精霊転生 ~転生したけど崩壊した現代でした~   作:緒方 ラキア

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21話「冒険者」

ここは大陸で絶大な影響力のある中央都オーバードの管理する街の一つ『バッケス』。

東の大都市との交易の中継地点として、非常に栄えている場所である。

その為、五つのエリアの内の二つが物資を貯蔵する為の倉庫区画となっている。

しかし、この街で最も有名な事と言えば、『冒険者ギルド』に他ならない。

龍脈の暴走によって形を変えたこの辺は、暴走の中心地であったかつてのネオ東京、現在の東京大森林に程近く、モンスターが発生して街に攻め込むなどの被害が絶えなかった。

其処で街の防衛と市民の安全の為に『冒険者ギルド』が各国に設立された。

大森林の探索などの調査系の仕事も存在するが、基本的には周辺に出没する魔物(モンスター)の退治などの役割が多い。

常に危険と隣り合わせの仕事であるが、どんな者でもなれると、一攫千金を夢見る者、名声が欲しい者、やむを得ない事情を持つ者など多岐にわたる。

今日も夢見る者達が仕事に励み、笑い、悲しみ、それでも懸命に生きていく。

そんな冒険者ギルドの門をくぐる、一人の袴姿の中位木精霊(アルラウネ)の姿があった。

 

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「疲れ~た~。」

 

リーフは冒険者ギルドへ続くの道をふらふらになりながら歩いていた。

何故かと言うと、リーフは村を出た後好奇心で道に生えている植物や樹木を片っ端から調べながら来たのだ。

本来なら一日で到着するはずなのだが、道草を食っていた事で三日もかかってしまった。

そしてようやくたどり着いたものの、そこからさらに足止めをくらう事となった。

この街に入る前には必ず四ヶ所ある検問をくぐらなければならない。

理由は犯罪者や危険物が入るのを防ぐ為である。

そして検問の身体検査と持ち物検査の際、必ず必要になるのが身分を証明する物がいるのだが、

当然今までこのような場所に来たことのないリーフは、身分を証明する物など持っているはずもなく、取調室みたいな部屋で半日過ごす事となった。

その後なんとか事情を説明して、やっと入国できたのだった。

 

「武器没収されなくてよかった。」

 

正直、身分が分からず武装している者など、門兵にとって不審者以外に当てはまる者などいないだろう。

だからこそリーフは冒険者ギルドに向かっていた。

門兵の一人が親切にも、簡単に身分証明が出来る場所を教えてくれた所こそが冒険者ギルドであったのだ。

 

しばらく歩くと、やっと目的の建物が見えてきた。

 

普通なら覚悟を決めて扉をくぐるのだが、リーフは迷う事なく扉を開けてギルドの中へと踏み込む。

中は思ったよりも人は少なかった。

それもそのはず、この時間帯はほとんどの冒険者は出払っている。残っているのは数えるほどしかいない。

それでもこの場に残っている冒険者はリーフに目を向ける。それらの多くは鋭くリーフを見つめる。

しかし、気にする事なくリーフは受付のカウンターに足を進める。

 

「いらっしゃいませ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

見事な営業スマイルで対応してきたのは狐耳に狐しっぽのスーツ姿の受付嬢であった。

「ルナ・ファルス」彼女の名札にはそう書かれている。

 

「えっと、冒険者になりたいのですが。」

 

「はい、でしたらこちらに記入した後、別室までご案内致します。」

 

受付嬢は一枚の用紙を取り出し質問したことを記入していく。

年齢を聞かれて普通に25歳と答えたらものすごい苦笑いされた後、「んなわけないでしょ!」と叩かれた。

精霊はこの世で最も長く生きる生物である。長い者で恐竜の時代から今まで生き続けている者もいる。

その為成長スピードも人間とは異なり、かなりのスピードで大人の姿になる。

精霊は1000歳で成人を迎えるが、100歳ぐらいの時にはすでに大人と変わらない姿になる。リーフが言った25歳の精霊は大体がまだ3歳時ぐらいの姿をしている為、受付嬢はきつい冗談だと判断してもしょうがないのだ。

