが。
次はシロナ。ポケモンは、ガフガフになったカレン、グレイシアのクレア、トゲピーのピーちゃん、ルカリオのルカ、ミロカロスのミル、カラナクシのクッシーの6体。
クレアは卵から孵化さたのだが、なんと卵から出てきたのは人型で、しかもメスなのだ。それと川で釣り上げたヒンバスも人型で、根暗な少女だったヒンバスは、進化したらめちゃくちゃ美しくなって目を瞑った。眩しすぎて目が開けられないかと思ったよ。
卵から人型が生まれる光景は初めて見たのだが、爬虫類や鳥類ぐらいしか殻で胎児を守らなかった事もあって、卵の中から人が出てきた時は、マジでビビった。
手持ちはやはり全てゲーム通り。既にカレン、ルカ、クレア、ミルは既に最終進化。チャンピオンの風格が滲み出てる。でも、バトルで俺に勝った事は無い。まだまだ爪が甘いんだよー。アキラとは4対4じゃいい勝負であった。
そして肝心の俺なのだが、なんという因果なのか、現時点で持っている全てのポケモンが、人型であった。更には、ゲームで愛用していたポケモン達というオマケの設定もご丁寧につけて。
メンバーは、ミミッキュのミミ、サーナイトのサーヤ、パチリスのミカンちゃん。そして……、5年間、俺が想いを寄せて心の中で呼び続けた『オレの嫁』、クチートのアリア!!
思わず発狂しちゃったよ。もう飛び上がったね。皆からドン引きされた。あの時の目はめちゃくちゃ辛かったです。
どうやって出会ったかは、また後日として、ゲーム内で愛して使っていたポケモン達が、こうも簡単に集まるとかどうなってんだろうか。これが俗に言う主人公補正とか言うやつなのか?
5年前、俺のせいで色々おかしくなっているとか嘆いていた割に、俺って結構凄くね?とか思っちゃってる自分がいる。
まぁ嘆いてもいいけど、そしたらまた皆が冷たい目で見てくるので控えております。
そんな5年間中身たっぷりの内容をすっぽり抜かれた俺達はと言うと、卒業式を終え、3人で今や定位置となった空き地で屯っているところだった。
俺たち三人は、ポケモンだけじゃなく、容姿も段々と大人へと成長しているようで、まだ10歳だから幼さは残るが、結構魅力的になっている気がする。
アキラはショートモヒカンを維持したまま、ちょっとチャラチャラしたヤンキーみたいな感じになっていた。……イケメンだけど。
シロナは、既にゲーム通りの容姿になっており、髪をウェーブロングにして前髪を俺が誕生日に渡したヘアピンで整えているぐらいで、格好はホント黒としか言いようのない服をずっと着ている。
いつの間にそんな厨二っぽい格好に目覚めてしまったのか……。あっ、色香は充分ありますよ?シロナに告白してる男子はめちゃくちゃいるから。振られても何度も挑戦するその姿、カッコイイぜ。シロナも、そんな男の子と付き合おうとはしないのかね?
俺の容姿は、正直自分じゃ何とも言えない。第2者第3者からの視点からしたら、イケメンだのアイドルだの養ってだの様々言われた。なんだよ。俺よりもお前らの方がイケメンだろおい。特にアキラ、お前は隠れファンが出来てるんだぞ?俺みたいな、女の子に喋りかけたら逃げられるような男にイケメンとか言って、恥ずかしくないのか?
