『全部ぶっ込んじゃってすいません!!』。
一応はなんか一万文字超えてました。
本当は2話で分けるつもりだったけど、なんか上手く思いつかなかったし、書いてる途中から何これ?って自分でも思い始めちゃったので、うん『取り敢えずぶっ込んでみた』。
相変わらずの下手だけど読んでくれれば嬉しいです。
読む前に言っておく※2回目。
ポケモンの技で、低確率とか高確率とか効果である付属効果は、この作品では全て100%の確率でなるということでお願いします。
え?理由?んなモン書いてた後に気付いてオリ設定としてぶっ込んだだけだよぉ。
あ、後色々オリ設定ぶっ込んだので、嫌だなぁー、こんなの無いよぉー、と少しでも思ったらこの小説を閉じなさい!!
ーーー静かだ。
音は確かにある。しかし、それすら掻き消すほどの威圧感と存在感。静寂に近い無音空間が、この辺りを覆っているかのような。黙ってなければ何をされるか分からない程の緊張感が、騒いでいた教師や生徒を黙らせていた。
審判役を引き受けていた教師ですら、コール出来ない状態。
しかし、そんな場の空気など知らず、シロナはクロメの後ろでずっと目をつぶってクロメの勝利を願っている。
恐怖よりも、威圧感よりも、何よりもクロメの勝利を心から願う儚い少女。
そんな期待を持つ少年、クロメは、ポケットに手を突っ込んだまま、相手がポケモンを出すまで待っている。
クロメはポケモンを1体出しているが、肝心の相手は場の空気同様に黙って動けなくなっていた。
「………なぁ、いつまで黙ってんの?そろそろこっちも始めたいんだけど」
痺れを切らしたクロメが声をかける。その声は周りの音が聞こえにくいのか、良く響いている。
ハッとした5人は、それぞれの持つハイパーボールをえいっとフィールドに投げ出した。
地面に当たると同時にボールが開き、ポリゴンと共にポケモンの原型が現れていく。
「……お、お前が、見た事の無いポケモンを出したとしても、俺達にはパパが貸してくれた強いポケモンがいるんだからな!!」
と同時に、ポリゴンから姿を現したのは。
「……なっ、なんて事だ」
果たしてこの声を漏らしたのは誰だろうか。
クロメかシロナか。はたまた校長か担任のタカトシか他の生徒か教師か。
何れにせよ、その言葉通り、登場したポケモン達は、ポケモンバトル未経験に近いトレーナーが扱うには難し過ぎるポケモン達であった。
ーーーバンギラス、レントラー、ニドキング、ニドクイン、ドラピオン。
全て最終進化形態であり、この周辺では見かけないポケモン達。どれも凄まじいプレッシャーを放ち、共に雄叫びを上げる。
空気が振動するかのような轟は、静まり返っていた雰囲気を一気にぶち壊す。
「すげぇ、本物のバンギラスだ!!」
「かっけぇー」
「本物初めて見たー」
ガヤガヤと騒ぎ出した生徒達とは裏腹に、教師達は不安が顔に出始める。
未熟な生徒には、大型ポケモンの操りは難し過ぎる。
改めて教師達は、この試合が危険なものだと言う事を認識し始めていた。
「………安心なさい。例え扱いが出来なくとも、クロメ君がしっかりしてくれるはずですよ。私達は静かに見守りましょう」
校長は静かにそう言った。
教師達は顔を見合わせ、試合は中止しないがもしもの為に、実力のある教師達をフィールドの傍に配備させる形で審判に合図した。
「みんな準備はいいか?」
「いつでも」
「けちょんけちょんにしてやるぜ」
審判の問に、クロメは静かに、代表してセンターに仁王立ちしている生徒が鼻で笑うように答える。
「それでは、試合……開始!!」
旗が振り下ろされ、一気に盛り上がりを見せる。
先に動いたのは、この中で一番足が速いレントラーだ。
「レントラー、『噛み付く』!!」
タンッタンッとジグザグに地面を蹴り進み、思いっきり地面を蹴った。口から覗く犬歯が光り輝く。
「………ミミ、『舞え』」