 

「はい、では別室にて試験を行いますので付いてきてください。」

 

そう言われてリーフは受付嬢に付いてゆく。

 

「(試験対策まったくしてない・・・。)」

 

果たしてリーフは冒険者になる事ができるのだろうか。

 

余談だが、リーフが男である事に受付嬢は驚愕の表情を浮かべていた。

・・・解せぬ。

 

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「ハァーーー・・・。」

 

落胆の溜息しか出ない。

別室にて行われたのは学力試験であった。

しかし、この世界の常識をほとんど知らないリーフにとっては、どれもが難問であり困難を極める物であった。

そして先程張り出された結果はと言うと・・・

 

不合格ラインギリギリ、合格者の中では最底辺。

 

内容はほとんどがこの大陸の歴史や人物など、魔物(モンスター)に関する問題は片手の指程しかなかった。しかし、出された魔物(モンスター)に関する問題は全て記入した。

冒険者ギルドとしていらない問題が多いのはどうなんだとも考えたが、ギルド側が決めた事に文句を言った所でどうにもならない事は分かっている。

そしてまだ試験は終わっていない。

この後に、合格者のみが受ける技能訓練が残っているのだから。

とりあえずまずは渡されたこの用紙に記入して受付に提出しなければ。

用紙には人物名が日本語で書かれており、左側にチェックマークを打つ欄がある。

この中から選べという事だろうか。

しかし、カスミ達の言っていた事を改めて実感できる。

この世界全体の言語と文字は全て日本語になっていると言う事だ。

大戦後、精霊族最強と謳われる最上位水精霊(アクア・エレメンタル)の『ビアス・キュリー・ネプトゥーン』の魔法によって、世界中の知性を持つ生命の言語を全て日本語にしたとの事だ。

しかし、何で日本語なのだろうか。リーフにも世界中の他種族にも謎である。

 

「お困りですか?」

 

「ん?」

 

振り返るとギルド男性職員の制服姿の男性、頭から生える角に黒いしっぽに金色の瞳、この種族は確か『男夢魔(インキュバス)』だったか?

しかし、こいつはかなりのイケメンだな。

名札には「カーシー・ローウェル」と書かれている。

 

「この中の冒険者の誰でも選んでよろしいのですが、何かご希望などございますか?」

 

そう言われると気になるのはこのギルド内で一番強い冒険者だろう、だがいきなり最高位の冒険者と戦うのも無茶が過ぎるか。

 

「じゃあギルド中で二番の実力がある人でお願いします。」

 

「え"っ・・・できますけど、よろしいのですか?」

 

間を取ってそう決めたのだが、男夢魔(インキュバス)の職員は苦笑いを浮かべて確認を取る。

別にもう決めてしまったし、久しぶりに強者と相手をしたかったリーフは迷う事なく「問題ない。」と答える。

 

「さ、左様でございますか、ではそのように手続きを取っておきます。」

 

男夢魔(インキュバス)の職員はそう言って、奥へと消えて行った。

そしてリーフは、今のうちに体を解しておこうとストレッチを始めた。

 

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「ハァ!?あなた何をしたのか分かっているの!!」

 

怒りの声を荒らげるのはエルフの受付のリーダー格の存在である『リリーナ・アシュレイ』。

彼女の前には先程リーフと話した男夢魔(インキュバス)が正座している。

絶賛説教の真っ最中であった。

 

「確かに私は冒険者及び志願者には、希望に沿った対応を行えとは言いました。しかし、これはあまりにも酷すぎます!」

 