まぁそんな自分を追い詰めるのもここまでにして、今は卒業後の話をしていた。
アキラは、ポケモンスクールの方針通り、ジム巡りをするそうだ。
チャンピオンになって、俺の挑戦を待っているらしい。
いやはや、恥ずかしいね。まぁでも、アキラの実力ならジム巡りは楽勝だと思う。頑張って貰いたいね。
「ーーーそれで、お前らは『カロス地方』って所に行くんだろ?」
「そうだよ。授業でやってた『メガシンカ』ってのに興味があるの」
「へぇー。そんな授業受けたのかどうか忘れちまったけど、もしなんか分かったら教えてくれよ、その『メガシンカ』ってヤツ」
「当たり前だろ。腐れ縁としてここまで来たんだ。仲間外れなんてことはしないから」
「そりゃ有難いね。いい友を持って俺は嬉しいぜ」
「アキラも、チャンピオンになったら報告してよ?私が倒しに行くから」
ふんすっとおっきな胸を張って鼻から息を吐くシロナ。
うん。取り敢えず自分の格好に気をつけようか。
「何言ってんだよ。お前は来なくていいっつうの。俺はクロメとの決着をつけてぇんだよ」
「クロメとの決着なんかそこら辺でやってなさい。私は、アキラが私達より偉くなるのがムカつくだけなのよ」
「はぁっ?テメェ、言ってくれるじゃねぇか。昔はそんな大口叩けなかったのに、今はよく唸るなぁそのお口はよぉ」
この5年間で、この2人は仲が良くなった。それはもぉ毎回毎回喧嘩するほどに。
「ふんっ、バトルの事しか頭に無いヤツと、クロメを一緒に出来ないわ。それに、私の方が貴方より強いんだから」
「何言っちゃってんだこのパツキン女はよぉ。テメェとのバトルは全部引き分けじゃねぇか!!」
「じゃあこの際ハッキリさせる?今日は卒業式。最後を飾るには丁度いい雰囲気よ!!」
「言ってくれるぜ抜け抜け女!!テメェの終りを自分で語るなんて、流石抜け抜け女だなぁ!!」
「別に抜けてないし!!髪の毛ちゃんとあるし!!」
髪の話なんかアキラはしてないよ。性格の問題だよシロナ。流石に自覚はないんだよね。天然だなホント。
「ーーーいつも通りうるさいわね。静かにするって言う選択肢は無いのかしら」
俺がいつ二人を止めようかと眺めていると、ポスンと膝の上に何かが乗っかってきた。
下を見ると、振袖が黒く主だった部分が黄色の袴を着て、束ねた黒い髪が巨大な口となっている俺のポケモン、もとい『オレの嫁』ことクチートのアリアが、俺の胸板にもたれ掛かっていた。
「それがいつもの2人。あの2人が元気なかったら、今となっては心配しちゃうよ」
「あんたも甘いわね。いくら明日から別々に分かれて過ごすけど、今更寂しいとか言えないからああやって気を紛らわせてるんでしょ?」
「………それは言わないで上げてよ」
やはりゲームの時のクチートだったのでその影響か、性格はツンツンしている。まぁ可愛いんだけどね(笑)。
俺がそう言うと、フンッとそっぽを向いて、わざと体重をかけようと力を込めてもたれ掛かる。
俺の手を取り、振袖から手を出して、ギュッギュッと俺の手を握っては手を合わせて恋人繋ぎで繋いできたりとなんか初めて他の人の手を触る赤ちゃんみたいな感じで色々してくる。可愛い(笑)。
「おい見てみろよ!!クロメの膝にアリアが乗ってるぞ!!」
「えっ?あっ!!ちょっとアリア!!すぐそこから降りなさい!!」
どうやっても収集のつかない争いを抜け出す為としての口実を見つけやがったアキラ。
後で覚えてやがれぇ……。
「フンッ。ここは予約制なのよ。ちなみに1人87万6千時間。時間が終わるまで無制限に乗れるわ」
「私の順番いつぅ!?」
100年後かな?大体。
てかそんなに乗ってたら俺達死んじゃうよ。
「ちょっと二人共。俺腹減ったからそこまでにしてくれよ」
「ええー、でもぉ……」
「まだ明日からの準備してないんだし、早く帰って準備しなくちゃ」
旅支度は一切してない俺達。
明日の朝イチで間に合うのだろうか。
アリアを持ち上げ、身長約90センチの小柄な身体を片手で抱っこし、ゆっくりと立ち上がる。
この持ち方はアリアのお気に入りで、何でも俺の温もりを感じつつ、自分よりも背の低いヤツを見下ろせるからだとか。別名『アリアのイス』である。
そんな光景を、いつものように羨ましそうに見つめるシロナ。何?いつも思うけどアリア抱っこしたいの?本人は頑なに嫌がるけど、したいならしてもいいんだよ?
