スーパーロボット大戦Re・disk3   作:jupi

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2話-angelvoice

「……いいぜ。歌ってやる。ただしお前に言われたからじゃねえ。俺が歌いたい気分なだけだ」

 

 マサトは熱気バサラを灯台で発見し、医療施設へとつれていく。

 二人の会話はアルヴィスでモニターされていた。

 

「それにしても意外だったな。彼が申し出を受け入れるとは」

 

 騎士ユニコーンがアルヴィスのCDCで真壁指令と映像越しでバサラ達の様子をみていた。

 

「やりたいようにやる。そのやりたい事が変化してきているのかも知れないな」

 

 真壁はスタッフに指示を出す。

 

「急造で構わない。学校の体育館を仮設ライブハウスに作り替えろ。怪我人や同化現象の影響がある者。疲労が見える兵士等を優先して向かわせるんだ」

 

 

 

 ファフナー隊の、一騎達の後輩たちは戸惑っていた。

 

 広登の死と暉の消滅。パイロットの同化現象が進んだことによるSDPの負担。

 さらには一騎達が連れ帰ったナデシコとアークエンジェルの乗組員との出合い。

 修理中のゼロファフナーの横にガンバスターがあることや、ペンギンコマンドが闊歩する町並み。

 平穏を取り戻すために頑張ってきたのに、さらに島を乱された気分でいた。

 

「ライブか……」

 

 零央は美三香を誘う気でいたが彼女は何やら野暮用があるらしく、ナデシコへ度々顔を出しては忙しそうにしている。

 

「まったく。皆浮かれて……いつフェストゥムが来るかわからないのに」

 

 自宅で真剣の素振りでもしようか。

 アークエンジェルから降りてきた本物の侍に剣術を教わろうかと考えた事もあったが、見たら女の子と楽しげに話すジーンズ姿の普通の男だったので落胆した。

 あまり新参者に期待するわけでもなく、ライブには参加するのもどうかと思い始めていた。

 

「あれ?零央」

 

「彗。それに里奈先輩」

 

「ちょうどよかった。手を貸して」

 

 やはりと言うべきか。里奈は眠気と戦いながら彗に肩を借りて歩いている。それを見て彗にとっては役得なのではと、邪魔してはいけないのではと考えてしまう。

 

「あ~御門くん。こっちはいいから、美三香ちゃん探してきて。多分ナデシコにいるから」

 

「……あいつ、なにやってるか聞いてます?」

 

「さぁ?ただナデシコの艦長さん達が迎えに来たらしいわよ」

 

 まさか美三香まで島の外の戦いに連れていく気ではないだろうか。

 だとしたら非常に腹が立つ。

 乗り込んでやろう。

 島の戦力として重要な存在だとか、そんなことよりもだ。

 零央にとって好きな女の子が誰かに利用されるのではないかと。

 そちらの方が気になったのだ。

 

 

 そしてナデシコに到着して、イズミというエステバリス隊の変な女性に案内されて美三香がいる場所までたどり着くことが出来た。

 

「あれ、零央ちゃん」

 

「美三香。ここでなにしてんだよ」

 

 すると不適な笑みを浮かべてから。

 

「ジャーン!ゴーバインのHDリマスター化をしてもらったんだよ!」

 

「はぁ?」

 

 思わず美三香の正気を疑った。

 軍艦の一室で将校に呼び出されてアニメの作業?

 

「ナデシコといえど軍艦には娯楽が少ないので。オモイカネと彼女に協力してもらいました」

 

 連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリが淡々と語る。

 

「彼女は言わばゴーバインのPR大使です。我々の部隊でもロボットアニメを好む方が多いので、精神面でのケアのために尽力願いました」

 

「それに、それだけじゃないの」

 

 次にミスマル・ユリカは真面目な顔で。

 

「鉄華団や異世界から来たガンダムさん達、幼い頃から戦争に関わってきた人達はこう言った楽しみを知らないの。彼らにはもっと色々学んでほしいから」

 

 零央は納得出来るだけの話を聞けた。

 

「そういや零央ちゃん。何か用があって来たんじゃない?」

 

「あぁ……えっと」

 

 いざとなると躊躇してしまう。

 女の子を気軽にライブへ誘うことが出来る程の人生経験が、零央は無いのだ。

 

「そう言えば」

 

 ルリが思い出したように。

 

「熱気バサラさんが学校の体育館を使って即席のライブをやるって言ってましたね。取り合えず作業を中断して聴きに行きましょう」

 

 するとユリカも。

 

「そうね。私はアキトと合流するわ。ルリちゃんも」

 

「いえ、たまにはハーリーくんと行こうかと」

 

 自然な流れを作られ。

 

「二人も行ってきたら?」

 

 二人がフォローしてくれたのだと、ようやく気付く零央。

 

「行こうよ零央ちゃん」

 

「あぁ、行こう」

 

 美三香がゴーバイン関連のデータをオモイカネに任せてから、自然と零央の手を握ってきた。

 

「なぁ美三香」

 

「なに?」

 

「ライブ終わったら俺にもナデシコでの娯楽作り、手伝わせてくれよ」

 

 折角だし、浮わついてもいいかも知れない。

 好きな女の子と手を握って走っている高揚感にあてられたのだろう。

 こいつが布教したがっているゴーバインを、他の連中に広めるのもやってやる。

 広登先輩や小楯先輩の分も。

 

 

 

 

「流石ルリちゃんだね。見事なオペレートでした」

 

「ユリカさんは棒読みでしたけどね」

 

 二人を見送って満足気なルリとユリカ。

 

「それにしても最近アキトが構ってくれないの。実はライブ誘われてないし」

 

「あれ?そうなんですか?」

 

「いっつも鉄華団の人達とか、ハサウェイくんや剣之介くんと一緒にいるから」

 

「……今度それとなく聞いてみます。今日はユリカさんから誘ってもいいかと」

 

「そうだね。それでなんだけど、ルリちゃんとハーリーくんってさ」

 

「どうでしょうね」

 

 はぐらかして部屋から逃げるルリもまた、ユリカに温かく見守られていた。

 

 

 

 学校の体育館に入りきらないほどの人数が、ライブに押し寄せていた。

 地球の片田舎には知られていないものの、全銀河の頂点に登り詰めたロックスターである熱気バサラが無料で、しかも島民が足を運びやすい場所でライブをするなら行かない方がどうかしている。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ANGEL VOICE 見つけたのさ

地平線の向こうに

キラリ光った

おまえの姿は夢じゃなかった

流れ流れていこう

いつかまた会おうぜ

瞳閉じれば

いつも心の中に響く ANGEL VOICE

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 バサラの歌に皆が酔いしれる中、その誰もが周囲の異変に気付く。

 体調が悪かったり怪我をしていたり、同化現象に苦しんでいた者に影響が出るのは想像できていた人間もいたのだが。

 

「ミールが……活性化、いや歌っているのか。彼と……」

 

 島全体からわき上がった無数の光が、天高く昇っていった。


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