スーパーロボット大戦Re・disk3   作:jupi

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9話-界塚小隊の一日

 

「特別編成?」

 

 伊奈帆と由希奈がいる定食屋にスレインが食事に来ていた。

 剣之介はアルヴィスに呼ばれていて、韻子は休憩で席を外している。

 

「あぁ。今回の竜宮島での戦闘をシュミレートしてその結果、界塚小隊を一時的に解散する事を決めた」

 

 味噌汁の椀を置くスレイン。

 

「お前……いつまで網文と喧嘩している気だ?」

 

「私情は関係ないし、リッツさんとゴタゴタしてる奴には言われたくない」

 

 横で苦笑いしている由希奈は二人はすっかり友達みたいだなと思う。口にはしなかったが。

 

「フェストゥムの読心と同化対策だ。韻子には昭弘さんと狙撃担当として島の中腹に陣取ってもらい、味方機の援護に徹してもらう」

 

「で?僕らは」

 

「スレインはスーパーロボットの現場指揮だ。全体的な指揮は真壁司令だが、各々に指揮系統を分けた方がいいらしい」

 

 それが読心対策の一つでもある。

 

「MS隊とGAUSの指揮はラミアス艦長。エステバリス隊はミスマル艦長、ヴァルヴレイヴ隊はエルエルフ、ファフナー隊は近藤さん、鉄華団はオルガ団長」

 

「君は?」

 

「クロムクロとメドゥーサ、騎士ユニコーンとゴッド、熱気バサラ」

 

「そうか……」

 

 伊奈帆の負担も大きそうだ。一癖も二癖もあるメンツだ。

 

「しかしスーパーロボットか」

 

 ガンバスター、グレートゼオライマー、ダイターン3、ダイミダラー二機と超南極。

 

「大火力がありながら機動性に掛ける部隊だ。その為に僕やスレインの未来予知が必要になる」

 

「不安要素満載だな。的が大きいぶん集中砲火を受ける」

 

 嫌そうな顔になるスレイン。

 

「……同化現象に対向できる機体あったか?」

 

「不明だ」

 

 特殊なバリアを持ち合わせないダイターン3。

 情報を公開しようとしないダイミダラー。

 味方機としても未だ恐ろしいグレートゼオライマー。

 火力が高過ぎて島への影響が不安なガンバスター。

 

「な、なぁ、交代を」

 

「却下だ」

 

 

 

 時を同じくしてリッツと韻子はアキトのラーメン屋にいた。

 

「二人とも、食べ過ぎだ。このくらいにしておけ」

 

 アキトが呆れながら厨房で手を休めて皿を洗い始める。

 

「ストレス発散の為に食べられてもな……」

 

「すみませんアキトさん」

 

 暗い表情の韻子とリッツ。

 

「二人の噂は聞いてる……そこそこ有名になってるから」

 

「リッツはともかく、私と伊奈帆についてもですか」

 

「ともかくって何……」

 

 ルリが項垂れるリッツの前にお冷やをおいて。

 

「部隊内の話題の一部としてお客さんから情報が流れてくるんです。ムエッタさんとオルガ団長の件なんて本人以外は殆ど知っているかも」

 

「うわっ……」

 

「え、でも朕とスレイン様の件は誰が」

 

 スレインを疑うことなんてないリッツ。

 

「誰かに見られていたのかも知れないし、二人の様子が変わったから気付いた人もいるだろうし」

 

「……」

 

 黙る韻子とリッツにユリカが。

 

「二人とも、もっと男の人の言葉を飲み込んであげたら?」

 

「ユリカさん?」

 

 ユリカが前に出たとたんに、アキトは然り気無く店の外に出る。

 

「伊奈帆くんの戦いには常に貴女への信頼が込められている。彼が無茶をするのは大好きな婚約者の為じゃないかなって思うの」

 

「それは……」

 

 わかっていた。でも認めたくなかった。伊奈帆がアナリティカルエンジンに脳細胞の一部を預ける事も意味がある。でも心配があり、それでもどんどん前に進まれて。

 

「リッツちゃんはね、自分の気持ちだけを前に出して押し付けすぎだと思う。本当にスレインくんが好きだと言うのなら、彼を尊重するべきだよ」

 

 リッツもわかっていた。ただ本当の意味で誰かを好きになったことが嬉しくて、その気持ちに歯止めをかける事を知らなくて。そしてそれを受け入れてもらえない事実を、受け入れられない。

 

「……」

 

 ユリカはリッツと韻子の顔を見てから。

 

「二人なら、大丈夫」

 

 

 その日の夜。

 指南ショーコ、流木野サキ、連坊小路アキラはナデシコに赴いた。

 

「調子どう?ハルト」

 

《いつも通りだよ》

 

 ナデシコの格納庫。ヴァルヴレイヴ二号機のコクピットにショーコが座り、サキとアキラはハッチから二人を覗き込む。

 三人は暇をしているだろうハルトに島での生活について話に来たのだ。

 

「ジオールでもあったよね。こんなゆっくりとした時間。」

 

《……そうだね》

 

 ふとハルトの中に違和感が生まれる。

 確かにゆったりとした日常はあった。

 だが、明かに何か忘れている。

 

「この島の神社にいる巫女さんが可愛くてね、その人もファフナーのパイロットだって今日初めて知って」

 

《神社……》

 

「どしたの?」

 

《ううん。何でもない》

 

 確かハルトにとってサキやショーコを相手に、神社という特殊な場所で何かがあったはず。

 忘れている。

 記憶の欠落。

 既に無い筈の血の気が引く。

 

 人の形を失い、ルーンの集合体としてヴァルヴレイヴ二号機のAIと化した時縞ハルト。

 

《なんかさ、ファフナーのパイロットって凄いよね》

 

 余命幾ばくもない身体で自らを消耗させながら戦い、島を守る。

 今となってはハルトも近い存在だ。

 

 もうすぐ、自分は情報そのものが消える。

 だからせめて、残りの時間をショーコや仲間達の為に使いきろう。

 ハルトの意思は強くなっていった。

 


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