ONE-PUNCH-MAN 『IF』~最強の正義VS最強の悪~ 作:上井カルタ
―――――悪は必ず、正義に勝つ。
そんなことはありえない。戦隊モノの番組でも、正義の味方はどんなときでも悪を打ち倒してきた。
それが今では逆の状況、悪がヒーロー
「終わったなヒーローよ」
「殺す......貴様は何があっても殺す!! この命が燃えようとも殺す!! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す――――」
もはや理性を失ったジェノスは、その怒りと憎しみの限りを言葉にしてぶつけた。
その姿を虫を見るかのような目で見ているグランが居る。
「......愚かで脆弱。挙句の果てに理性を保てなくなるとは......人間とは何て愚かな生き物だ。......貴様はサイボーグだったかすまない」
「貴様ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
もはや怒りと憎しみで我を忘れたジェノス。
それをあざ笑うかのようにおちょくるグラン。
―――――そのグランの後ろに立つ、一人の青年。
「なっ!? 貴様生きて―――――」
『――――連続普通のパンチ』
――――――無数に打ち込まれた正義の鉄拳は、怪人の肉体を細部まで破壊し、遥か遠方へと吹き飛ばした。
「――――――いやーさすがにヒヤっとしたぜ」
「先生!!」
―――――そこには一切の髪が無い一人の
☆★☆★☆★☆★☆
「サイタマ先生......」
師の姿を見たジェノスは、気づいたときには我に返っていた。
「ん? どうしたジェノス」
「いや......よくご無事で。でもどうやって......」
「あぁ。それはな......」
そう言うとサイタマは、何やらポケットから取り出した。
「それは......トマトジュース!?」
「そう。これを殴られた瞬間に頭からぶっ掛けた。お陰で不意をつけたが、服にシミが出来ちまった。後でクリーニング屋に行こうぜ」
「は、はい」
ぽかーんと口を開け、呆然とするジェノスはハッとしたように自分の体を起き上がらせる。
「ヤツの反応は遥か遠くに消えましたが......」
「そうだな。まだアイツは生きてる。殴った感覚でわかった」
ほとんど肉片に成り果てたグランの反応が今だにあるということを信じたく無いジェノス。
今までのどの怪人よりも戦いがいがあるグランに、ちょっと期待するサイタマ。
―――――その背後に現れた『殺気』
「なっ!? そんな馬鹿な!!」
「ふぅ......人間ごときに舐められたものだ。あの程度で死ぬわけが無いだろう」
その体からは、今までに無い圧倒的な『殺意』が溢れ出ていた。
「ジェノス! 離れてろ! オラッ!!」
咄嗟にジェノスが退いたと同時に、サイタマは正義の拳を打つ。
――――が、しかし。
「痒い」
「なっ!?」
グランはサイタマの一撃を受けて尚、微動だにしなかった。
「先生!! 避けてください!!」
ジェノスがそう叫ぶと、サイタマは一瞬にしてグランから距離をとった。
気づけばジェノスは腕や肩の砲門を開いていた。
『最大出力焼却砲!!』
全てを焦土にする最大出力の焼却砲が広範囲に射出される。
無論、グランには直撃し、その体を焼き焦がした――――――はずだった。
「―――――甘いよ。この程度じゃ♪」
放ったはずの熱線は、花火が弾けるように消失した。
「嘘だ......最大出力だぞ......」
そこには、焼却砲を打ち消したと思われる、一人の青年がいた。
腕を突き出し、手の平からは青い光が漏れている。
「......バルカか。何しに来た」
「時間切れだよグラン。そろそろ他の街へ向かわないと計画が潰れる」
どうやら青年はグランの仲間らしく、何やら会話をしている。
「そうか......分かった。―――――ヒーローサイタマ!!」
「?」
突然声を掛けられ、顔を上げるサイタマ。
「俺はいずれこの世界を滅ぼす。もちろん人類、ヒーローもな。必ず阻止しに来い」
「あ、お前待て!! まだクリーニング代貰ってな―――――」
そう言い切る前に、眩い閃光が辺りを照らし、気づけばグラン達は姿を消していた。
「ヤツ等は一体......」
「うおおおおおおおおおおおおおお!! 俺のクリーニング代出せやああああああああああああああああ!!!」
ジェノスが呟く中、サイタマ一人、怒りの雄たけびを上げていた。
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