男夢魔(インキュバス)はリーフの希望通りに、現在残っている冒険者の中で二番の実力がある者に頼み、試験官の了承を無事に得た。

しかし新人の彼にはその頼んだ冒険者がどのような人物なのか全く知らなかった。

依頼した人物の名は『ガレオン』と言う。

この街で彼は知らない者はいないほど有名である。ーーただしそれは悪い意味で。

ガレオンの実力は確かなものだ、実際にギルドもそれを認めている。しかし、彼には決定的な問題があった。

彼は自分がのしあがる為には手段を選ばない人物であるからだ。

協力した別のチームを罠に嵌めて全滅させる、不足の事態(イレギュラー)の際に仲間を盾にする、一般人から脅迫まがいに金品を奪うなど、悪い噂しか聞かないような奴である。

ギルド側も対応にあたったのだが、彼の悪行に関する証拠を上げる事はできず、未だに立件できないでいる。

 

「もう判子が押されて変更もできないわ。今は試験の後について考えましょう。」

 

リリーナの肩に手を置き励ますのはリーフを技能試験場に案内し終えた『狐人(フォックス)』の受付嬢だ。

 

「ええ、そうだったわね。もうあんな事はさせないわ!」

 

以前にもガレオンに一度だけ試験官を務めさせた事があった。

その時は酷い事に、ガレオンに挑戦した志願者は満身創痍になって引きこもるようになってしまった。

さらにこの事態を知った為、志願者が激減して現役の新人冒険者が辞めるというギルドの経営が危うく成り立たなくなる事態にまで発展した。

そしてギルド全職員はこれから起こるであろう事態への対応を急がせるのであった。

 

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「うーん、彼は結構見込みあるなー。」

 

リーフは待ち時間の間、先に技能試験を受けている者達を観察していた。

リトビやグランほどの観察眼を持ってはいないけれど、相手の次の攻撃を予測して対応する修行を受けていた為、自分と同じ志願者の動きを全て見ていた。

試験はリーフがかつて受けていたような試合形式であり、現役の冒険者と試合をするという物であった。

中には魔法使いの志願者もいて、リーフにとってとても有意義なものであった。

そして終了のベルが鳴り、両者は模擬戦用の武器を納める。

やっと最後であるリーフの順番が回ってきた。

やけにギルド職員が忙しそうに動き回っているが、リーフは気にせず竹刀を手に取って入場する。

そして審査を務めるのはここに来るまでに出会ったエルフ、狐人(フォックス)男夢魔(インキュバス)の職員三人なのだが、さっきから心配そうにリーフを見ている。

不思議に思っていると近づいて来る足音と剣の鳴る音に気付いて、気を引き締めて前に向き直る。

現れたのは身長2メートル越えの獅子の顔をした獣人族の冒険者であった。盛り上がり傷跡の入った肉体と背中の使い慣れた大剣は、彼が数々の経験と修羅場をくぐり抜けた証拠。

歴戦の猛者と言える存在がそこにいた。

 

「ほぉー、お前が俺を指名したのか。」

 

「ええ、そうですが。」

 

そう答えると、ガレオンはリーフに近づいてゆきしばらく見下ろしていると口を緩めて、リーフに手を出した。

 

「今日はよろしく。」

 

「・・・こちらこそ。」

 

リーフも握手の為に手を差し出しガレオンの手を取り、

 

ものすごい力で握られる。

 

「い"だーーーー!」

 

「おお悪い悪い、つい力が入っちまった。」

 

咄嗟に手を離して手を確かめる。どこも異常は見られなかったので一安心だ。

 

「ガレオン、試験前に相手を傷つけるのは止めてください。」

 

「すまんすまん、つい癖でな。」

 

「ガレオン、試験前に行動するのは控えて下さい。」

 

「悪い悪い。」

 

睨み付けるリリーナを気にせず試合の開始位置に歩いて行く。

リーフも後に続き、ガレオンと対面する位置に立って開始の合図を待つ。

リーフの緊張が高まるそんな中でギャラリーが集まってくる。

無謀な挑戦をする志願者がいるとの噂を聞きつけたギルドに残っていた冒険者達や先程まで試験を受けていたリーフと同じ志願者全員が注目していた。

 

「(さぁーて、久々に溜まった鬱憤を晴らしますか。)」

 

