筆が進んだので書いていくぅー。
感想で主人公優遇過ぎない?的なものを頂いて、返答ではあーやって描きましたけど、ちょっと考えていたものを捻りました。
まあ結局優遇になるかもしんないけど、そんなの是非も無いよね(すっとぼけ)
いつの間にか、景色は青空に広がる空の下だった。
今だ打ち付けたような激しい痛みに顔を顰めるが、砂浜に転がされた体をなんとか起こし、痛みのある箇所に目を向けた。
服はなんともない。では服の下。捲ってみると、赤く腫れた皮膚が痛々しく現れた。思わず痛みが更にこみあげてくるのですぐに服を下ろす。
クロメは脳裏で何が起きたのかと思考を回す。
クロメはあの男、多分だがコンコンブルブルと話をしていた。……一方的な論破発言は置いておくとして、何故いきなり吹っ飛ばされた?
何が飛んできた訳でもない。かと言って、誰かが目の前に現れた訳でもなく、一瞬、一瞬だ。刹那の瞬間に身体が後ろに吹っ飛ばされていた。
クロメはここで一つの仮説を立てた。
あの時クロメ達を吹っ飛ばしたのは
コンコンブルの相棒はルカリオであり、そのルカリオは相当強い。『しんそく』でクロメ達の前に一瞬に現れ、その余波で威力を弱めた『はっけい』で後ろに吹き飛ばす。
ほぼ核心を突いたような仮説のように感じるが、原作知識を持ったクロメだから立てられる仮説。実際熟練者であるが、現実的に音速を超えたスピードで音もなくあらわれ、その力を一切使わない軽めの『はっけい』が出来るのかと思うところなのだが、ここはクロメから言ってしまえば超次元の世界だ。前世に比べパワフレが激しく、物理法則を無視した現象をいくつも起こすこの世界では至極当たり前なのかもしれない。
では、仮説を立てられたことで、次は自信に振られたあの言葉を思い出す。
『弱い』。
クロメにはこの言葉の意味が全く分からなかった。
弱いとは、精神に捉えるのか、肉体的に捉えるのか。意味合いは様々あるが、クロメにはそんな深く考えられるほど心境は穏やかではなかった。
頭を抱える。この世界に来て初めての挫折感。
やっと手の中に納めることが出来ると確信した事が一瞬にして離れた。
謎が謎を呼ぶとはこの事だ。考えれば考える程分からなくなる。
コンコンブルは言った。考えを改めろと言った。考えとはなんなのだろうか。改めろとはどういう事なのか。
考えている事、それを考えるとクロメは幾つか思いたあるフシはある。が、改めるとなると途端に分からなくなる。
まるで、当たり前だからと考えているから全く気にしていない様な感じがする。
「……はぁっ、さいっあくだ……、マジ……なんなんだよぉ……」
普段吐かない弱音がついポロッと零れた。順調だと思っていたクロメたちの旅は、ここへ来て最大の難関にぶち当たった。
「…………んっ、クロメ……?……っ、クロメ!?大丈夫!?」
少し離れた場所に倒れていたシロナが目を覚まし、四つん這いでクロメに迫った。
少々髪が乱れているが、今の彼女にはそんなことどうでもいい事だ。今は大切な人であるクロメへの心配心が大きい。
「…シロナ、ああ、俺は大丈夫だ。……ちょっと、さっきの言葉をね……」
「クロメ……。くっ、あの男、クロメ君に弱いっていいやがったっ。許せないっ、許せない許せないっ。カレン、これからカチコミ行くよ」
「待てシロナ、落ち着くんだ。それに、シロナが怒ってまた顔を出したら、またクロメが弱いと侮辱されるぞ」
憎悪に満ちたシロナを落ち着かせるカレン。コンコンブルはクロメではなくシロナが怒ったことに対し、クロメを弱いと煽りさらにシロナが怒り、シロナさえ論破された。気持ちは分かる、とカレンはゆっくりとシロナを宥めるのだった。
「それで、どうするのだ?門前払いをされた以上、ここに長居しても時間の無駄だが?」
「………っ、あ、ごめん。話聞いてなかった。もう1回頼む」
「……お前は、大丈夫じゃないみたいだな。一先ずポケモンセンターに向かおう。一泊して身体を落ち着かせるんだ」
「……あぁ、そうしようかな。でも、少し1人にしてくれないか?今は1人になりたいんだ……」
クロメは手持ちのポケモンを全員モンスターボールから出した。
立ち上がり、アリアの前に膝ついて頭を人撫で。
「……ちょっと、1人になりたいからさ。シロナ達とポケモンセンターに向かって行ってくれ」
クロメはおぼつかない足取りで歩き始めた。
その背はまるで死人。あの威圧から来る強烈な一言は心抉るものだ。無理もないとは無責任だが、クロメは途方もなく心が空っぽになっているだろう。
「……クロメっ」
咄嗟にアリアが向かおうとするが、その肩をミカンちゃんが抑える。
他のポケモン達もクロメを慰めたい一心だが、今1人になりたいクロメの気持ちを尊重するようだった。
クロメが立ち直るにはどうすればいいのか。
時間が経過してくれれば立ち直れるのか。
何かきっかけがあれば気持ちが晴れるのか。
誰もその答えは、分からずじまいであった。
「ーーーよかったのですか?主よ」
「構わん。あの小僧がお告げの通りならば、あの小僧は危険だ」
「弱さを改めろとは、なんと言いますか……、至極真っ当な事なのでは?」
「……違うのだ。その答えは全く違うのだ、
「……申し訳ございません、主よ。私は、あなたの仰る考えが思い当たりません」
「気にすることでは無い。これは、あくまでワシの直感なのだ。ワシの直感が伝えてくる。あの小僧は、トレーナーだからどうこうという話ではないと。まるで、普通とは違う考えを持っていて、それはトレーナーとして間違っている考えなのだ」
「トレーナーとして、間違っている……ですか?」
「然り。あの小僧はその意味がわかってはいなかった。当然だろう。それを当たり前の考えとして気にしていなかったのだからな」
「……流石、我が主であります」
「してルーよ。お前は、今から瞑想に入れ。ワシの直感が伝えてくる。あの小僧はもう一度ここを訪れると」
「今の状態から持ち直してですか?」
「そうだ。更に言うと、小僧は覚悟と決意を持ってやって来る。それは、小僧が伝承者になる為の成長した姿だ。もし、もしもだ。小僧が覚悟と決意を持ってここに来た時、ワシは状況次第では受けるかもしれん」
「……そういう、事なのですね?」
「……あぁ、久方振りの統一じゃ。抜かるでないぞ、
「ーーー畏まりました、我が主」
次回、クロメ君初の擬人化じゃないポケモンと遭遇。
手持ちになるとか言ってないから手持ちにしない(フラグ