なんか違うぞこの世界   作:黒姫凛

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お話的に二つに分けました。
と言っても、後半部はまだ出来てません。
もしかしたら、これが今年最後の投稿になるかも。
皆様、残り少ないこの2017年。良いお年を(๑•̀ㅁ•́ฅ✧


俺のやるべき事

この世界に来て何度も何度も悩んだ事。一番と言ったら、俺がこの世界で何をするのかという事だろう。

思えば、何もわからず転生され、後ろ盾も何にもなく、ただ正しいと思ったことを真っ当にやっていただけの10年間。

苦しむ事など無かった。絶望する事など無かった。あるのは、目の前にいるこの少女に向ける、同情の悲しみのみ。

気持ちが覚めている訳じゃない。ただ実感が湧いてこない。

ポケモンの世界だと知って、どれだけ俺は嬉しかった事か。念願のポケモンの世界に来れたことは、俺にとって最大の喜びだった。

 

だが、現実はそんなに甘くなかった。

表だけしか知らなかった俺は、裏の事を全く感じていなかった。

その結末が目の前の少女だ。

心が壊され、俺に抱き着いて子供のように甘えているシロナ。

何が平和だ。何がポケモンマスターになるだ。

表立った世界しか知らない餓鬼がそんなような言葉を吐いてるとともうと、無性に反吐が出てくる。イライラする。ムカムカする。殺したくなる。

何幸せそうに生活してるんだよ。俺の目の前に、そんな幸せでさえ送れなかった女の子がいるんだぞ!!

この時ほど、幸せな生活に囲まれた餓鬼共や、今まで怠惰な生活を送っていた俺に無性に腹が立った事は無い。

後悔の波が押し寄せる。何度も何度も心の中に押し寄せ、皮肉にも目の前にもしシロナを助けた時のイメージがずっと頭の中を過ぎっている。

 

ーーー裕福では無いながらも、幸せな家庭で過ごした俺。

ーーー裕福でも何でも無く、存在価値を捨てられたシロナ。

 

同じ歳でも、こうも境遇が違う子がいるんだと思うと、俺は自分を殺したくなる。ムシャクシャする。イライラする。吐き気がする。

 

俺に縋って甘えるシロナは、本当に子供のようだ。

10歳と考えたら、きっと子供なのかもしれない。

だが、まるで親に甘える乳児のようであるのなら、この違いは受け取れられるだろう。

親の温もりを忘れた哀れなシロナ。その姿を見るたび、俺は涙が溢れ出てくる。握り締める拳からも血が出る程に。

 

助けてくれよ。助けて上げてくれよ。

今の俺には薄っぺらい言葉掛けしか掛けてやれない。

他人任せだとは思ってる。でも、シロナが心底幸せになるには、俺ではどうしようも無いんだ。

神様。この世界の創造神。頼むからシロナを助けて上げてくれよ。少しでも幸せに続くようにさせて上げてくれよ。

見返りが欲しいなら俺が代わりになってやる。土下座だろうが命差し出すがなんだろうが俺はやってやる。

それでシロナが幸せになってくれるなら、俺は本望だから。

幸せの形を、シロナに与えて上げてくれよ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唖然とした。

それは目の前に映る光景が見出した俺の感情。

ドラセナさんと別れた後、ずっと真っ直ぐ進んだ所にカレン達がいたので合流したが、それは俺を唖然とさせる光景だった。

 

「…………おい、カレン。この娘(・・・)は誰だ?」

 

その問にカレンは答えてくれない。

女の子座りをしているシロナの隣で、ずっとシロナを見ているだけだ。

 

「おいっ、カレン!!この娘(・・・)はっ、この娘(・・・)は誰なんだ………!!」

 

「……………シロナだ。正真正銘、私のマスターである、シロナだ」

 

「………マジで言ってんのかよ。幾ら何でもっ。これはっ……、酷すぎだろ……」

 

目の前にいるシロナ。その姿はまるで幼児。

外見は10歳の姿。だが、やってる事はまるでお遊び。

精神が衰退し、幼児化している。

自分を守る為に、シロナは心を切り離し、完全に心の奥に自分を押しとどめてしまった。

残ったのは、あの時の恐怖の前兆である歳の精神。

痛々しい。実に痛々しい。嘆く暇も与えず、自分の心を手放して身を守った結末。

俺は、その姿に動揺しか感じられない。

 

「……シロナの、シロナの心はもう限界だ。多分、心を元に戻すには時間がかかる。私達には、どうしようもない……」

 

「………ふざけんじゃねぇっ。ふざけんじゃねぇよっ!!何なんだよ!?何なんだよこの現状は!!ただ旅をしてるだけなのにっ、何でこうなるんだよ!!」

 

怒りが頂点に達した。

我慢出来ず、側にあった木の幹を殴りつける。

木が軋み、殴った後にはくっきりと拳の跡が残っている。

 

「………意味わかんねぇよ。何で、何でこんな事になっていくんだよ………。俺達は、ただ……、ただ旅を楽しんでただけなのに………」

 

「……クロメ」

 

殺してやりたい。この手で殺してやりたい。マジで殺したい。

これ程までに怒った事はあるだろうか。

身体の奥から熱く熱い感情が爆発しそうな事はあるだろうか。

これが憎悪か。これが嫌悪か。これが憎しみか。

疼きが全く収まらねぇ。マジで沸騰してやがる。煮えたぎってやがる。

イラつきが収まらねぇ。

人の為にこれだけ人間は怒り狂えるのだと初めて知った。

生半可な怒りではなく、自分でも制御出来ない、血管がプッツンするようなぐらいに血液が煮えたぎっている。

冷ますことなんぞ、もう出来はしない。

 

 

「ーーークロメくん?」

 

 

が、俺の頭は一瞬で冷やされた。俺の手を誰かが握っている。

傷一つない綺麗な手をしている。それでいて、白くて細い指。

俺は、ゆっくり手の主の顔を覗いた。

そこに居たのはーーー。

 

 

「ーーーシロナ………」

 

 

俺の怒りの元である、俺の中で大切な家族のシロナであった。

 

「………シロナ、どうして俺をーーー」

 

「………ふぇっ、何でシロナの事呼び捨てにするの………?ちゃんとちゃん付けで呼んでよ!!」

 

「えっ?あっ、ごめん、シロナちゃん」

 

突然の事に呆気に取られたが、シロナちゃんの話の内容から見て、シロナが俺と家に帰ってから1年ぐらい経った時の心になっている。

詰まりは、今までで一番幸せな一時であると言うこと。

絶対に、そんな暗いところから助け出してやる。

 

「クロメくんクロメくん。一緒に遊ぼ!!」

 

「………カレン、どうしよう」

 

「取り敢えずは付き合って上げてくれ。もしかしたら、元に戻せるチャンスかもしれない」

 

カレンに助けを求めるが、華麗に避けられる。

だが、カレンの言った事も間違いではないかもしれない。

もしかしたら、シロナを元に戻せるチャンスが、これからやる遊びでやってくるかもしれない。

 

「………分かった。シロナちゃん、一緒に遊ぼう」

 

俺は気を引き締め、その答えに了承した。




来年もこの作品共々、何卒良しなに(๑•̀ㅁ•́ฅ✧

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