ONE-PUNCH-MAN 『IF』~最強の正義VS最強の悪~   作:上井カルタ

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どうもみなさんお久しぶりです。気が付けばこの小説を更新してから二年以上時が経ってしまいました。いや~時の流れは早いですね!(笑)自分は今人生の分岐路に立っています。とても大事な時ですが、ふと気になってハーメルンを訪れ、現在に至っております。これから適当に更新していこうかなと思っているので皆さんがお暇であるならば、どうか暖かい目でご閲覧くださると幸いです。


第五擊目 『現実』

 

 グランと対峙してから、一週間ほど経った。

 一週間の間にグラン達に動きは見られなかったが――――――逆にグラン達のことについて、ヒーロー協会は何の手がかりを掴むことは出来なかった。

 崩壊したZ市については、メタルナイトが修復したため、現在では普通に住むことが可能になった。

 

「―――――なぁジェノス」

 

「はい。何でしょうか先生」

 

 元に戻った自宅で、サイタマは真剣に悩んでいた。

 

「俺は今日、スーパーの特売日に行っても良いか――――」

 

ダメです

 

「ちょ」

 

 鬼気迫るジェノスに即答され、サイタマは少したじろぐ。

 

「食材なら、ヒーロー協会に頼めばいくらでも輸送してくれるハズです」

 

「いやでも、後から金取られそうで怖いんだけど」

 

「もし金を取るような真似をするのなら、俺がヒーロー協会を焼き尽くします」

 

「わかった。家にいるからとりあえず落ち着け」

 

 物騒な事を口走るジェノスをなだめながら、サイタマは茶をすすろうと湯呑みを手に取る。

 

「―――――お、茶柱」

 

 

 ―――――★★★★★――――――

 

 時を同じくしてヒーロー協会。

 

「―――――今回の怪人は間違いなく災害レベル"神"だ。お前ら異論はあるか?」

 

 そう言って腕を組むのは、ヒーロー協会幹部【セルミス】。今回の作戦のリーダーだ。

 数年前まではサラリーマンだったが、ある怪人事件をきっかけにその判断力やカリスマ性を見込まれ、ヒーロー協会にスカウトされる。スカウト後に開花したその才能を駆使し、現在の地位まで上り詰めた男である。

 

「あの……異論というか疑問なんですが、これまで地球は何度も致命的な局面に陥っています。ですが、どの時も災害レベルは"竜"止まりだったじゃないですか。なのに今回は災害レベル"神"になるんでしょうか」

 

 恐る恐る手を挙げ、意見を述べているのは、幹部の中でもただ一人の女性である【リリ】。

 少々臆病な側面がある彼女だが、幹部の中でもずば抜けて頭が切れる。これまで多くの作戦に関わっていたのだが、目立ちたくないという彼女の要望により公には名前が伏せられている。ヒーロー協会の人間には、【影の賢人(シャドウブレーン)】と呼ばれている。

 

「そうなってもおかしくはないってことじゃないのん? 実際Z市がものの数秒で崩壊ってん。しかも、たった一人の怪人の力だけでさん」

 

 頭の後ろに手を組み、足をだらしなくテーブルの上に乗っけている男の名は【カイ・ハッツ】通称カイ。

 ヒーロー協会最高技術顧問である彼は近年、爆発的にその知名度を広げている発明家の一人であり、最近ではメタルナイトに匹敵する化学兵器の開発に成功した事で本格的に名を馳せている。

 

「うぅ……でももし本当に災害レベルが"神"だったら―――――――」

 

「どうしようもないかもしれないな」

 

 リリの言葉に続くように一人の男が口を開いた。

 

「シッチ。お前もやっぱそう思うのか?」

 

「お前とか言うな。……まぁそうとしか考えられんからな」

 

 深刻そうな顔で項垂れるのはヒーロー協会古参の【シッチ】。

 これまで【地球がヤバい予言緊急対策チーム】のリーダー役を担ったり、独断でプロジェクトを極秘に発動しヒーロー協会の施設に大人数を動員するなど、ヒーロー協会での数少ない権力者だ。

 

「シババワ様がいれば事前に対策することが可能だったかもしれないが……」

 

「いない人間のことは考えるな。俺たちが今考えるべきは、この怪人にどう立ち向かうかだ」

 

 冷たく言い放たれたセルミスの言葉に、他の三人は頭を抱える。

 

「……やっぱりダメ元でブラストさんに招集かけてみませんか?」

 

「もう声は掛けてあるさ。……返事は未だに来ないがな」

 

 シッチの報告に、リリはうーんと唸りながら指をいじり始めた。

 今だかつてない危機に直面した場合、人間はひどく動揺し、冷静さを欠いてしまう。それほどの絶望なのである。

 

「怪人ガロウを追い詰めたあのハゲ頭のヒーローはどうだん?」

 

「ついこの前サイタマ君も奴に接触したらしい。だが彼でさえも拮抗した相手との報告を得ている」

 

「拮抗したって言っても彼には底知れない力があるでしょん。まだ本気を出していなかったと願うしかないなん」

 

 そう。サイタマはS級ヒーローが束になっても叶わない程に強くなったガロウを、圧倒的な強さで追い詰めたのだ。その時のサイタマはまさに、ブラストと並ぶ【最強のヒーロー】だったのだ。

 シッチは拳を強く握り締め、ポツリと呟いた。

 

「……そうだな。今はそう考えるしか心の平穏を保てないな」

 

「……とりあえず、この周囲一体を巨大なシェルターで囲うというのはどうでしょう。幸いにも、現在グランと名乗る怪人はサイタマさんとの戦闘の後に、街の外へ出て行ったきり戻ってきていません。次にいつ彼らが攻めて来るかわかりませんし、できる限りの準備はしておくべきです」

 

「生半可なシェルターなんて一瞬で突破されてしまうだろう」

 

 シッチの反論に対してリリは。

 

「はい。なのでシェルター開発にはメタルナイトやカイ君、設置にはタツマキさんなどの手を借りればすぐにでも強固なシェルターを作れることでしょう」

 

 リリの提案に三人は快く頷く。

 

「―――――よし! まずはシェルターを作ってからだ。いいなお前ら、我々には事件解決以前に『人の命』を一番に考えながら、この作戦を組み立てていくぞ」

 

「任せておけ」「はい!」「了解だねん」

 

 セルミスの言葉に三人は明るく返事をするが、四人の心の中にはどこか陰りがあった。

 『本当にこれでいいのか、もっと別の方法があるのではないか』と。

 誰しも何かにすがりつきたくなる時があるだろう。

 誰しもが「助けてくれ」と救いを求める時があるだろう。

 

 

 

 

 ――――しかし、誰かが必ず助けてくれるとは限らない。

 

 

 

 

 

 無慈悲にも突きつけられた現実はあまりに絶望的で、この四人だけじゃない。世界の誰もが不安という名の圧力に押しつぶされそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

 ――――――そう。(サイタマ)が―――――――

 

 

 

 

 

 

 

「――――――よし……ジェノス!」

 

「? なんでしょう先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修行しようぜ!」

 

 

 

 

 

 修行を始めるまでは―――――――

 

 

 

 




ご閲覧ありがとうございました。
不定期更新なので次はいつ投稿するかわかりません。

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