クロメは人型ーーーミミに一言だけそう言う。
ミミはパンパンと手をたたき出し、クルクルとその場で二回転。
腕の裾が長い為、振袖のように可憐に見える。
「そんな意味不明なことしても、無駄なんだよ!!」
ガブリッと閃光の如くすれ違いざまに噛み付く。
ミミのフードがフサっとめくれ上がった。
瞬間ーーー。
「ーーーケケッ」
いつの間にかレントラーの目の前に移動したミミが黒く尖った尻尾をレントラーの腹に叩き込んでいた。
「ーーー『シャドークロー』」
その威力は並のシャドークローを遥かに超える威力。反動と威力で、レントラーは一気に吹き飛ばされた。
壁に激突したレントラーは、目をグルグル回し、ぐったりと倒れ込んだ。
「………レ、レントラー戦闘……不能」
再び唖然とする場の空気。
噛み付くは確かに決まったはずだった。あの不気味な姿をしていた事から、ゴーストタイプだと判断した生徒は見事であった。が、噛み付くの効果で怯ませる事が出来るが、ミミは怯むこと無く凄まじい攻撃を繰り出してきた。まるで効果が無かったかのように。
「………一体何が起こったんですか」
「クロメ君が『舞え』と言ったのは、多分『つるぎのまい』なのではないですかね」
『つるぎのまい』。攻撃を2段階上げる変化技。物理技を得意とするポケモンには持ってこいな変化技である。
「まさか、授業で習っていない変化技……、しかも『つるぎのまい』を使うなんて……」
「しかもノータイムであの人型ポケモンは技を繰り出しましたよ……。まるでこの次は何を繰り出せばいいのか分かっていたかのような。凄い信頼感ですね」
たった少しの流れでも、未熟な生徒とは思えない動きと判断を見逃さなかった教師達。校長は、まるで嬉しそうに口々に言い合う教師達を見て笑みを浮かべていた。
「……でも、何故あの人型ポケモンはダメージが入らなかったのでしょうか」
「確かに……。『舞え』としか言ってませんでしたし、『まもる』も使ってるようには見えませんでしたが……」
ポケモンの技には、相手の技を避わす以外に、『まもる』や、『みきり』と言った、技を防ぐ技がある。連続では出せない技だが、『はかいこうせん』や『ギガインパクト』と言った強力な技以上の威力では無い限り、絶対に破れない強度がある。
「ということは、効果がなかったのでは?」
「あくタイプで効果無しってありませんよね?そうなると、あの人型ポケモンは新タイプを持っていることになりますよ」
タイプ相性には様々ある。難しいかと思われるが、実際考えてみるとタイプの相性は、実際にタイプと同じものを使ってみると一目で分かりやすい。
火に水をかけると火の威力は下がるため、みずタイプにほのおタイプは効果抜群。
プラスチック製の箱に火を近づけると、だんだん効果を見せてくるが、時間がかかるため効果は普通。
水に火を近づけても効果は薄い為、ほのおタイプにみずタイプは効果いまひとつ。
雷が地面に落ちても、アースとなって電気を散らす為、効果はなし。
といった様々なタイプ相性はあるが、あくタイプ技で攻撃して効果無しというタイプは今のところ存在しない。
唯一効果抜群が一つしかないノーマルタイプだが、それでもかくとうタイプなので全く違う。
無難に考えるなら、人型ポケモンのミミは新しいタイプを持っていると考えるべきではある。
しかしそう考えると、クロメは初めからミミのタイプを理解していたということになる。博士か誰かに言うとしても、理解されていないタイプの為、3日では調べられる事が出来ない。
新タイプの事を知っているのも凄いが、タイプ相性をしっかり考えているクロメ自身も相当なものである。
「ーーーちょっと待って。あの人型ポケモン、フードがとれてるわよ」
教師の中で、そう呟きが上がった。
