ONE-PUNCH-MAN 『IF』~最強の正義VS最強の悪~ 作:上井カルタ
「最強の人間怪人? あのガロウと同じような?」
「あぁそうだ。ただ、奴の強さは普通じゃない。この身で体感した。おそらく覚醒したガロウよりも強い」
「確かに......」
クロビカリを見ると、体の至る所に包帯が巻かれていた。
「この俺の鋼を超えた肉体がいとも簡単に破られた。だが、俺は喋れるだけまだいい。他のS級ヒーローはまだ意識不明で喋ることすらできないだろう」
「クロビカリの肉体を容易く破壊できる程のパワーということか......」
「それだけじゃない。奴には俺の攻撃が全く効いていなかった。殴っても殴っても、その場から1ミリも動かないんだ」
腕を見ながらクロビカリはうな垂れた。
よほど自分が敗北したことを気にしているのだろう。
「でも安心しろ。グランとやらは先生か俺が討伐しとく」
「あぁ......サイタマ君も居れば安心だ......と言いたいんだけどな」
「? どうかしたのか?」
なにやら難しい表情をしながらクロビカリは頭を抱えた。
「討伐しに行くのはいい。だけどサイタマ君。君は特に気をつけたほうがいい」
「は? 何で俺なんだ?」
「そうだ。先生の強さは―――――」
「違う」
ジョノスの言葉を遮り、クロビカリは拳を強く握り、口を開いた。
「サイタマ君は、おそらく奴に敗北する」
☆★☆★☆★☆★☆
「......敗北? 先生が? 貴様っ!! 」
怒りが込みあがってきたのか、ジェノスは立ち上がってクロビカリの元へと――――
「やめとけジェノス」
「――――ッ!! ......すみません。少々取り乱しました」
激昂していたジェノスは、サイタマの声で我に返った。
「えぇと......クロビカリはなんで俺が負けると思ったんだ?」
「......すまない。確信はないし、ましてやサイタマ君が負けるなんて思っていないさ。だけど......」
再びうな垂れたクロビカリを、三人は心配そうに見つめる。
やがてクロビカリは重い口を開いた。
「おそらく奴は―――――」
その時だった。
『緊急連絡! 緊急連絡! 至急、ハゲマント、鬼サイボーグはZ市へ急行せよ! 繰り返す――――』
「特殊アラーム!? 何故こんな時に!?」
「と、とにかく! ハゲマントと鬼サイボーグはZ市に向かってくれ!」
「こ......これだけは言わせてくれ」
「!? なんだ! 早くしろ!」
クロビカリは声を振り絞って言った。
「奴......に......攻撃を......する......な」
そう言うと、突如クロビカリは気を失った。
―――――――Z市にて。
「......酷いですね」
「まったくだ。誰だ! 燃えるゴミに燃えないゴミ突っ込んだ奴!」
「いえ先生。そのことではなく......この街です」
とジェノスは、ほぼ壊滅と言っていいほど無残になったZ市を見つめた。
「冗談だ。それにしても酷いな。これを......なんだっけ、グラタン?」
「グランです」
「......がやったのか?」
「おそらく......」
会話しながら、ジェノスとサイタマは、瓦礫の上を歩いていた。
「怪人らしき生体反応は無いですね......」
「なんだよ無駄足かよ。いないんだったらさっさと帰ろう......」
そう言って戻ろうとした瞬間――――。
「ヒーローが二人か」
突然聞こえた声に反応した二人は、咄嗟にその場を飛び退いた。
―――――数秒前まで居た場所が、一瞬にしてクレーターと化した。
「へぇー。スッゲェパンチだなおい」
サイタマは爆発的に広がる砂埃に、目を覆いながら驚いた。
「先生ほどじゃありませんよ。しかし、おそらく奴が......」
そして、砂埃の中から一人の男が、姿を現した。
「俺の名は『グラン』。怪人だ」
「やはり貴様がグランか。なら丁度良かった。先生に代わって、俺がここでお前を排......いや先生風に言い直すと―――――」
「俺はヒーローという存在を抹消する。その為に―――――」
「正義を」
「悪を」
『執行する』
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