スーパーロボット大戦Re・disk3   作:jupi

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蒼穹編
1話-彼らと彼女たち


 アークエンジェルはナデシコ隊と合流して、竜宮島でささやかな休息を取ることになる。

 

「もう大丈夫なのか?伊奈帆」

 

「怪我は完全に。左目も大人しくさせてる……ただ」

 

 一騎の質問に伊奈帆は溜息をついて、スレインが代わりに。

 

「彼女と喧嘩中らしい」

 

「彼女じゃなく婚約者だ。韻子があんなに怒っているの久々に見た」

 

 喫茶店’楽園‘でカレーを食べるパイロット達。

 

「二人は付き合いが長いのか?」

 

「結構ね。訓練校では主席と次席を争ってたライバルだよ」

 

 ふと、喫茶店の扉が開く。

 

「えっと、いいですか?」

 

「いいよ、入って入って」

 

 一騎に手招きされて入ってきたのはグレートゼオライマーのパイロット、秋津マサトだった。

 

「あの、バサラさん探してるんですが」

 

「あの人なら入れ違いで何処かいったな。ウチで一番辛いカレー食べて満足そうにしてた」

 

 一騎がバサラの居場所を知らないのなら、他を当たるしかない。

 マサトは食事をとること無く去った。

 

「……例の女の子、次元連結システムと言ったな」

 

 一番奥のカウンター席で総士が。

 

「システムとはいえ歳場のいかない少女を寄ってたかって攻撃した事実は変えられない」

 

「その作戦立案者は僕だ」

 

 水の入ったグラスを見つめながら、伊奈帆が呟く。

 しかしそれをよしとしない総士。

 

「総力戦だったんだ。その後悔は全員で背負わなくてはならない」

 

 

 

 

 

 

 戦艦の補給等が落ち着いた頃に、ペンギンコマンド達にも上陸許可が降りた。

 

「じゃあイオク、その捕虜の見張りちゃんとやっておけよ」

 

「そのくらい、このわたしにかかれば」

 

「竜宮島観光だー!銭湯と駄菓子屋にもいくぞー!」

 

「人の話を聞けないのかお前達!」

 

 イオクが置き去りにされて、ペンギンコマンド達は躍りながらアークエンジェルから出た。

 

「まったく……」

 

 牢に入った鎧姿のエフィドルグ兵。

 体格的にはやや太め。身長はイオクの方が大きいくらいだ。

 

「……そこのお前」

 

「おわっ!いきなり喋るな!」

 

 エフィドルグ兵がイオクに声をかけてきた。

 

「話がある」

 

 思わず牢の柵に近寄るイオク。

 

 

 

 

 

 その頃、銭湯で体を温めていた由希奈とムエッタとソフィーは、未だにオルガの話をしていた。

 

「不思議なものだな……由希奈の先祖の複製体であるわたしが、他人に好意を持つことになるとは」

 

 湯船に深々と浸かるムエッタにソフィーは。

 

「元より感情がある段階で変ではありませんよ。喜ばしい事です」

 

「しかしオルガさんねぇ。背も高いしワイルドだし顔も悪くないけど」

 

 由希奈の言葉を察したムエッタ。

 

「剣之介のような’何か‘がないのだろう?」

 

「よくわからないけど……でもそれをムエッタが良いって言うんでしょ?」

 

 ブクブクと湯船に沈む。

 

「いやぁ可愛いなぁムエッタは」

 

 すると、壁の向こうの男湯の方が賑やかになる。

 

「これが地球の銭湯か!」

 

 オルガと、三日月の声。

 

「ねぇオルガ、どうすればいい?」

 

「そりゃあ体を洗うんだろうが……そうか、お前片手使えないんだもんな」

 

 戸惑いの声に続いて、昭弘の声も。

 

「こんなに大量のお湯に入るのか……なんて贅沢な」

 

「火星じゃ水が貴重だった」

 

 アキトの声。

 

「あっちは女湯か……確か今日はパイロットの貸し切り。誰か居るかも知れない」

 

 次はハサウェイの声。

 由希奈とムエッタとソフィーが聞く耳をたてていたが、無言で湯船から出て脱衣所へ向かう。

 

「……行幸である……」

 

「ムエッタ、顔が真っ赤ですよ」

 

 扇風機に顔を近付けてほてった顔を何とかしようとするムエッタを、ソフィーが笑う。

 それから三人は充分に水分をとりつつ、番台の女性と挨拶がてら軽い雑談をしてから銭湯を出た。僅か15分ほどだろうか。

 

「なんだあんたらか」

 

「お、オルガさん?」

 

 三人が出ると、オルガが夜風に涼んでいた。

 

「参ったぜ……銭湯ってモンがあそこまで熱いとはな。お陰で他の連中は我慢比べを始めるし、阿頼耶識の手術跡が熱いしで……ん?」

 

 オルガが勝手に喋っていると、ムエッタが顔を赤らめて由希奈の後ろに隠れているではないか。

 

「どうしたんだ?ムエッタ」

 

「……いや、その、なんだ」

 

 目を会わせられないムエッタ。

 恋に目覚めたばかりの彼女には助け船が必要と判断したソフィー。

 

「そう言えばオルガ団長。その前髪は癖毛ですか?」

 

「これか?まぁな。濡らしても固めてもこの髪型に強制的に戻りやがる。切ったところで伸びればこれだ」

 

 苦笑いする由希奈とソフィーは。

 

「大変ですね。それでは女性の気を引くためのお洒落にも影響がでそう」

 

 嫌な予感がしてソフィーを見るムエッタ。

 

「別にそんなの気にしたことねぇよ。宇宙ネズミだからな……ってあんた等には意味のない自嘲か」

 

 鉄華団はアークエンジェルに合流してから宇宙ネズミ、ヒューマンデブリという言葉の必要性を感じなくなっていた。どんな出路があろうと、人は人だと思い知らされたから。

 

「それじゃあ恋人とか作ったり」

 

 グイグイ行こうとした由希奈の脇腹をムエッタが背後からつねる。

 

「なんだよ今日は随分変な絡み方をされる日だな……まぁなんだ。俺から積極的にというよりは、相手次第かな。そういうのよく知らねぇし」

 

 何処か気恥ずかしそうに語るオルガに、ムエッタは顔が熱くなるのを感じた。

 

「それでは……」

 

「おい、オルガ!ハサウェイがのぼせて倒れたぞ」

 

 遠くからする昭弘の大声に、ムエッタが吐きかけた台詞が消される。

 

「言わんこっちゃない……それじゃあな」

 

 走っていくオルガの背を見送る三人。

 

「不粋ですね、あの筋肉」

 

「いやいや昭弘さん悪くないし……それよりムエッタ」

 

「……疲れた……」

 

「あ、うん。帰ろ」

 

 三人は宿泊施設へと向かった。

 

 


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