ガレオンはギルドから要注意人物として見られていた為、最近は表立った行動は控えていた。

だから彼は相当鬱憤が溜まりに溜まっていて、いつ爆発してもおかしくなかった。

そんな時に何も知らない新人職員が技能試験の相手をして欲しいと聞いた時は、すぐに飛び付いて了承した。

以前試験官を務めた際には、相手をいたぶる事が余りにも楽しくて、後一歩で死亡してしまう所であった。

それから受付嬢のリリーナに目を付けられていたのだが、今回はギルドからの正式な依頼だから中止には出来ない。悔しそうにこちらを睨み付けているリリーナを見ると、笑いが止まらなくなりそうであった。

試験を見に来た仲間は口々に「やっちまえ!」、「現実を教えてやれ」などと声をかけてくるが、ガレオンは端からそのつもりであった。

 

「(だが一撃ぐらいは受けてやろう。)」

 

自分がはるか上の存在である事を分からせた後に、絶望するリーフを痛め付けてやろうと考えたガレオンはこう口にした。

 

「なぁ新人、最初は防御しないからお前は本気で攻撃して良いぞ。」

 

「・・・えっ?良いんですか?」

 

「ああ、構わないから全力でやってくれ。(どうせ無駄に終わるからな。)」

 

リーフは少し考えていた。

 

「(全力?それって何処までだ?・・・まぁ本人が望んでいるなら答えないとな。)」

 

「じゃあ遠慮なく。」

 

「おう!(思ったより考えてたなこいつ。まぁ良いこのあとじっくり痛めつけ・・・)「ズドン!」・・・ん?」

 

そう考えていた所、突然響いた音によってガレオンの思考は遮られた。

一体何だと前に向き直ると、リーフは床を踏み鳴らし限無覇道流拳法の構えを取っていた。

 

「はぁぁぁーーーーーーーー。」

 

リーフはリトビ達との修行を思い出しながら全身の気力、もとい魔力を今出せる状態で極限まで高めていく。

さらにガレオンに向かって鋭い殺気を放つ、ガレオンは今まで感じた事のない殺気に怯むが、周りのギャラリー達はもっと酷かった。

志願者の中にいた魔法使い見習いはリーフの溢れ出す魔力に耐えきれず意識を手放し、試験を見に来た新人冒険者達はリーフの凄まじい殺気が自分達に向けられたように錯覚してしまい次々にバタバタと倒れてゆく。

 

「(な、何なんだこいつは!?)」

 

ガレオンの冒険者と生物としての勘がこう告げている “早く逃げろ” と。

だがこの場から逃げる訳にはいかない。ここで逃げれば彼は名も知らない冒険者にもなっていない者から逃げた臆病者として見られる。

そんなプライドが邪魔をしたその場を決して動こうとしなかった。

 

拳に気を溜め終わったリーフはガレオンを見据え床を蹴り間合いを一気に詰めた。

突如見失ったリーフが目の前現れた事でガレオンは驚く。

そんな彼にリーフは限無覇道流正拳突きを、無防備な腹筋に容赦なく放って拳はめり込んだ。

 

「ごっはぁ!!?」

 

しかし、リーフは追い討ちとばかりに拳から気を流し込む。

そしてガレオンの体はくの字に折れ曲がり勢いよくギルドの壁に吹き飛ばされる。

だが、ギルドの壁では勢いを止める事は不可能であり、そのままガレオンは壁に穴を開けて吹き飛ばされる。

さらにギルドに隣接する建物の壁を次々に突き破りながら、最終的に街を囲む壁にガレオンは埋め込まれて停止した。

 

一方の試験会場では、予想外の事態を目の当たりにしてその場にいた全ての人が驚愕によって声を出せなかった。

だが、その中で一際驚愕しているのは、ガレオンをぶっ飛ばした状態で固まっているリーフ本人であった。

 

「(え?・・・えぇーーーーーーーーーー!?)」

 

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「・・・はい!これでリーフ様の冒険者登録は終わりました。」

