死にたくない   作:ウィレン

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初めまして・・・

 

 

 

 日曜日

 

 

 

「貴方が黒崎一護?」

 

 

 オレンジ色の髪の毛の少年。

 隣でたっちゃんが不服そうだけどそこは気にしない。ついに運命の日、大袈裟に聞こえるがそれほどに大事なことだ。かなり緊張していたけど、私が思っているような心配はないと思われる。

 

 あの後たっちゃんから電話で早々黒崎一護と会う約束をした。私達は弓沢児童公園にいる。未来、黒崎一護が二度目の虚を倒し、決意を固める場所でもある。

 昼過ぎ、騒がしい子供がうじゃうじゃいる。不愉快極まりないが学校よりはマシだ。ここで我慢する方がよっぽど楽だ。眉間が寄りそうになり(実際全く表情はビクともしていないが)ぐっと堪える。

 

 

 

「そうだけど……君は?」

 

 

 不思議そうに聞く黒崎一護があんな風に成長するとは、誰も思わないだろう。こんな元気な少年があんな不良になるとは、

 私が思い出す限り、黒崎一護は甘い人間だ。それは精神が完全な発達を遂げていないせいもあるが、母親が一番深く関わっていることだろう。原作では家族の中で中心人物だったからな。ああ、違う。まだ(・・)、だったではない。これからだったに変わる。

 

 

 

「私は坂本真奈。いっちゃんて呼んでいい?」

 

 

 

「いっちゃん?」

 

 

 

「貴方のあだ名、一護だからいっちゃん。駄目?」

 

 

 

「ダメじゃないけど、女の子みたいだもん」

 

 

 むすっと、拗ねた表情をする少年。

 仲良くするにはあだ名をつけた方がいいと思っていたが、どうしようか。まあ、こういう時は適当な言い訳に限るか。

 

 

 

「……………貴方の一護って名前、格好良い」

 

 

 

「ほ、ほんと?!ほんとにそう思う?!」

 

 

 嬉しそうに詰め寄ってくる黒崎一護。私は彼を一瞥し口を開く。

 

 

 

「本当。…貴方の名前は格好良いから、あだ名をつけたくなったの」

 

 

 我ながら何を言おうとしてるのかさっぱり分からない。大体これぐらいの子供はこんな意味不明なことを言っている気がする。気がするっていうより、前世の子供がそうだったから。“煽てて他者を支配下に置く”、あの頃は馬鹿にしていたが今になりどれだけ役に立っているのかよくわかる。相手を油断させ、貶めるためにはとても貴重な手。ほんと、称賛ものだ。

 語尾に『の』を付けることについては、普段の喋り方とは若干異なって違和感しかない。たっちゃんが驚きすぎて口をぽかんと開けてる。なんとまぁ、滑稽な表情。

 

 

 

「うん!!オレのこと『いっちゃん』でいいよ!よろしく!!まなちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?まなちゃん」

 

 

 

「っ………なんでもない。ねえ、いっちゃん」

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「なにして遊びたい?たっちゃんが待ちきれなくてイライラしてるよ」

 

 

 隣を見るとこめかみをピクピク痙攣させているたっちゃん。そんな若いうちからストレス溜めていたら若いうちから白髪がたくさん見つかりそう。可哀想に、

 

 

 

「あんたたち、あたしのこと忘れてたでしょ」

 

 

 頭にツノが見えるのは幻覚?目を吊り上げたっちゃんが私と黒崎一護、……いっちゃんを捕まえてボコボコにしようとしている。完全にキレてる。いっちゃんが一歩後退り襲いかかってきたたっちゃん。私は服を掴もうとするたっちゃんの腕を避けた。いっちゃんはワタワタしながらも逃げている。私といっちゃんを追いかけるたっちゃんは無理があると判断したのか、捕まえやすそうないっちゃんに狙いを定めた。

 

 こっち来るなよ、たつきちゃん!と騒ぎながらも懸命になって逃げ惑ういっちゃんと、それを待て一護!、と言いながら追うたっちゃんを眺める。

 

 

 

(………驚いた、)

 

 

 心に呟かれた言葉。

 

 

 

 途端に、前世の記憶の一部が鮮明に蘇ってきた。

 そんな関係のない事、なぜ今思い出すのか

 

 

 私が幼く知を求めていた頃

 

 周囲を気にする余裕など全くなく、全てを知りたいと思っていた

 

 探究心だけが湧いて己の本能のままに行動していた

 

 どんな評価を受けようが、どんな風に見られようと、他人からのそれは私にはどうでもいいことでしかなかった

 

 だからなのか、あの時の言葉は私に深く突き刺さった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【…………お願いだから、

 

 

 笑ってよ、

 

 

 泣いてよ、

 

 

 怒ってよ、

 

 

 悲しんでよ、

 

 

 

 

 

 なんでずっと無表情なの?!

 

 

 あんたは私の■■じゃない!!

 

 

 なんでっ、

 

 

 なんであんたが私の■■なのよ!!

 

 

 あんたみたいな気持ち悪い子、産まれなければよかったのに!!】

 

 

 

 

 

 

 

「……思い出す事はもう無いと思っていたが、」

 

 

 一字一句、違えることなく頭に刻み込まれた言葉。脳に、魂に、身体に、深く刻まれていた

 壊れていく母親を前に、何も感じなかった、感じることができなかった。私にとって母親は産みの親というだけで、人間が死ぬことは自然の摂理で、それだけだ。それ以上でもないしそれ以下でもない。

 

 

 

 

 

「……まなちゃん?どうしたの?」

 

 

 

「大丈夫か?坂本」

 

 

 気がつけば心配そうな表情で見てくるたっちゃんといっちゃん。過去の光景はもう過去だ。今更、どうでもいい出来事に過ぎない。存在を否定されようが、拒絶されようが、どうでもいい。

 

 大事なのは今だ

 

 

 

「なんでもないよ。さ、遊ぼう 何して遊びたい?」

 

 

 私はたっちゃんといっちゃんと一緒に暗くなる夕方まで遊んだ。

 

 

 

 









どーも、ウィレンです



坂本さんの前世にちょっとだけ触れてみました。坂本さんは喜怒哀楽が極端なだけで本当はちゃんと感情あるんですけどねー。■■の部分は結構重要なんスよね。………あーでも重要?なんスかね?まあ、ある意味重要ですかね。
次回は坂本さん、黒崎家へ行ってきます

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