ヴァルヴレイヴ隊はルーンを使用しないようにファフナー隊の武装で戦っていた。
「ねぇ流木野さん。ハルトは?」
「温存でしょ?エルエルフの奴。出し惜しみもいいとこよね」
サキとショーコ、アキラが航空戦力として機動性の高いフェストゥムを倒していた。
「アキラちゃん何か知ってる?」
戦闘をしながらの無駄話。
「……」
「アキラちゃん?」
「あ、ごめん。なに」
「ううん。こっちこそごめんね。戦闘中に」
アキラが言い淀む一方、待機していたヴァルヴレイヴ二号機。
ナデシコの格納庫に呼び出されたエルエルフ。
「どうした?不調か」
エルエルフはコクピットにはいる。
《エルエルフ……僕たちが初めて会ったのはどこだ?》
「なんだいきなり……学園のエレベーター前だ。確かお前は指南と」
言いかけたエルエルフは、察する。
「……お前、まさかとは思うが」
《うん……》
ルーンの欠乏。
ヴァルヴレイヴ二号機のシステムとしてルーン集合体として存在しているハルト。
数週間前のグレートゼオライマー戦でルーンを消耗したものの、それ以降は戦闘に参加していなかった。
しかし日常的にルーンを供給していないため、少しずつ失っていた。
「どの程度記憶を失ったのかはわからないが……時縞、俺を使え。」
《だけど……》
「今までお前は俺をジャックしたこともあったんだ。今更だろ」
《……考えさせてほしい。僕は既に死んだ身だ。生きている人間を犠牲にしたくない》
「悠長な事を言うな」
コクピットキャノビーが勝手にしまる。
《行こう》
「まて、お前……」
これでは自殺ではないか。
勝っても負けても、自暴自棄に任せていては先がないだけだ。
無理やり止めてやりたくても、前とは違う。ヴァルヴレイヴその物になったハルトを止められない生身のエルエルフは、自らの無力さを感じるしかなかった。
フェストゥムの大群と、新国連の間に挟まれての迎撃作戦。
新国連側の迎撃戦力としてアークエンジェル、ストライクフリーダム、インフニットジャスティス、デスティニー、GAUSカスタム、マークジーベン、ダイミダラー二機、超南極等が参戦していた。
「くっそ!ちょこまかと!」
ダイミダラーの中で孝一が苛立つ。
大火力と強固な装甲に包まれたダイミダラーとて、カオスやレイダーのようなガンダムタイプを相手にすると運動性等に遅れをとっていた。
それはダイミダラー6型・霧子や超南極も同じだった。
しかも超南極の動きはいつもより悪い。
攻撃を受けすぎて、出力が下がり始める。
「……やるぞ恭子!」
「……嫌!」
「なっ……」
ダイミダラーの真の実力を出すには、どうしてもやるしかない行為があったのだが。
「嫌よ!だってこの部隊の仲間達には未だにダイミダラーの秘密について、誰にも言ってないのよ!」
恭子は半泣きになりながら。
「リッツだって隠し通してた。女として、ううん、人として恥じて当然じゃない!」
「だかよ!粒子がなけりゃ……」
「色モノじゃない!普通にロボットのパイロットでいたいの!」
アークエンジェルやナデシコに合流してからも恭子は孝一を避け続けていた。
自分達がダイミダラーの乗手であるが故の宿命から逃げ続けていたのだ。
一瞬急接近してきた量産型ファフナーに反応が遅れるものの、マークジーベンとストライクフリーダムが通りすぎていくだけで次々と撃墜されていくように見えた。
しかもパイロットを殺さない、超高度なテクニックだ。
それを視界に捉えながら、孝一はさらに苛立つ。
仲間の活躍、それは自分達がまるで脇役ではないかと思えてしまう。
「孝一くん!私たちが先陣を切ります!」
ダイミダラー6型・霧子が援護に来た。
「……いずれはバレる事だから……」
霧子はサブパイロットの翔馬を見る。
「翔馬くん……お願いします」
「本当にいいの?」
霧子と翔馬は部隊に参入してから地味で目立たない普通の学生として皆と過ごしていた。
時折イキすぎたイチャイチャによって一部を苛立たせていたが、本人達はそれでも普通にしていたのだ。
「もう、迷わないから」
「わかった」
爆煙に包まれるダイミダラー6型・霧子。
完全に敵MS隊に包囲されてしまう。
「……ガリバーを使う!!」