 

「はぁ・・・どうも。」

 

リーフは現在エルフ職員のリリーナと向かい合って書類の記入欄を埋めていた。

本来ならば合格者はギルドの中で講習や戦闘訓練を行い、卒業試験を受けなければならないのだが、リーフはその必要がないとギルドは判断した。

こうしてリーフは異例の飛び級によって冒険者になれたのだった。

しかし、リーフの表情は何処か優れない。

 

「あの・・・、やっぱり慰謝料は払ったほうが良いんじゃ。」

 

リーフにぶっとばされたガレオンは壁から救出された後、神殿へ運ばれて行ったところ、全身複雑骨折、内臓損傷、その他諸々合わせて全治3年だそうだ。もう冒険者に復帰する事は完全に不可能であった。

当然償いをしようとリリーナ受付嬢に相談したのだが、対する彼女は別にその必要はないとやけに彼女が強くリーフに言っていた。

ギルド側はリーフを責めるつもりはなく、それどころかむしろ感謝してもし足りないほどだ。

 

「だから、責任は全てギルド側が対応にあたるので、リーフ様は何も気にする事はありませんよ。」

 

ものすごい笑顔でそう言われてしまい、リーフはしぶしぶ従っていた。

けど、果物くらいはお見舞い品として送っておこう。

 

「それでは、また明日の朝にまたギルドに来て下さい。」

 

「はい・・・。」

 

リーフは弱々しく返事をした後、今日泊まれる所を探しにギルドを後にしたのだった。

因みにこの後冒険者達の宴の席にて、ガレオンの失墜とそのガレオンを一撃で粉砕した志願者の話で持ち切りとなる事をリーフは知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーフの冒険者登録数時間前。

ギルド長の部屋にてある話し合いが行われていた。

中にいるのは先程審査員をしていた三人とリリーナの父でありギルド長の「バルト・アシュレイ」。

 

「おとうさ・・・いえギルド長、お話とは一体何ですか?」

 

「うむ、お前達が審査した最後の志願者の事だが・・・」

 

やはりその事かと三人は内心思いながら続きに耳を傾ける。

 

「早速冒険者として動いて貰おうと思っている。」

 

「「なぁっ!?」」

 

「本気なのですか、お父さん!?」

 

最早受付嬢としてではなく、娘としての口調に戻ってしまうほど驚いていた。二人も相当驚愕に包まれている。

バルトの考案は異例中の異例であり、下手をすれば他の冒険者を冒涜するようなものであった。

だが、バルトの目は決してまやかしではないと告げている。

 

「私は本気だ。」

 

「・・・あの、身体能力と技能に関しては問題ありませんが、いくら何でも知識を持たない者を登録するのは・・・」

 

カーシーは弱々しく異議を申し立てるが、バルトは机の上にある用紙を三人に見るように渡す。

 

「採点した職員から借りてきた、これを見てもそうと言えるか?」

 

三人は渡された用紙をじっくりと目を通す。それはリーフの筆記試験の答案用紙であった。

そして三人は言葉を失う。

リーフの答案用紙には常識に関する問題はほとんど答えられていなかった。

しかし、周辺に出没する魔物(モンスター)に関しての問題の欄は違っていた。

そこには、対処法や弱点、さらには行動パターンまでもが事細かに書かれていた。

中にはギルド職員も全く知らない情報も書かれている。

 

「正直に言おう、こんな人材をすぐに出さない事など私には出来ない。」

 

「それに、近年魔物(モンスター)の行動は活発になっている。そして今回『奴ら』もかなりの大規模で攻めてくるだろう。正直中央都の政権は不安定で当てにならない。」

 

「その為、私達はもっと力をつけなくてはならないのだ。」

 

「ギルド長・・・」

 

「其処でだ、君達には彼の行動を観察して欲しい。」

 

バルトは、リーフの強さの秘訣を知るために三人に頼み込んだ。三人は互いに顔を見合せ、首を縦に振ったのだった。


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