よく見ると、被っていたミミのフードがとれ、耳のように両サイドから跳ねているアホ毛のようなものが特徴の、髪が物凄く長い少女が立っていた。相変わらず目元は見えないままである。
「……さっきの攻撃でとれたのか。いやしかし、人型ポケモンとは言え、ポケモンの身体が剥がれたようなものだろう。そんな事があっていいのか……」
ポケモンと人型ポケモンの違い。それは人型であるかないか。たったこれだけの差である。技の威力は共に同じ。タイプも共に同じ。本当に違うのは、人型をとっているかどうか。
例えば、ポチエナ。人型とそう出ないのを見比べた時、注目すべきは身体に纏っているもの。人型で無いポチエナは、身体を体毛で覆っている。しかし、人型の方はどうだろうか。例え人型と言えど、人としては服の役割を果たす。人型ポケモンは、言語を理解し、それを使うと研究にある。そう、例えポケモンでも、見た目は人間と変わらない。それが人型ポケモンである。研究の結果、人型ポケモンを覆うモノは、時に体毛、時に何かで形成された服、時に両者かそれ以外のものかである。人型ポケモンは身に纏うモノを、自分の意思で着たり脱いだりが可能。但し自分のものでなければ着ることが出来ない。
話を戻すと、自分の意思で着たり脱いだり出来るが、大事なのはそれも自分の体の一部だと言う事。
一種の説では、その纏うモノが体毛の変わりで、衝撃など和らげるなどと言われているが、そんな自分の身体を守るものを脱いでもいいのだろうか。フードも頭を守る体毛の代わりとすれば、とても大事なものである。ましてやバトル中にだ。明らかに頭の防御が取り払われたのと一緒である。
「ーーー先生方、お悩みのようですね」
教師達が頭を悩ませている最中、クロメが教師達に叫んだ。
「一応教えておくと、こいつの、ミミのタイプは未発見のタイプを持ってますが、あくタイプの技を効果無しにするものは持ってませんよ」
「じゃ、じゃあなんだと言うのだ?」
「分からないんですか?簡単です。『特性』ですよ」
『特性』。全てのポケモンが持つ能力の一種。その能力は様々で、バトルで使えるモノ、旅の際に使えるモノと、大きくわけて二種類ある。全部が全部同じではなく、それぞれポケモンが違った『特性』を持っている。
「ばっ、馬鹿な!!そんな技を無効にする『特性』なんぞ、ヌケニンの持つ『ふしぎなまもり』しか無いはず……」
「その通り。技を無効にする『特性』、正確には効果抜群以外の技を通さない『特性』、『ふしぎなまもり』はヌケニンしか持ってないです。実際の所、ミミにあくタイプ技はイマイチ何ですよ。と思うことは、やはりミミは『ふしぎなまもり』が『特性』だと考えるのが無難。確かにいい線ですけど、ちょっと違うんですね。まぁ、まだここにいる人は見たことないと思うかもしれませんが」
「クロメ君の口ぶりからして、まるでこの地方のポケモンでは無いような言い草ですね」
校長がそう言った。
確かに、この場にいる人は見たこと無いというのは、そのポケモンの情報自体この地方に無いということになる。
「ええそうですよ。正しくこの娘はこの地方のポケモンじゃない。この娘は『アローラ地方』のポケモンですからね」
「そ、それって、代々伝わる伝統を伝承し、外部の情報に全く興味を示さない地方の事ですか!?」
1人の教師、社会科の教師が今までで一番の驚き顔で立ち上がった。
無理も無い。『アローラ地方』は、自然と共に生きる地方であり、気温は温帯、一年中海に入る事が出来る珍しい地方である。一切の外部との関わりを示さず、他の地方からのポケモンの入国は禁止され、他地方からの移住民なども固く禁じている地方である。観光などは許されているが、『アローラ地方』で捕まえたポケモンを他の地方に持ち出すことは禁止され、見つかった瞬間外交問題で思い罰が下される。
そんなポケモンを、クロメはこんな公の場で繰り出したのだ。
外交問題なんぞ恐るるに足らずである。
