死にたくない   作:ウィレン

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喧嘩?

 

 

 

 

 さて、仲良くなろうっていうけど、どうしたもんか。仲良くって、どうすればいいんだっけ?結構な間ひとりでいた所為かそれが普通になったみたいだ。前世も自分から友達を作るってことはほとんど無かったし。

 

 

 

「坂本、何悩んでんの?」

 

 

 たっちゃんに声を掛けられて一瞬動きが停止した。こんなこと聞かれるとは思ってなかったから、そもそも気づかれたことに驚いた。

 

 

 

「・・・何で悩んでると思ったの?」

 

 

 私がたっちゃんに聞くと頭を捻り考えてる。ポーカーフェイスは得意、無表情だからあんまり分かんないと思ってたんだけどな。何で分かったのか疑問だ。

 

 

 

「ぅ〜ん、・・何でって言われてもなぁ・・・何となくだよ」

 

 

 は?

 いやいや、何となくで分かってもらっちゃ困るんだけど。これから生きていく為にポーカーフェイスは必ず必要だから(いろんな意味で)それを今まで練習してきたのに。どうしたら感情を隠せるか改善点でもあんのかな。

 

 

 

「坂本は無表情で何考えてんのかさっぱりだけど、雰囲気?かな。それに悩んでるときって、楽しそうに見えるんだよな」

 

 

 楽しそう?何言ってるんだ?

 私はついに動きを止めた。楽しいなんて考えた事無い。たっちゃんがそう感じているだけとは考えにくい。漫画・アニメの中でのたっちゃんはなかなか洞察力があったし、人を見る目だって持っている。だとしたら私は無意識の内に“楽しい”と感じてることになる。何があってそう感じてるのか。考えたところで答えは一向に出てこなかった。

 

 

 

「大丈夫?坂本。あたしなんか悪いこと言った?」

 

 

 

「大丈夫」

 

 

 そう言って歩き出せば何故か気まずい空気になっていた。溜め息が溢れそうになり慌てて引っ込める。友達って、面倒なものだ。他者の気持ちを考え、思いやるのは一番苦手だ。

 

 

 

「たっちゃん、」

 

 

 

「な、なに?」

 

 

 

「相談があるんだけど、」

 

 

 瞬間、たっちゃんが石のように固まって動かなくなった。余程珍しかったんだろう。まあ私が相談なんて一言もしたことなかったし、つい最近まで離れようと思ってたから、当然といえば当然の反応だ。ひらひらと右手を振るが反応無し。

 こうなったら仕方ない。なにも反応しないたっちゃんが悪いんだし。私はランドセルの隙間に挟まってる物差しを出して、両手で持って頭上に高く上げた。そして、たっちゃんの頭を力の限り叩いた。子供だからそう痛くないと思うけど、

 

 

 

 

 

「!?いったぁああ!!!!」

 

 

 大き過ぎる声に通行人がこちらを見たが、何事も無かったように通り過ぎる。どうせ子どもがはしゃいでるだけだと思ったんだろう。苦痛に顔を歪めて頭をさするたっちゃんを見て少しやり過ぎたかもと後悔する。やった事に対して全く後悔は無いけど。私は物差しをランドセルの隙間に戻して、たっちゃんに近づく。

 

 

 

「相談があるんだけど、」

 

 

 

「二回も言わなくても聞こえてるよ!!何で物差しで叩くんだよ!!」

 

 

 涙目になりながらも、きっと睨みながら聞いてくるたっちゃん。反応しないたっちゃんが悪いでしょ。

 

 黒崎一護と仲良くなるには彼女が一番近い存在だと思われる(家族を除いて)。髪色とかで幼少は色々言われていたみたいだから、変に物怖じしないたっちゃんは黒崎一護にとって大切な人間に値するだろう。

 たっちゃんからの紹介は黒崎一護にとってかなり信頼があるものだ。口では色々言っていても心ではそう感じていない筈だ。…多分。

 

 

 

「黒崎一護、」

 

 

 

「一護がどうしたの?」

 

 

 

「彼と友達になりたい」

 

 

 

「はぁ?!?!」

 

 

 大袈裟だ。無駄にうるさい声に耳を塞いだ。そんなに驚く要素がどこに、ああ、あったか。子供はつくづく面倒極まりない。私も見た目は子供だけど、中身はしっかり成人した女である。たっちゃんは身体的な面ではまだまだ餓鬼。これから成長するからいいだろうけど、精神的な面では人より幾分か短気な所為なのか余計幼く見える。あくまで私の主観の話ではあるが。

 

 黒崎一護と仲良くなる為にわざわざ本まで買ったんだ。これは失敗してもらっては困る。たっちゃんが黒崎一護を紹介することを嫌がるとは思えないから、成功は7割程だ。

 

 

 

 

 

『悪どい人間が友達を作る10の方法』

 

 

 という本を買った。母さんは滅多に我儘を言わない私をどこか心配していたけど、本を買って欲しい、と言うと嬉しそうな顔をしてオッケーしてくれた。けどタイトルを見た瞬間顔が引き攣って幼児向けの本を紹介してきた。いやいや私そんな子供じゃないし。結局、母さんが先に折れた。こんな子供らしくない子供、普通じゃないと思うところが多々あって、それでも嬉しそうな顔をする母さんには驚いた。いや、驚いた、というよりは感心した。

 

 

 よく出来た母親だな、と。

 

 

 

 税込562円の本を私は見事獲得できた。早速その日に読んで見たが興味深く、夕飯をうっかり忘れるところだった。

 

 

 

「……なに?」

 

 

 

「なんであいつ?!ってそうじゃない!坂本、悪いこと考えてない?」

 

 

 

「なんで?」

 

 

 最近特にたっちゃんの勘が鋭くなってきている。理由は不明。悪いこととは言えないが、似たり寄ったりなことは考えてはいる。

 

 

 

「だってあんた、最近気持ち悪いくらいに距離を縮めてくるから!!」

 

 

 気持ち悪いとはひどいな。

 

 

 

「距離を縮める?」

 

 

 

「前は離れて行こうとしてたじゃん!名前を苗字で呼んでって、必要以上あたしと関わろうとしなくて、それが何で急に一護と友達になりたいって言うんだよ!!」

 

 

 ……………。

 

 

 

 

 

「あたしのことがそんなに嫌ならはっきり言えよ!!!」

 

 

 何故だろう。彼女の事だからすぐに承諾してくれると考えていたのに。私はたっちゃんでは無く黒崎一護と友達になりたいと考えていたのに、何故たっちゃんの話に置き換わっているの?

 

 

 泣いてるたっちゃん、

 

 何で泣いている?

 

 目から溢れそうになる涙を、零さないように唇を噛み締めて必死になって我慢している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………嫌いではない」

 

 

 私の口からぽつりと呟かれる。

 

 

 

   








どーも、ウィレンです。


坂本さんの前世は友達いなくてボッチだから友情とか全く分かっていなく、今世は『たっちゃん』ていう友達がいるから喧嘩とかありかなーって考えた結果、こうなりました。
まあ、そもそも坂本さんはたっちゃんの事を利用しようとしているから友達とは思ってないんスけどね。今後、どうするか悩みどころの1つですかねー。


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