竜宮島の住民達はアークエンジェルから連絡がいっていたオーブ艦隊により保護される事になった。
「我々の未来を繋いでくれた事。感謝してもしきれない」
「頭をあげてください真壁司令。僕らは出来る限りの事をしたまでです」
「いや、礼を言わせてほしい」
アークエンジェルの艦橋にマリュー、キラ、ユリカが真壁司令に頭を下げられていた。
「僅な期間ではあるが我々の戦力をあなた方に」
「ちょ、ちょっと待ってください」
思わずユリカが制止する。
「それは……彼等の命にも関わる事ですよ」
「息子達からの願いでもある」
顔を上げた真壁司令は。
「我々とて鉄華団と同じように、あなた方へ恩義を感じている。それに、エフィドルグの驚異と無関係を決め込むつもりは無い」
「……こちらとしてもファフナー隊が戦力でいてくれるのは、大いに助かりますが」
キラの声のトーンが下がっている。
それに気付いてもなお、真壁司令は。
「近藤剣司と近藤咲良、来栖操以外の全ファフナー隊を君達に託したい」
「……責任を持ってお預りします」
マークザイン、真壁一騎。
マークニヒト、皆城総士。
マークジーベン、遠見真矢。
マークフィアー、春日井甲洋。
ゼロファフナー、西尾里奈、鏑木彗。
スサノオ、神門零央。
ツクヨミ、水鏡美三香。
八名のファフナーパイロットが改めて艦隊に参加することになる。
「島の皆を頼むぞ。剣司、咲良」
「それはいいけど、お前は大丈夫なのか?」
剣司は総士に対して気遣う。
「恐らくそれほど長い命ではない。島の大気が生かしてくれている内に、やりたい事をやっておきたいんだ……」
「総士。これが別れになるなんて言うなよ」
「……そうだな。それより来栖」
「ん~。やっぱり僕も島外派遣に参加したかったなぁ」
「すまない。だが、お前にも仲間を守ってほしいんだ」
「まぁ、任せてよ」
来栖操が総士へ微笑む。
再び剣司が。
「後輩のケアは頼む。同化抑制材はありったけ積んでおいた。それと……」
「この部隊の仲間に頼るのも大事だよ。真矢はまだしも、一騎はセーブする必用がある」
追加するように咲良が言う。
その後数分だけ話してから、彼等と別れる。
「総士。無理はするな」
「甲洋?」
「よかったのか?残りの時間を島の皆と過ごさなくて」
珍しく甲洋が優しい言葉をかけてきたので、僅かに笑う総士。
「フッ……わからないか。一騎や真矢、お前達がいる場所こそが、僕の居たい場所だ」
「……先の事は気にするな。俺が仲間も島も守る。翔子や護もお前を支える筈だ」
「……恵まれているな……」
一方精密検査を終えた一騎と真矢。
「まだザインに乗るの?」
「俺はまだやれる。戦える内は乗るさ」
「……カノンがいたら怒ってたかも。正直、わたしも」
「ごめんな遠見。でも俺はここにいる。まだ総士が言う存在と無の……なんだっけ」
「……いちいち覚えてないよ。なんか、痛々しいし」
「あ……」
医務室から出ると、剣之介と由希奈にぶつかりそうになる。
「一騎くん、真矢ちゃん。体調は大丈夫?」
「うん。こっちは問題ない」
「よかった……それじゃ」
一騎達は振り返らず退室するも、やはり気掛りだった。
「GAUSのナビゲーター……茂住さんって言ったよな?」
「重体だって。意識も戻ってないし、復帰は難しいとか」
そして医務室では、ソフィーとムエッタが剣之介達を迎えた。
「……馬鹿な真似はよせ、ソフィー」
ふと、ムエッタの声がソフィーを止まらせた。
「いいえ。私は纏い手になってでも戦います」
由希奈はソフィーに駆け寄り。
「それは駄目だよ。だってゼルさんにも」
「……自爆したイエロークラブの残骸、もう修復済みなのでしょう?」
エフィドルグの機体は乗手が居なくても再生が可能。
機体そのものにナノマシンがあるため、勝手に直っていたのだ。
「……おそらくセバスチャンの復帰は絶望的。ですが、剣之介と由希奈さんの実例があります。」
四百年以上前剣之介は死んでいたはずだったのにも関わらず、雪姫によって救われた。
未知の何かによって生き永らえただけではない。
何より雪姫が纏い手として、ナノマシンが付与されていた血液を剣之介に託したからでもある。
「……戦場に戻りたいのなら纏い手は必要ないだろう?既に一人乗りがあるではないか」
スレイプニール同様、付近の地球軍基地を散策すれば一人乗りGAUSは見つかるだろう。
数年前と違って、GAUSはある程度生産されている。
「今優先すべきはセバスチャンの身体を治すことです。そして、私が戦場に出るのであれば、彼に背中を預けたい」
ソフィーの言葉に反応するように、茂住が僅かに声を出す。
「お嬢様……」
「セバスチャン!意識が……あ、動いてはいけません」
茂住が大人しくしたところで、再びソフィーが。
「……セバスチャン。選びなさい。このまま私の執事を引退するか、人の身を棄てて纏い手になるか」
「……二人乗りの機体なら……お嬢様に支えるために戦えるでしょうな……」
ムエッタに視線を戻すソフィー。
「……出来ますか?」
「GAUSの残骸を混ぜればな。元々クロムクロのように、グロングルは二人乗りだったのだ。システム的には可能だ」
後はもう、迷わなかった。
「頼みますムエッタ。イエロークラブに乗せてください」