「……クロメ君、それって外交問題になるんじゃ……?」
「いやいや。この地方で野生で出たからセーフっしょ。それに、名前が分かんなきゃ、報告しようにもピカチュウの人型と言えばかたがつきますしね」
「じゃ、じゃあ君は、何でそのポケモンの名前が分かったんだ?」
教師の問に、んーと首を傾げるクロメ。
確かに、誰も知らないなら、教えて貰っても本当の名前なのかは分からないのが事実。人型であるから、喋る事も可能だが、人型は知能は普通のポケモンよりも狡猾である為、騙すということもある。
一字一句全て信じきるというのは流石にどうかと思うと教師達は不安を抱いた。
「まぁ、内緒ということで勘弁。今は、このバトルを終わらせてからですよ」
すっかり忘れていたが、今はポケモンバトル中であった。
いつの間にか取り残されていた5人は、じっとクロメを睨んだままである。
「よ、よく分かんねぇが、全員で押し切ってやる!!」
「でも、あのポケモンの『特性』が分かんないんじゃ、攻撃がきかないーーー」
「ーーーあ、それは安心してくれよ。ミミの『特性』は消えたから」
消えた。つまり発動し終えたということ。ここまで来ると、『ふしぎなまもり』の説は一気に消失した。『ふしぎなまもり』はバトル中は絶対に発動する。消えるのなら、『いえき』と言った『特性』自体を消す技でないと消えることは無い。
何はともあれ、これで技は聞くという事だ。
「じゃあ遠慮なく行くぜっ。バンギラスっ、『ストーンエッジ』!!」
バンギラスは右手を握りしめ、思いっきり地面に叩きつけた。その余波で地面が押し出され、地面から長い岩の柱が勢い良く生えだし、ミミに襲い掛かった。
「もう1回『舞い』ながら避けろ」
再び長い裾を両手で合わせ手をたたき、クルクル回る。しかしさっきとは違い、移動しながら可憐に回っている。長い裾と伸びる長い髪が、可憐である。
地面から伸びる岩の柱を紙一重で避けていき、距離を詰めていく。
「ニドキングっ、『じしん』!!」
バンギラス同様地面に拳を叩きつけ、地面を激しく揺さぶる。
だが、『じしん』は強力でも、複数バトルの場合、味方陣営も攻撃してしまう。この場合だと、味方陣営は全員効果抜群であり、受けた場合、相当なダメージを受けることになる。流石ここは未熟な生徒と言ったところである。
「『ストーンエッジ』の柱をつたってジャンプ」
ミミは『舞い』を止め、バク転を繰り返して柱を登っていく。『じしん』で揺れる大地が、バンギラス、ニドクイン、ドラピオンにダメージを与える。
「お前何やってんだよ!!この前の授業で相性の事やっただろ!?」
さも当然に怒る自称パパ強し君。しかし、ここで揉め事を起こす時点で、まだまだ未熟だと言わせる。
クロメはこの機を逃さず、『3度目』の『舞い』を行わせた。
やんややんやと踊るミミは、クルクルと宙回転し力を貯めていく。
「ミミ、バンギラスに『じゃれつく』っ」
ミミは『舞い』を止め、くるりんと回り、バンギラスの頭にかかと落としを食らわせる。態勢が崩れたバンギラスに、更にアッパー、溝打ち、右ストレート、左フック、右ジャブ、左ストレート、膝蹴り、回し蹴り、裏拳、股間蹴り、連続パンチ、スネ蹴りーーー。連続で、高速に。余りの速さで砂煙が立ち上がり、バンギラスとミミを覆う。しかしその中でも、ミミは繰り返し繰り返し煙で視界が奪われたバンギラスの身体に攻撃していく。
「『シャドークロー』!!」
煙を薙ぎ払うように回転し、回転ざまに凶悪な黒い鉤爪のような尻尾で薙ぎ払い。大きな巨体のバンギラスは、一瞬にして場外に叩き出された。
ドスンッと地面が揺れ、後に残ったのは目を回して倒れるバンギラスだけであった。
「バンギラス、戦闘不能!!」
まさに圧倒的であった。
『つるぎのまい』の最高6段階上げでの効果抜群の『じゃれつく』とトドメの『シャドークロー』。