「………私は別にしたい訳じゃないの。…………………して欲しいの」
最後の部分がよく聞こえなかったが、まぁいいだろう。
そのままアキラと別れ、帰路に着く俺達。その前に買い物を済ませなければならない。
大体は母さんが用意してくれたが、後残っているのは靴と自分の服。
やはり旅は同じ服を着て旅するというのは抵抗がある。
お金は十分に貰っているので、このまま服屋に向かった。
案の定と言うべきかなんというか。
服屋を後にし、更に靴屋で靴を買った俺達は、家に到着し、荷物の整理に取り掛かっていた。
シロナの買った服は黒いコートが3着。黒いノースリーブが沢山。何で、黒ばっかりなの?そんなに好きなの?後、たまたま見つけた、シロナが原作でつけてたルカリオの頭の後ろにあるあの丸細いヤツの形をしたヘアピンがあったのでそれを買ってあげた。案の定物凄く喜ばれた。
その後は服をカバンに詰める作業なのだが、どうしても入らない黒いコートを無理やり手提げ鞄にぶち込んでいたが、その後破裂。新しい鞄を買わざる負えなかった。………何やってんだよ。相変わらずのダメナさんのようで……。
鞄を買いに行き、再び準備に取り掛かった俺達。
野宿する事があるかもしれないが、今の時代とても便利な道具が多くなった。
寝袋なんか、丸めたらあんなに分厚くなるはずなのに、実際はめちゃくちゃぺっちゃんこに収納出来るんだ。全く邪魔にならない。
いやはや、驚く事が多いね。こんなにもスムーズに旅が出来るなんて、どれだけ旅の失敗とかを生かしているのか分かるよ。
服は数着。下着も数枚。歯ブラシOK、タオルOK、財布OK、寝袋OK、料理する為の必要な小型収納器材OK、その他諸々OK、っと。
シロナの方もしっかり確認する。
うん。今だけはやらかしてないようだ。感心感心。
女の子はやっぱり持っていくものが多いな。髪の毛を整えるブラシとか化粧箱とか。まぁ旅で必要となるものは全て俺が持っているので大丈夫なんだけど……、明らかに多いと思う。
確かに持ち物はいい。いいのだが、鞄にパンパンに入っているのが何とも。
まぁ後で困らないようにするには用意周到だな。
じゃあ後は、早めに寝るしかないかな。
二つの鞄を玄関に起き、床に就く。
何だか今日は真ん中におっぱいのでかい人がいるけど、抱き枕だと思って寝れば………っれ!?いつの間にバカ母いるんだよ!!
シロナは既にお休みタイム。
母さんは俺の身体を持ち上げると、お部屋にお持ち帰りされました……。
…………何で明日早いのに連れていくかな。
一先ず俺は、ぐっすり眠れなかったとだけ言っておこう。
ゲッソリとした表情で、俺は港に来ていた。
シロナは物凄くウキウキしており、俺の元気が奪われているような気がする。
うちの親はお肌てかてか。ナニをしたらそんなテカるんだよ。ホントにナニしたら。
出航は後少し。アキラがわざわざ送り出しに来てくれた。
「……じゃあな、ダチ公。お前と会う日は、俺がチャンピオンになってる時だぜ」
「ははっ、抜かせ。こっちこそ、お前と会う時は『メガシンカ使い』だよ」
「貴方よりも早くクロメが達成するわ。精々頑張りなさい」
「けっ、このド天然女が。テメェこそ、クロメの足引っ張るんじゃねぇぞ。………後、クロメにちゃんと気持ち伝えるんだぞ………」
「わっ、分かってるわよ……」
何やらコソコソ話していたが、俺に話せないような話なのだろうか。
まぁ最後の最後まで仲がよろしいようで嬉しい限り。
「ーーーおやおや、間に合いましたな、クロメ君」
ふぉっふぉっふぉっと、いつもニコニコ笑顔1000000点の校長先生と、担任のタカトシ先生がやって来た。
タカトシ先生は未だに浮かない顔をしているが。
「校長先生にタカトシ先生。どうしたんですか?」
「いや何。折角の優秀な生徒が外国に出るというのだから、是非送り出しぐらいはしようとね」
どうやら校長先生はそれだけでは無かった。
何やら着ている上着の胸ポケットに手を突っ込むと、何やら透明な石を三つ取り出してきた。
しかもそれは、俺が見覚えのあるものだった。
「こ、これは……!?」
「そう。君達2人がこれから向かうシャラシティで必ず必要になるであろう『メガストーン』です。『クチートナイト』、『サーナイトナイト』、『ガブリアスナイト』の三つ。『ルカリオナイト』は、直接向こうの方から貰い受けるでしょう。あ、後これを。シャラシティで『メガシンカ』の伝承者の方にあったら渡しなさい。きっと良くしてくれる筈です」
俺は『メガストーン』を三つ受け取り、一つをシロナに渡した。
小石のように小さい石だが、とても美しい石だった。
透き通った表面は、向こう側までキチッと見え、内部の表面にDNAの二重螺旋の紋章が埋め込まれている。
これが自然界の何処かに埋まっているとなると、大富豪なんかは高値で買売するだろう。
でも妙だ。何で校長先生はこんなにも『メガストーン』を持っているのだろうか。たった一つでも、持っているだけで珍しいと言われる代物を、三つも持っている。しかもシャラシティの継承者の人にこの紙を渡せと言われたが、コンコンブルさんと何か縁があるのだろうか。
てかこの校長スゲェんだよな。金はあるし権力もある。子供達の為にこの施設を建てたと発表してるけど、何でこんな事をしたのだろうか。………まさかの黒幕?ハッハッハッ、まさかそんな訳ナイヨネ?
「えっと、ありがとうございます……で、いいんですか?と言うか、こんな高価なもの俺達はまだ持つ資格なんて……」
「そんな事はありませんよ。確かにまだ10歳の子供。でもいつかは大人になる。遅かれ早かれ、君達にその力はとても必要になると私は思います。何にせよ、何の力を持たない私がこんな代物を持っているのは宝の持ち腐れ。持つのなら、それを最大限生かす事の出来る者に渡さなくてはね」
………ホントにこの人黒幕?
いやいやいやいや。こうやって騙すケースはよくある事だ!!騙されるな俺!!
「………分かりました。この『メガストーン』。使わせて貰います」
「ありがとう。それで、その『メガストーン』はまた輝ける」
その言葉と同時に、船の汽笛が響いた。
校長は1歩下がると、交代するようにタカトシ先生が前に出た。
「クロメ君。君は優秀だが、それでもまだ子供だ。無茶は絶対しないように」
「分かってますよ。必ず、『メガシンカ』を会得して見せます」
その言葉を最後に、校長先生とタカトシ先生、アキラと順番に別れの挨拶をし、母さんの前に立った。
「母さん。なんやかんや言って、俺を育ててくれてありがとう。まぁ色々されたけど、母さんも寂しかったし、これからも1人になって寂しくなると思うけど、俺絶対帰ってくるから。だから、それまで元気でな」
「……クロメ、そしてシロナちゃん。無事で帰ってくるのよ?いつでも、家にいるからね」
そんな残念美人こと我が母親は、ギュッと俺達を抱き締めた。
辛いんだろうな。聞いたら、父さんも旅の途中で死んだらしい。こんな事、子供には言えないだろうな。
俺達も、そんな父さんの二の舞になるかも知れないと不安があるのだろう。
「大丈夫大丈夫。俺は絶対戻ってくるよ」
「私も、絶対戻ってきます」
「……うん。ありがとう……二人共」
涙声でそう呟く母さん。抱き締める力が強くなった。
俺達も、ギュッと抱き締める。
絶対帰ってくると想いをのせて…………。
出航する船に乗り、遠くなる姿をずっと見つめる。
別れという訳では無いが、離れ離れになるのは、少しばかり寂しい。
手を振る母さんに、俺達は手を振る。
絶対戻ってくるという誓と、今まで育ててくれた感謝をのせて。
俺達は今、シンオウ地方を旅立った。
ーーーさらばシンオウ地方。また逢う日まで。
ーーー全てが消えた……。
黒い世界。
ーーー全てが消え失せた……。
白亜と黒鉛が交じるその髪が、シャボン玉のように浮かぶその世界を叩き壊した。
ーーー全て壊した……。
跡形も無く。
ーーー全て壊した……。
ーーーああ、嘆く……。
これは誰の?
ーーーああ、叫ぶ……。
あれは誰の?
ーーーああ、泣き喚く……。
それは誰の?
ーーーああ、泣き叫ぶ……。
だから誰の?
世界を壊しては、一瞬にして世界を壊していく。
幾回幾十回幾百回幾千回幾万回幾億回幾兆回ーーー。
作っては壊し、作っては壊し、作っては壊し、作っては壊しの繰り返し。
ーーーああ、全てを……。
恨む世界。
ーーーああ、全てよ……。
平和な世界。
ーーーああ、全ての……。
醜い世界。
ーーーああ、全てが……。
滅びる世界。
ーーーああ、全ては……。
私の世界。
ただひたすらに、機械の如く繰り返される行動は、全てがまるで操られているかのよう。
ーーーだから待って……。
いいから止まれ。
ーーーでも待って……。
だから止まれ。
ーーーそれでも待って……。
これで止まれ。
ーーーそして待って……。
だったら止まれ。
ーーー頭が痛い。
ーーー頭が割れる。
ーーー彼女は考える考える考える。
ーーー答えが出ない。
ーーー生まれてこない。
ーーー彼女は狂った。
ーーー遂に狂った。
ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーッ。
ーーー何故、生まれない?
世界が否定する?
ーーーどうして、生まれない?
理が否定する?
ーーー何で、生まれない?
私自身が否定している?