変化技を駆使して能力を上げ、弱点を見定めての技の構成と、ポケモンの動きを無駄なく行うその技量。とても未熟な生徒とは思えない。正しく実力者トレーナーの中でもこの歳でトップに近いものであろう。
教師達は、まさに度肝を抜かれたように驚きを隠せなかった。
「このまま一気に。ミミ、『かげうち』」
自分の影に入り込み、影とともに姿を消すミミ。
場に残された3体のポケモンは辺りを見渡し始める。
しかし、場にはミミの姿が見当たらず、忍び寄る影に3体は気付かない。
「ーーーミミ、ゴー!!」
ニドキングの影に潜んだミミが、背後からのかかと落とし。体勢が崩れ、更に追い打ちをかけるように『シャドークロー』がニドキングを吹き飛ばす。
何も出来ず、吹き飛ばされたニドキングは倒れ込んで目を回した。
「ニドキング戦闘不能!!」
残り2体。全く持って圧倒的である。
今までダメージは0。このまま行けば、完全試合となる。
「圧倒的、ですね」
「何も言えません。技の構成とその技量。人型ポケモンもそうですが、クロメ君の実力も素晴らしい」
「将来有望なトレーナーですな」
トレーナーの目指す道は、それ様々だが、一番多いのはポケモンリーグ制覇だろう。
バッチを8個集め、年に1度行われるシンオウリーグ・スズラン大会で優勝する事。トレーナーの誰もがそれは思う事だろう。
リーグ制覇は、トレーナーにとっては名誉な事で、出身地からリーグ制覇者が出ると、町総出で祭りが行われることもある。
それ程、リーグ制覇をしたトレーナーはそれぐらい凄い事である。そして何より、リーグ制覇をするのは、全て優秀なトレーナーだという事。
クロメは、そんな優秀なトレーナーの前兆を示している。将来有望なのは明白である。
「でも、ちょっとピンチな様ですね」
校長の言葉に、教師の目は急いでフィールドに向けられた。
向けられた先には、若干引きつった顔のクロメと、ふらふらとふらつくミミの姿であった。ミミの顔色は、前髪で分かりにくいが顔色は確かに悪そうであった。
「あの状態は、『どく状態』か!?」
ポケモンは『どく』、『まひ』、『ねむり』、『やけど』、『こおり』の五つが基本的な状態異常である。『こんらん』もあるが、主だった状態異常は五つだろう。
特に、『どく』は動くにつれてどんどんダメージが大きくなっていき、『やけど』はダメージが一定だが、技の威力が半減し、『まひ』は動きを鈍くする。
「今の流れで『どく』状態なるとしたら、ニドキングに触れた事か」
「ニドキングの『特性』、『どくのトゲ』ですか。物理技を得意とするあのポケモンには回避できなかった見たいですね」
『特性』の中には、状態異常を引き起こすものがある。ニドキングの『特性』は2つ。ポケモンには『隠れ特性』というものがあるポケモンが多いが、大体そんな『特性』を持つポケモンは早々いない。
ニドキングの『特性』は、今回の『どくのトゲ』と『とうそうしん』。全てのポケモンに言えることだが、ポケモンは見た目では『特性』の判断が難しい。バトル開始と同時に発動すれば対処は出来るが、『特性』を一つしか持たないポケモンが相手ならともかく、2つ持つポケモンだと、どちらかである為、とても判断に困る。これを逆手に取って、バトルを有利に進めるのも手であり、そこはトレーナーの実力が試される。
「どく状態か。なんかよく分かんないけど、とにかくチャンスだ!!ニドクインッ、『なしくずし』!!」
ニドクインが飛び出す。拳を握り、ふらつくミミの腹に拳を叩き込む。バンッと衝撃波が起こり、反動でミミは後ろに飛ばされた。
しかし、クルンと空中で一回転したミミは、反動とは裏腹に、何食わぬ顔でクロメの近くに戻った。
「……まさか、『どくのトゲ』だとは思わなかった。そっちのニドクインももしかしたら『どくのトゲ』かも知れないな」