分からない解らないワカラナイ解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からない解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からない解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からない解らない分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ分からないワカラナイ解らない分からない解らない分からない解らない分からない解らない分からない解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ分からないワカラナイ解らないワカラナイ解らないワカラナイ解らないワカラナイ解らない分からないワカラナイ解らない分からない解らないワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイーーーーーーーーーッ。
ーーー狂え。
命を喰らえ。
ーーー狂え。
命を燃やせ。
ーーー狂え。
命を切り裂け。
ーーー狂え。
命を潰せ。
ーーー壊れろ。
何もかも。
ーーー壊れろ。
全てののモノを。
ーーー壊れろ。
存在するモノを。
ーーー壊れろ。
形無きまで。
ーーー生まれて。
新たな。
ーーー生まれて。
世界の花園に。
ーーー生まれて。
世界の理に。
ーーー生まれて。
果てしない道の世界に。
ーーー来て。
狂ってもいい。
ーーー来て。
壊れててもいい。
ーーー来て。
破壊されててもいい。
ーーー来て。
私を助けに来て。
ーーーだが願いは破滅を生む。
苦しい苦しいーーー。
ーーーだが願いは交差する。
怖い怖いーーー。
ーーーだが願いは裏切られる。
助けて助けてーーー。
ーーーだから彼女も。
いやだいやだーーー。
ーーー未だ世界に裏切られている。
狂いたくないーーー。
狂う呪う滅びる亡びる葬る嘆く叫ぶ死ぬ
ーーー彼女は頭を悩ませる。
生まれないのは何故?出来ないのはどうして?理解が出来ない?処理が追いつかない?命が必要?ならば殺して殺し尽くさなければならない?そうすれば生まれる?そうすれば出来る?そうすれば完成する?自己処理の可能性?意味はある?確率はある?生まれない事は起きない?あの人は来る?誰か来る?同じ人が来る?来てくれる?連れてこれる?ホント?ホント?
ーーー彼女は考える。
だったら殺さなくちゃならない?誰を殺す?世界ごと?私が今までしてきたことは無駄?無駄だったの?無駄でしか無かったの?何で教えてくれなかったの?どうして教えてくれなかったの?
ーーー彼女の嫉妬が。傲慢が。独占欲が。強欲が。支配欲が。
嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキライ嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキライキライ嫌いキライ嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキライ嫌いキライキライキライキライキライキライキライ嫌い嫌いキライキライキライ嫌い嫌いキライキライキライ嫌い嫌いキライ嫌いキライキライ嫌い嫌いキライ嫌いキライキライ嫌い嫌いキライキライキライ嫌い嫌い嫌いキライキライキライキライ嫌い嫌いキライ嫌いキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ーーー全ての欲が、完全否定した。
ーーー崩れる壊れる崩壊破壊。
ーーー儚く割れたシャボン玉は、跡形もなく世界と言う理から消え失せた。
ーーー全てが壊れた。
それは破滅を意味する。
ーーー全てが壊された。
それは破壊を意味する。
ーーー全てが崩された。
それは崩壊を意味する。
ーーー全てが葬り去られた。
それは悲しみを意味する。
ーーー全てが消え去った。
それは哀しみを意味する。
ーーーだから生まれた。
それは誕生を意味する。
ーーーこうして生まれた。
それは存在を意味する。
ーーー一つのシャボン玉となって、世界に、彼女の世界に降臨した。
それは再臨を意味する。
ーーー眩い光と共に、光る赤子のように。
それは君臨を意味する。
ーーー世界と言う代償を払い、世界が誕生した。
それは等価交換を意味する。
ーーー嘆いた彼女は綻ばせた。
『ああ、生まれたーーー』
ーーー彼女は涙した。
『生まれてくれたーーー』
ーーー彼女は涙を流した。
『良かったーーー』
ーーー彼女は喜んだ。
『嬉しいーーー』
ーーー彼女は泣いて喜んだ。
『嬉しいーーー』
ーーー彼女は泣いて嬉しがった。
『ありがとうーーー』
ーーー彼女は感謝した。
『ありがとうーーー』
ーーー彼女は涙して感謝した。
『私の世界にありがとうーーー』
ーーー彼女は深く感謝した。
『だから早くーーー』
『ーーー会いに来て、愛しき我が主ーーー』
ーーー狂う彼女は、儚げな笑顔で、そっとシャボン玉にキスをした。
ーーーそれは、その世界の始まりを意味するものであった………。
ーーー狂った彼女は。
ーーー常闇の中で。
ーーー激しく悶えるのだった。
次からはカロス地方編です。
え?誰がシンオウ地方編は終わったっていった?
さらばしかし言ってねぇだろ!!
………コルニ出したいなぁ。髪下ろしコルニマジ可愛い。