ポイッとクロメはミミにきのみを投げた。状態異常を回復させる『ラムのみ』。それを一気にパクリと食べるミミ。
次第に顔色が良くなっていく。
「一先ずこれ持っとけ。ニドクインぶっ倒したらかじれよ」
コクリと頷くミミを横目に、ジリっとニドクインを見つめるクロメ。
ニドクインの一撃を食らってもピンピンしているミミに対して、向こうの5人は驚愕の顔をしていた。
「あの一撃で無傷!?どんな耐久持ってんだよ……」
「ほほぉ。吹き飛ばされた事を利用して、トレーナーの元に戻ってきのみで回復と。なかなか状況判断がいい」
ニドキング、ニドクインの一撃は、バンギラスに匹敵する程の威力。その一撃をまるで後ろに移動する為にわざと受けたような流れ。戦意喪失しそうなぐらいの揺らぎを覚えた。
「さぁ、早めに終わらせよう。ミミ、『シャドークロー』」
地面を蹴り、一気に駆け上がる。その余波は地面に足跡をくっきり残し、更には深くめり込ませるほど。
グンッと伸びた尻尾が黒い鉤爪となり、ニドクインの懐に入り込む。
「つっ、捕まえろニドクイン!!」
両手で挟むようにガッシリとミミの身体を掴むーーーが、一歩踏ん張り、そこからブリッジで身体を逸らして避ける。両手が合わさった瞬間に地面を蹴り、そこからのバク宙。回る身体が、鉤爪と化した尻尾をニドクインの額に叩き込む。
ゴチンッと鈍い音と共に前に倒れるニドクインに、更に切り返しの『シャドークロー』。
横っ腹に叩き込んだ『シャドークロー』は、メリメリとニドクインの横腹に入り込み、衝撃で足を浮かせ、一気に振り回す。
飛ばされたニドクインは、踏ん張ることも出来ないまま、なす術なく壁に勢い良く激突。バタンッと倒れ、目を回した。
「ニドクイン、戦闘不能!!」
残り1体と、予想通り『どくのトゲ』だった為『どく状態』となり、懐から取り出した『ラムのみ』を再び口に含む。
「今が狙い目だ!!ドラピオンっ、『シザークロス』」
「食べながら最低限避わせっ。致命傷は避けろよ!!」
もぐもぐと口を動かしながら、飛び交うドラピオンの長い腕を交互に紙一重でかわす。縦に来たのを横にずらし、横に来たのを空中でかわし、正面から来たのを体を逸らしてかわし、クロスして来たのを『シャドークロー』で受け止める。
最低限避け、多少のダメージ覚悟で『シザークロス』を受け止める。
この試合の中で、初めて技のぶつかり合いが起こった。
衝撃波が砂煙を巻き起こし、バチバチと火花が飛び散る。
「『クロスポイズン』!!」
ドラピオンの防御力は高い。物理型のミミに対しては、的確に防御を行えば多少のダメージで抑えられる。が、ミミは『つるぎのまい』で6段階上げである為、防御を怠れば相当な深傷となる。
ぶつかっていた尻尾を押し出し、ドラピオンの腕にどくの液が流れ出す。ミミは一歩後ろに飛び、尻尾で地面の砂をドラピオンの顔向かってぶっかけた。
一瞬目が見えなくなった事を逆手に、ミミは後ろに回り込む。
「『じゃれつく』!!」
背中にまず尻尾の一撃、更に右フック、回し蹴り、かかと落とし、左ストレート、両かかと落とし、廻蹴り、右ストレート、空中廻蹴り、膝蹴りーーー。
バンギラス時同様激しい猛打撃に、ドラピオンは体勢を崩しそうになるも何とか踏ん張り、首を回転させ、防御に徹する。
ミミの殴り込みは止まらない。更にスピードをまず猛攻。それを受け留まるドラピオン。会場を熱くさせない訳は無い。
「『シャドークロー』!!」
「『つじぎり』!!」
黒い鉤爪と、鋭くなった腕がまたぶつかり合う。
衝撃波の生んだ余波が、会場の外まで届く。
『シャドークロー』と『つじぎり』のぶつかり合いは止まらない。
しかし、ぶつかり合いが起これば起こるほど、その分体力が低下していくのは事実。6段階上げている攻撃を耐えているドラピオンも、流石にミミの一撃一撃は痛い。ミミもそろそろ体力の限界だろう。
「……聞き忘れてたけどさ、お前名前は?」
クロメがニヤリと笑みを浮かべながら尋ねる。
ドラピオンを扱うソフトモヒカンが似合う何処ぞのヤンキー少年みたいな生徒は、そんな質問を言われるとは思わなかった様で、目を見開いた後、笑いを零す。
「まさかお前、自分を虐めてた相手の名前を知らないのか?」
「そのまさかだよ。ていうか、俺お前から虐め受けたことないんだけど?」
「さて、それはどうかな」
「ガキはガキらしく大人しく名乗ってな」
「お前もガキだろ?俺はアキラだ」
「オーケーアキラ。多分そろそろ体力が両方とも尽きる。この歳でここまでできるなんて相当だなお前」
お互い様だと、アキラはそう笑う。
だが実際、教師達にあれほど優秀だと言わせたクロメと互角に立ち回れているアキラも相当な使い手だ。
初め、ニドキングが『じしん』を使ってドラピオンの体力は大幅に削られたはず。それでもなおドラピオンは攻撃を耐え、あらん事かミミと互角に戦っている。ドラピオンの体力の種族値は70。普通よりかは低いが、その分耐久力がある。しかし効果抜群だと、防御があった所で、体力が足りなければ致命傷になりやすい。
今ドラピオンがミミと互角に戦っているとなると、『じしん』が起きる前から、何かしらの能力変化を施していたことになる。
「ドラピオンが能力変化できる技と言ったら、『つぼをつく』かな」
「よく分かってるじゃねーか。変化技を使えるのは、まぁお前だけじゃないってことだ」
『つぼをつく』。『攻撃』『防御』『特攻』『特防』『素早さ』『命中率』『回避率』のいずれかを2段階上げる変化技。
ランダムで、どれが上がるのかは使ってからでないと分からないが、アキラはニドキングで『じしん』を使うのだろうと開始直後から予想していたのだろう。そこで『つぼをつく』を使い、ランダムで能力を上げ、見事2回で防御が4段階上がったことで、『じしん』を耐えることが出来たのだろう。
「ドラピオンの防御を活かした守備と、先を見越して応じたアキラ君。いやはや、将来有望なトレーナーが沢山出てきますねぇ」
嬉しそうに校長は笑う。
まだ教えた事の無い事を、平然とやってのける生徒達に、心から感心している教師。5対1の試合を中止しなくて良かったと心から思う教師達が多くいた。
「これが多分ラストだな」
「最大の力で打ち込む」
2体はそれぞれトレーナーの元に戻り、ジリっと睨み合う。
アキラの後ろに移動している他の4人も、一体何故こんな試合をしたのか検討も付いていない。
クロメの後ろに両手をしっかり握って勝利を願うシロナも、目を瞑って強く更に願う。
「これが最後のーーー」
「ーーーラストアタックッ」
「『シャドークロー』!!!!」「『つじぎり』!!!!」
両者共に踏み出し、地面を蹴る。
ミミは尻尾を鉤爪に。ドラピオンは長い腕を鋭く尖らし。
両者とも互いの腹部を狙い、迷わず突き出される。
ゆっくりと、事ゆっくりと、時間がスロー再生されているかのような時間の長い流れが、瞬間的にあった気がする。
そしてーーー刹那ッ。
衝撃波が2体を中心に巻き起こった。
激しい閃光と共に砂煙が舞い上がり、フィールド全体を覆い隠すような巻き起こしが起きる。
吹き荒れる砂嵐の中、審判が煙の中に残る影をずっと凝視する。
次第次第に見え始めた影を見つめ、審判は右手に持つ旗を上げた。
「ーーー勝者、クロメ!!」
その数秒後、観客席からこれまでに無いほどの喝采が舞い上がった。
まぁ勝たせないと駄目じゃん?
もう少しドラピオンとミミちゃんの戦い伸ばしたかったけど……、ほら、何?この話書いてる作者、言語力乏しいでしょ?
だからそこまで纏めれなかったのよぉ。
将来的に、シロナたんにフカマル返上させないとガブガブ所持しない事になるからさ〜。
ここはご都合主義で許してつかぁさい。